02 アクセスと提供体制/JAPANEUROPE
医療DXは、測定インフラの欠如を埋めるのか
この列は何度も同じ空白に当たった。施設別の治療アウトカムが公開されていない。国はいま、その空白を埋めると言っている。だから仕様書を読んだ。技術解説書217頁に「二次利用」は0回、「施設別」は0回。退院時転帰を運ぶ退院時サマリーは、送付機能の「実装を任意とします」と書かれている。一方で二次利用ワーキンググループは、空白を私よりも正確に名指ししていた。医療DXは収集と連結の層を埋め始めている。埋まっていないのは、何を施設の成果として測り、どう公表するかという層である。
ダイジェスト解説 VIDEO
この列は、同じ形の空白に何度も当たった。
医療費が質に転化しているかを調べようとしたとき、日本には施設別の治療アウトカム指標がほぼ公開されていないことに行き当たった1。医療法人と関連事業者の取引を調べようとしたときは、開示義務は広く存在するのに、それを全国で集計する仕組みがどこにも無いことに行き当たった。継続性を測ろうとしたときも、人の側から入口を測る公式統計は地理だけだった。
データが無いのではない。集まっているのに、統計にならない。
国はいま、その空白を埋めると言っている。全国医療情報プラットフォーム、電子カルテ情報共有サービス、そして令和7年12月に公布された医療法等の一部を改正する法律。
だから、仕様書を読んだ。
先に結論を書く
埋まる層と、埋まらない層がある。
医療DXは、収集と連結の基盤を整えつつある。政策側も、アウトカム情報が足りないことを認識している。しかし、施設別に公表できる妥当な指標と、その報告制度は、まだ設計されていない。
公開時の本稿は、これを一つの「分母」の問題として書いた。段階が違う※訂正。記録・登録・二次利用・指標化・公表は別々の層であり、それぞれ別の条件で詰まる。以下、その区別を置きながら読み直す。
証拠として置くのはこの三つである。医療DXの計画文書・仕様文書あわせて399頁を機械的に数えたところ、「施設別」という語は一度も出てこない。電子カルテ情報共有サービスの技術解説書217頁には「二次利用」が0回である。そして今回確認した標準項目のうち「退院時転帰」と明示された項目は退院時サマリーに置かれており、その送付機能は「実装を任意とします」と書かれている。
ただし、私が「無い」と書こうとしたものを、二次利用ワーキンググループは私よりも正確に名指ししていた。そこは後で書く。
まず、約束の側を読む
医療DX推進本部が令和5年6月2日に決定した工程表は、全11頁である2。
そこには「⑤ 医療情報の二次利用の環境整備」という項がある。何のための二次利用か。
民間事業者との連携も図りつつ、保健医療データの二次利用により、創薬、治験等の医薬産業やヘルスケア産業の振興に資することが可能となり、結果として、国民の健康寿命の延伸に貢献する。
全国医療情報プラットフォームの全体像図も、同じことを言っている3。4つ挙げられたユースケースのうち二次利用は④で、「公衆衛生、医学・産業の振興に資する二次利用」と題され、便益は二つ書かれている。
政策のための分析ができることで、次の感染症危機への対応力強化につながる。 医薬品等の研究開発が促進され、よりよい治療や的確な診断が可能になる。
創薬と、治験と、感染症危機。
工程表11頁を機械的に数えると、「二次利用」5回、「研究」8回に対し、「統計」「評価」「アウトカム」「エビデンス」「質の向上」はいずれも0回である。全体像図でも「アウトカム」「施設別」「質」は0回だった。
医療費が質に転化しているかを検証する、という用途は、この計画の目的として書かれていない。
次に、設計の側を読む
計画に書かれていないものが、設計に入っていることはある。実際に何が運ばれるのかは、仕様書が決めている。
電子カルテ情報共有サービスの技術解説書は、令和8年6月の2.1.0版で217頁ある4。その 3.4「本サービスにおけるFHIRの位置づけ」に、決定的な区別が置かれている。
本サービスでは、臨床情報および健診結果報告書について、FHIR形式による各リソースの構造化データ(要素やコード体系による機械可読な情報)での登録を必須事項とします。 一方で、診療情報提供書および退院時サマリーについては、当面の間、医療機関間で電子文書のやり取りを円滑に開始できるよう、Compositionリソースを用いた半構造的な文書情報の共有から運用を開始します。 Composition.section要素配下の各構造情報セクション……については、Narrative(ナラティブ:テキスト記述)による叙述的な記載のみでも差し支えありません。
機械可読な構造化データが必須なのは、臨床情報と健診結果報告書である。二つの文書は、テキストだけでよい。
ここで、患者の転帰がどこにあるかを見る。
概要案内が挙げる退院時サマリーの項目に、それはある——「退院時詳細(退院時転帰、退院先等)」5。全国で共有される5つの臨床情報(傷病名、感染症、薬剤アレルギー等、その他アレルギー等、検査)の側には、転帰は無い。
ただし公開時の本文は、これを「患者の転帰が現れるのは退院時サマリーだけ」と書いた。限定が要る※訂正。今回確認した電子カルテ情報共有サービスの標準項目のうち、「退院時転帰」と明示された項目が退院時サマリーに置かれている、が正確である。退院先や死亡といった退院時転帰は、医療アウトカムの一部にすぎない。再入院、合併症、検査値の推移、機能、患者報告アウトカム、長期死亡などは、別のデータから導出・連結されうる。
そのうえで、この退院時サマリーは、
第一に、独立して共有されるのではなく「診療情報提供書の添付文書として紹介先医療機関に連携できる仕組み」である。紹介が起きたときに、紹介先の一機関へ届く。
第二に、テキスト記述のみで差し支えない。ただし「非構造化」とは書かない※訂正——FHIRのNarrative部分もJSONとしては機械可読である。足りないのは意味的なコード化のほうである。
第三に、技術解説書はこう書いている。
なお、退院時サマリーの送付機能については、医療機関の運用方針やシステム対応状況に応じて実装を任意とします。
転帰という項目には、三重の任意性がかかっている。
そして217頁を機械的に数えると、「二次利用」0回、「施設別」0回である。
「3文書6情報」という名前について
この制度は「3文書6情報」という名前で呼ばれてきた。6情報が決まったのは令和4年11月28日の資料である6。
具体的には、医療現場での有用性を考慮し、以下の電子カルテ情報から標準化を進め、段階的に拡張する。医療情報:① 傷病名、② アレルギー情報、③ 感染症情報、④ 薬剤禁忌情報、⑤ 検査情報(救急時に有用な検査、生活習慣病関連の検査)、⑥ 処方情報
「医療現場での有用性を考慮し」——選定の基準がここに書かれている。目の前の患者を診るのに役立つかどうかである。統計になるかどうかではない。
そして同じ資料は、選んだ直後に、二つについてこう書いている。
アレルギー情報:厚生労働省標準規格で採用されているコードがないことから、テキストデータで閲覧可能とする 薬剤禁忌情報:厚生労働省標準規格では症状や重症度、制限情報等も含めたコードがないことから、テキストデータで閲覧可能とする
標準化のための6情報のうち、2つがコード化されないまま出発している。
令和8年7月の概要案内を見ると、中身はさらに動いている5。図に並ぶのは、3文書に続いて④傷病名 ⑤感染症 ⑥薬剤アレルギー等 ⑦その他アレルギー等 ⑧検査の5項目である。処方情報は電子処方箋管理サービスの側に移り、薬剤禁忌はアレルギーに吸収された。そしてアレルギーの範囲は絞られた。
本サービスに登録するアレルギー等情報は、「重篤なアレルギー等」を対象とします。まずは、アナフィラキシー(疑いを含む)を登録対象としますが……
名前は変わらないまま、中身が変わっている。これは第2回から繰り返し見てきた型1——同じ名前の下で、対象が入れ替わる——そのものである。ここでは制度自身の改訂によって起きている。
分母のこと
仮に転帰が構造化されたとして、それは誰の転帰になるのか。
電子カルテの普及状況は、令和5年の医療施設調査でこうなっている7。
| 普及率 | 実数 | |
|---|---|---|
| 一般病院 | 65.6% | 4,638/7,065 |
| うち400床以上 | 93.7% | 609/650 |
| うち200〜399床 | 79.2% | 956/1,207 |
| うち200床未満 | 59.0% | 3,073/5,208 |
| 一般診療所 | 55.0% | 57,662/104,894 |
400床以上は94%、診療所は55%。
ただし、この差がそのままデータベース上の可視性の差になるとは限らない※訂正。接続率、登録の義務づけ、実装の互換性、項目の欠測も介在する。普及率は、可視性の上限、あるいはリスク要因として位置づけるべきである。
そして日本医師会が紙カルテの診療所に行った調査(有効回答5,466件)では、
調査では54.2%が「導入不可能」である旨の回答
理由は「ITに不慣れ」「導入費用が高額」「導入しても数年しか使用する見込みがない」。
一方、法律は目標を持っている。国会修正で加えられた地域医療介護総合確保法第12条の3第4項は、「政府は、令和12年12月31日までに、電子カルテの普及率…が約100%となることを達成するよう……実現しなければならない」と定める8。
患者の側にも門がある。閲覧は「受診時にマイナ保険証で受付をし情報提供に同意することで」成立し、5項目それぞれに個別の閲覧同意がかかる5。
ただし公開時の本文は、これを「四つの門を通ったものだけが、データになる」と一本の流れにまとめた。段階が違う※訂正。マイナ保険証による項目別の同意は、主として診療時の閲覧、つまり一次利用の条件である。一方、改正法が整備する仮名化情報の利用・提供は、別の制度経路である。
分母は三つに分けるべきだった。
| 何が決めるか | |
|---|---|
| ① 何が登録されるか | 医療機関の導入と、登録の必須性 |
| ② 診療者が何を閲覧できるか | マイナ保険証での受付と、項目別の同意 |
| ③ 二次利用・公表に何が抽出されるか | 改正法に基づく別の制度経路 |
①の分母は、大病院をよく見て、診療所を見落とす可能性がある。そして地域医療と総合診療は、主に診療所で行われている。測定インフラが整うほど、病院の医療は測られ、地域の医療は測られないまま残る可能性がある。
ここまでを、私は言いすぎていた
以上を書いた時点で、私は「医療DXは測定インフラの空白を埋めない」と結論するつもりだった。
それは正確ではない。
医療等情報の二次利用に関するワーキンググループの資料を読むと、空白は名指しされている9。
我が国では、カルテ情報(臨床情報)に関する二次利用可能な悉皆性のあるDBがなく、診療所を含む医療機関における患者のアウトカム情報について、転院等の場合も含めた長期間の分析ができない。
私が書こうとしたことが、行政の資料に先に書かれていた。「診療所を含む」という限定まで入っている。
対応方針も置かれている。
現在構築中である「電子カルテ情報共有サービス」で共有される電子カルテ情報について、二次利用を可能とする。その際、匿名化・仮名化情報の利活用を可能とする。
議論の整理はさらに、二次利用の意義としてこう書く10。
ある治療を行った患者の転帰や検査結果等のアウトカムデータ、医療費や介護・障害福祉等のサービスの利用状況・コスト等の解析により、治療・サービスの質の精緻な評価につながる
そして法律も成立した。医療法等の一部を改正する法律(令和7年法律第87号)は令和7年12月12日に公布され、「医療情報の二次利用の推進のため、厚生労働大臣が保有する医療・介護関係のデータベースの仮名化情報の利用・提供を可能とする」と定めている8。
だから「埋めない」は誤りである。
埋まる層と、埋まらない層
では何が残るのか。数えた結果を並べる。
| 文書 | 頁 | 二次利用 | 転帰 | アウトカム | 施設別 |
|---|---|---|---|---|---|
| 医療DX工程表(R5.6.2) | 11 | 5 | 0 | 0 | 0 |
| 全国医療情報プラットフォーム全体像 | 1 | 3 | 0 | 0 | 0 |
| ECS技術解説書 2.1.0(R8.6) | 217 | 0 | 10 | 0 | 0 |
| ECS概要案内 2.1.0(R8.7) | 20 | 0 | 3 | 0 | 0 |
| 診療所向け標準仕様書 1.0(R8.3) | 96 | 0 | 0 | 0 | 0 |
| 二次利用WG 議論の整理(R6.5) | 19 | 37 | 3 | 2 | 0 |
| 二次利用 現状と対応方針 | 26 | 43 | 7 | 1 | 0 |
| 医療法等改正 成立報告(R7.12) | 9 | 1 | 0 | 1 | 0 |
399頁。「施設別」という語は、ひとつも無い。
ただし、この語数を制度間の断絶の主証拠にはできない※訂正。一次利用の実装仕様に「二次利用」が少ないのは、その文書の担当範囲から予想されることでもある。そして「施設別」が0回でも、医療機関別・病院別・医療機関ごと・ベンチマーク・質指標・フィードバック・比較・公表といった語で記述されている可能性が残る。
主張を直接検証できる形に置き直す。
| 段階 | 現在の文書で決まっていること | 未決定のこと |
|---|---|---|
| 記録 | 項目・形式 | 必須性、完全性 |
| 登録 | 共有基盤 | 参加率、欠測 |
| 二次利用 | 法的基盤、連結構想 | 抽出条件、品質管理 |
| 指標化 | 一部の研究・レジストリ | 定義、リスク調整 |
| 公表 | — | 単位、頻度、責任主体 |
書ける範囲はこうである。今回確認した文書には、施設別のアウトカムを一般向けに公表する明示的な制度設計を確認できなかった。
そして分布に構造がある。「二次利用」は計89回出てくるが、その全部が計画・政策の文書にある。うち80回は二次利用ワーキンググループの2文書に集中している。実際に何が運ばれるかを決める仕様文書3点(技術解説書・概要案内・診療所向け標準仕様書、計333頁)では、0回である。逆に「転帰」は計23回のうち13回が仕様文書に現れるが、そこでは任意項目として現れる。
約束を書く層と、設計を決める層が、同じ語彙を使っていない。
そのうえ、時間の見通しも長い。二次利用に関する規定(3②)の施行期日は「公布後3年以内に政令で定める日」に置かれている8。最も遅ければ令和10年12月である。日付は、まだ決まっていない。
整理すると、こうなる。
- 収集の層——悉皆的な臨床データベースを作る。課題は認識され、法的な足場もできた。進んでいる。
- 公開の層——施設ごとの成績を外から見えるようにする。399頁のどこにも現れない。
財務総研が指摘したのは、後者だった1。日本には施設別の治療アウトカムが「ほぼ公開されておらず」、DPC対象病院ですら部分的で、少症例はマスキングされる。米英仏は個別医療機関の重症度調整済みアウトカムを開示している。
その差は、この計画では縮まらない。
診療報酬は、先に払っている
ここに、この列がよく知っている形が一つある。
医療DX推進体制整備加算は令和6年度改定で新設され、初診時に月1回8点が付く11。その施設基準の(5)は、こうである。
電子カルテ情報共有サービスを活用できる体制を有していること。(経過措置 令和7年9月30日まで)
そして令和7年7月23日の中医協資料は、その経過措置を延ばす理由をこう書いている。
電子カルテ情報共有サービスについては、先の通常国会に提出された「医療法等の一部を改正する法律案」の成立・施行により本格稼働となるところ、現在、当該法律案が未成立であることや電子カルテ情報共有サービスに関する対応等を踏まえ、経過措置を令和8年5月31日まで延長する。
まだ本格稼働していないサービスを「活用できる体制」が、点数の要件になっている。そして稼働の前提である法律が、要件が定められた1年後にもまだ成立していなかった。
ただし「サービスより先に報酬ができた」と要約すると、行き過ぎる※訂正。この加算は経過措置の期間中も、オンライン資格確認、電子処方箋、マイナ保険証利用率といった他のDX体制要件を実際に評価している。(5)だけが宙に浮いていた、が正確である。
同じ加算のもう一つの要件、マイナ保険証利用率の推移も記しておく。
| 適用時期 | R6.10〜 | R7.1〜 | R7.4〜 | R7.10〜 | R8.3〜 |
|---|---|---|---|---|---|
| 加算1・4 | 15% | 30% | 45% | 60% | 70% |
| 加算2・5 | 10% | 20% | 30% | 40% | 50% |
| 加算3・6 | 5% | 10% | 15% | 25% | 30% |
数か月ごとに、丸い数字で上がっていく。第2回で見た閾値と、同じ形をしている。臨床的な根拠から導かれた線ではなく、普及を進めるための目標として置かれた線である。それ自体は不当ではない——ただし、この線を「体制が整った施設」の定義として使うなら、意味が変わる。
ついでに一つ、この資料には閾値の直下を数えた記録がある。小児科特例の届出7,074件のうち、利用率が12%以上15%未満に該当したのは15医療機関、0.2%であった。中医協が自分で分布を確かめている例である。
そして、施設別の公開は本当に答えなのか
ここで、自分の列と衝突する。
「日本は施設別アウトカムを公開していない。英国のように公開すべきだ」——そう書きたくなる。英国のSHMIは、毎月、trust単位で公表され、NHS Englandの認定公式統計である。対象は退院後30日以内の死亡で、施設別・診断群別の内訳も出る12。
だが第11回で、私はこう書いた13。
警報11件のうち、少なくとも10件は誤報(Girling ら)。 回避可能死亡は3.6%で、標準化死亡比との関連は統計的に有意でない(回帰係数0.3、95%CI −0.2〜0.7、Hogan ら)。 any metric based on mortality is unlikely to reflect the quality of a hospital
さらに、死亡率が2倍になったことを検出するのに必要な最小症例数は、膵切除で86件、人工股関節置換術で2,668件。そして最小症例数を満たす病院は、人工股関節では1%未満だった(Dimick ら)。
だから「英国のように公表せよ」とは書けない。
財務総研が指摘した空白は本物である。しかしその空白を埋める道具として施設別死亡比をそのまま選ぶと、雑音のほうが大きくなる。
ここで「単位の取り違え」とは書かない※訂正。個人の死亡を施設単位に集計すること自体は、正当な集団指標である。問題は集計の単位ではなく、症例数が足りないこと、リスク調整が不完全なこと、そして施設間の差より施設内の偶然のほうが大きいことにある。
SHMIの位置づけも、正確に書いておく。SHMIは施設の質を断定する指標ではなく、さらに調べるべき施設を拾い上げる警報として設計されている。上でGirlingらが示したのは、その警報の誤報率である。
空白があることと、その空白を今ある道具で埋めるべきことは、別の命題である。
解決の方向(案)
以下は私の案であって、どこかで採用されているものではない。順に、実行の難しさが上がる。
そして、いずれも検討の候補であって、検証を経た提案ではない※訂正。「今が最も安い」「法改正を要しない」といった書き方は、実装コスト・現場負担・仕様策定の実務を確かめたうえでの判断ではない。以下はそのつもりで読んでほしい。
① 転帰だけを、臨床情報の側に上げる。
現在、転帰は退院時サマリーの中にあり、そこは構造化が任意で、送付機能の実装すら任意である4。一方、臨床情報(傷病名・感染症・アレルギー等・検査)は構造化が必須である。転帰を6番目の臨床情報として立てれば、三重の任意性は一度に外れる。
これは法改正ではなく仕様の変更として実現しうる、というのが私の見立てである。技術解説書は改訂中で、運用開始用の版がこれから出る。順序としては、普及後より前のほうが安いはずだ——ただしベンダの改修負担も、入力する側の負担も、私は見積もっていない。
② 症例数の下限を、指標を選ぶ前に決める。
Dimick らの示した2,668件という数字は、指標を作ってから確かめる数ではなく、何を指標にできるかを先に決める数である。人工股関節で1%未満の病院しか条件を満たさないなら、その手技は施設別の死亡指標に向かない。どの手技・どの疾患なら成立するかを先に列挙し、そこだけを対象にする。
③ 「施設別」より前に、「手技別・疾患別」で始める。
日本には既に機能している例がある。National Clinical Database は、施設認定別の肝切除術後死亡を3.1%/3.8%/4.5%(P<0.001)として示した14。手技を限り、日本人データからリスクモデルを作り、内部検証を経ている。病院全体を一つの数字に畳む前に、この単位で積む道がある。
ただしこの結果が示すのは、リスク調整が可能であることまでである※訂正。認定群というまとまりの死亡率に差があることは、個々の施設を順位づけて公表してよいことを意味しない。②の症例数の問題は、そのまま残る。
④ 前例として、NCDの梃子を見る。
NCDが機能した理由の一つは、登録が報告義務ではなく、専門医申請の要件として制度に組み込まれていることである14。報告する動機が、専門職自身の利害に接続している。
電子カルテ情報共有サービスは、既に診療報酬(医療DX推進体制整備加算)に紐づいている11。同じ梃子は、もう据え付けてある。現在それが要求しているのは「活用できる体制」だが、転帰の登録率のような中身の要件に置き換える余地がある。
⑤ 診療所を分母に入れる設計を、先に確定する。
標準型電子カルテの診療所向け標準仕様書は96頁あるが、「転帰」「アウトカム」「二次利用」がいずれも0回である15。これから未導入の診療所に入るシステムの初版が、この状態で確定した。普及してから項目を足すのは、普及する前に足すより高くつく。
ただし、診療所に病院と同じ「転帰」欄を一律に置くのは、外来に病院モデルを持ち込むことになる※追記。外来の経過は入院のように区切られておらず、慢性疾患の多くは「転帰」の時点を持たない。必要なのは同じ欄ではなく、外来に合う単位の設計である。
⑥ 公開の設計を、収集の設計と同時に決める。
これが最も難しい。収集は法律の裏づけを得たが、公開は399頁のどこにも無い。そして②③を経なければ、公開してよい指標が何かも決まらない。順序としては最後だが、先に議題に載せておかないと、収集が終わった時点で「そういう約束ではなかった」となる。この列が何度も見てきたのは、その形である。
確信の低いところ
最も確信が低いのは、語数のカウントである。
数えたのは pdftotext で抽出した本文である。PDF中の図版に埋め込まれた文字は、抽出のされ方が版によって違う。実際、いくつかの表は列がずれた形で出た。「施設別0回」は、語の不在であって、概念の不在ではない。「医療機関ごとの」「機関別の」といった別の言い方で書かれていれば、この数え方では捕まらない。
次に確信が低いのは、仕様がまだ動いていることである。技術解説書は令和8年6月の2.1.0版で、運用開始用の版が予定されている。概要案内は令和8年7月に仕様方針の見直しを告知したばかりで、傷病名・アレルギー・感染症の登録基準はこの数か月で変わった5。本稿が読んだのは、動いている仕様の一時点である。
三つ目。「転帰は退院時サマリーにしか無い」は、現行仕様についての記述であって、二次利用の設計についてではない。二次利用の制度設計は「医療関係団体等の関係者や利活用者等の意見」を踏まえて今後決まるとされており9、施行日も公布後3年以内で未定である。そこで転帰の扱いが変わる可能性は、十分にある。
四つ目。解決の方向は、私の案である。①は仕様の議論を追い切れていない(既に検討されている可能性がある)。④のNCDについては、データ精度をカルテ突合で検証した研究に到達できておらず、捕捉率95%も自己申告値である14。
最後に、この記事が答えていない問いを書いておく。測定インフラが整ったとして、それを読む側の制度は準備されているのか。第9回で見たのは、認定調査の結果が制度にどう読まれるかという問題だった。データが揃うことと、それが判断に使われることの間には、まだ一段ある。
結論は、この形に置き直す※訂正。
医療DXは、測定インフラのうち収集と連結の層を埋め始めている。しかし、何を施設の成果として測り、どの分母で補正し、誰にどう公表するかという層は、まだ埋めていない。
訂正 CORRECTIONS
公開後に直したこと。本文は直したうえで、何をどう変えたかをここに残している。本文中の※ が、直した箇所を指す。
- 訂正医療DXの異なる段階を一つの「分母」として扱っていたのを、記録・登録・二次利用・指標化・公表の五層に分けた2026-09-01 · dankai公開時の冒頭は、語数の不在から直ちに「測定インフラは埋まらない」を導いていた。収集・連結の層は現に進んでおり、政策側もアウトカム情報の不足を認識している。埋まっていないのは、施設別に公表できる妥当な指標とその報告制度である。結論をその形に限定した。
- 訂正「四つの門」を一本の流れとして書いていたが、マイナ保険証の項目別同意は一次利用の条件であり、二次利用は別の制度経路である2026-09-01 · monマイナ保険証による情報別の同意は、主として診療時の閲覧(一次利用)を規律する。改正医療法等が整備する仮名化情報の利用・提供は、それとは別の法的経路に基づく。①何が登録されるか ②診療者が何を閲覧できるか ③二次利用・公表に何が抽出されるか、の三つの分母に分けた。
- 訂正「患者の転帰を運ぶのは退院時サマリーだけ」を、「今回確認した標準項目のうち『退院時転帰』と明示された項目が退院時サマリーに置かれている」に限定した2026-09-01 · tenki退院先や死亡といった退院時転帰は、医療アウトカムの一部にすぎない。再入院、合併症、検査値の推移、機能、患者報告アウトカム、長期死亡などは別のデータから導出・連結されうる。標準項目の確認範囲を明示し、医療アウトカム全体と同一視しない形に改めた。
- 訂正退院時サマリーを「非構造化」と書いていたが、FHIRのNarrativeもJSONとしては機械可読である2026-09-01 · narrative問題は機械可読性そのものではなく、意味的なコード化が不十分であることにある。「非構造化」という語を撤回し、その形に書き直した。
- 訂正電子カルテ普及率の差が「そのままデータベースの見え方になる」と書いていたのを、上限またはリスク要因という位置づけに改めた2026-09-01 · fukyu導入率と可視性の間には、接続率、登録の義務づけ、実装の互換性、項目の欠測が介在する。普及率の差は可視性の差の上限を与えるが、それを決定はしない。
- 訂正399頁の語数カウントを制度間断絶の主証拠にしていたのを、段階別の接続表に置き換えた2026-09-01 · gosuu一次利用の実装仕様に「二次利用」が少ないのは、その文書の担当範囲から予想されることでもある。また「施設別」が0回でも、医療機関別・病院別・ベンチマーク・質指標・公表といった語で記述されている可能性が残る。記録/登録/二次利用/指標化/公表の各段階について、決まっていることと未決定のことを表に置き、主張を「今回確認した文書には、施設別のアウトカムを一般向けに公表する明示的な制度設計を確認できなかった」に限定した。
- 訂正医療DX推進体制整備加算を「サービスより先に報酬ができた」と要約していたのを訂正した2026-09-01 · kasan経過措置の期間中も、この加算はオンライン資格確認、電子処方箋、マイナ保険証利用率といった他のDX体制要件を実際に評価している。宙に浮いていたのは施設基準(5)だけである。
- 訂正施設別死亡比の問題を「単位の取り違え」と書いていたが、個人の死亡を施設単位に集計すること自体は正当な集団指標である2026-09-01 · tani問題は集計の単位ではなく、症例数が足りないこと、リスク調整が不完全なこと、施設間の差より施設内の偶然のほうが大きいことにある。あわせて、SHMIが施設の質を断定する指標ではなく、さらに調べるべき施設を拾い上げる警報として設計されていることを明記した。
- 訂正NCDの施設認定別死亡率を、施設別公開の妥当性の証拠として使っていたのを限定した2026-09-01 · ncd認定群という「まとまり」の死亡率に差があることが示すのは、リスク調整が可能であることまでである。個々の施設を順位づけて公表してよいことは意味しない。最小症例数の問題はそのまま残る。
- 追記診療所向け標準仕様書に「転帰」が0回であることへの指摘に、外来へ病院モデルを持ち込む危険の但し書きを加えた2026-09-01 · shinryojo外来の経過は入院のように区切られておらず、慢性疾患の多くは「転帰」の時点を持たない。診療所に病院と同じ欄を一律に置くのではなく、外来に合う単位を設計する必要がある。
- 訂正「解決の方向」を、検証を経た提案ではなく検討の候補として位置づけ直した2026-09-01 · teian「今が最も安い」「法改正を要しない」という書き方は、ベンダの改修負担、入力側の負担、仕様策定の実務を見積もったうえでの判断ではない。①について「法改正ではなく仕様の変更として実現しうる、というのが私の見立てである」と書き直し、コストを見積もっていないことを明記した。
- 訂正結論を、収集・連結の層と、指標・公表の層を分けた二文に置き直した2026-09-01 · musubi「医療DXは、測定インフラのうち収集と連結の層を埋め始めている。しかし、何を施設の成果として測り、どの分母で補正し、誰にどう公表するかという層は、まだ埋めていない。」を末尾に置いた。
出典 SOURCES
- 1地域の医療機関の治療アウトカム評価の指標財務省財務総合政策研究所 Financial Review · 2022 · accessed 2026-08-25裏付けた主張: 日本には施設別の治療アウトカム指標(死亡率、再入院率など)がほぼ公開されておらず、米国・英国・フランスなどが個別医療機関の重症度調整済みアウトカムを開示しているのとは対照的に、DPC対象病院についてすら部分的なデータしか存在しない。症例数が少ない場合はデータそのものがマスキングされる仕組みになっており、施設レベルでの検証はさらに困難になる。「支出の水準が各機関の治療の質に見合ったものであるかどうかを検証する」ための基盤情報が、日本にはそもそも整っていないと指摘する
- 2医療DXの推進に関する工程表医療DX推進本部(令和5年6月2日決定) · 2023 · accessed 2026-08-25裏付けた主張: 全11頁。「⑤ 医療情報の二次利用の環境整備」の記述は「民間事業者との連携も図りつつ、保健医療データの二次利用により、創薬、治験等の医薬産業やヘルスケア産業の振興に資することが可能となり、結果として、国民の健康寿命の延伸に貢献する」である。「③医療等情報の二次利用」の節は、次世代医療基盤法改正、全国医療情報プラットフォームで共有される医療情報の二次利用に関する検討体制の構築(2023年度中)、改正感染症法に基づく疫学情報の連結・分析、NDBのデータ提供の抜本的見直し(HIC: Healthcare Intelligence Cloud、申請から原則7日で解析可能とする)を挙げる。本稿が全文を機械的に数えたところ、「二次利用」5回、「研究」8回に対し、「統計」「評価」「アウトカム」「エビデンス」「質の向上」はいずれも0回であった
- 3全国医療情報プラットフォームの全体像(イメージ)厚生労働省(第4回「医療DX令和ビジョン2030」厚生労働省推進チーム 令和5年8月30日 資料2-2 一部改変) · 2023 · accessed 2026-08-25裏付けた主張: 1頁の全体像図。「医療DXのユースケース・メリット例」として4つが挙げられ、④は「公衆衛生、医学・産業の振興に資する二次利用」である。そこに書かれた便益は「政策のための分析ができることで、次の感染症危機への対応力強化につながる」と「医薬品等の研究開発が促進され、よりよい治療や的確な診断が可能になる」の二つ。「二次利用基盤」の欄には NDB・介護DB・DPC・がん登録・指定難病・小児慢性特定疾病が並び、解析基盤として HIC が置かれる。本稿が数えたところ「アウトカム」「施設別」「質」「統計」はいずれも0回であった
- 4電子カルテ情報共有サービスの導入に関するシステムベンダ向け技術解説書(記録条件仕様含む)2.1.0版厚生労働省医政局(令和8年6月) · 2026 · accessed 2026-08-25裏付けた主張: 全217頁。3.4「本サービスにおけるFHIRの位置づけ」に、次の区別が置かれている。「本サービスでは、臨床情報および健診結果報告書について、FHIR形式による各リソースの構造化データ(要素やコード体系による機械可読な情報)での登録を必須事項とします」。「一方で、診療情報提供書および退院時サマリーについては、当面の間、医療機関間で電子文書のやり取りを円滑に開始できるよう、Compositionリソースを用いた半構造的な文書情報の共有から運用を開始します」。「Composition.section要素配下の各構造情報セクションおよび備考・連絡情報セクションについては、Narrative(ナラティブ:テキスト記述)による叙述的な記載のみでも差し支えありません」。退院時サマリーについては「本サービスでは、退院時サマリーを診療情報提供書の添付文書として紹介先医療機関に連携できる仕組みを設けています」「なお、退院時サマリーの送付機能については、医療機関の運用方針やシステム対応状況に応じて実装を任意とします」とする。本稿が全文を機械的に数えたところ、「二次利用」0回、「施設別」0回、「統計」1回、「研究」1回であった。「転帰」は10回、「死亡」は5回出現する
- 5電子カルテ情報共有サービス 概要案内 2.1.0版【医療機関、薬局の方々へ】厚生労働省医政局(令和8年7月) · 2026 · accessed 2026-08-25裏付けた主張: 全20頁。冒頭に「仕様方針見直しに伴う改訂概要のご案内」が置かれ、三点の見直しが示される。「(1)傷病名の登録基準の見直し 本サービスに登録する傷病名は、医療機関の電子カルテシステムに記録されている傷病名をすべて登録する方針としました」。「(2)アレルギー等情報の登録範囲の見直し 本サービスに登録するアレルギー等情報は、『重篤なアレルギー等』を対象とします。まずは、アナフィラキシー(疑いを含む)を登録対象としますが、劇症肝炎などの重篤な症状に関して、他医療機関等に共有すべきと医師等が判断した場合も、登録が可能です」。「(3)感染症情報の登録基準の見直し」。共有される臨床情報の図では、3文書(①診療情報提供書 ②退院時サマリー ③健康診断結果報告書)に続いて④傷病名 ⑤感染症 ⑥薬剤アレルギー等 ⑦その他アレルギー等 ⑧検査の5項目が並び、処方情報は電子処方箋管理サービスの側に置かれている。退院時サマリーの主な項目には「退院時詳細(退院時転帰、退院先等)」が含まれる。閲覧は「受診時にマイナ保険証で受付をし情報提供に同意することで」成立し、「医療機関等で閲覧できる情報は患者が同意した項目に限られます」とされ、5項目それぞれに「閲覧同意:あり」が付されている。本稿が全文を機械的に数えたところ、「二次利用」「統計」「分析」「アウトカム」はいずれも0回、「救急」4回、「災害」3回であった
- 6文書情報(3文書)及び電子カルテ情報(6情報)の取扱について(資料1-2)厚生労働省 医政局 特定医薬品開発支援・医療情報担当参事官室(令和4年11月28日) · 2022 · accessed 2026-08-25裏付けた主張: 6情報を定めた資料。「具体的には、医療現場での有用性を考慮し、以下の電子カルテ情報から標準化を進め、段階的に拡張する。医療情報:① 傷病名、② アレルギー情報、③ 感染症情報、④ 薬剤禁忌情報、⑤ 検査情報(救急時に有用な検査、生活習慣病関連の検査)、⑥ 処方情報」。文書情報は「① 診療情報提供書、② キー画像等を含む退院時サマリー、③ 健康診断結果報告書」。閲覧範囲の対応方針(案)では、アレルギー情報について「厚生労働省標準規格で採用されているコードがないことから、テキストデータで閲覧可能とする」、薬剤禁忌情報について「厚生労働省標準規格では症状や重症度、制限情報等も含めたコードがないことから、テキストデータで閲覧可能とする」とされ、6情報のうち2つがコード化されないまま出発した。検査情報は「救急・災害用標準診療データセット」や「生活習慣病自己管理項目セット集」で「臨床検査項目基本コードセット」に該当するものに限られる。退院時サマリーは当時、全国の医療機関等に対して「閲覧可能な情報等を検討」の段階であった
- 7電子カルテの普及について(第28回 健康・医療・介護情報利活用検討会 資料1)厚生労働省医政局医療情報担当参事官室(令和8年3月12日) · 2026 · accessed 2026-08-25裏付けた主張: 医療施設調査に基づく電子カルテシステムの普及状況。令和5年の値は、一般病院65.6%(4,638/7,065)、うち400床以上93.7%(609/650)、200~399床79.2%(956/1,207)、200床未満59.0%(3,073/5,208)、一般診療所55.0%(57,662/104,894)。平成20年の一般病院14.2%、一般診療所14.7%から15年での推移が並記されている。参考として日本医師会が紙カルテ利用中の診療所に行った調査(調査期間2025年4月18日~6月1日、有効回答数5,466件)が引かれ、「調査では54.2%が『導入不可能』である旨の回答」「ただし、『導入不可能』と回答する割合は高齢者ほど高い」とされる。導入できない理由は「ITに不慣れ」「導入費用が高額」「導入しても数年しか使用する見込みがない」が多い。政府目標として工程表の「遅くとも2030年には概ねすべての医療機関において必要な患者の医療情報を共有するための電子カルテの導入を目指す」と、地域医療介護総合確保法第12条の3第4項(国会修正により追加された規定)が併記されている
- 8医療法等の一部を改正する法律の成立について(報告)厚生労働省医政局 · 2026 · accessed 2026-08-25裏付けた主張: 「医療法等の一部を改正する法律(令和7年法律第87号)の概要 令和7年12月12日公布」。「3.医療DXの推進」として「① 必要な電子診療録等情報(電子カルテ情報)の医療機関での共有等や、感染症発生届の電子カルテ情報共有サービス経由の提出を可能とする」「② 医療情報の二次利用の推進のため、厚生労働大臣が保有する医療・介護関係のデータベースの仮名化情報の利用・提供を可能とする」「③ 社会保険診療報酬支払基金を医療DXの運営に係る母体として名称、法人の目的、組織体制等の見直しを行う」を掲げる。国会修正により「政府は、令和12年12月31日までに、電子カルテの普及率…が約100%となることを達成するよう、クラウド・コンピューティング・サービス関連技術…その他の先端的な技術の活用を含め、医療機関の業務における情報の電子化を実現しなければならない」が加えられた。施行期日は「令和9年4月1日(ただし、一部の規定は公布日…令和8年4月1日…公布後1年以内に政令で定める日(3①-1の一部及び①-2)…公布後3年以内に政令で定める日(2①の一部並びに3①-1の一部及び3②)等)」であり、二次利用に関する3②は公布後3年以内に政令で定める日に置かれている。本稿が全文(9頁版)を機械的に数えたところ「施設別」は0回であり、「アウトカム」1回は衆議院厚生労働委員会の附帯決議中の「ロジックモデルのアウトカムについて患者及び住民の健康状態等の改善を中核とすることの徹底、指標や医療圏等の単位ごとのデータ、評価に関する資料の提供」という記述である
- 9医療等情報の二次利用に係る現状と今後の対応方針について厚生労働省(第18回 社会保障審議会医療保険部会・介護保険部会 匿名医療・介護情報等の提供に関する委員会) · 2024 · accessed 2026-08-25裏付けた主張: 全26頁。課題として「我が国では、カルテ情報(臨床情報)に関する二次利用可能な悉皆性のあるDBがなく、診療所を含む医療機関における患者のアウトカム情報について、転院等の場合も含めた長期間の分析ができない」を挙げ、対応方針として「現在構築中である『電子カルテ情報共有サービス』で共有される電子カルテ情報について、二次利用を可能とする。その際、匿名化・仮名化情報の利活用を可能とする。具体的な制度設計については、医療関係団体等の関係者や利活用者等の意見(を踏まえる)」とする。本稿が全文を機械的に数えたところ、「二次利用」43回、「転帰」7回に対し、「医療の質」1回、「アウトカム」1回であり、「施設別」「死亡率」「再入院」はいずれも0回であった
- 10健康・医療・介護情報利活用検討会 医療等情報の二次利用に関するワーキンググループ これまでの議論の整理厚生労働省(令和6年5月15日) · 2024 · accessed 2026-08-25裏付けた主張: 全19頁。二次利用の意義として「ある治療を行った患者の転帰や検査結果等のアウトカムデータ、医療費や介護・障害福祉等のサービスの利用状況・コスト等の解析により、治療・サービスの質の精緻な評価につながる」を挙げる。電子カルテ情報については「患者の状態や予後を把握するのに重要な基礎情報やアウトカム情報を含んでおり、詳細で長期にわたる患者の情報を分析することにより、医学系研究の発展に寄与すると考えられるが、現在は電子カルテ情報を二次利用を目的として取り扱う悉皆性のある大規模なデータベースがな(い)」とする。本稿が全文を機械的に数えたところ、「二次利用」37回に対し「アウトカム」2回、「評価」5回、「創薬」4回であり、「医療の質」「施設別」「死亡率」「再入院」はいずれも0回であった
- 11医療DX推進体制整備加算等の要件の見直しについて(中医協 総-2-1)中央社会保険医療協議会 総会(令和7年7月23日) · 2025 · accessed 2026-08-25裏付けた主張: 令和6年度改定で新設された医療DX推進体制整備加算は8点(歯科6点、調剤4点)。施設基準の(5)は「電子カルテ情報共有サービスを活用できる体制を有していること。(経過措置 令和7年9月30日まで)」である。本資料は「電子カルテ情報共有サービスについては、先の通常国会に提出された『医療法等の一部を改正する法律案』の成立・施行により本格稼働となるところ、現在、当該法律案が未成立であることや電子カルテ情報共有サービスに関する対応等を踏まえ、経過措置を令和8年5月31日まで延長する」とする。マイナ保険証利用率の実績要件の推移は、加算1・4が15%(令和6年10月適用)→30%→45%→60%→70%(令和8年3月~5月適用)、加算2・5が10%→20%→30%→40%→50%、加算3・6が5%→10%→15%→25%→30%。小児科特例として、令和8年3月1日から5月31日までに限り「30%」を「27%」とする。東京都の届出状況の調査では、医療DX推進体制整備加算の届出医療機関7,074のうち小児科特例の届出は363(5.1%)、うちマイナ保険証利用率が12%以上15%未満は15医療機関(0.2%)であった
- 12Summary Hospital-level Mortality Indicator (SHMI) — Deaths associated with hospitalisation, EnglandNHS England Digital · 2026 · accessed 2026-08-25裏付けた主張: 「The SHMI is the ratio between the actual number of patients who die following hospitalisation at the trust and the number that would be expected to die on the basis of average England figures, given the characteristics of the patients treated there」。「It is produced and published monthly」として毎月公表され、「Accredited Official Statistic by NHS England」に格付けされている。対象は「the observed number of deaths within 30 days of discharge from hospital」であり、trust単位に加えて治療施設(site)別・診断群別の内訳も提供される
- 13病院標準化死亡比の信号対雑音比と、質との関係、および必要症例数Girling AJ, et al. BMJ Quality & Safety. 2012;21(12):1052-1056 / Hogan H, et al. BMJ. 2015;351:h3239 / Dimick JB, Welch HG, Birkmeyer JD. JAMA. 2004;292(7):847-851 · 2015 · accessed 2026-08-25裏付けた主張: Girling らは「at least 10 warnings out of 11 would be false alarms」とする。Hogan らは英国の病院で回避可能死亡の割合を実測し「The proportion of avoidable deaths was 3.6%」「a small but statistically non-significant association between HSMR and the proportion of avoidable deaths (regression coefficient 0.3, 95% CI −0.2 to 0.7)」とし、「any metric based on mortality is unlikely to reflect the quality of a hospital」と結論する。標本規模については Dimick らが「Minimum hospital caseloads necessary to detect a doubling of the mortality rate were... 86 for pancreatic resection... and 2668 for hip replacement」とし、「only a small proportion of hospitals met the minimum caseload: ... pancreatic resection (2%), esophageal resection (1%), and hip replacement (<1%)」とする
- 14National Clinical Database に基づくリスクモデルと施設認定別アウトカム一般社団法人 National Clinical Database · 2024 · accessed 2026-08-25裏付けた主張: 外科手術の登録が報告義務ではなく専門医申請の要件として制度に組み込まれており、報告インセンティブが専門職自身の利害に接続している。日本人データ由来のリスクモデルが開発・内部検証されており(幽門側胃切除 n=33,917 を開発27,220/検証6,697に無作為分割、C-index 0.785・0.798)、制度の妥当性検証にも使われた(施設認定別の肝切除術後死亡 3.1%/3.8%/4.5%、P<0.001)。ただしデータ精度そのものをカルテ突合で検証した研究には到達できておらず、該当領域手術の95%以上を捕捉するという値も自己申告である
- 15医科診療所向け 電子カルテ及びレセプトコンピュータ 標準仕様書(基本要件)第1.0版厚生労働省医政局・厚生労働省保険局・デジタル庁国民向けサービスグループ(令和8年3月31日) · 2026 · accessed 2026-08-25裏付けた主張: 全96頁。電子カルテ未導入の診療所に向けた標準型電子カルテの基本要件を定める初版。本稿が全文を機械的に数えたところ、「二次利用」0回、「転帰」0回、「アウトカム」0回、「統計」0回、「研究」0回であった。「死亡」は1回出現する
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医療費が増えても、医療の質が上がるとは限らない施設別の治療アウトカムが公開されていないという空白を、財務総研の指摘から最初に見つけた回。本稿はその空白が医療DXで埋まるかを検証する情報は集められているのに、なぜ統計にならないのか開示義務はあるのに全国集計する仕組みが無い、という同型の空白を扱った回その点検表は、何を見落としていたか七つの型と、病院標準化死亡比が型6に落ちることを示した回。本稿の「施設別公開は本当に答えなのか」はここに依拠する継続性は、誰について測られているのかかかりつけ医機能報告制度の条文を読み、継続性を測る仕組みの限界を書いた回閾値は、どこから来たのか閾値の来歴を問うた回。本稿のマイナ保険証利用率の要件は同じ形をしているその点数は、誰が付けているのか診療報酬の点数を誰が付けているのかを見た回。医療DX推進体制整備加算はその続きにある