測る道具の点検02 アクセスと提供体制/JAPANEUROPEOTHER
五十九年かけて、条文になった一語
この列は十二本にわたって「測られていない」を書いてきた。反例を一つ見つけた。医療法第15条の2である。検体検査には精度の確保が法律上の義務として書かれている。だが条文を読むと、義務になったのは責任者・標準作業書・作業日誌・台帳という手続の層で、外部精度管理調査の受検は努力義務だった。施行通知は理由まで書いている——「地域医療への影響等を勘案し、まずは努力義務としたところである」。そこに至るまでの経路を辿ると、五つの層が順に現れる。法令化後、その手続遵守は立入検査で追跡され、適合率は91.5%から96.0%で推移している。だが実際の測定誤差が法改正前後でどう変わったかを追う全国的な系列は、今回確認できた公開資料には無かった。
ダイジェスト解説 VIDEO
この列は、十二本にわたって「測られていない」を書いてきた。
看護必要度の評価者間信頼性は、支払いに直結する前に一度だけ測られ、直結してからは測られていない。自立度ランクの根拠として引かれている評価者間信頼性の研究は、単施設のもの一本だけだった。無医地区の4kmと50人は、国の研究班が来歴を遡ろうとして遡れなかった。
だが、そう書き続けているうちに、自分の書き方が気になってきた。私はこのサイトで、問題のありそうな指標を選んで調べている。母集団が歪んでいる。
そこで、反例を探した。「測る義務が、法律の条文になっている」例が日本にあるかどうかを確かめたかった。
一つ、見つかった。医療法第十五条の二である1。
病院、診療所又は助産所の管理者は…検体検査の精度の確保の方法その他の事項を検体検査の業務の適正な実施に必要なものとして厚生労働省令で定める基準に適合させなければならない。
前回、看護必要度とFIMを辿ったとき、私はこの条文を引いて「同じ医療法の下で、検体検査には精度の確保が義務づけられ、看護必要度とFIMには何も義務づけられていない」と書いた。
今回は、その義務の側を調べた。どうやってそこに書かれたのか、そして書かれたあとに何が起きたのかを。
先に結論を書く
「精度」という語が法律の条文に入るまで、五十九年かかった。1958年の資格法から2017年の医療法改正までである。(ただし1958年から同じ法制化作業が59年続いていたわけではない。政策課題そのものが、資格法から検査所規制へ、そしてゲノム医療へと入れ替わっている。)
五十九年の経路を辿ると、五つの層が順に現れる。先行する職能団体の五十年の実務、先に測った自治体、代替物として置かれていた診療報酬、別の目的で開いた立法の窓、そして義務を手続の層に限り「まずは努力義務とした」と理由を書いた省令と通知。
だが、法令化のあとに測られたのは、手続だった。立入検査の適合率は91.5%から96.0%で推移している。低いのではない、高い。分からないのは、その手続遵守が実際の測定精度を改善したかである。今回確認できた公開資料では、全国的な成績の経年系列は1996年までしか遡れず、法改正の前後で測定値を比較した資料は見つからなかった。
義務になったのは、手続のほうだった
条文を先に読む。医療法第十五条の二が命じているのは「厚生労働省令で定める基準に適合させる」ことなので、義務の中身は省令が持っている2。
施行規則第九条の七が並べるのは、これだけである。
| 号 | 内容 |
|---|---|
| 第1号 | 検体検査の精度の確保に係る責任者 |
| 第3号 | 標準作業書2種(検査機器保守管理・測定)の常備と周知 |
| 第4号 | 作業日誌2種の作成 |
| 第5号 | 台帳3種(試薬管理・統計学的精度管理・外部精度管理)の作成 |
責任者を置き、手順を書き、記録を残す。構造設備の基準も、検査用機械器具の基準も、書類の保存年限も、ここには無い。
では、検査性能を点検すること、外部から評価を受けること自体は義務なのか。別の条にある。第九条の七の二を読む。
病院等の管理者は…内部精度管理…が行われるように配慮するよう努めなければならない。 2 病院等の管理者は、当該病院等の検査業務について、外部精度管理調査を受けるよう努めなければならない。 3 病院等の管理者は…検査業務の従事者に必要な研修を受けさせるよう努めなければならない。
三つとも努力義務である。第1項は「配慮するよう努めなければならない」——配慮義務を、さらに努力義務にしている。
そして条文には入れ子がある。第九条の七の柱書のただし書は、統計学的精度管理台帳と外部精度管理台帳について「内部精度管理又は外部精度管理調査の受検を行つた場合に限り、適用する」と書く。
やらなければ、台帳も要らない。義務の輪が閉じていない。
遺伝子関連検査だけが、一段強い
同じ省令の次の条を見ると、規制の出自が分かる2。
| 内部精度管理 | 外部精度管理 | 研修 | |
|---|---|---|---|
| 病院等(一般の検体検査) | 配慮するよう努めなければならない | 受けるよう努めなければならない | 受けさせるよう努めなければならない |
| 病院等(遺伝子関連・染色体検査) | 配慮しなければならない | 行うよう努めなければならない | 受けさせなければならない |
| 衛生検査所 | 配慮しなければならない | 受けなければならない | 受けさせなければならない |
遺伝子関連・染色体検査だけ、内部精度管理と研修が義務である。そして衛生検査所は、外部精度管理まで義務になっている3。
同じ検体検査でも、院内で行えば標準作業書2種・外部精度管理は努力義務、衛生検査所に出せば標準作業書12種・外部精度管理は義務になる。台帳は3種と10種、書類の2年保存は片方にだけある。
病理と細胞診は入る。心電図は入らない
範囲も条文で決まっている。臨床検査技師等に関する法律施行規則第一条が、検体検査を7つに分ける3。
一 微生物学的検査 二 免疫学的検査 三 血液学的検査 四 病理学的検査 五 生化学的検査 六 尿・糞便等一般検査 七 遺伝子関連・染色体検査
病理学的検査は、一次分類の第4号である。二次分類は病理組織検査・免疫組織化学検査・細胞検査・分子病理学的検査で、細胞診はここに入る。
一方、生理学的検査は入らない。同施行規則は第一条の二に別立てで22号を列挙しており、心電図・脳波・超音波・MRIはそちらである。厚生労働省もQ&Aで明示している4。
Q1-5:病院等において採血等の検体採取又は生理学的検査のみ実施している場合は…「検体検査の業務を行う場合」に該当しないと考えてよいか。 A1-5:貴見のとおり。
境界は、人が判断するか機械が測るかではない。検体検査にも生化学や血液学のように機械が測る領域が大量にあり、生理学的検査にも心電図の読影や超音波のように人の判断が大きく入る領域がある。
分けているのは、人体から採取した検体を調べるか、人体そのものの生理機能を測るかである。だから病理も細胞診も入り、心電図も脳波も超音波も入らない。
五十九年、条文に「精度」の語は無かった
ここから来歴を辿る。この分野の法律に「精度」という語が入るまでに、五十九年かかっている。
1958年、衛生検査技師法5。第一条は「この法律は、衛生検査技師の資格を定めることによりその資質を向上させ、もつて公衆衛生の向上に寄与することを目的とする」。全条文に「精度」「精度管理」「検査所」の語は一つも無い。純粋な名称独占の資格法である。そして議員立法だった——八田貞義ほか38名の衆法である。
1970年、臨床検査技師の創設と、衛生検査所の登録6。ここでも語尾が重要である。
衛生検査所…を開設した者は、その衛生検査所の構造設備、管理組織その他の事項が省令で定める基準に適合するときは、その衛生検査所について、都道府県知事の登録を受けることができる。
任意である。罰則は名称詐称の過料一万円だけ。条文に「精度」は無い。
そしてこれは、内閣提出法案である——第63回国会・閣法第95号、提出者は内閣6。
1980年、登録の義務化7。「登録を受けなければならない」に変わり、六月以下の懲役または二十万円以下の罰金が付いた。それでも条文に「精度」は無い。そしてこれも議員立法だった——衆議院社会労働委員会の委員長提出法律案である。
その審議で、園田直厚生大臣がこう答えている8。
議員立法で提案していただくと聞いておりますが、一面にはありがたいと思い、一面には厚生省の足ののろいのを、おしかりになったことだと思って恐縮をいたしております。
議員立法は、確かに二度ある。1958年の資格法は八田貞義ほか38名の衆法、1980年の登録義務化は衆議院社会労働委員会の委員長提出法律案だった。
だが「この分野は議員立法で動いてきた」とまでは言えない。臨床検査技師を創設し、衛生検査所の登録制度そのものを作った1970年の改正は、内閣提出法案である。制度の骨格を置いたのは政府の側だった。動かなかったのは、その骨格に「精度」を書き込む部分である。
一つ目の層——自主的な取組が、五十年先行していた
では、五十九年のあいだ何も無かったのか。そうではない。法律の外側で動いていた。
日本医師会の臨床検査精度管理調査は1967年(昭和42年)に70施設で始まり、日本臨床衛生検査技師会の調査は1965年(昭和40年)に744施設で始まっている9。(後者は同じ人物が書いた別の資料で「昭和45年」となっており、開始年が5年食い違う。2017年時点で両方に付く「50年以上の歴史」という形容と算術が合うのは1965年のほうである。)
行政は、その民間事業に乗っていた。1974年の国会で、滝沢正 厚生省医務局長がこう述べている。
われわれとしてはいままで四十五年以来とってまいった政策としては、この未登録の検査所を登録検査所に引き上げるという努力、それから登録検査所を含めました精度管理、要するにある検体を無作為に全部に配りまして、その結果を出させて…逐次その内容の改善につとめて
1980年の時点で、参加率の実測値も国会に出ている。田中明夫 医務局長は、登録済み検査所については「その七五%以上が精度管理というものに参加いたしておりまして…未登録のものにつきましてはこういう精度管理ということも行われていないような状態でございます」と述べた8。
そして同じ年、日本医師会の常任理事が参考人としてこう証言している10。
現在、医師会病院、医師会立臨床検査センター、これは全部、そのほかいわゆる登録臨床検査所、これはほとんど精度管理の枠の中に入っております。…ただ、いわゆる未登録の検査センター、これはどうにも私どもの手の届かないところでございますので、どうなっておるかわからないところでございます。
「手の届かないところ」。——自主規制は網羅性を持てない。それが、法制化の論拠になる。
そして三十七年後、同じ形の発言が国会に出てくる。2017年、宮島喜文議員がこう述べた11。
全国で四千施設弱でございます。これは医療機関のほんの一握りということでございますが、このようなことを考えますと、現在十分な内部精度管理又は外部精度管理が行われているか疑問がある状況でございます。
四十年の間隔をおいて、同じ論理が二度使われている。
(そしてこの数字は、逆向きにも使われた。2016年の社会保障審議会医療部会で、加納繁照委員はこう述べている——「我々、自主努力で今までやってきているわけなので、改めて法律でどうこうという話を急に出すのは…乱暴な話ではないか」12。同じ実績が、法制化の理由にも、法制化を退ける理由にもなった。)
二つ目の層——誰かが、先に測っていた
1986年に何が起きたかを見る。ここが、この記事でいちばん確かめたかったところである。
私は当初、「衛生検査所の規制強化は事件が契機だったのではないか」という筋を立てた。資料は、それを支持しなかった。厚生省の公式説明はどれも事件を挙げていない。1981年の施行通知が挙げるのは「外部委託の増加・検査所の増加・未登録検査所に不適切な検査があるという指摘の強まり」だけである13。
代わりに資料が示したのは、先に測っていた自治体があったことである。
東京都立衛生研究所は、昭和57年度から衛生検査所の精度管理調査を始めていた。しかもブラインド方式である——協力医療機関を経由し、通常の検査依頼として試料を送る。第1回はブラインドのみ29施設だった14。
その結果が、こういうものだった。
(カルシウム)変動係数については、昭和57年度のブラインド方式で20.2%と大変バラツキが大きかった…最大値が10.8mg/dl、最小値が4.6mg/dlで、最大値が最小値の2倍と大きく解離した…x̄±3SD の範囲外のデータ数は…全体の26%も占めた
(カリウム)最大値は10.8mEq/l、最小値は3.2mEq/lで…−24SDから+44SDまで測定値の範囲があることになる。ここで用いた試料はカリウムに関し異常高値であるのに、正常値の報告及びさらに異常に高い測定値の報告を出した
カリウムで正常値の報告をした施設はナトリウムやカルシウムでも正常値又は正常値に近い測定値を報告し、大きなミスを犯している。
そして論文は、方式による差も書いている。
全般的にオープン方式よりブラインド方式の精密度が悪く、ブラインド調査の結果がふだんの検査状況を反映すると仮定すれば、更に精密度の向上がはかれると思われる。
「見られていると知っているとき」と「知らないとき」で、成績が違う。東京都はそれを測る設計にしていた。
このデータが、国会に持ち込まれる。1986年2月22日、衆議院予算委員会15。
○草川昭三委員 …東京都衛生研究所の第三回の制度報告〔精度管理調査結果報告書〕を見ましても、検体を取り違えた、梅毒だった、こういう怖い話があるわけですね。
今井勇厚生大臣の答えが、そのまま制度の自己認識になっている。
衛生検査所の問題はこれまで都道府県知事への登録制をとりまして設備や人員などの配置などについては規制をしてまいりました。ところが検査そのものの質の向上ということについては、その対策については全く取り組みがおくれておりまして、まことに先生の御指摘のとおりでございます。
六週間後、省令改正の予告が国会で出る。1986年4月3日、参議院予算委員会16。
○北郷勲夫 大臣官房総務審議官 …衛生検査所の責任者を明らかにする、あるいは記録の整備をしっかりさせる。それから…精度管理を受けさせることを明確にするといったような三つが大体主な内容になっております。省令の改正は四月の十日を予定いたしております
予告どおりに出た。昭和61年4月10日 厚生省令第28号、同年10月1日施行。
(ここで言えるのは、東京都が先に測っていたこと、そしてその結果が1986年の規制強化をめぐる国会審議で具体的な根拠として使われたこと、までである。データが省令改正を引き起こしたとまでは、この資料からは言えない。4月3日の答弁の時点で、4月10日の改正はすでに決まっている。)
施行通知は改正の趣旨をこう書く17。
衛生検査所の精度管理について改正前の規則においては、「検査の精度を適正に保つために必要な措置が講じられていること。」と規定されているのみであつたが、医療における衛生検査の重要性が高まつてきたことにかんがみ…精度管理に関する諸基準を設けることとした
そして外部精度管理が、初めて省令の義務になる。
衛生検査所の開設者は…都道府県その他の適当と認められる者が行う精度管理調査を受けなければならないこととされた。
ただしこれも二段構えだった。その五年前、1981年の通知に付された「衛生検査所組織運営規程準則」の第八条に、既にこう書かれている13。
管理者は…当衛生検査所における検査の精度管理を行うとともに、年に一回以上精度管理を外部に委託するものとする。
通知で書き、五年後に省令へ上げた。
三つ目の層——診療報酬が、法規制の代わりに置かれていた
では、院内で行う検査はどうしていたのか。厚生労働省自身が説明している18。
医療機関が自ら行う検体検査については、医師の適切な管理の下に行われることを前提としているため、その精度管理の基準は法律上は設けられていないが、外部精度管理等を要件とする診療報酬の検体検査管理加算により、診療報酬上の評価を行っている。
法律の代わりに、点数が置かれていた。
検体検査管理加算の施設基準を開くと、こうある19。
(4) 定期的に臨床検査の精度管理を行っていること。 (5) 外部の精度管理事業に参加していること。
そしてこの要件は、最上位区分だけのものではない。40点の(Ⅰ)も「検体検査管理加算(Ⅱ)の施設基準のうち(2)から(6)までのすべてを満たしていること」とされ、(4)(5)を含む。届出様式も実物を求める——「臨床検査の精度管理の実施状況の資料(実施責任者名、実施時期、実施頻度など実施状況が具体的にわかるもの)を添付すること」。
この二行は、平成18年から令和8年まで、一字一句変わっていない20。二十年である。
そしてこの経路は、外部精度管理そのものより広く届いていた。法制化の前、平成27年7月現在の算定状況を、神田裕二 医政局長が国会で答えている——「病院については八千四百八十二施設中の五千五百十施設ということで約六五%」11。
法律に何も無かった時期に、点数が六割五分の病院に精度管理の要件を掛けていたことになる。(同じ答弁で診療所は「約十万の施設のうち三百九十四施設」である。病院と診療所で、二桁違う。)
そしてこの経路は、法制化のあとも消えていない。令和7年8月1日現在、検体検査管理加算(Ⅰ)〜(Ⅳ)の届出は病院で5,709施設、医科の保険医療機関の病院8,019に対して71.2%である21。
法規制と診療報酬という二つの制度レイヤーが、いま併存している。
(新設年は確定できなかった。平成18年3月6日の通知の時点で既に(Ⅰ)(Ⅱ)が存在し、その前身は「平成16年2月27日保医発第0227003号」と特定できたが、その本文には到達できなかった。平成16年度改定か、それ以前である。)
四つ目の層——別の目的が、玄関を開けた
2017年に何が起きたか。入口はゲノム医療だった。
厚生労働省が法改正の背景として公式に挙げているのは、ゲノム情報を用いた医療等の実用化推進タスクフォースの意見とりまとめ、ただ一つである22。
医療機関に対しては、機関内で自ら行う臨床検査については、遺伝子関連検査を含めて法的な基準は定められていない。 遺伝子関連検査の品質・精度を確保するためには…法令上の措置を含め具体的な方策等を検討・策定していく必要がある。
そして、玄関から全部が入った。
社会保障審議会医療部会で、西澤寛俊委員がその構造を当事者の言葉で言い当てている12。
ゲノム医療タスクフォースは遺伝子関連検査についてだけを議論しているはずですが、そこで指摘されて…それ以外の全ての検体検査に関しての提案をされているのですが、その議論はどこでしましたか。 …ちょっと乱暴ではないですか。…よく見たら、ほかの検査が全部そうだから、やってしまえと厚労省は勝手に考えたと。そうしか見えないのですね。
省令の条文は、いまもその出自を残している。遺伝子関連・染色体検査だけ内部精度管理と研修が義務で、他は全部努力義務である。
五つ目の層——「まずは努力義務とした」と、理由を書いた
国会では、もっと強いことが言われていた。神田裕二 医政局長の答弁である11。
遺伝子関連検査の品質、精度を確保するため…内部精度管理の実施、外部精度管理調査の受検を義務とすること、また…第三者認定を受けることなどが考えられる 特定機能病院には、その果たすべき機能に鑑みて、内部精度管理の実施、外部精度管理調査の受検を義務付けるなどの対応も考えられる
省令は、そうならなかった。外部精度管理は努力義務、第三者認定は「勧奨」、そして特定機能病院を別扱いする規定は、どこにも置かれなかった。
翌年、武田俊彦 医政局長がその経緯を説明している23。
検体検査の精度の確保に係る責任者は専門的な修練を受けた医師又は臨床検査技師に限るべきといった御意見もございましたし、他方で…初めての試みということでもあるため、最低限必要なところで絞るべきではないかなどの御意見があった
そして、その理由が文書に残った。とりまとめはこう書く24。
・外部精度管理調査については、一律義務とした場合、申し込まれる受検の全ての実施体制が整っていないこと ・地域医療の円滑な提供における影響へ配慮することが必要とされること から、努力義務とすることが適当である。
施行通知は、さらに端的である25。
地域医療への影響等を勘案し、まずは努力義務としたところであるが、これらは精度の確保の方法として重要な手法であり、積極的に活用すべきである。
「まずは」と書いてある。この列が繰り返し探してきた形——制度が自分の限界を書く——が、ここにある。
五つの層
並べ直すと、こうなる。
| 層 | 検体検査では | 時期 | |
|---|---|---|---|
| ① | 先行する職能団体の実務 | 日臨技1965年・日医1967年開始 | 法制化の五十年前 |
| ② | 誰かが先に測っていた | 東京都、ブラインド方式併用 | 昭和57年度から |
| ③ | 代替物が既に置かれていた | 検体検査管理加算 | 少なくとも平成18年から |
| ④ | 別の目的で開いた立法の窓 | ゲノム医療タスクフォース | 2016年 |
| ⑤ | 義務を手続の層に限り、理由を書いた | 「まずは努力義務としたところである」 | 2018年(省令・通知) |
ただし、これを「条件」と呼ぶことはできない。
一つの事例を後ろ向きに見ているだけなので、どれが無ければ法制化できなかったのかは分からない。⑤にいたっては、法律より後のものである。「精度の確保」が医療法本体に入ったのは2017年で、「まずは努力義務とした」という設計と説明は2018年の省令と施行通知である。2018年に決まったことを、2017年に書けたことの条件にはできない。
言えるのは、五十九年の経路を辿るとこの五つが順に現れる、ということだけである。
法令化のあとに測られたのは、手続だった
ここからが、この記事の後半である。
義務化の前後で測定精度がどう変わったかを示すデータは、一件も見つからなかった。測ったが変わらなかった、ではない。測っていない。
今回確認できた公開資料では、全国的な成績の経年系列は1996年までしか遡れなかった26。日本医師会の調査で、酵素項目の方法間変動係数がAST 約23%→約5%、ALT 約22.5%→約3.5%と改善したという図がある。ただし論文自身は、その改善を標準化対応(JSCC勧告法の提示と酵素標準物質の発売)の結果として説明しており、外部精度管理の受検自体が原因とは書いていない。
今回確認できた公開資料では、施行後の検証は一回だけだった27。しかも設計がこうだった——2020年に、「法改正前」と「法改正後」を同時に回答させる回顧的自己申告アンケート。2,276病院に依頼し、回答は617病院(27.1%)。
結果は0〜10の自己評価で、外部精度管理調査を受検している項目の割合が 8.04 → 8.30。
測定値そのものの前後比較は、行われていない。そして衛生検査所については「外部精度評価を行っている項目の割合は、法改正前後でほとんど変化は見られなかった」と書かれている。
診療報酬の側には、2018年度改定で変更が無かった
もう一つ、確かめたことがある。
2017年6月1日の参議院厚生労働委員会で、楠岡英雄委員が医療部会で発した問い——「法制化されると、そういう管理料はなくなっていくと考えるべきなのでしょうか」——に近い質問が出たとき、鈴木康裕 保険局長はこう答えている。「今回の法改正の趣旨を踏まえまして…しっかりと検討したい」。
その後どうなったか。平成30年度改定の「個別改定項目について」は492頁ある。そこに「検体検査管理加算」は0件、「精度管理」も0件である28。改定前後の見え消し版にも、この条項に改正マークは付いていない。
二つのレイヤーを整理した形跡は、平成30年度改定の資料には無い。法的な精度管理の基準が無かった時期に診療報酬が担っていた要件は、法制化後もそのまま置かれ続けている。
国際データでは、義務の有無と成績の関係が一貫しない
ここで、この記事の提案を先に検討しておく必要がある。
私はこの列で、「精度の確保を義務にする」ことを政策の柱の一つに置こうとしていた。前例が同じ法律の中にあるからである。
その提案を支える国際的な根拠を探して、一本だけ見つかった。26のEQAプロバイダが73か国・2004年から2019年のデータを提供した解析である29。
ただし対象は、検体検査一般ではない。免疫血液学、それもABOとRhDの血液型判定だけである。そしてデータクレンジング後に解析対象として残ったのは36か国で、そのうち「国内の全検査室が代表されている」15か国が、別に subset として解析されている。
この二つで、方向が違う。
| 全36か国 | 全数が代表された15か国 | |
|---|---|---|
| ABO | 義務あり 1.4% / なし 0.32%(p=0.4428、有意差なし) | 義務あり 0.34% / なし 0.52%(p<0.0001) |
| RhD | 義務あり 0.49% / なし 0.46%(p<0.0001) | 義務あり 0.38% / なし 0.58%(p<0.0001) |
質のよいほうの subset では、EQA参加が法的義務である国のほうがエラー率が低い。論文の本文にそう書いてある。
When looking only at data from countries that included all resident laboratories, significantly less ABO and RhD phenotyping mistakes were recorded in countries with a legal obligation to participate in EQA
抄録の結論は、逆に読める。
no association between national regulatory … and economic … conditions to the quality performance of medical laboratories in immunohaematology
そして考察は、subset の結果に触れないまま「None of the national regulatory conditions examined … was associated with lower error rates」と書く。自分たちが報告した数字と、自分たちのまとめが揃っていない。
したがって、この論文を「義務化は効かない」の根拠にはできない。著者自身が限界を書いている。
A limitation of this study is that we cannot directly demonstrate the impact of external factors examined here on the performance quality of laboratories, as no data is available before and after a change in regulatory or economic conditions
法改正の前後を比べた研究ではない。関連が見えないことは、効果が無いことではない。そして「it has not yet been clarified whether the effects on results in immunohaematology EQA also apply to other analytical methods」とも書かれている。生化学にも病理にも一般化できるとは、著者は言っていない。
それでも、著者が比較的一貫した関連として挙げたものがある。
The only factors that appear to be consistently associated with slightly lower error rates are the EQA provider’s advisory services for those laboratories that reported incorrect results, and a frequency of EQA samples of eight or less per year
成績が悪かった検査室に、EQA提供者が助言を返すこと。規制のどの変数よりも、これが一貫していた。(もっとも subset の RhD では有意差が付いていない——p=0.1512 である。著者も「Further prospective and controlled investigations are required」と結んでいる。)
そして日本に欠けているのは、まさにそこである。平成29年度の厚生労働科学研究の報告書が、こう書いている30。
低評価であった項目や施設に対する改善作業のフォローアップも行われていない。このような状況下では、調査により精度管理上の問題点が見出されても…その間の検査精度について保証されない状況が1年間も続く
令和2年度の報告書が、同じ文を再掲している27——「低評価項目・低評価施設に対するフォローアップ体制が必要である」。少なくとも報告書の上では、三年後にも同じ課題が残っていた。
立入検査は、その手続の層で落ちている
では、義務になった手続の層は満たされているのか。
改正省令の施行後、最初の通年である令和元年度の立入検査結果を見る。8,242病院中7,749施設に実施された。適合率の低い小項目の上位10のうち、5つが検体検査だった31。
| 順位 | 小項目 | 適合率 |
|---|---|---|
| 1 | 検体検査に係る台帳作成 | 90.4% |
| 2 | 検体検査に係る作業日誌作成 | 90.9% |
| 3 | 検体検査に係る精度管理体制整備 | 91.5% |
| 4 | 検体検査に係る標準作業書の常備・周知 | 92.2% |
| 6 | 検体検査に係る精度確保責任者の配置 | 94.4% |
その後、精度管理体制整備の適合率は 96.5%(令和2年度)→94.6%→96.2%→96.0%(令和5年度)で推移している。
法令化後、手続の遵守は立入検査で追跡され、適合率は91.5%から96.0%へ上がった。
ただしこれを「法令化が上げた」と読むことはできない。比べるべき「前」の数字が存在しないからである。この小項目自体が改正省令で新設されたものなので、施行前の同じ指標は取りようがない。ここにあるのは施行後の推移だけである。
そして測定値のほうは、比較する材料が無い。この記事で分かるのは、そこまでである。プロセスの遵守は測定され、高い適合率が維持されている。そのプロセスがアウトカムを動かしたかは、測定されていない。
日臨技の病理フォトサーベイが測っているのは、診断ではない
範囲としては含まれている領域で、実際に何が測られているのか。
日臨技の病理部門の精度管理調査は、1972年のAzan染色(191施設)に始まった。だが実技を測る染色サーベイは2010年を最後に廃止され、以後は写真判定だけになっている32。廃止の理由は「判定にかかる労力と費用やヒト組織を用いた試料の調達などの倫理的問題」だった。
そして評価の設計に、こう書かれている。
原則として参加施設の正解率80%未満の設問は評価対象外
設問のほうも「正解率が80%以上となるように調整を加えて提示」される。割れた難問は、成績から消える。別の技師会の論文がこれを名指しで批判している——「正解率の低かった設問を機械的に評価対象外とすると、多くの施設で間違った認識をしている場合の是正は難しい」。
そもそも位置づけが違う、とも書かれている。
病理フォトサーベイは診断を求めるものではなく、診断に必要な染色法の選択や良好な染色態度の同定、アーチファクトの原因追求などを求める
測っているのは、染色の出来と、写真の選択式問題である。
測った結果が、次の行政行動につながっている場所がある
東京都である。(47都道府県を網羅的に確かめたわけではないので、「一つだけ」とは書けない。少なくとも一つある、である。)
昭和58年度から監視指導を続け、昭和62年度からは精度管理専門委員が同行している33。そして「特別監視指導」は、精度管理調査の結果に問題のあった施設に対して行われる。選定理由が、報告書に具体的に書かれている。
施設E(R1、R2、R3)… 血球算定 正確度:ブラインド WBC(3検体)、MCV(4検体)、Ret(3検体)、Ht(4検体) 管理限界外 施設A(R2,R3)… 病理組織 抜取標本TM1総合評価C判定
測った結果が、次にどこへ行くかを決めている。
ただしこれは、Buchta らの言う「EQA provider’s advisory services」とは別のものである。あちらは検査室に助言を返す提供者側のサービスで、行政の監視ではない。Buchta が測った変数のうち行政側に当たるのは「monitoring by authorities」のほうで、そちらは15か国 subset で有意差が付いていない(ABO p=0.5067、RhD p=0.8746)。
東京都の形は、Buchta のどの変数とも一致しない。測って終わりの監視でもなく、提供者からの助言でもなく、測った結果で次の立入先を選ぶ運用だからである。国際比較の変数が、この形を分けて数えていない。
同じ報告書は、自分の限界も書いている。
この間、衛生検査所における精度管理は、着実に向上しているものの、一部の施設においてはいまだに正確性に欠けるものが見られ、監視指導効果が必ずしも十分といえない面も見受けられた。
(もっとも、都の事業への参加は全数ではない。令和7年度のオープン方式は都内60施設で、都内の登録衛生検査所116に対して51.7%である34。ただしこれを義務の不遵守と読んではいけない。衛生検査所に課された義務は「都道府県その他の適当と認められる者が行う」調査を受けることなので、日本医師会や日臨技の調査を受けていれば義務は満たされる。51.7%は都の事業への参加率であって、外部精度管理義務の遵守率ではない。言えるのは、都のブラインド方式を含む事業に入っている施設が半数である、というところまでである。)
英国では、その上に乗っていた監督層が止まった
日本の構造には、もう一つ確かめておくべき点がある。規制の実質を、職能団体が供給し続けていることである。
指導要領は、民間三団体の事業名を名指しして「参加していることを確認せよ」と書く。2018年の施行通知も、努力義務の宛先として同じ団体を挙げる。制度の骨格は行政が持ち、中身は職能が供給している。
英国は、その形をもっと徹底していた。外部精度評価は法令上の義務ではなく、NHSの仕様書・UKAS認定・職能団体の枠組みで支えられてきた。細胞診では個人単位で実施されてもいる。
ただし、王立病理学会自身がそれを能力測定と呼ぶことを拒んでいる35。
interpretive EQA schemes are not normally designed to have the rigour of a professional examination and therefore the results should NOT be regarded as a form of proficiency testing that provides a measure of a pathologist’s competence
そして2025年11月、その監督機構が止まると発表された36。
In the absence of an agreed national funding mechanism or formal links with regulatory bodies, the College has taken the difficult decision to pause QAPC and NQAAP activities from January 2026.
三会長連名の声明が理由を書いている——「The current framework lacks formal links to national regulatory and oversight bodies」「no alternative source of funding has yet been secured」。
ただし、止まったのはEQAそのものではない。UK NEQAS の声明が範囲を明示している37。
the pause in activity of the QAPC and NQAAP oversight of laboratory performance from January 1st, 2026 UK NEQAS centres will continue to manage performance concerns internally after January 1st 2026.
測る仕組みは動き続け、止まったのは全国的な監督・調整の層である。資金の裏づけと規制当局への接続を欠いていたのは、測る層ではなく、その上に乗っていた層のほうだった。
そしてこれは、この記事のテーマそのものである。測る仕組みと、測ったあとを処理する仕組みは、別の層である。英国で先に落ちたのは、後者だった。
個人単位の法的規制——一次資料で確認できた二つの国
念のため、国際的な位置も確かめた。
病理・細胞診を法的な精度管理の対象に含めること自体は、珍しいが唯一ではない。ベルギー・オーストラリア・ブラジルが同様である。むしろフランスは解剖細胞病理を「biologie médicale」から明示的に除外し、ドイツの RiliBÄK には該当する部が存在しない。
本当に稀なのは、個人単位である。一次資料で確認できたのは米国とオーストラリアの二か国だけだった。米国の根拠は施行規則ではなく法律本体にある38。
the maximum number of cytology slides that any individual may screen in a 24-hour period announced and unannounced on-site proficiency testing of such individuals, with such testing to take place, to the extent practicable, under normal working conditions
年1回、10枚組で90%未満は不合格。三回目の不合格で「must cease examining gynecologic slide preparations immediately」。2025年の受検者は8,535人、不合格290人だった。
それでも、対象は婦人科細胞診だけである。組織診には技能試験も検査室間比較も無い。そしてEUの公刊物自身が、こう書いている39。
Proficiency testing is mandated in some but not all member states of the European Union.
「測る義務を法律に書く」ことは、日本だけの課題ではない。
総合診療にとって
四つ、持ち帰れることがある。
第一に、測る義務は制度に書ける。この列は十二本にわたって「測られていない」を書いてきたが、書けた例が日本にある。五十九年かかったが、書けた。そこまでの経路を辿ると、五つの層が順に現れる——先行する職能の実務、先に測った自治体、既に置かれていた代替物、別の目的で開いた窓、そして義務を手続の層に限って理由を書いた省令と通知。どれが必要条件だったのかは、一つの事例からは分からない。
第二に、義務になったのは手続の層だった。責任者を置き、手順を書き、記録を残す。外部精度管理の受検は努力義務のままである。そしてそれは失敗ではなく、設計だった。「まずは努力義務としたところである」と通知に書いてある。
第三に、法令化後、手続の遵守は測定され、高い適合率が維持されるようになった。だがそれが測定精度を改善したかは、判定できない。立入検査の適合率は91.5%から96.0%で推移している。一方、今回確認できた公開資料では、義務化の前後で測定値を比較した資料は見つからず、施行後の検証は回顧的自己申告アンケート一回だけで、平成30年度改定の資料には検体検査管理加算も精度管理も現れない。プロセスは測っている。アウトカムを測っていない。
国際データも、これを解決してくれない。免疫血液学の73か国データは、全数が代表された15か国では義務のある国のほうがエラーが少なく、全36か国では関係が見えない。そして著者自身が、法改正の前後を比べたデータは無いと書いている。一貫して関連が見えたのは、成績が悪かった検査室にEQA提供者が助言を返すことのほうだった。
第四に、だからこの列の提案を、書き直す必要がある。
書き直す先は「義務にするな」ではない。義務は書ける。五十九年かかるが書けるし、書けば手続は動く。足りないのは、その先である。
測る。悪い結果を拾う。支援と是正につなげる。もう一度測る。——この循環まで制度に書かなければ、測定は手続遵守の確認で止まる。
厚生労働科学研究の報告書が二回続けて「低評価項目・低評価施設に対するフォローアップ体制が必要である」と書いているのは、循環の後半が、全国的な仕組みとしては制度化されていないからである。
そして、その反例がある。東京都では、悪い測定結果が特別監視指導につながっている。全国では閉じていない輪が、一つの自治体では部分的に閉じている。
看護必要度にもFIMにも認定調査にも、医療法第十五条の二が置いた要素はほとんど無い——責任者も、標準作業書も、台帳も、外部との突き合わせも。そこから始めるのはいい。だが循環の後半を同時に書かなければ、同じところで止まる。
前例は、日本の中にある。四十年前から測り続け、いまも結果を使って立入先を選んでいる自治体がある。
本稿で確かめられなかったことを、四つ書いておく。
① 検体検査管理加算(Ⅰ)(Ⅱ)の新設年。平成18年3月6日の通知の時点で既に存在し、前身が「平成16年2月27日保医発第0227003号」であることまでは特定できたが、その本文に到達できなかった。「少なくとも平成18年から」までしか書けていない。
② 日本医師会・日本臨床衛生検査技師会の成績の経年推移。参加施設数は追えるが、成績そのものは会員向けにしか公表されていない。1996年以降の系列を、外から確認する手立てが無い。
③ 東京都の精度管理調査報告書の第1回から第3回の原本。国会で引かれた「梅毒だった」という事例に到達できていない。数値は同じ調査の担当者が研究年報に書いた論文から取った。
④ Buchta ら2022 が扱った36か国と15か国が、どの国か。データ保護のため国別のエラー率は開示されておらず、本文にも国名の一覧が無い。補足資料に国ごとのデータ量が載っているとあるが、そちらには到達できていない。日本が36か国に含まれるのかどうかも、確認できていない。
出典 SOURCES
- 1医療法 第十五条の二(検体検査の業務の基準)昭和二十三年法律第二百五号(e-Gov 法令検索、法令APIで全文取得) · 2026 · accessed 2026-09-02裏付けた主張: 「病院、診療所又は助産所の管理者は、当該病院、診療所又は助産所において、臨床検査技師等に関する法律(昭和三十三年法律第七十六号)第二条に規定する検体検査(以下この条及び次条第一項において「検体検査」という。)の業務を行う場合は、検体検査の業務を行う施設の構造設備、管理組織、検体検査の精度の確保の方法その他の事項を検体検査の業務の適正な実施に必要なものとして厚生労働省令で定める基準に適合させなければならない。」と定める。名宛人は開設者ではなく管理者で、発動条件は「検体検査の業務を行う場合」。委託のみで自ら行わない施設には掛からない。義務内容は省令で定める基準に「適合させなければならない」であり、基準の中身は施行規則第9条の7が持つ。「検体検査」の定義は医療法にはなく、臨床検査技師等に関する法律第2条に外部参照されている。なお第15条の3は委託先の限定を定める別の条で、2018年12月1日の施行までは旧第15条の2がこの委託規定であり、精度の確保に関する規定は医療法上まったく存在しなかった
- 2医療法施行規則 第九条の七(法第十五条の二の基準)・第九条の七の二・第九条の七の三昭和二十三年厚生省令第五十号(e-Gov 法令検索、法令APIで全文取得) · 2026 · accessed 2026-09-02裏付けた主張: 第9条の7が法第15条の2の基準本体で、第1号「検体検査の精度の確保に係る責任者」、第3号「検査機器保守管理標準作業書」「測定標準作業書」の常備と周知、第4号「検査機器保守管理作業日誌」「測定作業日誌」の作成、第5号「試薬管理台帳」「統計学的精度管理台帳」「外部精度管理台帳」の作成を挙げる。ただし柱書ただし書により、第5号ロ・ハの台帳は「内部精度管理又は外部精度管理調査の受検を行つた場合に限り、適用する」。構造設備・検査用機械器具の基準は一つも置かれておらず(別表第一の二は第9条の8=受託者側からしか参照されない)、書類の保存年限の定めもない。第9条の7の2は一般の検体検査について「内部精度管理…が行われるように配慮するよう努めなければならない」(第1項)「外部精度管理調査を受けるよう努めなければならない」(第2項)「検査業務の従事者に必要な研修を受けさせるよう努めなければならない」(第3項)と、三つとも努力義務にする。第9条の7の3は遺伝子関連・染色体検査についてのみ、内部精度管理を「配慮しなければならない」、研修を「受けさせなければならない」と義務化し、外部精度管理調査または他施設との相互確認は「行うよう努めなければならない」とする。すなわち省令の条文自体が、規制の出自が遺伝子関連検査にあることを残している
- 3臨床検査技師等に関する法律施行規則 第一条(検体検査の分類)・第十二条の二(衛生検査所の開設者の義務)・第十二条の三昭和三十三年厚生省令第二十四号(e-Gov 法令検索、法令APIで全文取得) · 2026 · accessed 2026-09-02裏付けた主張: 第1条は検体検査の一次分類を「一 微生物学的検査 二 免疫学的検査 三 血液学的検査 四 病理学的検査 五 生化学的検査 六 尿・糞便等一般検査 七 遺伝子関連・染色体検査」の7区分と定める。別表第一の中欄は病理学的検査の二次分類を「病理組織検査/免疫組織化学検査/細胞検査/分子病理学的検査」とし、細胞診はここに入る。生理学的検査は第1条の2に別立てで22号列挙されており、検体検査には含まれない。第12条の2第2項は「衛生検査所の開設者は、その衛生検査所の検査業務について、外部精度管理調査(都道府県その他の適当と認められる者が行う精度管理に関する調査をいう。)を受けなければならない」と定め、第4項は研修を「受けさせなければならない」とする。第12条第11号は管理者・指導監督医とは別に「精度管理責任者」の必置を求め、標準作業書は12種、台帳は10種、第12条の3は書類の2年間保存を義務づける。すなわち同じ検体検査でも、院内で行えば標準作業書2種・外部精度管理は努力義務、衛生検査所に出せば標準作業書12種・外部精度管理は義務になる
- 4医療法等の一部を改正する法律等の施行に関するQ&A(平成30年11月29日 医政総発1129第1号・医政地発1129第1号 事務連絡)厚生労働省医政局総務課・地域医療計画課 · 2018 · accessed 2026-09-02裏付けた主張: Q1-5「病院等において採血等の検体採取又は生理学的検査のみ実施している場合は、改正法による改正後の医療法第15条の2に規定する『検体検査の業務を行う場合』に該当しないと考えてよいか」に対し、A1-5は「貴見のとおり」と答える。すなわち心電図・脳波・超音波などの生理学的検査には精度の確保の義務が及ばない。一方 Q1-2/A1-2 はインフルエンザ迅速検査キットのような簡易な検体検査にも基準の遵守が必要であるとし、Q1-6/A1-6 は採血後の血清分離のみでも検体検査の業務に該当するとする。A1-10は「病院等に検体検査の精度の確保に係る責任者を配置した際には、届出は不要である。なお、検体検査の業務の適正な実施に必要な基準の遵守状況については、医療法第25条第1項に基づく定期の立入検査の際等に確認を行う」とし、事前規制が無く事後の立入検査に依存する構造を明示する
- 5衛生検査技師法(昭和三十三年法律第七十六号、昭和33年4月23日公布)衆議院 制定法律情報(第28回国会) · 1958 · accessed 2026-09-02裏付けた主張: 第1条は「この法律は、衛生検査技師の資格を定めることによりその資質を向上させ、もつて公衆衛生の向上に寄与することを目的とする」。全条文(第1条〜第21条および附則)に「精度」「精度管理」「検査所」の語は一つも現れない。第四章は「雑則」で、施設に関する章は存在しない。純粋な名称独占の資格法である。日本法令索引(https://hourei.ndl.go.jp/simple/detail?lawId=0000050288 )によれば法律案名は「衛生検査技師法案」、種別は衆法、提出番号3、提出年月日は昭和33年3月3日、提出者は八田貞義ほか38名。すなわち議員立法である
- 6臨床検査技師、衛生検査技師等に関する法律(昭和四十五年法律第八十三号、昭和45年5月21日公布)衆議院 制定法律情報(第63回国会) · 1970 · accessed 2026-09-02裏付けた主張: 衛生検査技師法を改題し、臨床検査技師を創設した改正。第20条の3は「衛生検査所(…)を開設した者は、その衛生検査所の構造設備、管理組織その他の事項が省令で定める基準に適合するときは、その衛生検査所について、都道府県知事の登録を受けることができる」と定める。すなわち登録は任意であり、罰則は名称詐称の過料一万円のみ。条文に「精度」の語は現れない。日本法令索引(https://hourei.ndl.go.jp/simple/detail?lawId=0000060714 )によれば法律案名は「衛生検査技師法の一部を改正する法律案」、提出回次は第63回国会、種別は閣法、提出番号95、提出者は内閣、提出年月日は昭和45年3月24日。すなわち内閣提出法案である
- 7臨床検査技師、衛生検査技師等に関する法律の一部を改正する法律(昭和五十五年法律第百五号、昭和55年12月6日公布)衆議院 制定法律情報(第93回国会) · 1980 · accessed 2026-09-02裏付けた主張: 衛生検査所の登録を義務化した改正。第20条の3は「衛生検査所(…)を開設しようとする者は…都道府県知事の登録を受けなければならない」となり、第20条の10に「六月以下の懲役又は二十万円以下の罰金」が置かれた。条文に「精度」の語はなお現れない。衆議院社会労働委員会の委員長提出法律案(起草者 山下徳夫)として提出され、参議院本会議は「全会一致をもって原案どおり可決」した(片山甚市 委員長報告、昭和55年11月28日)
- 8第93回国会 衆議院社会労働委員会 第6号(昭和55年11月5日)国立国会図書館 国会会議録検索システム · 1980 · accessed 2026-09-02裏付けた主張: 田中明夫 厚生省医務局長が「民間の検査所の登録の義務化並びに都道府県知事によります指導監督の強化というのを内容にいたしました…改正につきまして、前国会におきまして議員提案によって諮られたわけでございますが、残念ながら前国会では成立しなかった」と述べる。園田直 厚生大臣は「いまの問題、御意見のとおりでありまして、議員立法で提案していただくと聞いておりますが、一面にはありがたいと思い、一面には厚生省の足ののろいのを、おしかりになったことだと思って恐縮をいたしております」と答えた。同委員会の別の日(昭和55年4月16日)に田中局長は、登録済み検査所については「その七五%以上が精度管理というものに参加いたしておりまして…未登録のものにつきましてはこういう精度管理ということも行われていないような状態でございます」と述べている(https://kokkai.ndl.go.jp/txt/109104410X01219800416/231 )。同日、義務化の検討についても「私どもはもう一遍衛生検査所の登録を義務づけるということについて現在検討いたしております」と明言しており、富士見病院事件の公表(昭和55年9月)に先行する
- 9外部精度管理調査の現状と課題(平成29年度厚生労働科学特別研究「臨床検査における品質・精度の確保に関する研究」分担研究報告書)研究協力者 丸田秀夫(日本臨床衛生検査技師会 常務理事)、研究代表者 矢冨裕 · 2018 · accessed 2026-09-02裏付けた主張: 「日本臨床衛生検査技師会が主催する外部精度管理調査は、昭和40(1965)年に第1回を実施してから50年以上の歴史を重ねている」と要旨と本文Cの二箇所に記す。なお平成29年11月20日の第2回検討会で同一人物が「当会の精度管理調査は昭和45年より開始をしておりまして、50年以上の歴史がある」と述べており、開始年が5年食い違う。2017年時点で「50年以上」と整合するのは1965年である。同報告書は「平成29(2017)年度臨床検査外部精度管理調査の参加施設は4,026施設で過去最高」とし、「参加割合は平成29(2017)年では会員施設の52.6%にとどまっており、病床数1〜19床の施設では32.4%、20〜99床では48.1%」「500床以上の施設では会員施設の90%以上が参加」と記す。また「日本の医療機関は病院、一般診療所、歯科診療所は178,911施設存在している。日本医師会並びに日本臨床衛生検査技師会等の外部精度管理調査への参加実数から勘案すると、満足のいく状況ではないことが推察される」とする
- 10第91回国会 衆議院社会労働委員会 医療保険制度に関する小委員会 第3号(昭和55年4月9日)国立国会図書館 国会会議録検索システム · 1980 · accessed 2026-09-02裏付けた主張: 中山昌作 日本医師会常任理事(参考人)が「現在、医師会病院、医師会立臨床検査センター、これは全部、そのほかいわゆる登録臨床検査所、これはほとんど精度管理の枠の中に入っております。あと国公立病院もかなりの数が参加しておりますし、一般病院も参加しております。ただ、いわゆる未登録の検査センター、これはどうにも私どもの手の届かないところでございますので、どうなっておるかわからないところでございます」と述べる。職能団体による自主的な精度管理が網羅性を持てないことを、当事者が国会で認めた記録である
- 11第193回国会 参議院厚生労働委員会 第21号(平成29年6月1日)国立国会図書館 国会会議録検索システム · 2017 · accessed 2026-09-02裏付けた主張: 宮島喜文議員(自由民主党・こころ、元・日本臨床衛生検査技師会会長)が「医療機関が自ら検査をする場合、これらの精度管理について何ら法的な基準がなく、医療機関自らの判断により臨床検査の質と精度の担保が行われている実態があります」「私も長年臨床検査技師として検査に従事しておりましたので…適切な検体検査が日本でしっかりなされるようになってほしいという思いもあり、国政の世界に私も足を踏み入れたわけでございます。このような改正が行われるということは、非常に私は、やっとここまで来たかという思いもございます」と述べる。同氏はまた「日本臨床衛生検査技師会の外部精度管理が昨年実績では三千九百三十四施設、日本医師会のが三千二百二十三施設」「全国で四千施設弱でございます。これは医療機関のほんの一握りということでございますが、このようなことを考えますと、現在十分な内部精度管理又は外部精度管理が行われているか疑問がある状況でございます」と述べ、同時に「これが極めて甘いものになってしまうと、適切な検体検査のその質の確保ができない」と釘を刺している。神田裕二 厚生労働省医政局長は「平成二十七年七月現在、内部精度管理の実施や外部の精度管理事業への参加などを要件といたします診療報酬の検体検査管理加算を算定している医療機関の状況で申し上げますと、病院については八千四百八十二施設中の五千五百十施設ということで約六五%でございますけれども、診療所については約十万の施設のうち三百九十四施設ということで非常に低い割合というふうになってございます」「平成二十七年度の都道府県等による立入検査においては、約三割の衛生検査所に対しまして精度管理の向上に関する指摘がなされている」と答弁した。また遺伝子関連検査について「内部精度管理の実施、外部精度管理調査の受検を義務とすること」「第三者認定を受けること」、特定機能病院について「内部精度管理の実施、外部精度管理調査の受検を義務付けるなどの対応も考えられる」とも答弁している
- 12第48回 社会保障審議会医療部会 議事録(平成28年10月20日)厚生労働省 · 2016 · accessed 2026-09-02裏付けた主張: 西澤寛俊委員(全日本病院協会会長)が「ゲノム医療タスクフォースは遺伝子関連検査についてだけを議論しているはずですが、そこで指摘されて、ここに書いてあるように、それ以外の全ての検体検査に関しての提案をされているのですが、その議論はどこでしましたか」と質し、事務局の回答を受けて「ちょっと乱暴ではないですか。…よく見たら、ほかの検査が全部そうだから、やってしまえと厚労省は勝手に考えたと。そうしか見えないのですね。…そういう機関の声を一切聞かないで、この医療部会で決めるのは乱暴だと思います。…一旦しかるべき検討会をつくって、検討した結果、この医療部会に出していただければと私は思っております」と述べた。加納繁照委員(日本医療法人協会会長)は「本当に日本医師会の臨床検査、精度管理調査というのは必ず、ほぼ受けているという現状にありますし…全く何もしてないわけでなくて、我々、自主努力で今までやってきているわけなので、改めて法律でどうこうという話を急に出すのは、西澤先生おっしゃったように、乱暴な話ではないかと思います」と述べた。楠岡英雄委員は基準の水準が示されないと「過剰な要求なのか、妥当な要求なのか、そんな要求だったらないほうがましというのか、判断がつきにくい」と述べている。第48回で検体検査について発言したのは16名中5名である
- 13臨床検査技師、衛生検査技師等に関する法律の一部を改正する法律等の施行について(昭和56年3月2日 医発第224号 厚生省医務局長通知)厚生省医務局 · 1981 · accessed 2026-09-02裏付けた主張: 昭和55年改正の施行通知。「一 改正法制定の趣旨」に「衛生検査所については、これまで、…『任意登録制度』が設けられていた。ところが、医療機関からの検体検査の外部委託が増加し、衛生検査所の数が年々増加するとともに、近時、登録を受けない衛生検査所の中には、不適切な検査を行つているものがあるという指摘が強まつてきていた。そこで衛生検査所に対する規制を強化するため、…改正が行われることとなつたものである」とある。特定の事件・事故は一切挙げられていない。別添として初版の「衛生検査所指導要領」を作成し、別紙「衛生検査所組織運営規程準則」第8条(精度管理)に「管理者は、日常、機器の点検、回収試験、再現試験等を実施することにより、当衛生検査所における検査の精度管理を行うとともに、年に一回以上精度管理を外部に委託するものとする」と置いた。すなわち外部精度管理は1981年に通知(準則)レベルで文書化されている
- 14同一試料による精度管理調査結果(生化学検査)の経年変化について仲川千種・大石向江・蓑輪佳子・鈴木重任、東京都立衛生研究所研究年報 36:132-136 · 1985 · accessed 2026-09-02裏付けた主張: 東京都が昭和57年度から実施している衛生検査所精度管理調査の結果。調査規模は「昭和57年度がブラインド方式のみ2回(29施設)、昭和58年度でオープン方式を1回(48施設)、ブラインド方式を2回(38施設)、昭和59年度で両方式とも2回ずつ(オープン53施設、ブラインド38施設)」。カルシウムについて「変動係数については、昭和57年度のブラインド方式で20.2%と大変バラツキが大きかったが年々減少し、昭和59年度では11.7%」「最大値が10.8mg/dl、最小値が4.6mg/dlで、最大値が最小値の2倍と大きく解離した」「標準参考値における x̄±3SD の範囲外のデータ数は昭和57年度のブラインド方式で15個と全体の26%も占めた」「検体取違え、単位及び計算まちがえ、ガラス器具等の汚染、オープン試料での溶解方法などが多かった」と記す。カリウムについて「昭和57年度でカリウムのブラインド方式の変動係数が他と比べて大変大きな値であった。このときの最大値は10.8mEq/l、最小値は3.2mEq/lで標準参考値における平均値、標準偏差をもとにすると−24SDから+44SDまで測定値の範囲がある」「ここで用いた試料はカリウムに関し異常高値であるのに、正常値の報告及びさらに異常に高い測定値の報告を出した」「カリウムで正常値の報告をした施設はナトリウムやカルシウムでも正常値又は正常値に近い測定値を報告し、大きなミスを犯している」と記す。まとめに「全般的にオープン方式よりブラインド方式の精密度が悪く、ブラインド調査の結果がふだんの検査状況を反映すると仮定すれば、更に精密度の向上がはかれると思われる」とある
- 15第104回国会 衆議院予算委員会 第15号(昭和61年2月22日)国立国会図書館 国会会議録検索システム · 1986 · accessed 2026-09-02裏付けた主張: 草川昭三委員が「民間の衛生検査所の乱立と大量一括処理で、非常に検査の質が低下をしているということが批判されております。東京都衛生研究所の第三回の制度報告〔精度管理調査結果報告書〕を見ましても、検体を取り違えた、梅毒だった、こういう怖い話があるわけですね」と質した。今井勇厚生大臣は「衛生検査所の問題はこれまで都道府県知事への登録制をとりまして設備や人員などの配置などについては規制をしてまいりました。ところが検査そのものの質の向上ということについては、その対策については全く取り組みがおくれておりまして、まことに先生の御指摘のとおりでございます」と答え、昭和61年の対策として①検査の精度を確保するために必要な基準の作成、②検査業務の評価・指導を行う財団法人の設立、③都道府県の監視体制の強化の三点を挙げた。なお草川の言う「梅毒だった」という事例は、東京都立衛生研究所研究年報第36号・第37号の論文には現れず、報告書原本に当たらないと確認できない
- 16第104回国会 参議院予算委員会 第20号(昭和61年4月3日)国立国会図書館 国会会議録検索システム · 1986 · accessed 2026-09-02裏付けた主張: 和田静夫委員が「衛生検査センターがかなりずさんな検査をしていることが東京都の調査で明らかになっているわけですが、検査センターの運営を改善させるために省令改正作業が進んでいるようでありますが、その内容を明らかにしてください」と質した。北郷勲夫 厚生省大臣官房総務審議官は「衛生検査所の前から精度管理が非常に問題になっておりまして、衛生検査所の責任者を明らかにする、あるいは記録の整備をしっかりさせる。それから、外部で検査をいたすわけでございますが、精度管理を受けさせることを明確にするといったような三つが大体主な内容になっております。省令の改正は四月の十日を予定いたしておりますが、いろいろ新しい義務づけが行われますので、施行は十月を予定いたしております」と答えた。予告された日付・内容は、昭和61年4月10日厚生省令第28号(10月1日施行)とその施行通知に一致する
- 17臨床検査技師、衛生検査技師等に関する法律施行規則の一部を改正する省令の施行について(昭和61年4月15日 健政発第262号 厚生省健康政策局長通知)厚生省健康政策局 · 1986 · accessed 2026-09-02裏付けた主張: 昭和61年4月10日厚生省令第28号(同年10月1日施行)の逐条説明。「1 改正の趣旨」に「衛生検査所の精度管理について改正前の規則においては、『検査の精度を適正に保つために必要な措置が講じられていること。』(改正前の規則第一二条第一二号)と規定されているのみであつたが、医療における衛生検査の重要性が高まつてきたことにかんがみ、衛生検査所における検査の内容の質的向上を図るため、精度管理に関する諸基準を設けることとした」とある。事件は挙げられていない。改正の内容は、精度管理責任者の登録要件化、検査案内書・標準作業書6種・作業日誌6種・台帳6種(委託検査管理/試薬管理/統計学的精度管理/外部精度管理/検査結果報告/苦情処理)の作成、そして「外部精度管理調査への参加:衛生検査所の開設者は、その衛生検査所の検査業務について、都道府県その他の適当と認められる者が行う精度管理調査を受けなければならないこととされた」「研修」「書類の二年間保存」である。あわせて昭和56年医発第224号の別添「衛生検査所指導要領」を廃止し、第2版を作成した
- 18検体検査の精度管理等の現状について(総論)(第1回 検体検査の精度管理等に関する検討会 資料3、平成29年10月27日)厚生労働省医政局 · 2017 · accessed 2026-09-02裏付けた主張: p.3 に「医療機関が自ら行う検体検査については、医師の適切な管理の下に行われることを前提としているため、その精度管理の基準は法律上は設けられていないが、外部精度管理等を要件とする診療報酬の検体検査管理加算により、診療報酬上の評価を行っている」とある。p.12 の表は実施主体別の規制を「医療機関/医療機関内/品質・精度管理の基準について法律上の規定なし。」「委託業者/ブランチラボ/明確な法律上の規定がなく、受託業者の基準として、一部省令に記載されている。」「委託業者/衛生検査所/登録基準に『構造設備、管理組織その他の事項』とあり、精度管理については『その他の事項』として省令委任。」と整理する。すなわち2018年12月1日まで、衛生検査所の精度管理でさえ「その他の事項」を根拠とする省令委任にすぎなかった。同資料は平成29年時点の検体検査管理加算(Ⅰ)〜(Ⅳ)の施設基準も掲げ、(Ⅳ)の基準4・5が「定期的に臨床検査の精度管理を行っていること」「外部の精度管理事業に参加していること」であることを示す
- 19特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて(平成18年3月6日 保医発第0306003号)別添1厚生労働省保険局医療課 · 2006 · accessed 2026-09-02裏付けた主張: 「第20 検体検査管理加算(Ⅱ)」の施設基準に「(4) 定期的に臨床検査の精度管理を行っていること。」「(5) 外部の精度管理事業に参加していること。」があり、「第19 検体検査管理加算(Ⅰ)」は「検体検査管理加算(Ⅱ)の施設基準のうち(2)から(6)までのすべてを満たしていること」とする。すなわち40点の最下位区分にも精度管理要件が及ぶ。この時点で区分は(Ⅰ)(Ⅱ)の2つのみで、(Ⅲ)は平成20年度、(Ⅳ)は平成22年度の新設である。別添2の様式20は「4 臨床検査の精度管理の実施の状況 実施している・実施していない」「5 参加している精度管理事業の名称」を届け出させ、記載上の注意で「臨床検査の精度管理の実施状況の資料(実施責任者名、実施時期、実施頻度など実施状況が具体的にわかるもの)を添付すること」と求める。なお同通知は前身を「平成16年2月27日保医発第0227003号」と特定するが、その本文には到達できておらず、(Ⅰ)(Ⅱ)の新設年は確定していない
- 20特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて(令和8年3月5日 保医発0305第8号)別添1厚生労働省保険局医療課 · 2026 · accessed 2026-09-02裏付けた主張: 全1,030頁。検体検査管理加算の施設基準のうち「定期的に臨床検査の精度管理を行っていること」「外部の精度管理事業に参加していること」は、平成18年3月6日 保医発第0306003号から令和8年度まで一字一句変わっていない。この間の実体的な変更は、平成20年度の緊急検査体制への微生物学的検査の追加、平成28年度の国際標準検査管理加算の新設、令和6年度の同加算への(2)追加、令和8年度の(Ⅳ)へのパニック値要件(7)の追加である。令和8年度改定では(Ⅲ)が330点、(Ⅳ)が550点に引き上げられたが、精度管理の(4)(5)は触られていない。あわせて本通知は在宅療養支援診療所など他の施設基準も収載する
- 21(令和7年)主な施設基準の届出状況等(中央社会保険医療協議会 総会 第653回 資料 総-4-1、令和8年7月22日)厚生労働省保険局医療課 · 2026 · accessed 2026-09-02裏付けた主張: 令和7年8月1日現在の届出数。検体検査管理加算(Ⅰ)は病院2,389・診療所417、(Ⅱ)は病院2,497・診療所59、(Ⅲ)は病院31・診療所0、(Ⅳ)は病院792・診療所1。国際標準検査管理加算は病院263・診療所1。分母は医科の保険医療機関で病院8,019・診療所89,094(p.1)。病院の(Ⅰ)〜(Ⅳ)合計は5,709で、8,019に対し71.2%(本稿の計算)。国際標準検査管理加算の届出は平成28年の61施設から令和7年の263施設へ増えている。同資料は病理診断管理加算1が480病院、加算2が375病院であることも示す
- 22ゲノム医療等の実現・発展のための具体的方策について(意見とりまとめ)(平成28年10月19日)厚生労働省 ゲノム医療実現推進協議会 ゲノム情報を用いた医療等の実用化推進タスクフォース(座長 福井次矢) · 2016 · accessed 2026-09-02裏付けた主張: p.11「(1)遺伝子関連検査の品質・精度の確保」の現状認識に「衛生検査所に対しては、臨床検査技師等に関する法律に基づき構造設備、管理組織、精度管理等の基準が定められているが、遺伝子関連検査に関する基準は必要な検査機器が規定されるなど一部に限られている」「医療機関に対しては、機関内で自ら行う臨床検査については、遺伝子関連検査を含めて法的な基準は定められていない」とある。そして意見が一致した点として「遺伝子関連検査の品質・精度を確保するためには、遺伝子関連検査に特化した日本版ベストプラクティス・ガイドライン等、諸外国と同様の水準を満たすことが必要であり、厚生労働省においては関係者の意見等を踏まえつつ、法令上の措置を含め具体的な方策等を検討・策定していく必要がある」と記す。厚生労働省が法改正の背景として公式に挙げているのは、この意見とりまとめただ一つである
- 23第196回国会 参議院厚生労働委員会 第2号(平成30年3月22日)国立国会図書館 国会会議録検索システム · 2018 · accessed 2026-09-02裏付けた主張: 武田俊彦 厚生労働省医政局長が、省令の基準を絞った経緯について「具体的には、検体検査の精度の確保に係る責任者は専門的な修練を受けた医師又は臨床検査技師に限るべきといった御意見もございましたし、他方で、医療機関における検体検査の精度管理の基準につきましては、初めての試みということでもあるため、最低限必要なところで絞るべきではないかなどの御意見があったところでございます」と答弁する。同じ質疑で宮島喜文議員は「改正医療法第十五条の二においては、病院、診療所、助産所の管理者は…衛生検査所、ブランチラボ等については、改正医療法十五条の三において同様の規定がされている」「医療法に初めてこの精度管理という文言が明文化されたということでございまして、長年私も臨床検査に携わっておりました立場から考えますと大変意義深いもの」と述べている
- 24検体検査の精度管理等に関する検討会 とりまとめ(平成30年3月)厚生労働省 検体検査の精度管理等に関する検討会(座長 楠岡英雄) · 2018 · accessed 2026-09-02裏付けた主張: 全24頁。外部精度管理調査を努力義務とした理由を「外部精度管理調査については、一律義務とした場合、申し込まれる受検の全ての実施体制が整っていないこと」「地域医療の円滑な提供における影響へ配慮することが必要とされること」から「努力義務とすることが適当である」と記す。自己評価として「我が国における遺伝子関連検査・染色体検査を始めとする検体検査の精度の水準を世界標準に近づけるための第一歩」と位置づける。全文中「医療事故」「インシデント」「有害事象」の出現回数はいずれも0で、根拠として挙がるのはISO 15189との分類不一致、遺伝子関連検査の国際水準、検査分類の省令事項化である。また p.20 に「臨床検査室の基準・規格として現在国内で用いられているものとしては、ISO 15189(診療報酬における国際標準検査管理加算、臨床研究中核病院の遵守すべき基準…)や、米国病理医協会(CAP)の認定プログラム等が挙げられる」とあり、全24頁で「診療報酬」の語が現れるのはこの1頁のみである
- 25医療法等の一部を改正する法律の一部の施行について(平成30年8月10日 医政発0810第1号 厚生労働省医政局長通知)厚生労働省医政局 · 2018 · accessed 2026-09-02裏付けた主張: 第2の1(4)エに「病院等が検体検査(遺伝子関連・染色体検査を除く。)を行う場合の内部精度管理の実施、外部精度管理調査の受検及び適切な研修の実施については、地域医療への影響等を勘案し、まずは努力義務としたところであるが、これらは精度の確保の方法として重要な手法であり、積極的に活用すべきである」とある。第2の1(1)は「病院及び診療所においては、検体検査を含めた医療を提供するために必要な面積、検査用機械器具が具備されていること。なお、…構造設備について特段の基準は定めなかったところである」とし、第2の1(2)アは精度の確保に係る責任者について「業務経験については特段の要件は定めない」とする(参考として衛生検査所の精度管理責任者の「検体検査の業務に係る6年以上の実務経験及び精度管理に係る3年以上の実務経験」を挙げるにとどまる)
- 26臨床検査の精度管理河野均也、日本内科学会雑誌 90(11):2161-2168 · 2001 · accessed 2026-09-02裏付けた主張: 日本医師会臨床検査精度管理調査の成績の経年推移を示した数少ない資料。図4は酵素項目の方法間変動係数の1977年から1996年への推移を示し、AST 約23%→約5%、ALT 約22.5%→約3.5%、LD 約24%→約5%、ALP 約15.5%→約5%、CK 約53%(1980)→約7%、GGT 約31.5%→約9.5%。図3は総合評点89点以下の施設割合が約77%(1971)→約45%(1972)→約17%(1974)→約20%(1979)→約15%(1980)と推移し、1974年以降は15〜25%で横ばいであることを示す。ただし本文は改善を標準化対応(JSCC勧告法の提示 1989-1995年、酵素標準物質の発売1997年)の結果として説明しており、外部精度管理の受検自体が原因とは書いていない。そしてデータは1996年で終わっている
- 27医療機関における検体検査の精度の確保に係る実態調査(令和2年度厚生労働科学研究)厚生労働科学研究費補助金(研究代表者 矢冨裕) · 2021 · accessed 2026-09-02裏付けた主張: 2018年12月の医療法改正の施行後に行われた唯一の実態調査。2020年に「法改正前」と「法改正後」を同時に回答させる回顧的自己申告方式で、2,276病院に依頼し回答は617病院(27.1%)。病院の0〜10の自己評価で、内部精度管理を行っている項目の割合は8.43→8.93、外部精度管理調査を受検している項目の割合は8.04→8.30。測定値そのもの(変動係数や評価区分)の改正前後比較は行われていない。衛生検査所については「外部精度評価を行っている項目の割合は、法改正前後でほとんど変化は見られなかった」とし、診療所については外部精度管理調査を受検していない施設が半数以上と報告する。総括には「低評価項目・低評価施設に対するフォローアップ体制が必要である」が平成29年度報告書と同じ形で再掲され、「第三者による通年の精度管理調査と評価は、諸外国に倣い、国家レベルで取り組むべき重要な課題」とも記す。行政効果報告欄のガイドライン等の開発は「現時点ではなし」
- 28個別改定項目について(中央社会保険医療協議会 総会、平成30年2月7日)厚生労働省保険局医療課 · 2018 · accessed 2026-09-02裏付けた主張: 全492頁。医療法改正(平成29年法律第57号)の検体検査部分が平成30年12月1日に施行される年度の改定資料でありながら、「検体検査管理加算」の出現回数は0、「精度管理」の出現回数も0である。「検体検査」は p.480 の2件のみで、内容は「検体検査の実施料については、診療報酬改定時に衛生検査所検査料金調査による実勢価格に基づいて見直しを実施してきたところであり、これまでと同様の見直しを行う」という実勢価格の適正化である。平成28年3月4日 保医発0304第2号と平成30年3月5日 保医発0305第3号の検体検査管理加算の条項は全文同一で、改定説明会資料の見え消し版にも改正マークが付いていない。すなわち2017年6月1日の参議院厚生労働委員会で鈴木康裕 保険局長が「今回の法改正の趣旨を踏まえまして…しっかりと検討したい」と答弁した後、診療報酬側に対応は行われなかった
- 29External quality assessment providers' services appear to more impact the immunohaematology performance of laboratories than national regulatory and economic conditionsBuchta C, Coucke W, Mayr WR, et al., Clinical Chemistry and Laboratory Medicine 60(3):361-369(PMID 35041777、本文PDFで全文確認) · 2022 · accessed 2026-09-02裏付けた主張: 対象は検体検査一般ではなく免疫血液学、具体的にはABO・RhD phenotyping のEQA成績である。26のEQAプロバイダが73か国・2004年から2019年のデータを提供し、データクレンジング後に解析対象として残ったのは36か国・756,369結果。うち「all resident laboratories が代表されている」15か国を別途 subset として解析している(ABO 120,940、RhD 116,316)。EQA参加義務については、全36か国では ABO 1.4% vs 0.32%(p=0.4428、有意差なし)、RhD 0.49% vs 0.46%(p<0.0001)と義務のある国のほうが悪いが、15か国 subset では逆に「significantly less ABO and RhD phenotyping mistakes were recorded in countries with a legal obligation to participate in EQA」(ABO 0.34% vs 0.52%、RhD 0.38% vs 0.58%、いずれも p<0.0001)。当局による監視は subset では有意差なし(ABO p=0.5067、RhD p=0.8746)、金銭的帰結は subset では帰結のある国のほうが悪い(RhD 0.68% vs 0.43%、p<0.0001)。EQAプロバイダによる個別支援は ABO で一貫して良い(全体 0.59% vs 0.94%、p=0.0016/subset 0.03% vs 0.5%、p<0.0001)が RhD では有意差なし(p=0.2042/p=0.1512)。考察は「The only factors that appear to be consistently associated with slightly lower error rates are the EQA provider's advisory services for those laboratories that reported incorrect results, and a frequency of EQA samples of eight or less per year」とする。ただし同じ考察が「None of the national regulatory conditions examined … was associated with lower error rates」とも書いており、これは自分たちが報告した15か国 subset の結果と整合しない。限界として「we cannot directly demonstrate the impact of external factors examined here on the performance quality of laboratories, as no data is available before and after a change in regulatory or economic conditions」「it has not yet been clarified whether the effects on results in immunohaematology EQA also apply to other analytical methods」を明記する。すなわち法改正の前後を比較した研究ではなく、義務化の効果そのものを判定したものではない。データ保護のため国別のエラー率は開示されておらず、36か国・15か国がどの国かは本文からは分からない
- 30外部精度管理調査に関する研究(平成29年度厚生労働科学特別研究「臨床検査における品質・精度の確保に関する研究」分担研究報告書)厚生労働科学特別研究事業(研究代表者 矢冨裕) · 2018 · accessed 2026-09-02裏付けた主張: 「低評価であった項目や施設に対する改善作業のフォローアップも行われていない。このような状況下では、調査により精度管理上の問題点が見出されても、それが改善したか否かについての客観的な評価は翌年の調査の受検結果が出るまで待たなければならず、その間の検査精度について保証されない状況が1年間も続く」と指摘する。また「外部精度管理の受検回数は、先進諸外国では概ね年3回以上行われているのに対し、わが国では…年1回しか施行されていない」「現在の精度管理事業においては、内部情報の入手等による不正行為を完全に排除できる体制は整備されていない」とも記す。日本医師会臨床検査精度管理調査については「強制力がない中にあって全病院の約4割の参加が得られており」としつつ、「受検回数が年1回であることや、施設の特性により受検の割合にばらつきがあることは、臨床検査精度の確保や均霑化にとって問題であり、今後本調査を含めた外部精度管理への参加をより積極的に進めるための、法制化を含めた体制の整備が望ましい」と結ぶ
- 31令和元年度 医療法第25条第1項の規定に基づく立入検査結果厚生労働省医政局 · 2022 · accessed 2026-09-02裏付けた主張: 改正省令施行後の最初の通年である令和元年度、8,242病院中7,749施設に立入検査が実施された。適合率の低い小項目の上位10のうち5つが検体検査に関するものである。1位「検体検査に係る台帳作成」4,863施設中4,397施設適合=90.4%、2位「検体検査に係る作業日誌作成」4,886中4,442=90.9%、3位「検体検査に係る精度管理体制整備」4,388中4,015=91.5%、4位「検体検査に係る標準作業書の常備・周知」4,876中4,495=92.2%、6位「検体検査に係る精度確保責任者の配置」4,936中4,658=94.4%。精度管理体制整備の適合率はその後 96.5%(令和2年度)→94.6%(令和3年度)→96.2%(令和4年度)→96.0%(令和5年度)と推移している(令和5年度分の公表は令和8年5月29日、https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/001706226.pdf )
- 32日本臨床衛生検査技師会 臨床検査精度管理調査における病理部門の変遷医学検査 69(3):438-444 · 2020 · accessed 2026-09-02裏付けた主張: 日臨技の病理部門の精度管理調査は1972年のAzan染色(191施設)に始まり、1997年に初のフォトサーベイ(887施設)、2017年に1,246施設、2019年に1,225施設が参加した。実技を測る染色サーベイは2010年を最後に廃止され、以後はフォトサーベイのみである。廃止の理由は「判定にかかる労力と費用やヒト組織を用いた試料の調達などの倫理的問題」。評価の設計として「原則として参加施設の正解率80%未満の設問は評価対象外」とし、設問は「正解率が80%以上となるように調整を加えて提示」される。また「病理フォトサーベイは診断を求めるものではなく、診断に必要な染色法の選択や良好な染色態度の同定、アーチファクトの原因追求などを求める」と位置づけられている。なお別の技師会による論文(医学検査 72:426, 2023)は「正解率の低かった設問を機械的に評価対象外とすると、多くの施設で間違った認識をしている場合の是正は難しい」と批判している
- 33令和5年度 衛生検査所監視指導結果報告東京都保健医療局 · 2024 · accessed 2026-09-02裏付けた主張: 「衛生検査所に対する監視指導は、昭和58年度から実施しており、今年度で41回目を迎えた。昭和62年度から精度管理面の指導を重点に、東京都衛生検査所精度管理専門委員同行による監視指導を行っている。この間、衛生検査所における精度管理は、着実に向上しているものの、一部の施設においてはいまだに正確性に欠けるものが見られ、監視指導効果が必ずしも十分といえない面も見受けられた」と記す。「特別監視指導」は精度管理調査結果に問題のあった施設に対して行うもので、昭和58年度以降ほぼ毎年10前後が該当している。令和5年度の特別監視指導7施設の選定理由には「施設E(R1、R2、R3)… 血球算定 正確度:ブラインド WBC(3検体)、MCV(4検体)、Ret(3検体)、Ht(4検体) 管理限界外」「施設A(R2,R3)… 病理組織 抜取標本TM1総合評価C判定」といった記載がある。すなわち精度管理調査の結果が立入先の選定に実際に使われている
- 34令和7年度 東京都衛生検査所精度管理事業報告書東京都保健医療局 · 2026 · accessed 2026-09-02裏付けた主張: 全国で唯一、ブラインド方式(協力医療機関を経由し通常の検査依頼として試料を送る)をオープン方式と併用している。令和7年度はオープン方式66施設(都内60・都外6)、ブラインド方式20施設(27の協力医療機関経由)。都内の登録衛生検査所は令和7年4月1日で116施設なので、都の事業への都内からの参加は60/116=51.7%になる。ただし臨床検査技師等に関する法律施行規則第12条の2第2項の義務は「都道府県その他の適当と認められる者が行う精度管理に関する調査」を受けることなので、日本医師会や日臨技など他団体の外部精度管理調査を受検していても義務は満たしうる。したがってこの51.7%は都の事業への参加率であり、外部精度管理義務の遵守率ではない。第1回(昭和57年度)はオープン55施設・登録76施設だった。報告書全体(総合評価・部門別・監視指導結果一覧・参加施設名簿)が都のウェブサイトで公開されており、施設名は略号で匿名化されている。公開にあたっては「本報告書を都のホームページに公開することについて、本調査の実施通知により、衛生検査所の同意を得た」と記されている
- 35Principles and guidance for interpretive external quality assessment schemes in laboratory medicine (G153)The Royal College of Pathologists(英国) · 2017 · accessed 2026-09-02裏付けた主張: 解釈型の外部精度評価(参加者が個々の病理医であり、測定ではなく専門的判断を行うもの)についての指針。§1に「However, interpretive EQA schemes are not normally designed to have the rigour of a professional examination and therefore the results should NOT be regarded as a form of proficiency testing that provides a measure of a pathologist's competence」とあり、個人単位で行われているにもかかわらず、それを能力の測定とみなすべきではないと明記する。§6は「the College does not agree that interpretive EQA scheme results should be made available to third parties such as hospital managers or accreditation assessors」とし、結果を第三者に開示すべきでないとする
- 36EQA assurance: pause in QAPC and NQAAP activity from January 2026The Royal College of Pathologists(英国) · 2025 · accessed 2026-09-02裏付けた主張: 2025年11月5日の公表。英国の病理領域の外部精度評価を監督してきた QAPC(Quality Assurance Policy Committee)と NQAAP(National Quality Assurance Advisory Panels)の活動を2026年1月から停止すると発表した。理由として「the current framework supporting national oversight in pathology requires stronger governance, coordination and sustainable funding」「In the absence of an agreed national funding mechanism or formal links with regulatory bodies, the College has taken the difficult decision to pause QAPC and NQAAP activities from January 2026」を挙げる。RCPath・IBMS・LabMed の三会長連名のポジションステートメントは「The current framework lacks formal links to national regulatory and oversight bodies, such as the Care Quality Commission, the Medicines and Healthcare products Regulatory Agency and the Department of Health and Social Care」「Despite repeated approaches to relevant health departments, agencies, EQA providers and service leaders, no alternative source of funding has yet been secured」と記す。英国の外部精度評価は法令に基づく義務ではなく、NHS の仕様書・UKAS 認定・職能団体の枠組みによって支えられてきた。停止するのは全国的な監督・調整の層であり、EQA スキームそのものではない
- 37UK NEQAS position statement regarding temporary pause in QAPC/NQAAP activityUK NEQAS(英国) · 2025 · accessed 2026-09-02裏付けた主張: 止まるのは「the pause in activity of the QAPC and NQAAP oversight of laboratory performance from January 1st, 2026」であって、EQA スキームそのものではないと明示する。「UK NEQAS centres will continue to manage performance concerns internally after January 1st 2026」「UK NEQAS Organisers will continue to work with the support of the Schemes' Steering Committees, other EQA providers, commercial companies and/or the MHRA, as required, to resolve the concern in the interest of patient safety」と記す。すなわち測る仕組みは動き続け、止まるのは全国的な監督層である
- 3842 CFR 493.855 Standard; Cytology: gynecologic examinations / 42 U.S.C. 263a(f)(4)米国 Code of Federal Regulations / Public Health Service Act(CLIA) · 2026 · accessed 2026-09-02裏付けた主張: 米国は婦人科細胞診について個人単位の技能試験を法令で義務づけている。根拠は施行規則ではなく法律本体で、42 U.S.C. 263a(f)(4)(B)(iv) が「periodic confirmation and evaluation of the proficiency of individuals involved in screening or interpreting cytological preparations, including announced and unannounced on-site proficiency testing of such individuals, with such testing to take place, to the extent practicable, under normal working conditions」と定める。42 CFR 493.855(a) は「The laboratory must ensure that each individual engaged in the examination of gynecologic preparations is enrolled in a proficiency testing program approved by CMS…each individual is tested at least once per year and obtains a passing score」とし、(b)(1) は10枚組で90%未満を不合格、(b)(3) は3回目の不合格で「must cease examining gynecologic slide preparations immediately upon notification of test failure」とする。CMS の集計(2005-2024)によれば2025年の受検者は8,535人、不合格290人で、細胞検査士のいない病理医の合格率は84%と一貫して最も低い。一方、組織診(42 CFR 493.1273)には技能試験も検査室間比較も無く、CLIA の対象は「materials derived from the human body」に限られるため生理機能検査は定義上対象外である
- 39European guidelines for quality assurance in cervical cancer screening, 2nd editionEuropean Commission / IARC · 2008 · accessed 2026-09-02裏付けた主張: §4.7.2.2「External quality control of screening skills」に「Proficiency testing is mandated in some but not all member states of the European Union」とあり、EU加盟国のあいだで細胞診の技能試験が義務である国とそうでない国が分かれていることを、EUの公刊物自身が記している。§4.7.2.1 は「External quality assurance via test cases may take the form of regular examination of 「test」 cases … with assessment of individual performance on a voluntary basis」とし、任意ベースの実施を想定する。文書の冒頭には「The views expressed in this document are those of the authors and do not necessarily reflect the official position of the European Commission」とあり、法的拘束力を持たない
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その点数は、誰が付けているのか看護必要度・FIM・在宅復帰率を辿った回。「同じ医療法の下で、検体検査には精度の確保が義務づけられ、看護必要度とFIMには何も義務づけられていない」と書いた。本稿はその義務の側を、成立の経路から見る認知症の重さは、何で決まっているのか認知症高齢者の日常生活自立度を辿った回。法的義務である検体検査の精度確保と、職能団体が行う精度管理調査は別のものだと訂正した。本稿はその区別を出発点にする閾値は、どこから来たのかこの列の第2回。閾値の来歴を辿り「閾値をアウトカムに固定できるのは対象を絞ったときだけ」という形を得た。本稿が辿るのは閾値ではなく、義務の語尾である医療DXは、測定インフラの欠如を埋めるのか医療DXが測定インフラの欠如を埋めるかを見た回。NCDが専門医申請の要件という梃子で動いていることを引いた。本稿の梃子は診療報酬である「できている」とは、誰が言ったのかこの列の第14回。評価は大量にあるのに総括判定が無いことを見た。本稿は逆で、義務は書かれたのに、書いた前後で何が変わったかが測られていない