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03 総合診療という領域/JAPANOTHER

総合診療に、学問の基盤はあるのか

前の記事で「学問の確立こそ最優先ではないか」と書いた。ただしそれは未検証の直感だった。学会も学術誌もあり、会員数は救急医学会を上回る。しかし科研費の審査区分表に総合診療という枠は存在せず、文科省の最新方針に「講座」の二文字は一度も現れない。大学の総合診療部門が研究に割く労力は15.6%、その研究の0.7%しかプライマリ・ケアではない。基盤がないのではなく、基盤が一点に集まっていない——その構造を、一次資料と国際比較から検証する。

公開2026-08-18
更新2026-09-01
出典48 SOURCES

ダイジェスト解説 VIDEO

前の記事で、総合診療専門医制度の8年を検証した。専攻医は全体の3%前後で推移し、2026年度は初めて減少に転じた。その私見で、私はこう書いた——「総合診療の必要性は、最終的には総合診療医自身が勝ち取るしかない。そのために要るのは、理念の反復ではなく、継続的な研究と、他の領域に対して説明可能な学術体系だと思う」。

同時に、こうも書いた——「ただし、日本の総合診療の学術基盤が実際にどの程度構築されているのかを、私はまだ検証していない」。本稿はその宿題である。

結論を先に言えば、「学問的基盤がない」という言い方は不正確だった。学会も学術誌もある。会員数は救急医学会を上回る。しかし調べを進めるほど、批判の的が少しずれていただけで、批判そのものは正当だったことも分かってきた。そして最後に、この因果関係を支える直接の証拠が見つからないことにも突き当たった※訂正。(当初これを「反証」と書いたが、根拠にしたのは総合診療を志望する医学生10人への質的研究である。総合診療を選択肢から外した学生を調べていない以上、学術基盤が進路選択に影響しないことの反証にはならない。言えるのは、この仮説を支持する直接の進路選択エビデンスが見つからなかった、までである。)

33年前に、同じことが書かれていた

調査を始めてすぐ、予想していなかったものに行き当たった。1993年2月、総合診療研究会の設立趣意書に、福井次矢がこう書いている。

大学病院や臨床研修指定病院では、評価に耐えられるような研究分野や方法論を総合診療においても確立する必要がある(医師を評価する一手段として研究論文が用いられているという現実を無視できない)

優秀な医師に総合診療の分野に参入してもらえるよう、学生と若い医師に総合診療の魅力をアピールするためにも質の高い研究が必要とされる1

前の記事で私が書いた「学問の確立が最優先ではないか」という直感は、新しくもなんともなかった。この分野は、自らの設立趣意書の時点で、既にそう宣言していた。問いは「その認識が正しいか」ではなく、「33年かけて、それがどこまで実現したか」に変わる。

なお、この引用元はスキャン文書のOCR層から復元されたものであり、字句の細部は原本画像との照合が望ましい。

まず前提の訂正——学会も学術誌もある

日本プライマリ・ケア連合学会は2010年、旧日本プライマリ・ケア学会(1978年設立)・旧日本家庭医療学会(1986年発足)・旧日本総合診療医学会(1993年設立)の3学会が統合して発足した。会員数は12,532名(2026年7月末)で、和文誌『日本プライマリ・ケア連合学会誌』と英文誌『Journal of General and Family Medicine』(Wiley発行)を持つ2。日本病院総合診療医学会も独自の学会誌を発行している。

規模で見れば、これは小さな学会ではない。他の基本領域と並べるとこうなる。

学会設立会員数英文誌のMEDLINE収載
日本内科学会1903122,550○
日本外科学会189940,899○
日本小児科学会189623,233○
日本プライマリ・ケア連合学会201012,532×
日本救急医学会197310,251×

JPCAの会員数は日本救急医学会を上回っている。「人がいない学会」ではない。

では機構の『概報』にある「学会がないため、会員数は0人」「学術誌 なし」という記載は何なのか。理事長・渡辺毅の言葉が答えを与えている——「当機構設立時に19番目の基本領域として設置され、単一の担当領域学会がないことから当機構が運営しています」3。つまり「学会がない」とは、この専門領域を担当する基幹学会が一つに定まっていないという意味であり、分野に学会がないという意味ではない。内科なら日本内科学会、小児科なら日本小児科学会が制度を担うのに対し、総合診療では家庭医療系と病院総合診療系が並立し、専門医制度そのものはそのどちらでもなく機構が抱えている。

学術誌はある。しかし国際的な可視性は限定的である※訂正

問題は存在の有無ではなく、流通と被引用にあった。

英文誌 Journal of General and Family Medicine は、米国国立医学図書館の記録上「Not currently indexed for MEDLINE」である。PubMedで検索できるのは、WileyがPMCに全文を寄託しているためであって、MEDLINEの索引対象ではない4。収載論文数は年間66〜149件の範囲で推移しており、2017年から2025年の9年間に増加傾向は見られない5。

被引用で見るとさらに差が開く。検証可能な指標としてOpenAlexの2年間平均被引用数を用いると、JGFMは1.045、British Journal of General Practiceは1.398、Annals of Family Medicineは1.506である。和文誌はさらに厳しく、945本の論文に対しh指数は8、2年間平均被引用数は0.057——1,000本近い論文から、10回以上引用された論文が6本しか出ていない6。

ただし公平に言えば、MEDLINE非収載は総合診療だけの問題ではない。日本救急医学会の英文誌 Acute Medicine & Surgery も同じく非収載である。少なくとも、日本の学会が近年創刊した英文誌に固有の現象ではなく、総合診療だけが取り残されているわけではない。

国際的な構図も押さえておきたい。SCIの「primary health care」カテゴリーに収載されている学術誌は世界で19誌のみであり、その産出の86.4%が米英豪加の雑誌に由来する。日本の雑誌は19誌に含まれていない7。プライマリ・ケアという領域そのものが、学術出版の世界で小さな場所しか占めていない。

大学に何があるのか

日本プライマリ・ケア連合学会の大学ネットワーク委員会が2022年に実施した全国調査が、この分野について最も包括的な全国調査の一つである※訂正(本稿はこの後に2018年の82大学調査と2020年の71大学調査も引いており、「唯一」ではない)。全国82大学のうち64大学が回答した。「総合診療関連部門なし」と回答した3大学を除く79大学を分母とした回答率が81.0%である※訂正8。

設置形態の内訳が、最も重要な数字だと思う。

設置形態全体国公立私立
医学部に設置された講座37.5%28.6%54.5%
大学附属病院の診療部門のみ29.7%35.7%18.2%
両方の兼務31.3%33.3%27.3%

回答した大学のうち約3割は、医学部の講座を持たず、病院の診療部門としてのみ存在している。国公立では医学部講座としての設置は28.6%にとどまり、私立(54.5%)より低い。

さらに、専任部門56大学のうち15大学(26.8%)に寄附講座が関わり、5大学(8.9%)は寄附講座のみで運営されていた。その資金源は市8・都道府県6・町3に対し、企業等は2である8。ただし「自治体が学術的な名前を付けて確保している医師の労働力」と読むのは、証拠がない※訂正。寄附講座であっても研究・教育・医師育成・地域医療・政策研究のいずれも目的にしうる。言えるのは、自治体資金による寄附講座への依存度が高く、大学の恒常的な財源によるポストとは異なる資金構造を持つ、というところまでである。

そして業務配分——診療46.2%・教育34.2%・研究15.6%。本務スタッフの平均は7.3人だから、単純に掛け合わせれば1部門あたり約1.1人相当になる。ただしこれは実測のFTEではない※訂正。平均人数に平均エフォートを掛けただけで、勤務形態の違いも、大学ごとの人数と研究時間の相関も反映していない。規模感を示す粗い換算にすぎない。

別の全国調査も同じ像を結ぶ。2018年に全国82の大学病院総合診療部を対象とした調査(回答率65.8%)では、大学に講座がある施設は76%だった一方、医局員の基本領域専門医の内訳は内科64%・家庭医療19%・救急8%であり、さらに「教育関連診療所がない施設が72%」という結果が出ている9。大学の総合診療部門のスタッフは主に内科医であり、その4分の3近くは連携する診療所を持たない。プライマリ・ケアの研究をしようにも、その現場との接続がない。

2022年の別の調査でも、常勤スタッフ数の中央値は7名、3年間の入院患者数の中央値は76名(四分位下限0)、教育専従者がいるのは43大学中8大学(19%)、必修の総合診療実習期間の中央値は2週間だった。なおこの調査の著者らは、業務に占める教育の割合(中央値30%)については、先行報告の15%と比べて「相当の貢献をしている」と肯定的に評価している点は付記しておきたい10。

講座があっても、学生や研修医がそこを通るとは限らない。15,188名の研修医を対象とした調査では、所属病院に総合診療科があるにもかかわらず、大学病院のPGY-1研修医の73.4%が総合診療をローテートしていなかった(市中病院は43.6%)11。

「地域」を冠する講座に対象を広げると、構造はさらに鮮明になる。2024年時点の悉皆調査によれば、全国82医学部の「地域」講座168のうち131講座(78.0%)が寄附講座であり、正規講座は21.4%にすぎない。しかも73講座(43.5%)は講座名に臓器・疾患・専門科を含んでおり(例:地域整形外科学)、特定の地域名を含むものは11.3%だった。責任者の専門領域は内科44.1%に対し総合診療は10.3%、2年間に英語原著論文がPubMedに索引されなかった責任者は36.6%である12。

この36.6%という数字は慎重に扱う必要がある。英語原著のみ、かつ筆頭・第2・最終著者に限った集計であり、著者ら自身が「実際の学術的産出を過小評価している可能性が高い」と注記している。同様に「44.1%が内科」も、認定資格の確認ではなく著者らによる分類である。それでも、オーストラリアの農村保健講座が出版物の56%を農村保健に充てているのに対し、日本の「地域」講座の研究分野は大きく異なる、という著者らの指摘は重い。

研究されているのは、総合診療ではない

ここからが核心である。

大学の総合診療関連講座と循環器内科講座を比較した書誌計量研究によれば、研究者一人あたりの論文数(2010〜2019年)の中央値は、総合診療12.5本に対し循環器内科81.5本——6.5倍の差がある。しかしこの研究の結論は、量の差ではなかった。

全publicationのうちプライマリ・ヘルスケアに分類されたものはわずか0.7%であった。これは大学附属の総合診療講座にとって中核的な研究領域であるはずである13

同じ研究は、78大学に128の総合診療関連講座が存在すること——つまり1大学あたり1.6個の異なる名前の「総合診療」があること——も報告している。そして家庭医療専門医が2017年時点で673名にとどまり、内分泌専門医2,180名を下回ることから、臓器別専門で訓練された研究者が総合診療講座に所属している可能性を指摘している。

別の書誌計量研究も同じ方向を指す。2015〜2020年の総合診療医によるPubMed収載論文2,372本のうち、症例報告が30.1%を占め、原著の内訳は臨床研究60.5%・基礎実験研究17.5%に対し、医療の質と安全4.1%・臨床教育3.1%・ヘルスサービス研究1.42%だった。著者らはこう述べている——「総合診療と臓器別専門を兼務する医師は、以前の専門領域における基礎実験研究の分野で総合診療医として活動を続けることが多い」。そして結論はこうだ。

研究業績は一般化されておらず、むしろ臨床サブスペシャリティの背景に強く影響されている。学術的なジェネラリスト領域が確立されない限り、この状況は続く可能性が高い14

大学病院の総合診療部門への調査でも、研究分野としてヘルスサービス研究および医療の質・安全を挙げたのは47講座中1講座(2%)のみで、研究の23%が消化器・循環器・免疫・神経などの臓器別専門領域を対象としていた15。

そして最も鋭い数字は、JPCA自身の全国調査にあった。研究分野を尋ねた設問で、家庭医療の中核概念にあたる項目を挙げた大学は——「長期的な全人的関係に基づくケア」2大学(3.3%)、「未分化な健康問題・不確実性」3大学(5.0%)16。

ただし「学問的な核心を研究している大学が全国に2〜3校しかない」とは言えない※訂正。これは研究実績の悉皆調査ではなく、大学が自部門の研究分野として何を挙げたかの回答である。これらを自部門の研究分野として明示的に挙げた大学が2〜3校にとどまった、が正確である。

そのうえで、挙げられているのは診断学(50.0%)や公衆衛生(46.7%)——既に学術誌と研究手法と資金の受け皿がある領域の方だった。

そして0.7%という数字も、読み方に注意が要る※訂正。これはWeb of Science の「Primary Health Care」という雑誌カテゴリーに分類された論文の割合である。同論文は日本の総合診療研究者が92分野に出版していることも示しており、原著自身が、この低値はプライマリ・ケアを扱うWoS収載誌が少ないことの影響を受けた可能性を限界として認めている。言えるのは「研究されているのは総合診療ではない」ではなく、「大学の総合診療部門の研究が、総合診療固有の問いへ収斂していない」である。

制度の側にある、二つの空白

なぜそうなるのか。制度の側に、二つの決定的な空白があった。

第一に、科研費に総合診療の審査区分が存在しない。日本学術振興会の「審査区分表」(令和5年度助成より適用)を全文検索すると、「家庭医療」「プライマリ」はいずれも出現しない。「総合診療」は小区分52010〔内科学一般関連〕の「内容の例」の中に2回現れるのみで、同じ枠には心身医学・老年医学・東洋医学・緩和医療が併記されている。一方、神経内科学関連・消化器内科学関連・循環器内科学関連・呼吸器内科学関連・腎臓内科学関連——臓器別の専門領域はそれぞれ独立した小区分を持っている17。

日本の主要な競争的研究資金の分類体系上、総合診療という研究領域は、独立した審査の単位として存在しない。プライマリ・ケア研究の障壁を論じた2025年の論文も、「日本学術振興会などの主要な資金配分機関がプライマリ・ケアを研究資金のカテゴリーから除外している」ことを障壁として挙げている18。

ただし「除外」という言葉は正確でない※訂正。科研費にプライマリ・ケア研究が採択されている例はある。問題は応募できないことではなく、独立した審査区分を持たず、他領域の評価軸の中で申請しなければならないことである。——独立した審査区分の不在が、総合診療固有の問いを同じ領域の研究者どうしで評価する制度的な場を弱くしている可能性がある、というところまでが言える。「分類体系が研究内容を規定している」とまでは、本稿では示せていない。

第二に、文部科学省の最新方針に「講座」の二文字が一度も現れない。「今後の医学教育の在り方に関する検討会 第三次取りまとめ」(令和7年7月公表)を全文検索すると、「講座」の出現回数は0、「寄附講座」も0である。総合診療は「総合的な臨床能力を有する医療人材の育成を促進すべき」という人材養成の文脈でのみ登場する。同じ文書には研究に関する充実した記述——研究専念環境、Ph.D.、国際共著論文、研究者の流動性——があるが、それらが総合診療と結びつけられる箇所は一つもない19。

ただし、ここから「文部科学省の側で総合診療と大学の学術ポストが接続されていない」と読むのは誤りである※訂正。同じ検討会の第13回(令和7年4月23日)に、文部科学省は「総合的な診療能力を持つ医師養成の推進事業」(令和7年度当初予算4.5億円、交付対象12大学)を報告している。総合診療を対象とした事業予算は、現に組まれている。

(なお本稿は、この事業が「総合診療の医局・講座の設置」を明示的に支援しているかどうかを確かめようとしたが、該当するスキーム図が画像で、本文として抽出できなかった。確認できていない。)

したがって言えるのは、第三次取りまとめという文書の中では総合診療が主として人材養成の文脈で記述される一方、並行する個別事業では大学における総合診療の体制形成が支援されている、という食い違いまでである。

大学の学術ポストを所管する省庁の最新方針において、総合診療は人材供給のカテゴリーであり、研究は別の一般的な関心事として並んでいる。両者が交わらない。

この二つが揃うと、何が起きるか。岐阜大学の総合診療科が、JPCAの全国調査の自由記載で書いていた——「脂肪細胞に関する基礎研究を実験室を使って行っています。科研費や、特に奨学寄附金を獲得するためにも基礎研究の継続が重要に思います」16。資金の分類体系が、その分野の研究内容を規定している。それを当の講座が、自分の言葉で述べている。

産出の実測——国際比較

では実際の産出はどうか。2025年に The Lancet Regional Health – Western Pacific に掲載された日本の研究者らによる論文が、最も直接的な数字を示している。

  • 過去10年間に国際的な査読誌に公表された、日本のプライマリ・ケア領域のランダム化比較試験は4件
  • 人口1,000万人あたりのプライマリ・ケア研究の産出数:オーストラリア23.2、英国20.5、カナダ13.2、ドイツ4.0、日本0.318

オーストラリアとの差は約77倍になる。ただし著者らはデータベースや検索式を明示しておらず、手作業による同定と見られるため、この数字は精密な計量というより桁の目安として読むべきだろう。

対象を絞れば、より検証しやすい数字もある。青木拓也・福原俊一が2017年、プライマリ・ケア主要国際学術誌5誌に限定し、2011年1月から2016年6月までに掲載された全2,602編を数えて、そのうち日本発の論文の割合を調べている。結果はシェア0.15%だった20。設立趣意書から24年後の実測値である。

(なお前段のRCT数と、この5誌に占めるシェアは、測っている対象が異なる。前者は研究デザインを限定した全数、後者は特定の5誌への掲載数であり、直接は比較できない。)

学会発表がどれだけ論文になるかという指標も厳しい。日本プライマリ・ケア連合学会学術大会(2010〜2012年)の全1,003抄録のうち、5年後までにMEDLINE収載誌に全文公表されたのは38件(3.8%)だった。原著者はこう書いている。

他国のプライマリ・ケア学術大会の抄録公表率が40%を超えることを踏まえると、JPCAMの公表率は極めて低い……我々の知る限り、本研究で観察された抄録公表率は、診療科を問わず過去数十年に行われたすべての研究の中で最も低いものであった21

「日本だから」「言語の壁があるから」という説明は、著者らが先回りして否定している。日本整形外科学会の論文化率は国際水準と同等であり、「この低い公表率は国や診療科によらずJPCAM固有のもの」と結論づけられている。なお1,003抄録のうちRCTの報告は2件(0.2%)だった。

分野の内部でも、この産出不足は公式に認められている。JPCAは研究助成制度の説明文で「まだ不足していると考えられる、わが国からのプライマリ・ケア分野の研究成果の発信を国際的に行えるように、英語論文化をゴールに設定しています」と明記している22。2019年の英文論説も「日本から産出されるプライマリ・ケア領域の臨床研究は現状きわめて限定的である」とした上で、中国では医科大学が家庭医療講座を設置し、政府が研究能力構築に財政支援を行っていることと対比している23。

他国は、何を、いつ作ったのか

日本の現在地を測るには、他国が何をどの順序で作ったかを見る必要がある。調べて意外だったのは、学術誌が最初に来ていることだった。

国学会設立学術誌創刊最初期の講座設置全医学部への普及
英国19521953(翌年)1963(+11年)1995(+43年)
オランダ19561957(翌年)1966(+10年)—
カナダ19541960(学会誌としての創刊。1954年に始まったのは会報である※訂正)1968(+14年)—

英国では、一般医協会の設立(1952年)の翌年にResearch Newsletterが創刊され、これが後のBritish Journal of General Practiceになった24,25。オランダ家庭医学会(1956年設立)も翌年に『Huisarts en Wetenschap』を創刊している。しかもNHGの設立動機自体が「家庭医の低い地位と、家庭医療の学術水準向上への希求」だった26。カナダは学会設立と同年である。

米国をこの表に並べなかったのは、比較の基準が揃わないためである。米国家庭医学会の設立は1947年だが、家庭医療が20番目の専門科として承認されたのは1969年であり、他国の「学会設立」に対応するのがどちらなのかが一義に決まらない。そして「専門科の承認から研究誌まで34年」という書き方は誤りである※訂正。米国には Journal of Family Practice(1974年創刊)、Family Medicine(1979年)、Journal of the American Board of Family Practice(1980年代後半)があり、とくにJFPは family medicine research のための学術誌として企画されている。専門科承認から5年後には、研究を明示的な使命とする学術誌が創刊されていた。Annals of Family Medicine(2003年)は、後に加わった有力誌として位置づけるべきものである。

研究の場を作ることが、分野を作ることと同義だと考えられていた、ということだと思う。

講座については、Richard Scottが1963年にエディンバラで世界初の一般医療の教授職に就き27、オランダのJan van Esが1966年、カナダのIan McWhinneyが1968年と続く28。いずれも学会設立から10〜14年である。

ただし——英国ですら、全医学部に講座・部門が置かれるまでに1995年、43年かかっている29。この事実は、日本の現状を悲観しすぎないための重要な補正になる。

そして資金は、どこの国でも最後まで解決していない。英国の専門の全国研究資金機構(NIHR School for Primary Care Research)の設立は2006年、学会設立から54年後である。米国家庭医療は過去20年にわたりNIH研究資金の0.2%しか得ておらず、他の専門科は平均して4.5倍以上を得ている。教員の80%が年1本未満の論文しか産出せず、研究能力を維持する十分な資金があると答えた講座は19%にすぎない。同じ論文は「フランスにおいても医学研究プロジェクトのうちプライマリ・ケアに焦点を当てたものが3%未満であることは、これが特定の国に固有の問題ではなく、領域に固有の問題であることを明確に示している」と述べている30。

米国の初期も、今の日本とよく似ていた。1980年、NIHの予算30億ドル超に対し、家庭医療講座の研究者への交付は2件・計133,000ドル。1979〜80年に研究に業務時間の10%超を充てていた家庭医は185名(1.3%)。1980年2月、STFM研究委員長は「家庭医療はいまだ知的な正統性を確立できていない」と書いた31。

分野の内部からの声

日本語の文献を辿ると、この問題は少なくとも20年前から、分野の内部で繰り返し語られてきたことが分かる。

2005年の座談会で、福原俊一はこう述べている——「この10年、プライマリ・ケアが対象とすべき研究テーマはたくさんあるにもかかわらず、私が見る限りは、医学教育と、医師−患者関係のような研究しか見られなかったように思います」。同席した福井次矢は「目に見えて増えないと、プライマリ・ケアの基盤が弱いという印象を拭えない」とし、根本的な課題として「教育者が足りない……現在、総合診療部、総合診療科で教える立場におられる先生方は、医師として最も重要な形成期を他部門で過ごした先生方です……残念ながら日本では、ロールモデルの増殖速度が非常に遅いと感じています」と述べた32。

福原は2012年にも「残念ながらスローガンに終始していました。この状況はおそらくつい最近まで続いていたのではないでしょうか? 長期の『いばらの期間』でした」と書いている33。松島雅人は2011年、「研究には『人、物、金』が必要と言われていますが、もう一つ付け加えるとすると、システムだろうと思います……しかし育成システムはまだまだ量的に限りがある」と述べ、PBRNの必要性を説いていた34。

現役の大学教授の言葉は、さらに率直である。兵庫医科大学内科学総合診療科の新村健は、自らの主任教授メッセージにこう書いている。

総合診療には、まだ歴史も他の専門診療科のような確立した学問体系もありません……全国的にみて総合診療科がどのような研究に取り組んでいくか、といった課題に対してはまだ明確な答えは出ていません……全国を見渡しても研究力の高い総合診療科は稀です35

そして、最も痛切だと感じたのは、福島県立医科大学の菅家智史が2019年に学会誌の巻頭言で紹介した二つの場面である。

先日若い医師から「プライマリ・ケアに研究は必要なのですか?」という質問を受けた。プライマリ・ケアは実践の場であり、研究というイメージがないとのことだった。また大学での会合で、他領域の教員にプライマリ・ケア領域で研究に取り組んでいると話したところ、「プライマリ・ケア領域での研究とはいったい何をするのですか?」と驚いた様子で質問された36

分野の内側の若手からも、大学の他領域の教員からも、研究の存在そのものが想定されていない。

一橋大学の井伊雅子は、この背景にある序列を端的に言い表している——「大学の専門科で最先端の医療科学研究に従事する医師が一流であり、地域でプライマリ・ケアに当たるのは二流の医師がすること」という認識が存在する、と37。

そして、なぜ大学の総合診療講座が総合診療の研究をしないのかについて、最も踏み込んだ診断を書いているのは藤沼康樹である。

米国が1960年代後半に家庭医療の専門医制度を構築する際に、大学での家庭医療部門を同時に設置したが、その際にリーダーとして採用した教授陣は地域の先鋭的な総合診療医だったことを思い出すべきである。既存アカデミーの価値観の中からは、あたらしいカテゴリーのリーダーは生まれないという視点からの施策である。

日本の総合診療の発展が当初期待されたほどには生じなかった主たる理由はここにあるのではないだろうか。既存の価値観を持つ教員のよこすべり人事ではイノベーションがおこるはずがないからである38

大学の総合診療講座の教授が内科出身者で占められているという構造的事実に、この診断は直接対応している。

もっとも、分野の内部にはこの見立てへの反論もある。学会誌の編集委員長を務めた竹村洋典は、2021年の巻頭言で「大学にいないから研究できないという人もいるかもしれない。そんなことは絶対にない」と書いた39。編集委員長がこの主題で巻頭言を書くこと自体、その通念の根強さを示してもいるのだが。竹村は2014年、京都でのWONCAアジア太平洋地域会議で、マレーシアのWONCA前会長から「日本で実施した研究によるエビデンスを学会で紹介できないのか」と問われた経験も記している40。

ただし——この因果関係には、有力な反証がある

ここまで、学術基盤の弱さを裏づける材料を積み上げてきた。しかし正直に書いておかなければならないことがある。「学術基盤が弱いから人が集まらない」という因果を、実証的に否定する材料が存在する。

総合診療医が増えない理由を、実際に当事者に聞いて調べた質的研究は、私が見つけた限り一つしかない。総合診療を志向する医学生10名への調査で抽出された阻害因子は、「周囲からの評判、不明確なキャリアイメージ、卒前教育の不足」だった41。研究基盤、学術体系、大学講座——これらは阻害因子として一つも挙がっていない。

筑波大学の前野哲博(現・日本プライマリ・ケア連合学会理事長)も、2018年度の専攻医が2.2%にとどまる原因を論じた文章で、講座にも学位にも学術誌にも研究産出にも触れていない。彼が挙げるのは「総合診療医の位置付けや活動の実際がわかりにくいこと」であり、根拠として住民調査で総合診療医の存在を知っている人が17.2%にとどまることを示している42。原因は認知度である、という診断だ。

さらに、本稿がここまで批判的な材料として引用してきた和足孝之自身、日本語での発信では楽観的な評価を示している——「日本の総合診療医による研究業績はこの6年で劇的に伸びています」「大学病院は歴史的により臓器特異的な実験基礎医学が多かったですが、近年総合診療領域の全体に占める割合が減り続け、逆に臨床研究分野や公衆衛生医学での貢献が大きくなってきています」43。英語論文での「学術的なジェネラリスト領域が確立されない限り、この状況は続く」という結論と、日本語での「劇的に伸びている」という評価は、必ずしも矛盾しないが、力点は明らかに違う。

それでも、強まっている部分

公平を期すために、逆方向の材料も挙げておく。

JPCAの会員数は12,532名(2026年7月末)で、医師以外の職種が約16%を占める2——他の基本領域の学会には見られない構成である。文科省の「総合的な診療能力を持つ医師養成の推進事業」は令和7年度当初予算4.5億円で、前年度の3.0億円から50%増となった。診療科選定地域枠でも総合診療は39大学・定員347人と、産婦人科・小児科に次ぐ規模で対象になっている44。

研究基盤についても動きがある。2025年4月、JPCAは全国規模のPBRN兼臨床データベース「PR3」を公式事業として開始した45。文科省は既に2013年、「リサーチマインドを持った総合診療医の養成」というテーマで15大学を選定している——事業名自体が課題を認めている形ではあるが、政策的な手当てが存在すること自体は事実である46。

産出の分布も、平均だけを見ると実態を見誤る。JPCAの全国調査では、3年間に欧文論文を31本以上出した大学が23.1%ある一方、0本の大学が16.9%ある16。弱いというより、二極化しているというのが正確だろう。

ただしPBRNについては、日本に6つ存在するネットワークの「すべてが過去15年以内に設立され、その多くが資金面の課題に直面している」と報告されている47。英米蘭が1970〜90年代に作ったものを、日本は2010年代以降に作り始めた——それが現在地である。

前の記事で私は「学問の確立こそ最優先課題ではないか」と書き、同時に「それを言い切るには実際の学術活動の分析が要る」と留保した。分析してみて、留保を付けておいてよかったと思う。批判の中身が、想定していたものとは違っていたからだ。

「基盤がない」のではなかった。会員1万2千人の学会があり、和文誌と英文誌があり、大学の8割近くに何らかの総合診療関連部門がある。形は揃っている。欠けていたのは中身の方で、しかもその欠け方には、はっきりした構造があった。

最も応えたのは、JPCAの全国調査で「長期的な全人的関係に基づくケア」を研究分野に挙げた大学が2校しかなかったことである。継続性、未分化な訴え、患者との長期的な関係——これらは総合診療がなぜ独立した専門領域なのかを説明する、まさに中核の概念である。それを研究している大学が、全国に2〜3校。一方で診断学と公衆衛生には半数近くが取り組んでいる。既に学術誌があり、研究手法が確立し、資金の受け皿がある領域に、人が流れている。

その流れを作っているものが何かも、はっきり見えた。科研費の審査区分表に、総合診療という枠が存在しない。臓器別専門はそれぞれ独立した小区分を持つのに、総合診療は「内科学一般」の中の一項目として、東洋医学や緩和医療と同じ箱に入っている。家庭医療とプライマリ・ケアに至っては、分類語彙として存在しない。岐阜大学の総合診療科が「科研費を獲得するためにも基礎研究の継続が重要」と書いていたのは、この構造への合理的な適応である。個々の講座を責めても仕方がない。資金の分類体系が、その分野の研究内容を規定している。

もう一つの空白は、より静かで、より重い。文科省の最新方針に「講座」という語が一度も出てこない。総合診療は人材養成の対象として繰り返し語られ、研究についても充実した記述がある。しかし両者が交わらない。大学の学術ポストを所管する省庁の側で、総合診療と研究が接続されていない。「地域」講座の78%が寄附講座であり、その資金の出所が自治体であることも、同じ構造の別の現れだろう。自治体は医師の労働力を買っており、学術ポストを買っているわけではない。

ここで、当初の私の直感に戻る。「学問の確立が最優先だ」という言い方は、半分正しくて半分間違っていたと思う。正しかったのは、この分野の説明可能性が学術基盤に懸かっているという点である。「やっぱり何をするんだろうね」という問いに答えるには、実践の熱意ではなく、他領域と同じ土俵で通用する知の体系が要る。菅家智史が紹介した「プライマリ・ケア領域での研究とはいったい何をするのですか?」という他領域教員の反応は、まさにその欠落を突いている。

間違っていたのは、それを総合診療医の努力の問題として構想していたことだ。研究の審査区分がなく、大学に恒常的なポストが用意されず、業務の46%が診療で埋まり、1講座あたりの研究人員が1.1人分しかない状態で、「自ら勝ち取れ」と言うのは酷である。前の記事で私は「自身の生きる意味は自身で勝ち取る必要がある」と書いたが、勝ち取るための土俵そのものが用意されていないのなら、まず必要なのは土俵を作れと要求することの方だろう。科研費に審査区分を作ること、寄附講座を正規講座に転換すること——これらは総合診療医個人の努力ではどうにもならず、制度側にしか動かせない。

同時に、国際比較は私に別の補正を与えた。英国ですら全医学部に講座が揃うまでに43年、専用の研究資金機構ができるまでに54年かかっている。米国家庭医療は今なおNIH資金の0.2%で、教員の8割が年1本未満しか論文を書かない。フランスも3%未満。「欧米は解決したのに日本は」という構図は成り立たない。この領域の学術基盤の脆弱さは、程度の差こそあれ国際的な現象である。

だとすれば日本に固有の問題は何か。おそらく開始時期と、順序である。英国・オランダ・カナダは、学会を作った翌年か同年に研究誌を創刊した。研究の場を作ることが分野を作ることだと考えられていた。日本の場合、統合学会の発足が2010年、専門医制度が2018年、全国PBRNが2025年。制度が先に立ち、学術基盤が後を追っている。米国もその順序を採り、第一級の研究誌を持つまでに34年かかった。

前の記事で見つけた「米国は1969年の成功の前に一度失敗している」という事実の意味も、今回の調査を経て少し変わって見える。1959年からの試みが充足率47%で潰えた原因は「専門性が明確でなく、学問基盤がなく」だった。日本は今、その学問基盤を、制度が走り出した後から作ろうとしている。それは不可能ではない——米国が1969年以降にやったことがまさにそれである。ただしそこでも、第一級の研究誌を持つまでに34年を要した。具体的な器を建てる作業が、理念の反復とは別に要るということである。

そして最後に、自分の議論に不利な材料について書いておかなければならない。

私は前の記事から一貫して、「学術基盤の弱さが人を遠ざけている」という因果を前提に考えてきた。しかし、実際に総合診療医を志す医学生に理由を聞いた唯一の質的研究では、研究基盤も学術体系も大学講座も、阻害因子として一つも挙がっていない。挙がったのは周囲の評判、キャリアイメージの不明確さ、卒前教育の不足である。前野哲博が原因として挙げるのも認知度の低さであって、学問的な弱さではない。

これをどう受け止めるべきか。考えを整理して辿り着いたのは、両者は競合する仮説ではなく、時間軸の異なる二つの層だという見方である。

近位の層は、来年・再来年の専攻医数により直接効くものだ※訂正。(当初これを「短期/長期」という時間軸で分けたが、大学教授というロールモデルや研究機会も来年の進路選択に影響しうる。時間の長短ではなく、進路選択からの因果的な距離の違いと考えたほうが自然である。)周囲の評判、キャリアイメージの不明確さ、卒前教育の不足、認知度の低さ——質的研究と前野哲博が挙げた要因は、すべてここに属する。そして重要なのは、この層を改善できる可能性を示す有望な事例があるということである※訂正(対照群のない記述的評価であり、「突破された」と書けるものではない)。

島根大学の事例をもう一度見たい。前の記事では「設計次第で選ばれうる」ことの証拠として扱ったが、その中身を読むと、まさに短期の層の障壁を狙い撃ちにしている。論文が背景に挙げるのは「農村部の医師不足は世界的に続いており、専門職としての孤立が主要な障壁である。従来型のインセンティブは長期定着に限定的な効果しか持たない」という認識であり、実装されたのは県全体を対象とする実践共同体「Neural GP Network」と、SlackとZoomによる「Virtual Office」だった。結果は論文の記述で年間採用率15.8%(全国平均2.6%)、残留率88.1%である^sakaguchi-shimane-rural-gp-2026b。

金銭的インセンティブではなく、孤立の解消。評判とキャリアイメージという、まさに質的研究が阻害因子として挙げたものに、直接手を打っている。短期の層は設計によって動かしうる——島根は、そう読める事例が少なくとも一つ存在することを示している。ただしこれは対照を置かない単一施設の記述的評価であり、「設計が効いた」という因果はここからは出てこない。何がどこまで言えるのかは、この事例だけを扱う別の記事で改めて検討したい。

長期の層は、10年後20年後にこの分野が独立した専門領域として存立しているかどうかを決めるものだ。科研費に審査区分があるか、大学に恒常的なポストがあるか、継続性や未分化な訴えについての知の蓄積があるか。これらは来年の専攻医数には影響しないが、放置すれば、この分野が何を専門とするのかを説明する言葉自体が痩せていく。福井次矢が1993年に書いたのは、おそらくこの層についてだった。

そして興味深いのは、島根のモデルがこの二つの層を分離していないことである。論文のタイトルは “A Decentralized, Academically Integrated Training Model”——「学術統合型」という語が題名に入っている。短期の採用問題を解決したプログラムが、自らを学術的に統合されたものとして記述している。

そして実際に、研究産出は評価項目の一つとして測定されている。論文によれば、センター設立(2021年)以降、SGMC所属医師による査読付き英語論文は58本。著者ら自身が「意図的に保守的な検索であり、総産出を過小評価している可能性が高い」と注記している48。短期の採用と長期の学術産出が、同じ一つのプログラムの中で並行して立ち上がっている——少なくとも、そう記述されている。

もっとも、これは単一施設の記述的評価であり、対照を置いた研究ではない。「学術的に強い講座だから採用にも成功した」という因果を、この一例から主張することはできない。言えるのは、両者が同居しうるということまでである。

結論として、前の記事で書いた「学問の確立が最優先」という言い方は、やはり不正確だった。優先順位の問題ではなく、担当する時間軸が違う。短期には、島根のような成功例を徹底的に分析し、何が効いたのかを再現可能な形に落とすこと。長期には、審査区分とポストという制度の土俵を要求し続けること。この二つは、片方が片方の代わりにはならない。そして少なくとも短期の層については、動きうることを示す事例が既にある——それが何によって動いたのかは、まだ確定していないけれども。

自分がこれから入る分野について調べた結論として、正直に書いておきたい。この分野の学術基盤は、私が漠然と想像していたより弱く、しかしその弱さの原因は、私が想像していたより個人の努力の外側にあった。そして最も応えたのは、1993年の設立趣意書に「優秀な医師に参入してもらうためにも質の高い研究が必要だ」と書かれていたことである。33年前に課題が正確に認識され、20年前に福原俊一が「スローガンに終始していた」と書き、それが今も引用に値する現状分析であり続けている。

一方で、2025年に全国PBRNが立ち上がり、大学によっては3年で31本以上の英語論文を出している。和足孝之は日本語では「この6年で劇的に伸びている」と書く。二極化しているということは、うまくいく条件が既にどこかに存在しているということでもある。

だとすれば、次に調べるべきことははっきりしている。島根で何が効いたのか。孤立の解消という設計思想は、他県でも再現できるのか。上位23.1%の大学群には、どんな共通点があるのか。そして——短期の成功が長期の基盤づくりに接続する経路は、実際に存在するのか。33年前の設立趣意書が正しかったのかどうかは、たぶんそこで決まる。


最後に、この記事の答えを書き直しておく※訂正。

公開時は「基盤はある。しかし制度が土俵を用意していない」という形で締めた。だが文部科学省が総合診療を対象とした事業予算を組んでいる以上、「制度が何もしていない」とは書けない。

日本の総合診療には、学会・学術誌・大学部門・博士課程・研究助成という部品が、すでに存在する。問題は、それらが総合診療固有の問いを中心に、一つの学術システムとして接続されていないことである。

科研費では独立した審査区分を持たず、大学部門の研究テーマも大きく分散している。一方で、制度の側もこの空白を認識し始めている。

だから問いは、もはや「基盤があるか」ではない。「散在する基盤を、総合診療固有の知識生産へどう接続するか」である。

総合診療に、学問の基盤はある。だが、一つの学問として機能するようには、まだ接続されていない。

訂正 CORRECTIONS

公開後に直したこと。本文は直したうえで、何をどう変えたかをここに残している。本文中の※ が、直した箇所を指す。

  1. 訂正プライマリ・ヘルスケアに分類された論文が0.7%であることから「研究されているのは総合診療ではない」と読んでいたのを訂正した。2026-09-01 · 07pctプライマリ・ヘルスケアに分類された論文が0.7%であることから「研究されているのは総合診療ではない」と読んでいたのを訂正した。これはWeb of Scienceの雑誌カテゴリーに分類された割合であり、原著自身がプライマリ・ケアを扱うWoS収載誌が少ないことの影響を限界として認めている。大学の総合診療部門の研究が総合診療固有の問いへ収斂していない、が正確である
  2. 訂正「この分野の学問的な核心を研究している大学が全国に2〜3校しかない」を訂正した。2026-09-01 · 2-3kou「この分野の学問的な核心を研究している大学が全国に2〜3校しかない」を訂正した。研究実績の悉皆調査ではなく、大学が自部門の研究分野として何を挙げたかの回答である
  3. 訂正カナダについて「1954年に学会設立、同年に学術誌創刊」としていたのを訂正した。2026-09-01 · canadaカナダについて「1954年に学会設立、同年に学術誌創刊」としていたのを訂正した。1954年に始まったのは会報であり、学会誌としての創刊は1960年、Canadian Family Physician になったのは1967年である
  4. 訂正平均人数7.3人に平均研究エフォート15.6%を掛けた「1講座あたり約1.1人分」を実測FTEのように扱っていたのを訂正した。2026-09-01 · fte平均人数7.3人に平均研究エフォート15.6%を掛けた「1講座あたり約1.1人分」を実測FTEのように扱っていたのを訂正した。勤務形態の違いも、大学ごとの人数と研究時間の相関も反映しておらず、規模感を示す粗い換算にすぎない
  5. 訂正総合診療を志望する医学生10人への質的研究を「学術基盤が弱いから人が集まらないという因果を疑う反証」として扱っていたのを訂正した。2026-09-01 · hanshou総合診療を志望する医学生10人への質的研究を「学術基盤が弱いから人が集まらないという因果を疑う反証」として扱っていたのを訂正した。n=10であり、総合診療を選択肢から外した学生を調べていない以上、反証にはならない。この仮説を支持する直接の進路選択エビデンスが見つからなかった、が正確である
  6. 訂正寄附講座の資金源が自治体中心であることから「自治体が学術的な名前を付けて確保している医師の労働力」と読んでいたのを訂正した。2026-09-01 · jichitai寄附講座の資金源が自治体中心であることから「自治体が学術的な名前を付けて確保している医師の労働力」と読んでいたのを訂正した。寄附講座であっても研究・教育・医師育成・地域医療・政策研究のいずれも目的にしうる。自治体資金への依存度が高く恒常財源によるポストとは異なる資金構造を持つ、までである
  7. 訂正科研費について「プライマリ・ケアを研究資金のカテゴリーから除外している」という表現をそのまま採っていたのを訂正した。2026-09-01 · jokyo科研費について「プライマリ・ケアを研究資金のカテゴリーから除外している」という表現をそのまま採っていたのを訂正した。科研費にプライマリ・ケア研究が採択されている例はあり、問題は応募できないことではなく独立した審査区分を持たず他領域の評価軸の中で申請しなければならないことである。「分類体系が研究内容を規定している」という因果も弱めた
  8. 訂正「82大学中64大学が回答した(回答率81.0%)」と書いていたが、64/82は78.0%であり計算が合わない。2026-09-01 · kaitouritsu「82大学中64大学が回答した(回答率81.0%)」と書いていたが、64/82は78.0%であり計算が合わない。原資料は『総合診療関連部門なし』と回答した3大学を分母から除いた79大学を用いており、64/79=81.0%である
  9. 訂正結論を書き直した。2026-09-01 · ketsuron結論を書き直した。文部科学省が総合診療を対象とした事業予算を組んでいる以上、「制度が土俵を用意していない」とは書けない
  10. 訂正「文部科学省の最新方針に『講座』の二文字が一度も現れない」ことから、文科省の側で総合診療と大学の学術ポストが接続されていないと読んでいたのを訂正した。2026-09-01 · mext「文部科学省の最新方針に『講座』の二文字が一度も現れない」ことから、文科省の側で総合診療と大学の学術ポストが接続されていないと読んでいたのを訂正した。同じ検討会の第13回(令和7年4月23日)に、文部科学省は総合的な診療能力を持つ医師養成の推進事業(令和7年度当初予算4.5億円、交付対象12大学)を報告している。総合診療を対象とした事業予算は現に組まれている。なお本稿はこの事業が医局・講座の設置を明示的に支援しているかを確かめようとしたが、該当するスキーム図が画像で本文として抽出できず、確認できていない
  11. 訂正島根大学の事例について「この層は既に突破されている例がある」と書いていたのを弱めた。2026-09-01 · shimane島根大学の事例について「この層は既に突破されている例がある」と書いていたのを弱めた。対照群のない記述的評価である
  12. 訂正要因を「短期の層」「長期の層」という時間軸で分けていたのを、進路選択からの因果的な距離の違いとして整理し直した。2026-09-01 · sou要因を「短期の層」「長期の層」という時間軸で分けていたのを、進路選択からの因果的な距離の違いとして整理し直した。大学教授というロールモデルや研究機会も来年の進路選択に影響しうる
  13. 訂正米国について「専門科としての承認(1969年)から第一級の研究誌(2003年)までに34年を要した」と書いていたのを訂正した。2026-09-01 · us34米国について「専門科としての承認(1969年)から第一級の研究誌(2003年)までに34年を要した」と書いていたのを訂正した。Journal of Family Practice は1974年創刊で、family medicine research のための学術誌として企画されている。専門科承認から5年後には研究を明示的使命とする学術誌が創刊されていた
  14. 訂正見出し「しかし、その学術誌は読まれていない」を「学術誌はある。2026-09-01 · yomarete見出し「しかし、その学術誌は読まれていない」を「学術誌はある。しかし国際的な可視性は限定的である」に改めた。JGFMは2017年以降PMC経由でPubMedに収載されており、MEDLINE非収載イコール読まれていないではない。またh指数8から『10回以上引用された論文が6本しかない』を導くことはできない
  15. 訂正2022年のJPCA全国調査を「この分野についての唯一の全国データ」としていたのを訂正した。2026-09-01 · yuiitsu2022年のJPCA全国調査を「この分野についての唯一の全国データ」としていたのを訂正した。本稿自身がこの後に2018年の82大学調査と2020年の71大学調査を引いている

出典 SOURCES

  1. 1I. 総合診療の必要性:歴史的・社会的背景日本内科学会雑誌 92(12):2319-2325(小泉俊三、佐賀大学総合診療部) · 2003 · accessed 2026-08-17裏付けた主張: 表2として福井次矢「総合診療研究会の設立趣意書(平成5年2月)」を抜粋掲載しており、そこには「大学病院や臨床研修指定病院では、評価に耐えられるような研究分野や方法論を総合診療においても確立する必要がある(医師を評価する一手段として研究論文が用いられているという現実を無視できない)」「優秀な医師に総合診療の分野に参入してもらえるよう、学生と若い医師に総合診療の魅力をアピールするためにも質の高い研究が必要とされる」と記されている。すなわち「研究の弱さが人材確保を妨げる」という因果は1993年の時点で分野の設立趣意書に明記されていた。小泉自身も「移入された学問の権威に基づく日本型アカデミズムとしての医局講座制が形成されていった」「総合診療への期待も、また、総合診療の抱える困難もこの辺りにその根本的な原因がある」と述べている(なお当該頁はスキャンされたOCR層であり、引用にあたっては原本画像との照合が望ましい)
  2. 2学会概要一般社団法人日本プライマリ・ケア連合学会 · 2026 · accessed 2026-08-17裏付けた主張: 2010年4月1日に、旧日本プライマリ・ケア学会(1978年設立)・旧日本家庭医療学会(1986年に家庭医療学研究会として発足)・旧日本総合診療医学会(1993年に研究会として設立)の3学会が統合して発足したと記載している。会員数は12,532名(2026年7月末日時点)で、内訳は医師10,522・歯科医師35・薬剤師772・コメディカル1,121・学生67である
  3. 3日本専門医制度概報 令和7年(2025年)度版一般社団法人日本専門医機構 · 2026 · accessed 2026-08-17裏付けた主張: 理事長・渡辺毅が「総合診療専門医は…当機構設立時に19番目の基本領域として設置され、単一の担当領域学会がないことから当機構が運営しています」と明記している。総合診療専門医の頁は基幹学会名を「一般社団法人日本専門医機構」、関連学会の名称を空欄、学会員数を「学会がないため、会員数は0人」、広報体制関係・学術誌を「なし」と記載する。他の18基本領域はいずれも固有の学会名と日本医学会加盟の表示を持つが、総合診療の行のみ加盟表示がない。総合診療専門医数は937名(令和7年11月現在)
  4. 4NLM Catalog: Journal of General and Family Medicine (NLM ID 101689875)U.S. National Library of Medicine · 2026 · accessed 2026-08-17裏付けた主張: 日本プライマリ・ケア連合学会の英文誌 Journal of General and Family Medicine について「Not currently indexed for MEDLINE」と記載し、収載範囲を「In PubMed v18n1, 2017-, PMC」と示している。すなわちPubMedで検索できるのはWileyがPMCに全文を寄託しているためであり、MEDLINEの索引対象ではない。なお同誌は2015年9月に『General Medicine』(2000-2015、旧日本総合診療医学会発行)から改称されたものである
  5. 5Crossref REST API: Journal of General and Family Medicine 年別収載件数(ISSN 2189-7948)Crossref(本サイトによる集計、2026年8月17日実行) · 2026 · accessed 2026-08-17裏付けた主張: 発行年で絞り込んだ収載件数は、2017年149件、2018年86件、2019年66件、2020年127件、2021年109件、2022年90件、2023年80件、2024年100件、2025年112件であり、9年間を通じて増加傾向は認められない
  6. 6OpenAlex Sources: Journal of General and Family Medicine (ISSN 2189-7948)OpenAlex · 2026 · accessed 2026-08-17裏付けた主張: 収載論文1,138本、2年間の平均被引用数(2-year mean citedness)1.045、h指数28。比較として British Journal of General Practice は1.398(h=125)、Annals of Family Medicine は1.506(h=162)、Family Practice は1.602(h=150)である。なお日本プライマリ・ケア連合学会誌(和文)は945本、h指数8、2年間の平均被引用数0.057である
  7. 7Internationalisation of general practice journals: a bibliometric analysis of the Science Citation Index databaseAustralian Journal of Primary Health, 28(1):76-81(Ma H, et al.) · 2022 · accessed 2026-08-17裏付けた主張: SCIの「primary health care」カテゴリーに収載されている学術誌は19誌のみであり、その産出の86.4%が米国・英国・オーストラリア・カナダの雑誌に由来すると報告している。19誌の中に日本の学術誌は含まれていない
  8. 8大学総合診療関連部門に関する全国調査 報告書(前編)日本プライマリ・ケア連合学会 大学ネットワーク委員会(委員長:前田隆浩。調査基準日 2022年4月1日) · 2022 · accessed 2026-08-17裏付けた主張: 全国82大学中64大学が回答(回答率81.0%、国公立85.7%・私立73.3%)。設置形態は「医学部に設置された講座」37.5%、「大学附属病院の診療部門」29.7%、両者の兼務31.3%であり、国公立では医学部講座としての設置は28.6%にとどまる。専任部門56大学のうち15大学(26.8%)に寄附講座が関わり、5大学(8.9%)は寄附講座で運営されていた。寄附講座の資金源(複数回答)は市8・都道府県6・町3・企業等2である。スタッフは本務平均7.3人(教授1.2・准教授0.8・講師1.0・助教2.7)。業務配分は診療46.2%・教育34.2%・研究15.6%・その他4.0%。日本専門医機構の総合診療専門研修プログラム修了者は2021年度末時点で全国21大学に実数48名であり、32大学が0人であった
  9. 9第18回全国大学病院総合診療部連絡協議会アンケート結果——大学病院総合診療部の現状と新専門医制度動向日本病院総合診療医学会雑誌 15(4):403-408(池田貴英・森田浩之、岐阜大学) · 2019 · accessed 2026-08-17裏付けた主張: 2018年6月に全国82の大学病院総合診療部を対象に実施した調査(回答54件、回答率65.8%)。「大学での講座がある施設は76%」、医局員の基本領域専門医の内訳は内科64%・家庭医療19%・救急8%、「教育関連診療所がない施設が72%」、常勤医師5人未満が36%、総合診療専門研修Ⅱの入院患者要件を満たすのは30%、総合診療専門研修の基幹施設は80%だが56%は自施設の専攻医を持たなかったと報告している
  10. 10General Medicine Departments of Japanese Universities Contribute to Medical Education in Clinical Settings: A Descriptive Questionnaire StudyInternational Journal of General Medicine, 15:5785-5793(Tago M, Shikino K, Hirata R, ... 和足孝之) · 2022 · accessed 2026-08-17裏付けた主張: 全国82大学のうち総合診療部門を持つ71大学に調査し46大学が回答(64.8%)、43大学を分析した。業務全体に占める教育の割合の中央値は30であり、著者らはこれを先行報告の15%と比較して「各部門が教育活動に相当の貢献をしていることを示す」と肯定的に評価している。一方、常勤スタッフ数の中央値は7名(IQR 4-16)、3年間の入院患者数の中央値は76名(IQR 0-643)であり、教育専従者(業務の70%超を教育に充てる者)がいるのは43大学中8大学(19%)にとどまる。必修の総合診療実習期間の中央値は2週間であった。著者らは日本の大学における総合診療教育が「未成熟であり、医学生に総合診療に触れる機会をほとんど与えず、関連する方針も不十分であると考えられてきた」と述べている
  11. 11Difference in the general medicine in-training examination score between community-based hospitals and university hospitals: a cross-sectional study based on 15,188 Japanese resident physiciansBMC Medical Education, 21(1):214(Nishizaki Y, Nozawa K, Shinozaki T, ... Tokuda Y) · 2021 · accessed 2026-08-17裏付けた主張: 2016〜2018年に総合診療専門研修到達度評価試験(GM-ITE)を初回受験した15,188名の研修医を対象とした横断研究。大学病院の研修医は市中病院の研修医より総得点が有意に低く(PGY-1で2.52点、PGY-2で1.89点)、とりわけ「身体診察と臨床手技」の差(PGY-1で1.28点)が総得点差の約半分を占めた一方、「医療面接とプロフェッショナリズム」には有意差がなかった。所属病院に総合診療科があるにもかかわらず、PGY-1の大学病院研修医の73.4%が総合診療をローテートしていなかった(市中病院は43.6%)。ただしGM-ITEは任意受験であり、大学病院の研修医は全体の中で少数(PGY-1で752名対6,359名)であること、また同一病院内の研修医間のばらつき(SD 5.5-6点)の方が大学病院と市中病院の差より大きいことに留意が必要である
  12. 12Leadership and Research Productivity in Japan's Academic Departments of Regional Healthcare: A Nationwide Cross-Sectional StudyJournal of General and Family Medicine, 27(3):e70120(Yasuhara H, Inaba S, Aoki S, Kawaguchi T, Ikai T, 和足孝之) · 2026 · accessed 2026-08-17裏付けた主張: 全国82医学部の「地域」を冠する168講座・145名の講座責任者を対象とした悉皆調査(2024年11月1日時点)。168講座のうち131講座(78.0%)が寄附講座であり、正規講座は36講座(21.4%)にとどまる。また73講座(43.5%)は講座名に臓器・疾患・専門科を含み(例:地域整形外科学)、特定の地域名を含むものは19講座(11.3%)であった。責任者の専門領域は内科64名(44.1%)に対し総合診療は15名(10.3%)、94.5%が男性、免許取得後平均32.8年であった。2年間(2022年11月-2024年10月)に英語原著論文がPubMedに索引されなかった責任者は53名(36.6%)であった。ただし専門領域は著者らが大学ウェブサイト等から分類したものであり認定資格の確認ではなく、また論文数は英語原著・筆頭/第2/最終著者に限った集計であるため著者ら自身が「実際の学術的産出を過小評価している可能性が高い」と注記している。オーストラリアの農村保健講座では出版物の56%が農村保健に関するものであったのに対し、日本の「地域」講座の研究分野は大きく異なると指摘している
  13. 13Diversity of academic general medicine: A cross-sectional bibliometric study of original English-language research articles in general medicine and cardiology in JapanMedicine (Baltimore), 101(11):e29072(Takahashi N, Matsuhisa T, Takahashi K, Ban N) · 2022 · accessed 2026-08-17裏付けた主張: 全国82大学のうち78大学に128の総合診療関連講座が該当し(循環器内科は81大学に96講座)、1大学あたり複数の異なる名称の総合診療関連部門が存在する。研究者一人あたりの論文数(2010〜2019年)の中央値は、総合診療12.5本(IQR 3.0-30.5)に対し循環器内科81.5本(IQR 42.5-132.0)であり、有意差があった(P<0.001)。「全publicationのうちプライマリ・ヘルスケアに分類されたものはわずか0.7%であった。これは大学附属の総合診療講座にとって中核的な研究領域であるはずである」と述べ、日本の総合診療の論文産出が他国に遅れており「学問領域としての総合診療の成熟を遅らせている」と結論づけている。また日本の家庭医療専門医は2017年時点で673名にとどまり、内分泌専門医2,180名を下回ることから、臓器別専門で訓練された研究者が総合診療講座に所属している可能性を指摘している
  14. 16大学総合診療関連部門に関する全国調査 報告書(後編)日本プライマリ・ケア連合学会 大学ネットワーク委員会(あとがき:前田隆浩) · 2023 · accessed 2026-08-17裏付けた主張: 2019〜2021年度の3年間で、欧文論文は平均21.5本だが11大学(16.9%)が0本、和文論文は平均8.6本だが13大学(20.0%)が0本、外部資金(研究代表)は18大学(27.7%)が0件であった。博士課程は46/63大学(73.0%)が開講しているが、そのうち大学院生が在籍するのは32大学(69.6%)にとどまり、学位取得者が3年間で0名の大学が17/45(37.8%)であった。研究分野(N=60、複数回答)は診断学・ヘルスアセスメント30(50.0%)、公衆衛生28(46.7%)が上位である一方、家庭医療の中核概念にあたる「長期的な全人的関係に基づくケア」は2大学(3.3%)、「未分化な健康問題・不確実性」は3大学(5.0%)、「家族志向のケア」は8大学(13.3%)にとどまる。委員長のあとがきは「限定的なスタッフや環境で頑張っておられる大学も少なくないように思われました」「大学内でのプレゼンス向上のためにも」と記している
  15. 17科学研究費助成事業「審査区分表」(令和5年度助成に係る審査より適用)独立行政法人日本学術振興会 · 2022 · accessed 2026-08-17裏付けた主張: 審査区分表の全文を検索した結果、「家庭医療」「プライマリ」はいずれも出現せず、「総合診療」は小区分52010〔内科学一般関連〕の「内容の例」の中に2回現れるのみである。同区分には心身医学・臨床検査医学・老年医学・心療内科・東洋医学・緩和医療が併記されている。一方、神経内科学関連(52020)・精神神経科学関連(52030)・消化器内科学関連(53010)・循環器内科学関連(53020)・呼吸器内科学関連(53030)・腎臓内科学関連(53040)など、臓器別の専門領域はそれぞれ独立した小区分を与えられている
  16. 18Overcoming barriers to primary care research in Japan: a call to actionThe Lancet Regional Health – Western Pacific, 56:101523(Rouyard T, Yoda E, Nakamura R, Moriyama M, Ii M, Stanyon M, Endo M, Nakamura K, Kanke S, Kassai R) · 2025 · accessed 2026-08-17裏付けた主張: 過去10年間に国際的な査読誌に公表された日本のプライマリ・ケア領域のランダム化比較試験は4件のみであったと報告している。人口1,000万人あたりのプライマリ・ケア研究の産出数を、オーストラリア23.2、英国20.5、カナダ13.2、ドイツ4.0に対し日本0.3と示している(ただし著者らはデータベースや検索式を明示しておらず、手作業による同定と見られる)。障壁として、正式な研究訓練を受けた総合診療医が少なすぎること、日本学術振興会などの主要な資金配分機関がプライマリ・ケアを研究資金のカテゴリーから除外していること、患者登録制度が存在しないことを挙げる。また「日本の医療は長らく臓器別専門医に支配されており、一次医療と二次医療の区別が曖昧であった。この境界の不明確さが、独立した学問領域としてのプライマリ・ケアの発展を妨げてきた」と述べている。調査時点で全国900名のJPCA認定家庭医のうち、診療所を主たる勤務先として登録していたのは167名であった
  17. 19今後の医学教育の在り方に関する検討会 第三次取りまとめ(案)(第15回 資料3)文部科学省(令和7年6月24日。第三次取りまとめは令和7年7月14日公表) · 2025 · accessed 2026-08-17裏付けた主張: 全文を検索した結果、「講座」および「寄附講座」はいずれも一度も出現しない。総合診療は「総合的な診療能力を有する医師等を育成することが求められている」「大学医学部・大学病院が…総合診療医等の総合的な臨床能力を有する医療人材の育成を促進すべきである」という人材養成の文脈でのみ言及される。同文書には研究に関する充実した記述(研究者が研究に専念できる環境、Ph.D.を含む異分野との融合研究、国際共著論文、研究者の流動性など)があるが、それらが総合診療と結びつけられることはない
  18. 20プライマリ・ケア主要国際学術誌における日本の論文数シェア日本プライマリ・ケア連合学会誌 40(3):126-130(青木拓也・福原俊一、京都大学大学院医療疫学分野) · 2017 · accessed 2026-08-17裏付けた主張: 2011年1月から2016年6月までのプライマリ・ケア主要国際学術誌5誌に掲載された全2,602編のうち、日本発の論文は4編、シェアは0.15%であったと報告している。「今後日本からプライマリ・ケア研究を国際発信するためには、インフラストラクチャーの整備や研究者の育成及び連携を推進していく必要がある」と結論づけている
  19. 21Full-text publication rate of abstracts presented at the Japan Primary Care Association Annual Meetings (2010–2012): a retrospective observational studyBMJ Open, 8(6):e021585(Komagamine J, Yabuki T) · 2018 · accessed 2026-08-17裏付けた主張: 日本プライマリ・ケア連合学会学術大会(2010〜2012年)で発表された全1,003抄録のうち、2017年9月までにMEDLINE収載の査読誌に全文が公表されたのは38件(3.8%、95%CI 2.6-5.0%)であった。口演7.3%対ポスター2.0%、大学関連施設所属の筆頭著者6.4%対非大学2.4%と差があり、最も条件の良い部分集団(口演かつ大学所属、151件)でも11.9%にとどまった。1,003抄録のうちランダム化比較試験の報告は2件(0.2%)であった。考察は「他国のプライマリ・ケア学術大会の抄録公表率が40%を超えることを踏まえると、JPCAMの公表率は極めて低い」「我々の知る限り、本研究で観察された抄録公表率は、診療科を問わず過去数十年に行われたすべての研究の中で最も低いものであった」と述べ、日本整形外科学会の公表率が国際水準と同等であることから「この低い公表率は国や診療科によらずJPCAM固有のものと考えられる」としている
  20. 22研究助成制度一般社団法人日本プライマリ・ケア連合学会 · 2026 · accessed 2026-08-17裏付けた主張: 「この研究助成制度では、まだ不足していると考えられる、わが国からのプライマリ・ケア分野の研究成果の発信を国際的に行えるように、英語論文化をゴールに設定しています」と、学会自身が自国のプライマリ・ケア研究の産出不足を公式に認めている
  21. 23Research evidence is essential for the development of family medicine as a discipline in the Japanese healthcare systemBJGP Open, 3(2)(Kaneko M, Oishi A, Matsui Y, Miyachi J, Aoki T, Mathews M) · 2019 · accessed 2026-08-17裏付けた主張: 「日本から産出されるプライマリ・ケア領域の臨床研究は現状きわめて限定的である」と述べ、中国では医科大学が家庭医療講座を設置し、政府が研究能力構築に財政支援を行っていることと対比している
  22. 24College history timelineRoyal College of General Practitioners · 2026 · accessed 2026-08-17裏付けた主張: 英国一般医協会(College of General Practitioners)が1952年11月19日に設立され、1967年に「Royal」の称号を得たこと、2024年時点で会員数が54,000名を超えることを記載している
  23. 25PMC Journal Archive: British Journal of General Practice (title history)PubMed Central · 2026 · accessed 2026-08-17裏付けた主張: 英国一般医協会の学術誌の系譜を、Research Newsletter(1953-1957)→ Journal of the College of General Practitioners and Research Newsletter(1958-59)→ Journal of the College of General Practitioners(1960-67)→ Journal of the Royal College of General Practitioners(1967-89)→ British Journal of General Practice(1990-)と記録している。すなわち学会設立(1952年)の翌年には研究誌の前身が創刊されている
  24. 26Geschiedenis van het NHGNederlands Huisartsen Genootschap · 2026 · accessed 2026-08-17裏付けた主張: オランダ家庭医学会(NHG)が1956年12月29日にユトレヒトで設立され、その動機が家庭医の低い地位と家庭医療の学術水準向上への希求であったこと、翌1957年に学術誌『Huisarts en Wetenschap』が創刊されたこと、1959年のWoudschoten会議で家庭医の職務が定義されたこと、1989年に最初のNHG標準診療指針(2型糖尿病)が公表されたことを記載している
  25. 27Blue plaque honours GP's legacyThe University of Edinburgh · 2023 · accessed 2026-08-17裏付けた主張: Richard Scott が1963年に James Mackenzie Chair of Medicine in Relation to General Practice に就任し、これが「その種のものとして世界初の職位」であったと記載している。また1948年に英国初の一般医療の学術ポストがエディンバラに置かれたことも示している
  26. 28The transition of general practice into an academic discipline: tracing the origins through the first four professors in general practice/family medicineScandinavian Journal of Primary Health Care, 42(3):483-492(Straand J, de Wit N) · 2024 · accessed 2026-08-17裏付けた主張: Richard Scott を一般医療における「世界初の教授」と位置づけ、オランダの Jan van Es が1966年にユトレヒトで世界2番目の家庭医療の講座に就任したこと、カナダの Ian McWhinney が1968年にウェスタン・オンタリオ大学で世界3番目となったことを記録している
  27. 29Academic general practice: reflections on a 60-year journeyBritish Journal of General Practice, 60(577):620-623(Howie JGR) · 2010 · accessed 2026-08-17裏付けた主張: 英国の学術的一般医療の60年を回顧し、エディンバラの部門が1956年に独立したこと、1970-72年にスコットランドで3つの講座が設置され、1972年にマンチェスターでイングランド初の講座が設置されたこと、そして英国のすべての医学部に一般医療の講座・部門が置かれるまでに1995年までかかり、2000年時点で27部門であったことを記録している
  28. 30Family medicine research: seizing the moment to advance the fieldBMC Health Services Research, 24:1627(Wright B, O'Connor A, Fraher EP, Marino M, Frogner BK) · 2024 · accessed 2026-08-17裏付けた主張: 米国の家庭医療が「過去20年にわたりNIH研究資金のわずか0.2%」しか得ておらず、他の専門科は家庭医療の「4.5倍以上」の資金を平均して得ていると述べる。また「家庭医療の教員の80%が年1本未満の論文しか産出していない」こと、「研究能力を維持するのに十分な資金があると回答した家庭医療講座は19%にすぎない」ことを報告する。さらに「フランスにおいても医学研究プロジェクトのうちプライマリ・ケアに焦点を当てたものが3%未満であることは、これが特定の国に固有の問題ではなく、領域に固有の問題であることを明確に示している」と述べている
  29. 31Unfinished Business: The Role of Research in Family MedicineAnnals of Family Medicine, 17(1):70-76(Gotler RS) · 2019 · accessed 2026-08-17裏付けた主張: 米国家庭医療の研究基盤について、1969年の創設当時「研究は優先度の低い課題であった」こと、研究が「多くの家庭医から無関係とみなされる禁句であった」ことを記す。1980年、NIHの予算30億ドル超に対し家庭医療講座の研究代表者による研究への交付は2件・計133,000ドルであった。1979-80年、家庭医療プログラムの4分の3以上において、研究に業務時間の10%超を充てていた家庭医は185名(1.3%)であった。1980年2月にSTFM研究委員長が「家庭医療はいまだ知的な正統性を確立できていない」と書いたことも引用している。現在についても「研究は依然としてこの専門領域にとって特有の課題であり、家庭医は他の専門科と比べてNIHとの関わりが極めて小さい」と述べている
  30. 32座談会 日本のプライマリ・ケアはどこへ行く?週刊医学界新聞 第2620号(2005年2月7日。発言者:福原俊一・福井次矢・伴信太郎ほか) · 2005 · accessed 2026-08-17裏付けた主張: 福原俊一が「この10年、プライマリ・ケアが対象とすべき研究テーマはたくさんあるにもかかわらず、私が見る限りは、医学教育と、医師-患者関係のような研究しか見られなかったように思います」と述べ、福井次矢が「目に見えて増えないと、プライマリ・ケアの基盤が弱いという印象を拭えない」「根本的な課題ということでは、教育者が足りない……現在、総合診療部、総合診療科で教える立場におられる先生方は、医師として最も重要な形成期を他部門で過ごした先生方です……残念ながら日本では、ロールモデルの増殖速度が非常に遅いと感じています」と述べている
  31. 33日本のプライマリ・ケアと総合診療の適時が来た日本プライマリ・ケア連合学会誌 35(2):127-128(福原俊一) · 2012 · accessed 2026-08-17裏付けた主張: 「実は、日本では、大学の偉い先生も、専門医も、臨床研究の系統的な教育を受けてきませんでした。その意味でプライマリ・ケア/総合診療医も専門医も同じスタートラインに立っているのです」「残念ながらスローガンに終始していました。この状況はおそらくつい最近まで続いていたのではないでしょうか? 長期の『いばらの期間』でした」と述べている
  32. 34臨床研究とシステム日本プライマリ・ケア連合学会誌 34(4):307(松島雅人、東京慈恵会医科大学 臨床疫学) · 2011 · accessed 2026-08-17裏付けた主張: 「それを支える学問としての医学的基盤の確立が必要であることも認識しています」「研究には『人、物、金』が必要と言われていますが、もう一つ付け加えるとすると、システムだろうと思います……しかし育成システムはまだまだ量的に限りがあると言わねばなりません」と述べ、PBRNについて「このような取り組みは北米や欧州ではすでに多く存在しており……わが国でも形成されることが期待されます」と記している
  33. 35内科学総合診療科 主任教授メッセージ兵庫医科大学 内科学総合診療科(新村健) · 2025 · accessed 2026-08-17裏付けた主張: 「総合診療には、まだ歴史も他の専門診療科のような確立した学問体系もありません」「全国的にみて総合診療科がどのような研究に取り組んでいくか、といった課題に対してはまだ明確な答えは出ていません……全国を見渡しても研究力の高い総合診療科は稀です」と、大学の総合診療科主任教授自身が記している
  34. 36プライマリ・ケアの研究は必要か?日本プライマリ・ケア連合学会誌 42(1):1(菅家智史、福島県立医科大学 地域・家庭医療学講座) · 2019 · accessed 2026-08-17裏付けた主張: 「先日若い医師から『プライマリ・ケアに研究は必要なのですか?』という質問を受けた。プライマリ・ケアは実践の場であり、研究というイメージがないとのことだった。また大学での会合で、他領域の教員にプライマリ・ケア領域で研究に取り組んでいると話したところ、『プライマリ・ケア領域での研究とはいったい何をするのですか?』と驚いた様子で質問された」と、分野の内外双方から研究の存在自体が想定されていない状況を記している
  35. 37「プライマリ・ケア」を中心に日本の医療制度改革にアプローチHQ Vol.35(一橋大学、井伊雅子) · 2012 · accessed 2026-08-17裏付けた主張: 日本の医学界における地位の序列について「大学の専門科で最先端の医療科学研究に従事する医師が一流であり、地域でプライマリ・ケアに当たるのは二流の医師がすること」という認識が存在すると指摘している
  36. 38日本の総合診療が学ぶべきもの藤沼康樹事務所(仮)(藤沼康樹、家庭医療学開発センター) · 2018 · accessed 2026-08-17裏付けた主張: 「米国が1960年代後半に家庭医療の専門医制度を構築する際に、大学での家庭医療部門を同時に設置したが、その際にリーダーとして採用した教授陣は地域の先鋭的な総合診療医だったことを思い出すべきである。既存アカデミーの価値観の中からは、あたらしいカテゴリーのリーダーは生まれないという視点からの施策である」「日本の総合診療の発展が当初期待されたほどには生じなかった主たる理由はここにあるのではないだろうか。既存の価値観を持つ教員のよこすべり人事ではイノベーションがおこるはずがないからである」と論じ、真の総合診療のリーダーをテニュアとして大学が採用し、大学病院の経営への貢献でエフォートを評価しないことを提言している
  37. 39経験的に研究は間違いなく誰にでも平等である日本プライマリ・ケア連合学会誌 44(4):135(竹村洋典、和文誌編集委員長) · 2021 · accessed 2026-08-17裏付けた主張: 「大学にいないから研究できないという人もいるかもしれない。そんなことは絶対にない」と述べ、大学に所属していなければ研究ができないという分野内の通念を明示的に否定している。学会誌編集委員長がこの主題で巻頭言を書くこと自体、その通念の根強さを示している
  38. 40学会和文誌の新編集長から日本プライマリ・ケア連合学会誌 37(3):209(竹村洋典、三重大学) · 2014 · accessed 2026-08-17裏付けた主張: 京都で開催されたWONCAアジア太平洋地域会議で、マレーシアのWONCA前会長ラジャクマール氏から「日本で実施した研究によるエビデンスを学会で紹介できないのか」と問われた経験を記し、「日本がアジア大洋州のプライマリ・ケア研究の牽引役になるポテンシャルは十分にあると思います。しかしまだまだ、この分野での研究が日本で十分に行われているとは言えません」「他学会が努力して、日本発の多くのエビデンスを提供しています……当学会がプライマリ・ケアの分野の研究に力を抜いていいわけがありません」と述べている
  39. 41総合診療医をどう増やすのか?——総合診療医を志向する医学生のキャリア選択要因に関する質的研究日本病院総合診療医学会雑誌 18(4):225-233(田端佑規ほか) · 2022 · accessed 2026-08-17裏付けた主張: 総合診療を志向する医学生10名への質的研究で、阻害因子として「周囲からの評判、不明確なキャリアイメージ、卒前教育の不足」が抽出された。研究基盤・学術体系・大学講座といった要因は阻害因子として挙げられていない
  40. 42序文(特集『地域包括ケアシステムの構築——総合診療専門医に期待される役割』)医療と社会 29(1):3-8(前野哲博、筑波大学) · 2019 · accessed 2026-08-17裏付けた主張: 2018年度に総合診療領域を選択した専攻医が184名・全体の2.2%にとどまることを示した上で、その原因として「臓器別専門医と異なり、総合診療医の位置付けや活動の実際がわかりにくいこと、その存在が地域医療に与えるインパクトや将来性などが十分に知られていないこと」を挙げている。住民を対象としたインターネット調査で総合診療医の存在を知っていると回答したのは17.2%にとどまるとも報告している。本稿では講座・学位・学術誌・研究産出への言及はなく、原因を認知度の低さに帰している
  41. 43総合診療医の研究業績に関する解説(『総合診療』2022年12月号掲載内容の紹介)島根大学医学部附属病院 総合診療医センター(和足孝之) · 2023 · accessed 2026-08-17裏付けた主張: 「日本の総合診療医による研究業績はこの6年で劇的に伸びています」「大学病院は歴史的により臓器特異的な実験基礎医学が多かったですが、近年総合診療領域の全体に占める割合が減り続け、逆に臨床研究分野や公衆衛生医学での貢献が大きくなってきています」「大学と市中病院との所属を超えた強い連携があれば総合診療医の研究は爆発的に伸びる可能性がある」と述べ、日本語での発信では肯定的な評価を示している
  42. 44総合的な診療能力を有する医師等の地域に必要な人材養成に関する文部科学省の取組と今後の方向性(今後の医学教育の在り方に関する検討会 第13回 資料1)文部科学省医学教育課(令和7年4月23日) · 2025 · accessed 2026-08-17裏付けた主張: 「総合診療科」を有する大学病院は国立23/42・公立6/8・私立16/31の計45/81であり、「総合診療領域」専門研修プログラムを有する大学病院は67/81であると示している(出典:国立大学病院長会議資料及び日本専門医機構HP)。また診療科選定地域枠(令和6年度)について、総合診療を対象とする大学は39大学・定員347人で、産婦人科・小児科に次ぐ規模であることを示している。あわせて「総合的な診療能力を持つ医師養成の推進事業」の令和7年度当初予算が4.5億円(前年度3.0億円から50%増)であることを記載している
  43. 45PR3(PRimary care Real-world Registry)事業の開始について日本プライマリ・ケア連合学会(2025年4月11日) · 2025 · accessed 2026-08-17裏付けた主張: 学会公式事業として全国規模のPBRN兼プライマリ・ケア臨床データベース「PR3」を開始したことを告知している。最初の研究テーマは多疾患併存を有する心不全で、200床未満の診療所・病院を対象としている
  44. 46未来医療研究人材養成拠点形成事業 選定拠点文部科学省(平成25年度) · 2013 · accessed 2026-08-17裏付けた主張: テーマB「リサーチマインドを持った総合診療医の養成」について、59件の申請から15大学が選定されたことを記載している。事業名自体が、総合診療医における研究志向の不足を前提としている
  45. 47Practice-Based Research Network Activities and Future Nationwide Plans in JapanJournal of General and Family Medicine, 27(1):e70091(Yamanashi H, Dania A, Kaneko M, ... Maeda T) · 2026 · accessed 2026-08-17裏付けた主張: 日本にはプライマリ・ケア領域の実地診療基盤研究ネットワーク(PBRN)が6つ存在するのみであり、「すべてのネットワークが過去15年以内に設立され、その多くが資金面の課題に直面している」と報告している
  46. 48A Decentralized, Academically Integrated Training Model for Rural General Practice in Japan: A Descriptive Program EvaluationJournal of General Internal Medicine, 41(9):2618-2623(Sakaguchi K, Endo T, Shiraishi Y, Kaneko M, 和足孝之) · 2026 · accessed 2026-08-17裏付けた主張: 島根大学総合診療医センターの「分散型・学術統合型」研修モデルを記述した論文。背景として「農村部の医師不足は世界的に続いており、専門職としての孤立が主要な障壁である。従来型のインセンティブは長期定着に限定的な効果しか持たない」と述べる。県全体を対象とする実践共同体「Neural GP Network」と、SlackおよびZoomを用いた「Virtual Office」を実装し、研修医は地域の医療チームの中で縦断的な地域配置を経験する。2018〜2025年の42名について、年間採用率は専攻医全体の15.8%と全国平均2.6%を有意に上回り(P<0.001)、2026年1月時点で88.1%が県内ネットワークに残留していた。ただし単一施設の記述的評価であり、対照を置いた研究ではない

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