02 アクセスと提供体制/EUROPEJAPAN
英国のゲートキーピングは、設計されたのか
日本にゲートキーピングが無い理由を辿った回の、裏返しである。英国はなぜ登録制とゲートキーピングを持つのか。1948年のNHS創設に答えがあると思って調べたら、患者一覧も医師選択権も、その37年前の1911年国民保険法15条2項に明文であった。1946年法33条はそれを「利用したいすべての人」の一般医療制度として書き直している。紹介の階層を正面から設計した文書は1920年に実在するが、その通りには実装されていない。英国医師会が1948年に勝ち取ったのは患者の受診先の制限ではなく、医師の独立自営だった。単一の設計図は無かったが、部品は偶然でもなかった。
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日本にゲートキーピングが存在しない理由を辿った回で、私は制度史の側から一つの答えに着いた。フリーアクセスは意図的に設計された政策ではなく、皆保険と全国一律の診療報酬のもとで受診先の選択を制限しなかった結果生じた副産物であり、明確な法的根拠を持たない1。
その裏返しを、今回は英国で確かめる。英国はなぜ、登録制とゲートキーピングを持つのか。
効果の話はしない。ゲートキーピングが専門医利用と入院を減らす一方で患者満足度を下げ、がん医療では不利益が生じうるという知見は、別の回で扱った2。今回は来歴だけを辿る。
私は「1948年のNHS創設で設計された」という答えを予想していた。外れた。
名簿も人頭払いも、NHSより37年古い
英国はNHS創設以来GPへの登録が義務であり、専門医療へのアクセスにはGPの紹介が原則として必須である3。ここまでは通説どおりである。問題は「NHS創設以来」の部分だった。
ただし公開時の本稿は、この「登録が義務」を法的義務として書いた。後半で「患者に命じた条文はない」と書いたことと矛盾する※訂正。正しくは、NHSの通常経路がGP登録を基礎に組み立てられている、である。イングランドのNHS自身、「Generally, you cannot self-refer to a specialist at a hospital within the NHS, except when accessing sexual health clinics or A&E treatment」と書いている4。救急、性の健康、一部の自己紹介サービス、未登録者への緊急診療は例外である。
医療政策学者の Maynard と Bloor が、NHS60年の総括でこう書いている5。
Separation of general practitioners and hospital specialists is historic, but was reinforced by the panel doctor system built into the 1911 National Insurance Act, which provided insurance coverage only for GP services.
1911年の国民保険法である。同法が保険の対象としたのは一般医のサービスだけで、そこに「パネル医」の仕組みが組み込まれた。医師は自分の名簿に患者を載せ、病気であるかどうかにかかわらず人頭払いで報酬を受ける。一般医は独立開業医の地位と、医療制度への第一接触という役割を保持した。
公開時の本稿は、ここまでを二次文献だけで書き、条文に到達していないと注記していた。その後、原典に到達した※訂正。1911年国民保険法15条2項は、保険委員会に次の仕組みの採用を求めている6。
(a) the preparation and publication of lists of medical practitioners who have agreed to attend and treat insured persons… (c) a right on the part of any insured person of selecting, at such periods as may be prescribed, from the appropriate list the practitioner by whom he wishes to be attended and treated, and, subject to the consent of the practitioner so selected, of being attended and treated by him; (d) the distribution amongst… the several practitioners whose names are on the lists, of the insured persons who after due notice have failed to make any selection, or who have been refused by the practitioner whom they have selected;
名簿・選択・割当ての三つが、法律の明文である。支払い方式から偶然生じたものではない。ここは訂正が要る。
同時に、この条には人頭払いの算式も、「専門医療への第一接触」も書かれていない。三つを分けるべきだった。
| 層 | 何が定めたか |
|---|---|
| 名簿・選択・割当て | 1911年法15条2項(法律の明文) |
| 報酬の方法 | 契約と実施規則 |
| 専門医紹介の入口 | 医療提供構造からの発達 |
そして1948年について、同じ論文はこう書く。
Bevan conceded a method of payment by capitation fee for each patient, as in the National Insurance Act in 1911.
譲歩の内容が「1911年法と同じように」だった。Nuffield Trust の整理も同じ方向である——1948年のGMS契約は国民保険の取り決めを土台にしており、当時の医師収入のおよそ50%が人頭払いから来ていた7。
名簿、人頭払い、第一接触。現在「英国型」と呼ばれているものの中核は、NHSの37年前に既に揃っていた。
公開時の本稿は、続けて「1948年がしたのは、それを全国民に広げたことである」と書いた。1946年法の条文に到達して、これも直す※訂正。国民保健サービス法1946の33条は、1911年の構造をそのまま書き直している8。
33.—(1) It shall be the duty of every Executive Council… to make… arrangements with medical practitioners for the provision by them… of personal medical services for all persons in the area who wish to take advantage of the arrangements… (2)(a) for the preparation and publication of lists of medical practitioners who undertake to provide general medical services; (2)(b) for conferring a right on any person to choose… the medical practitioner by whom he is to be attended, subject to the consent of the practitioner so chosen and to any prescribed limit on the number of patients to be accepted by any practitioner; (2)(c) for the distribution among medical practitioners whose names are on the lists of any persons who have indicated a wish to obtain general medical services but who have not made any choice of medical practitioner or have been refused by the practitioner chosen;
「全国民に広げた」ではない。条文が書いているのは「その取り決めを利用したいすべての人」であり、登録を命じてはいない。正確には、1948年は1911年の一覧・選択・割当ての構造を、希望する住民が利用できる一般医療制度として再法制化した。
ただし、紹介の階層は本当に設計されている——1920年に
「副産物だった」で終わらせようとして、止まった。紹介の階層を正面から設計した文書が、実在する。
1920年、保健省の諮問会議がまとめた通称ドーソン報告である9。
A group of Primary Health Centres should in turn be based on a Secondary Health Centre. Here cases of difficulty, or cases requiring special treatment, would be referred from Primary Centres.
一次保健センターは「その地区の一般医によって運営される」機関であり、そこから困難例と特殊治療を要する例が二次保健センターへ紹介される。一次から二次への紹介という階層が、明示的に設計されている。
しかも同じ報告は、医師を選ぶ自由についても書いている。
there should be every effort, wherever possible, to make this choice a reality
紹介の階層と患者の選択を、同じ文書が同時に置いている。「登録制だから選べない」という後年の理解は、この設計には無い。
ただし、この報告が構想した保健センターの体系は、その通りには実装されなかった。設計図は1920年に描かれ、実際に動いたのは1911年の支払い方式のほうだった。
1948年に医師会が守ったのは、患者の受診先ではない
では1948年に何が起きたのか。英国医師会は、日本医師会と同じように激しく抵抗している。
ランカスター大学の Lambert は、1948年1月のBMA投票について「84% of GPs in the BMA voted against the NHS」と記す10。反対の中心にあった懸念は、NHSが医師を自由な専門職から中央政府の給与生活者に変えてしまうということだった。そして妥結の内容は——
GPs maintained their independence. They avoided nationalisation.
独立自営である。現在も「GPs remain mostly independent doctors contracted to provide certain services rather than salaried workers」であり、この構造は変わっていない。
ここが、日本との対比で最も効くところだと思う。両国とも、医師会の抵抗が制度の形を決めた。だが守ったものが違う。
| 医師会が守ったもの | 結果として残った患者側の形 | |
|---|---|---|
| 英国 | 医師の独立自営(給与制の回避) | 人頭払いを維持 → 名簿と登録が残った |
| 日本 | 患者の受診先選択(と開業の自由) | 出来高払いを維持 → フリーアクセスが残った |
英国医師会は「患者を登録制に縛ること」を勝ち取ったのではない。給与生活者になることを拒み、その代償として1911年以来の人頭払いを受け入れた。
公開時の本稿は、ここから「人頭払いには名簿が要る/名簿があれば第一接触になる/ゲートキーピングはそこから出てきた」という連鎖を書いた。最後の一段が飛んでいる※訂正。名簿があっても専門医への直接受診を許す制度は作れる。そして上で見たとおり、名簿と選択は1911年法が明文で置いたものであって、報酬方式の副産物ではない。
書ける範囲はこうである。人頭払い、患者一覧、一般医療給付は制度的な補完関係をもち、その組合せが1948年以後も維持された。
日本医師会は逆に、出来高払いの公定価格表を守った。出来高払いには名簿が要らない。要らないものは、作られなかった。
どちらの国も、患者のアクセスの形と医師の報酬の形は、切り離せない。
いまも、ゲートキーピングを命じた条文は無い
これは歴史の話だけではない。現在の英国法を見ても、「専門医にかかる前にGPを受診せよ」と患者に命じた条文には行き着かなかった。
法令の側にあるのは、医師に対する規制である。2013年の規則24条は、制定時にこう定めていた11。
A medical practitioner may not perform any primary medical services unless that medical practitioner is a general medical practitioner and is included in the medical performers list.
名簿に載っていなければプライマリ・ケアに従事できない。縛られているのは医師の側であって、患者の側ではない。
ただし公開時の本稿は、制定時(made)の版を引いていた。現行版は2024年5月27日に差し替えられている※訂正。SI 2024/575 が24条(1)を(1)〜(1B)に置き換え、Responsible Officers規則2010の指定機関と「prescribed connection」を持つ医師は、名簿に載っていなくても一次医療を行えるという例外を加えた12。研修医・登録後の指導下臨床実践など、従来からの例外もある。
そしてもう一つ、この稿は三つの別物を「名簿」と一語で呼んでいた※訂正。GMCのGP Register(資格の名簿)、Performers List(従事者の名簿)、そして患者一覧(patient list)は、別の制度である。1911年法・1946年法が置いたのは三つ目であり、規則24条が規律するのは二つ目である。以下、区別して読んでほしい。
患者の側にあるのは、逆に権利である。NHS憲章はこう書く13。
You have the right to choose your GP practice, and to be accepted by that practice unless there are reasonable grounds to refuse, in which case you will be informed of those reasons.
そしてこの憲章に法的な足場を与えているのは Health Act 2009 第2条だが、そこで課されている義務は「have regard to(考慮する)」である14。
Each of the bodies listed in subsection (2) must, in performing its health service functions, have regard to the NHS Constitution.
公開時の本稿は、ここから「強い義務ではない」と結んだ。二層に分けるべきだった※訂正。政府の憲章ハンドブックは、この権利の直接の根拠を憲章ではなく契約規則に置いている15。
The right is derived from the duties imposed on the provider of GP services by regulations made under the NHS Act 2006, in particular paragraphs 18 to 21 of schedule 3 to the National Health Service (General Medical Services Contracts) Regulations 2015 and paragraphs 17 to 20 of schedule 2 to the National Health Service (Personal Medical Services Agreements) Regulations 2015.
Health Act 2009 の「have regard to」は憲章全体にかかる義務であり、個別のGP選択・受入れは2015年のGMS/PMS規則に由来する。理念より強い位置づけである。
つまり英国のゲートキーピングは、委託と支払いの側にある。誰が専門医療を発注できるかという仕組みの中で機能していて、患者に「GPを先に受診せよ」と命じる条文が正面にあるわけではない。
日本のフリーアクセスに明文の法的根拠が無いことを、草場は「制度というより慣行に近い」と書いた1。英国のゲートキーピングも、患者に向けた命令としては条文になっていない。両国の違いは、法があるか無いかではなかった。
対比の向きが、通説と逆になる
ここで一つ、日本の議論の前提が反転する。
英国には「かかりつけ医を選ぶ権利」が明文である。診療所を選ぶ権利があり、正当な理由なく断られない権利があり、断られたら理由を告げられる権利がある13。
日本には、これに対応する規定が無い。継続性を測る仕組みを辿った回で確認したとおり、医療法・介護保険法・医療介護総合確保促進法の本則を全文検索しても「継続性」「連続性」「切れ目」はいずれも0回であり、総合確保方針が書いているのは「自らこうした医療機関を選択することで、国民は…起点を持つこととなる」という記述にとどまる。主語は国民、動詞は「自ら選択する」。選択しなかった人、選択できなかった人について、その告示は何も定めていない。
ただし公開時の本稿は、比較表で日本の「受け入れられる権利」を「無い」と書いた。これは不正確である※訂正。医師法19条1項は、こう定める16。
診療に従事する医師は、診察治療の求があつた場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならない。
患者の私法上の請求権と同じではないが、「受け入れられる権利は無い」と断言することもできない。比べるべきは、権利の有無ではなく、その形である。
| イングランド | 日本 |
|---|---|
| 特定のGP診療所を選び、原則として受け入れられる制度上の権利(2015年GMS/PMS規則) | 医師の側に、正当な事由なく診療を拒まない公法上の義務(医師法19条) |
| 登録関係を継続させる仕組みがある | 選んだ医療機関との継続関係を保障する仕組みは無い |
違うのは「権利があるかないか」ではなく、「単発の受診を保障するか、継続する関係を保障するか」である。自由は、行使できる人にだけ意味がある。
これは、フリーアクセスの是非を論じた回で伊藤敦が立てた区別——医療をインフラとして保障する国家の責務(消極的自由)と、より良い医療を追求する患者自身の権利(積極的自由)——の、制度上の現れ方の違いだと思う。
それでも、英国側の現在は苦しい
権利があることと、機能していることは別である。
GP Patient Survey 2026 は、16歳以上65万4,714件の回答(回答率22.1%)を集めている17。
| 項目 | 2026年 | 2024年から |
|---|---|---|
| 診療所全体の経験が「良い」 | 76.7% | +2.8pt |
| 連絡を試みたときの経験が「良い」 | 72.6% | +5.3pt |
| 応対した専門職への信頼 | 92.7% | +0.4pt |
| 診療所が閉まっているときのNHSサービス | 59.1% | +3.2pt |
選んだ四項目のうち、一つだけ低い。そして低いのは、まさに2004年に制度が手放した領域である。
ただし、ここから2004年の契約変更を原因と読むことはできない※訂正。これは一時点の調査結果であり、変更前後の比較でも、他の要因を除いた分析でもない。「四つのうち最低」も、私が選んだ四項目の中での比較にすぎない。
Nuffield Trust の整理によれば、1948年のGMS契約は一般医に24時間365日の責任を負わせ、不履行には罰則があった。2004年の全国GMS契約は、その24時間責任の義務を終わらせた7。
公開時の本稿は、ここを「115年続いた仕組み」と書いた。計算が合わない※訂正。24時間責任の典拠が1948年のGMS契約なら、2004年までは56年である。115年は1911年から現在までの長さであって、手放された部分の長さではない。
56年続いた仕組みのうち、手放した一箇所に、いま最低の数字が立っている。
労働力の側も薄い。イングランドの「fully qualified GPs」は2025年12月31日時点で headcount 39,918、常勤換算では28,777である18。一方でGMC登録簿上のGPは84,034人、ライセンス保持者に限っても69,443人いる19。同じ「英国のGP数」に公式値が四つあり、上と下で二倍以上ちがう——これは別の回で確かめたことだが、登録制を持つ国でも、数はきれいに数えられていない。
ただし、入ってくる人の規模は日本と桁が違う。厚生労働科学研究の国際比較(イギリスの章は澤憲明)によれば、英国では2017年度、後期研修1年目の全枠8,846のうちGP枠が3,857——全体の44%である20。日本の同年代の数字は、2026年度で総合診療282人/全19領域9,998人、2.82%だった21。
44%と2.82%。
ただし、この二つは並べただけである※訂正。年度が9年ちがい、地域がちがい、研修制度の建て付けがちがい、分母の作り方もちがう。規模の対比としては使えるが、報酬方式が研修枠を生んだ証拠にはならない。
そのうえで言えるのは、順序についての見立てである。英国は1911年以来、人頭払いで一般医に金を流す仕組みを持っていた。その上に患者一覧があり、一般医療給付があり、それを担う人材の枠が要った。制度と枠のどちらが先かは、この数字だけでは決まらない。
そして、測ることが何を失わせたかについては、QOFの総括が書いている22。
the progressive decline in the ability of patients to see a GP of their choice
患者が自分の選んだ医師に会う能力の、段階的な低下。Roland と Guthrie がこれを部分的に帰しているのは、迅速なアクセスへのインセンティブに政府が執拗に集中したことである。
公開時の本稿は、ここを「アクセスを測ったら、継続性が失われた」「QOFが示した」と書いた。一般化しすぎている※訂正。帰されているのは迅速アクセスへのインセンティブであって、測定一般ではない。そしてこれはQOFの総括論文の記述であって、QOFが検証した結果でもない。
選ぶ権利は明文であり続けたまま、選べる実質のほうが痩せた。
解決の方向(案)
ここから先は確かめられた事実ではなく、私の案である。
日本が英国から輸入すべきものがあるとすれば、それは登録制そのものではないと思う。この列が繰り返し見てきたとおり、制度の型を移しても、それを支えた土台は移らない。
① 移すなら、名簿ではなく権利の側である。 英国の憲章が持っていて日本に無いのは、診療所を選ぶ権利と、正当な理由なく断られない権利である。これは登録義務とは独立に書ける。かかりつけ医機能報告制度が施設の機能の有無を数えているのに対し、患者の側に何を保障するかは、まだ一行も書かれていない。
② 「登録制か自由か」で論じない。 本稿で分かったのは、両国とも患者側のアクセスの形が、一覧・選択・給付・報酬の組合せとして固まったということだった。だとすれば動かすべき変数は登録の有無だけではない。人頭払いの要素をどこにどれだけ入れるかという問いも、制度の型を選ぶ問いより手前にある。
③ 手放すものを決めるとき、何を測り続けるかを先に決める。 英国は2004年に24時間責任を手放し、2026年にその領域だけが59.1%になっている。手放した瞬間には、それが後で測られるとは決まっていなかった。——医療と介護を分けた日本の5千億円が最後まで測られなかったのと、同じ形である。
④ 英国の失敗のほうを、先に読む。 Roland と Guthrie が書いているのは、迅速アクセスへのインセンティブに集中した結果、選んだ医師に会う能力が段階的に落ちたということだった。日本がいま作ろうとしているかかりつけ医機能報告は、施設の機能を数えている。継続性は、そこに項目として無い。英国が20年かけて失ったものが、日本ではまだ測る対象にすら入っていない。
総合診療にとって
三つ、持ち帰れることがある。
第一に、「英国型」と呼ばれているものは、1948年の設計ではない。患者一覧と医師選択権は1911年国民保険法15条2項の明文であり、紹介の階層は1920年のドーソン報告で構想され、1946年法33条がそれを「利用したいすべての人」のための一般医療制度として再法制化した。設計図は一度に描かれたのではなく、部品が別々の年に置かれた。——制度の型を輸入しようとするとき、輸入元がその型をどう手に入れたかを見ておく価値はある。たいてい、設計ではなく積み重ねである。
第二に、医師会の抵抗は、どちらの国でも制度の形を決めた。違うのは守ったものである。英国医師会は給与生活者になることを拒み、その代償として人頭払いを受け入れた。人頭払いは患者一覧と補完的である。日本医師会は出来高払いの公定価格表を守り、患者一覧は要らなかった。この見方に立つと、「日本にゲートキーピングを導入すべきか」という問いは、報酬の単位を動かす覚悟があるかという問いに接続する。
第三に、日本の議論の前提が一つ反転する。登録制は選択を奪う仕組みだと語られがちだが、英国は診療所を選ぶ権利と、正当な理由なく断られない権利を、2015年のGMS/PMS規則に由来する制度上の権利として持っている。日本にあるのは、医師法19条という医師側の公法上の義務である。違うのは権利の有無ではなく、単発の受診を保障するか、継続する関係を保障するかである。そして自由は、行使できる人にだけ意味がある。——受診しない人を数えようとして、来なかった人が医療機関の側からは見えないことに突き当たった回と、同じ場所に着く。
英国はいま、その権利を明文で持ったまま、選べる実質のほうを痩せさせている。それでも、痩せたことが数字として見えているのは、権利が書かれていて、測られているからである。
最後に、題への答えを書き直しておく※訂正。公開時の本稿は「ゲートキーピングは報酬方式の副産物である」と答えた。原典に到達したいま、これは証拠より強い。
英国のゲートキーピングは、単一の設計図から生まれたのではない。しかし、その部品は偶然に生じたのでもない。名簿と選択は1911年に法制化され、紹介階層は1920年に構想され、人頭払いと契約がそれらを存続させた。
この記事で最も確信度が低い箇所を明記しておく。
① 1911年法・1946年法の条文には、その後到達した。legislation.gov.uk はこの年代の法律をPDFでしか提供していないが、原本のPDFを取得して15条2項と33条を直接読んだ6,8。上記の訂正は、その結果である。なお、両条とも人頭払いの算式は定めていない。1948年の妥結内容(独立自営の維持、人頭払いの継続)は依然として二次文献に依拠している。開業権(goodwill)の売買が1946年法で禁止されたかどうかは、参照した資料の記述が食い違ったため、本稿では扱わなかった。
② 1946年法33条の「利用したいすべての人」の運用は、確認していない。条文が登録を命じていないことと、実際に住民のほぼ全員が登録したこととは別である。本稿が言えるのは、法文の建て付けまでである。
③ ドーソン報告は原典ではなく全文転載を参照した。保健省刊の原本ではなく、Socialist Health Association による転載である9。字句の細部は原本との照合が望ましい。
④ 「ゲートキーピングを命じた条文が無い」は、私の検索範囲での不在である。不在の証明ではない。委託(commissioning)の側の規則群、および NHS Standard Contract を網羅的に確認したわけではない。言えるのは、患者に向けて「GPを先に受診せよ」と命じる規定に行き着かなかった、というところまでである。
⑤ 1948年のBMA投票の「84%」は、学術論文ではなく研究者による一般向け解説から取った10。分母(投票資格者数・投票率)を確認していない。
⑥ GP Patient Survey の回答率は22.1%である17。65万件という規模は大きいが、非回答バイアスの方向は本稿では検討していない。
⑦ スコットランド・ウェールズ・北アイルランドを分けていない。NHS憲章はイングランドのものであり、GP Patient Survey と労働力統計もイングランドのみである。一方でGMCの登録数は英国全体である。本稿が「英国」と書いたところの多くは、実際にはイングランドである。
⑧ 「解決の方向」の節は、私の案である。引いた条文と資料は確認したが、それを日本に適用できるかを検討した研究は探していない。
訂正 CORRECTIONS
公開後に直したこと。本文は直したうえで、何をどう変えたかをここに残している。本文中の※ が、直した箇所を指す。
- 訂正1911年国民保険法15条2項の条文に到達した。名簿・選択・割当ては法律の明文であり、支払い方式の副産物ではない2026-09-01 · nia1911公開時は原本PDFに到達できず、二次文献のみで「1911年法が名簿・人頭払い・第一接触を導入した」と書いた。原本を取得して読むと、15条2項(a)が医師一覧の作成・公表、(c)が被保険者の医師選択権(選ばれた医師の同意を条件とする)、(d)が選ばなかった者・拒否された者の医師間への割当てを明文で求めている。一方、この条には人頭払いの算式も、専門医療への第一接触も書かれていない。法律が設計したもの/契約と実施規則が定めたもの/医療提供構造から発達したものを、三つに分けた。
- 訂正「1948年がしたのは全国民に広げたことである」を、1946年法33条の条文に基づいて訂正した2026-09-01 · nhs1946国民保健サービス法1946の33条1項は「all persons in the area who wish to take advantage of the arrangements」への給付として構成されており、住民に登録を命じていない。33条2項(a)(b)(c)は1911年法15条2項と同じ一覧・選択・割当ての構造を書き直している。正しくは「1948年は1911年の一覧・選択・割当ての構造を、希望する住民が利用できる一般医療制度として再法制化した」である。
- 訂正「GPへの登録が義務」という書き方が、後半の「患者に命じた条文はない」と矛盾していた2026-09-01 · touroku現在のイングランドでは通常のNHS医療がGP登録を中心に組織されているが、救急、性の健康クリニック、一部の自己紹介サービス、未登録者への緊急診療という例外がある。NHS自身が「Generally, you cannot self-refer to a specialist at a hospital within the NHS, except when accessing sexual health clinics or A&E treatment」と書いている。「NHSの通常経路がGP登録を基礎にしている」に改めた。
- 訂正「支払い→名簿→第一接触」の因果連鎖に飛躍があった2026-09-01 · innga名簿があっても専門医への直接受診を許す制度は作れるため、「名簿があれば第一接触になる」は導けない。加えて1911年法が名簿と選択を明文で置いている以上、「報酬方式の副産物」だけでは説明できない。「人頭払い、患者一覧、一般医療給付が制度的な補完関係をもち、その組合せが1948年以後も維持された」に置き換えた。あわせて「どちらの国も、患者のアクセスの形は医師の報酬の形の副産物である」という断定を撤回した。
- 訂正Performers List規則2013を制定時(made)の版で引いており、2024年改正を反映していなかった2026-09-01 · performers2024S.I. 2024/575 が2024年5月27日から24条(1)を(1)〜(1B)に置き換え、Responsible Officers規則2010の指定機関と「prescribed connection」を持つ医師は名簿未収載でも一次医療を行えるという例外を加えている。現行版の条文に差し替え、例外の存在を本文に明記した。
- 訂正GMCのGP Register、Performers List、患者一覧という三つの別物を、一語の「名簿」で呼んでいた2026-09-01 · meiboそれぞれ資格の名簿、従事者の名簿、患者一覧であり、規律する法令も目的も異なる。1911年法・1946年法が置いたのは患者一覧、Performers List規則24条が規律するのは従事者名簿である。本文に区別を置いた。
- 訂正NHS憲章のGP選択・受入れの権利を「have regard to」という弱い考慮義務だけで説明していた2026-09-01 · kenri政府の憲章ハンドブックは、この権利の直接の根拠を NHS Act 2006 に基づく2015年GMS契約規則 schedule 3 paras 18-21 および2015年PMS協定規則 schedule 2 paras 17-20 と説明している。Health Act 2009 の「have regard to」は憲章全体にかかる義務、個別のGP選択・受入れは契約規則由来、という二層に分けた。
- 訂正比較表で日本の「受け入れられる権利」を「無い」と書いていたが、医師法19条がある2026-09-01 · ishiho19医師法19条1項は「診療に従事する医師は、診察治療の求があつた場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならない」と定める。患者の私法上の請求権と同じではないが、「無い」と断言することもできない。比較の軸を、制度上の権利か公法上の義務かという形の違いと、単発の受診を保障するか継続する関係を保障するかという違いに置き直した。
- 訂正「115年続いた仕組み」の計算が合っていなかった2026-09-01 · 56nen24時間責任の典拠が1948年のGMS契約なら、2004年までは56年である。115年は1911年から現在までの長さであって、手放された部分の長さではない。
- 訂正GP Patient Survey 2026の59.1%から、2004年の契約変更を原因とは読めない2026-09-01 · gppsこれは一時点の調査結果であり、変更前後の比較でも他の要因を除いた分析でもない。「四つのうち最低」も、私が選んだ四項目の中での比較にすぎない。両方を本文に明記した。
- 訂正2017年英国44%と2026年日本2.82%の対比を、報酬方式が研修枠を生んだ証拠として使っていた2026-09-01 · waku年度が9年ちがい、地域、研修制度の建て付け、分母の作り方もちがう。規模の対比としては使えるが、因果の証拠にはならない。「制度と枠のどちらが先かは、この数字だけでは決まらない」に改めた。
- 訂正「アクセスを測ったら継続性が失われた」「QOFが示した」を一般化しすぎていた2026-09-01 · qofRoland と Guthrie が部分的に帰しているのは、迅速なアクセスへのインセンティブに政府が執拗に集中したことであって、測定一般ではない。またこれは総括論文の記述であって、QOFが検証した結果でもない。解決の方向④の書き方もあわせて改めた。
- 訂正題への答えを「報酬方式の副産物」から、部品が別々の年に置かれたという形に書き直した2026-09-01 · ketsuron「英国のゲートキーピングは、単一の設計図から生まれたのではない。しかし、その部品は偶然に生じたのでもない。名簿と選択は1911年に法制化され、紹介階層は1920年に構想され、人頭払いと契約がそれらを存続させた。」を末尾に置いた。あわせて「総合診療にとって」の三点と、確信度の低い箇所①②を書き直した。
出典 SOURCES
- 1フリーアクセスは計画された制度なのか?日本医事新報、2021年7月19日(草場鉄周) · 2021 · accessed 2026-08-15裏付けた主張: 日本のフリーアクセスは意図的に設計された政策ではなく、皆保険制度と全国一律の診療報酬体系のもとで患者の受診先選択を制限しなかった結果生じた副産物であり、明確な法的根拠を持たないと指摘している
- 2Impact of GP gatekeeping on quality of care, and health outcomes, use, and expenditure: a systematic reviewBritish Journal of General Practice, 69(682):e294-e303 · 2019 · accessed 2026-08-15裏付けた主張: ゲートキーピングは専門医利用と入院を減らし、一次医療受診を増やし、質改善の実例もある一方、患者満足度は低下し、がん医療では不利益が生じうると報告している
- 3Gatekeeping and provider choice in OECD healthcare systemsCurrent Sociology, 60(4):489-505 · 2012 · accessed 2026-08-15裏付けた主張: 英国はNHS創設以来GPへの登録が義務であり、専門医療へのアクセスには原則としてGPの紹介が必須である。日本はフランス・ベルギー・韓国とともに、この仕組みを持たない少数派に属する
- 4Referrals for specialist careNHS(nhs.uk) · 2026 · accessed 2026-09-01裏付けた主張: 「You're entitled to ask for a referral for specialist treatment on the NHS. However, whether you'll get the referral depends on what your GP feels is clinically necessary in your case」。自己紹介については「Generally, you cannot self-refer to a specialist at a hospital within the NHS, except when accessing sexual health clinics or A&E treatment」とし、性の健康クリニックと救急を明示的な例外とする。また「A specialist will only see you with a letter of referral from your GP」
- 5The NHS at 60: the next 60 yearsJournal of the Royal Society of Medicine 101(7):345-349(Maynard A, Bloor K) · 2008 · accessed 2026-08-27裏付けた主張: 一般医と病院専門医の分離は歴史的なものだが、それを強めたのは1911年国民保険法に組み込まれたパネル医(panel doctor)制度であり、同法が保険の対象としたのは一般医のサービスだけだったと述べる——「Separation of general practitioners and hospital specialists is historic, but was reinforced by the panel doctor system built into the 1911 National Insurance Act, which provided insurance coverage only for GP services」。1948年の妥結については「Bevan conceded a method of payment by capitation fee for each patient, as in the National Insurance Act in 1911」と記し、人頭払いが1911年法からの引き継ぎであることを明示している。また一般医は独立開業医の地位と、医療制度への第一接触という役割を保持したとする
- 6National Insurance Act 1911UK Public General Acts 1911 c.55(legislation.gov.uk、原本PDF、印刷頁350-351) · 1911 · accessed 2026-09-01裏付けた主張: 15条1項は「Every Insurance Committee shall, for the purpose of administering medical benefit, make arrangements with duly qualified medical practitioners in accordance with regulations made by the Insurance Commissioners」。15条2項は保険委員会に次の仕組みの採用を求める。(a)「the preparation and publication of lists of medical practitioners who have agreed to attend and treat insured persons whose medical benefit is administered by the committee」(b) 名簿への収載を望む有資格医師の収載請求権(ただし保険委員が医療の効率を害すると認めた場合は削除できる)(c)「a right on the part of any insured person of selecting, at such periods as may be prescribed, from the appropriate list the practitioner by whom he wishes to be attended and treated, and, subject to the consent of the practitioner so selected, of being attended and treated by him」(d)「the distribution amongst, and, so far as practicable, under arrangements made by, the several practitioners whose names are on the lists, of the insured persons who after due notice have failed to make any selection, or who have been refused by the practitioner whom they have selected」。すなわち名簿・選択・割当ての三つが法律の明文である。一方、同条には人頭払いの算式も、専門医療への第一接触も書かれていない。15条3項は一定所得超の者について、給付に代えて自ら医療の手配をさせる仕組みを定める
- 7A short history of the GP contract and its evolution in EnglandNuffield Trust(Rebecca Rosen、2025年1月24日) · 2025 · accessed 2026-08-27裏付けた主張: 1948年のGMS契約は国民保険の取り決めを土台としており、当時の医師収入のおよそ50%が人頭払いから来ていたこと、一般医が24時間365日の責任を負い不履行には罰則があったことを記す。1966年のFamily Doctor Charterが一般医療の再専門職化の起点であり、人頭払い・施設と職員の償還・予防業務への支払いを定めた「Red Book」を伴ったこと。1990年契約は一般医の反対を押し切って課され、業績測定・予防重視・ファンドホールディングを導入したこと。2004年の全国GMS契約は、契約主体を個々の医師から診療所へ移し、24時間責任の義務を終わらせ、QOFを導入したこと。2019年以降はPrimary Care Network(最低3万人の合算名簿規模)が導入され、99%の診療所が参加して1,250のPCNが形成されたこと
- 8National Health Service Act 1946, section 33(Arrangements for general medical services)UK Public General Acts 1946 c.81(legislation.gov.uk、原本PDF、印刷頁27-28) · 1946 · accessed 2026-09-01裏付けた主張: 33条1項は「It shall be the duty of every Executive Council in accordance with regulations to make as respects their area arrangements with medical practitioners for the provision by them as from the appointed day, whether at a health centre or otherwise, of personal medical services for all persons in the area who wish to take advantage of the arrangements, and the services provided in accordance with the arrangements are in this Act referred to as 'general medical services'」。すなわち住民に登録を命じるのではなく、取り決めを利用したい者への給付として構成されている。33条2項は規則が次を含むことを定める。(a)「for the preparation and publication of lists of medical practitioners who undertake to provide general medical services」(b)「for conferring a right on any person to choose, in accordance with the prescribed procedure, the medical practitioner by whom he is to be attended, subject to the consent of the practitioner so chosen and to any prescribed limit on the number of patients to be accepted by any practitioner」(c)「for the distribution among medical practitioners whose names are on the lists of any persons who have indicated a wish to obtain general medical services but who have not made any choice of medical practitioner or have been refused by the practitioner chosen」(d) 証明書の交付。1911年法15条2項と同じ一覧・選択・割当ての構造である。34条は Medical Practices Committee による地域別の医師配置調整を定める。なお33条にも人頭払いの算式は書かれていない
- 9Interim Report on the Future Provision of Medical and Allied ServicesConsultative Council on Medical and Allied Services(議長 Lord Dawson of Penn)※原典は保健省刊。本稿が参照したのは Socialist Health Association による全文転載 · 1920 · accessed 2026-08-27裏付けた主張: 一次保健センター(Primary Health Centre)を「その地区の一般医によって運営される」機関とし、二次保健センター(Secondary Health Centre)について「A group of Primary Health Centres should in turn be based on a Secondary Health Centre. Here cases of difficulty, or cases requiring special treatment, would be referred from Primary Centres」と定める。すなわち一次から二次への紹介の階層を明示的に設計している。同時に医師選択の自由についても「there should be every effort, wherever possible, to make this choice a reality」と述べており、紹介の階層と患者の選択を同じ文書が同時に置いている
- 10The vast majority of GPs resisted the founding of the NHS – here's whyThe Conversation(Michael Lambert、ランカスター大学リサーチフェロー、2024年4月4日) · 2024 · accessed 2026-08-27裏付けた主張: 1948年1月の英国医師会(BMA)の投票について「in January 1948, 84% of GPs in the BMA voted against the NHS」と記す。反対の理由の中心は、NHS が医師を自由な専門職から中央政府の給与生活者に変えてしまうという懸念だった。妥結の内容については「GPs maintained their independence. They avoided nationalisation」であり、現在も「GPs remain mostly independent doctors contracted to provide certain services rather than salaried workers」であるとする。なお本稿はこれを学術論文ではなく研究者による一般向け解説として扱う
- 11The National Health Service (Performers Lists) (England) Regulations 2013, regulation 24UK Statutory Instruments 2013 No.335(legislation.gov.uk、制定時の版) · 2013 · accessed 2026-08-27裏付けた主張: 制定時の24条(1)は「A medical practitioner may not perform any primary medical services unless that medical practitioner is a general medical practitioner and is included in the medical performers list」と定める。すなわち名簿に載っていなければプライマリ・ケアに従事できない。ただし制定時から例外規定があり、暫定登録の研修医、登録後の指導下臨床実践中の医師などが含まれる。この版は現行法ではない(2024年改正後の条文は pl-regs-24-current を参照)
- 12The National Health Service (Performers Lists) (England) Regulations 2013, regulation 24(2024年改正反映の現行版)UK Statutory Instruments 2013 No.335(legislation.gov.uk、改正履歴つき現行版) · 2024 · accessed 2026-09-01裏付けた主張: 現行24条(1)は「A medical practitioner may not perform any primary medical services unless the medical practitioner is a general medical practitioner included in the medical performers list」。ただし24条(1)〜(1B)は The National Health Service (Primary Medical Services and Performers Lists) (Amendment) Regulations 2024 (S.I. 2024/575) reg.2(1) により2024年5月27日から旧24条(1)に代えて置かれたもので、(1A)は「A medical practitioner may perform primary medical services when the medical practitioner is not included in the medical performers list if they have a prescribed connection under regulation 10 of the Medical Profession (Responsible Officers) Regulations 2010… with a designated body referred to in Part 1 of the Schedule to those Regulations」という例外を定める。(1B)は SARS-CoV-2 ワクチン接種の例外。(2)は Medical Act 1983 の暫定登録医が承認プログラムの一環として従事する場合、(3)は GP Registrar 等が GMC 承認の登録後指導下臨床実践の一部として従事する場合の例外。旧(4)(5)は2023年9月18日に削除された。なお本規則3条が定める performers list は資格登録簿(GMC register)とも患者一覧(patient list)とも別の制度である
- 13The NHS Constitution for EnglandDepartment of Health and Social Care · 2026 · accessed 2026-08-27裏付けた主張: 患者の権利として「You have the right to choose your GP practice, and to be accepted by that practice unless there are reasonable grounds to refuse, in which case you will be informed of those reasons」と明記する。また「register with a GP practice – the main point of access to NHS care as commissioned by NHS bodies」と述べ、登録が NHS の主たる入口であることを示す。選択については「You have the right to make choices about the services commissioned by NHS bodies and to information to support these choices」。効力については「The Secretary of State for Health, all NHS bodies, private and voluntary sector providers supplying NHS services, and local authorities in the exercise of their public health functions are required by law to take account of this Constitution in their decisions and actions」とする
- 14Health Act 2009, section 2(Duty to have regard to NHS Constitution)UK Public General Acts 2009 c.21(legislation.gov.uk) · 2009 · accessed 2026-08-27裏付けた主張: 第2条(1)は「Each of the bodies listed in subsection (2) must, in performing its health service functions, have regard to the NHS Constitution」と定める。NHS憲章に法的な足場を与えているのはこの条文だが、課されている義務は「have regard to(考慮する)」であって、憲章の各項目に従う義務ではない
- 15The Handbook to the NHS Constitution for EnglandDepartment of Health and Social Care · 2026 · accessed 2026-09-01裏付けた主張: 「You have the right to choose your GP practice, and to be accepted by that practice unless there are reasonable grounds to refuse, in which case you will be informed of those reasons」という権利について、その根拠を「The right is derived from the duties imposed on the provider of GP services by regulations made under the NHS Act 2006, in particular paragraphs 18 to 21 of schedule 3 to the National Health Service (General Medical Services Contracts) Regulations 2015 and paragraphs 17 to 20 of schedule 2 to the National Health Service (Personal Medical Services Agreements) Regulations 2015」と説明する。すなわち憲章上の理念ではなく契約規則に由来する。断りうる正当な理由の例として、診療所がNHS Englandと合意した境界の外に住んでいること、新規患者に対して名簿を閉じる承認を得ていること、医師患者関係の破綻、診療所での暴力行為を挙げ、断った場合は理由を告げるべきこととする。診療所内の特定の医師を希望する権利についても、根拠をNHS Act 2006に基づく規則とする
- 16医師法第19条(応招義務)昭和二十三年法律第二百一号(e-Gov 法令検索、法令APIで全文取得) · 1948 · accessed 2026-09-01裏付けた主張: 第19条第1項は「診療に従事する医師は、診察治療の求があつた場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならない」。第2項は「診察若しくは検案をし、又は出産に立ち会つた医師は、診断書若しくは検案書又は出生証明書若しくは死産証書の交付の求があつた場合には、正当の事由がなければ、これを拒んではならない」。義務の名宛人は医師であり、患者の私法上の請求権として構成されているわけではない
- 172026 GP Patient Survey results releasedIpsos(GP Patient Survey 2026、2026年7月公表) · 2026 · accessed 2026-08-27裏付けた主張: 16歳以上を対象とし、2026年1月2日から4月13日に実施、有効回答654,714件、回答率22.1%。診療所全体の経験が「良い」は76.7%(2024年から+2.8ポイント)、最後に連絡を試みたときの経験が「良い」は72.6%(同+5.3ポイント)、診療所が閉まっているときのNHSサービスの経験が「良い」は59.1%(同+3.2ポイント)。応対した医療専門職への信頼は92.7%(2025年92.5%、2024年92.3%)
- 18General Practice Workforce, 31 December 2025NHS England Digital(2026年1月22日公表、イングランドのみ)※digital.nhs.uk は自動取得を遮断するため Internet Archive 保存版を用いた · 2026 · accessed 2026-08-22裏付けた主張: 2025年12月31日時点の「fully qualified GPs」は headcount 39,918、常勤換算(FTE)28,777。イングランドのみの数値である
- 19The state of medical education and practice in the UK — Workforce report 2025General Medical Council(2025年11月17日公表)※直接取得できないため Internet Archive 保存版を用いた · 2025 · accessed 2026-08-22裏付けた主張: 2024年12月31日時点で、GP登録簿に載りかつライセンスを保持する医師は69,443人(両登録簿に載る医師を除く、英国全体)。ライセンスの有無を問わない登録簿上のGPは2026年8月21日時点で84,034人
- 20総合診療に関する国際比較(厚生労働行政推進調査事業費補助金「総合診療が地域医療における専門医療機関等との連携に与える効果についての研究」)厚生労働科学研究費補助金(イギリスの章:澤憲明。総論:岡田唯男) · 2018 · accessed 2026-08-18裏付けた主張: 英国では2017年度、後期研修1年目の全枠8,846のうちGP枠が3,857であり、全体の44%を占める
- 21令和8年度の専攻医採用と令和9年度の専攻医募集について(令和8年度第1回医道審議会医師分科会医師専門研修部会 資料1)日本専門医機構・厚生労働省 · 2026 · accessed 2026-08-17裏付けた主張: 「専攻医採用実績数 診療科別一覧表」(令和8年3月2日時点確定値)として、2026年度の総合診療の専攻医採用数を282人、全19領域の合計を9,998人と示している
- 22Quality and Outcomes Framework: what have we learnt?BMJ 354:i4060 (Roland M, Guthrie B) · 2016 · accessed 2026-08-21裏付けた主張: QOFの成立過程は「There followed 18 months of negotiations between BMA and NHS Employers with a small number of clinical advisers to develop the outcome measures」であり、デルファイ法等の合意形成ではなく医師会と雇用者側の交渉だった。また「the progressive decline in the ability of patients to see a GP of their choice」は「a relentless focus by government on incentives for rapid access to care」に部分的に起因すると述べている
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日本にゲートキーピングが存在しないのは、なぜか本稿の対になる回。日本にゲートキーピングが無い来歴を辿った。本稿は同じ問いを英国側から立てるフリーアクセス=非効率、という前提を検証するゲートキーピングの効果エビデンスを検証した回。本稿は効果ではなく制度史に絞る総合診療医は、世界でどう数えられているのか英国のGP数に公式値が四つあることを確かめた回。本稿の労働力の数字はそこに依拠する継続性は、誰について測られているのか日本の法令に「継続性」という名詞が無いことを確かめた回。本稿の最後の対比はここに繋がる総合診療専門医は、増えているのか総合診療専門医の専攻医が全体の3%前後で推移していることを確かめた回。本稿はその数字を英国の44%と並べる