測る道具の点検01 医療費と財源/JAPANEUROPEOTHER
医療費の対GDP比は、何と何の比なのか
「医療費の対GDP比」は一つの指標ではなく、異なる分子・期間・データ版を持つ比率の総称である。厚生労働白書は同じ年度に四つの値を載せている。2020年度、国民医療費は前年より減ったのに対GDP比は上がった——分母が縮んだからである。2011年の系列の段差は1.429ポイントで、うち約0.94ポイントは国際会議の採決で決まった長期介護の算入範囲による。読む際には、分子の範囲、年度か暦年か、取得・改定時点、そして分子と分母それぞれの変化を併記する必要がある。調べた範囲では、支出抑制の上限として運用されている対GDP比は見つからなかった。
ダイジェスト解説 VIDEO
この列は、数字の来歴を辿ってきた。前回は、制度が読んでいる分類に来歴の記述が無いところに着いた。
今回は、比を扱う。医療費の対GDP比である。
先に、この記事が何を主張しないかを書いておく。対GDP比という指標に欠陥がある、という話ではない。
対GDP比は、医療費が増えたかどうかを示す指標ではない。経済の規模に対して医療がどれだけを占めるかを示す指標である。だから、医療費が減った年に比が上がることは、指標の失敗ではない。「絶対額は減ったが、経済に占める割合は増えた」という、比が示すべきことをそのまま示している。
問題は、比が答えている問いと、読む側が答えだと思っている問いが違うことにある。そして比は、単独では分子と分母のどちらが動いたのかを教えない。
以下は、その二つ——分子が何を指しているのかと、分母がどう動いているのか——を辿る。
白書一冊の中に、三つある
『令和7年版 厚生労働白書』を開く。
| 箇所 | 表記 | 値 |
|---|---|---|
| 本編 第1部第1章 図3 | 医療《対GDP比》 | 6.9% |
| 資料編 p.31 | 「国民医療費の対GDP比」 | 8.2% |
| 資料編 p.33 | 「総医療費の対GDP比(%)」 | 11.4% |
後ろの二つは、同じPDFの隣り合うページである1。
詳細データ① OECD 加盟国の医療費の状況(2022 年) 総医療費の対GDP比(%)/一人当たり医療費(ドル) アメリカ合衆国 16.5 1 … 日 本 11.4 5 5,424 19 … OECD平均 9.2 5,313
そして両者を橋渡しする注記が、一つもない。
三つの値は、矛盾ではない
先に断っておく。6.9%、8.2%、11.4%は互いに矛盾していない。測っている対象が違う。
| 値 | 対象 | 期間 |
|---|---|---|
| 6.9% | 医療給付費(保険給付の部分) | 2024年度予算ベース |
| 8.2% | 国民医療費(保険診療の対象となり得る傷病の治療費) | 2023年度 |
| 11.4% | 総医療費(介護・予防・市販薬・管理費を含む国際基準) | 2022暦年 |
複数あること自体は、問題ではない。問題は、読む側が違いを理解できる対応表も注記も付いていないことである。三つは対象も期間も違うのに、白書はどれも「対GDP比」とだけ書いている。
期間を揃えても、四つある
年をまたいだ比較は公平でないので、期間を揃えて数え直した。令和5年度(2023年度)である。
| 指標 | 対GDP比 |
|---|---|
| 社会保障給付費「医療」(ILO基準) | 7.66% |
| 概算医療費 | 約7.95% |
| 国民医療費 | 8.08%2 |
| 社会支出「保健」(OECD SoCX基準) | 9.92% |
同じ年度に、四つある。上と下で1.30倍。(下の三つは本稿が同じ分母で計算した値で、公表値は国民医療費の8.08%だけである。)
国際基準の値は暦年なので、この表には入れられない。2023暦年のOECDの確定値は10.754%である3。年度と暦年をまたぐので、直接は並べられない。
そして年をまたぐと、さらに増える。白書本編の6.9%は2024年度の予算ベース、白書資料編の11.4%は2022暦年、そして厚生労働省が令和元年度版まで公表していた国民医療費 ÷ 国民所得は11.06%(同じ年の対GDP比は7.93%)である。
同じ分子でも、分母をGDPから国民所得に替えるだけで、7.93%が11.06%になる。
何が入っていないかは、書いてある
国民医療費の側は、範囲を明示している4。
保険診療の対象とならない評価療養(先進医療等)、選定療養(特別の病室への入院、歯科の金属材料等)等に要した費用は含まない。また、傷病の治療費に限っているため、(1)正常な妊娠・分娩に要する費用、(2)健康の維持・増進を目的とした健康診断、予防接種等に要する費用、(3)固定した身体障害のために必要とする義眼や義肢等の費用も含まない。
含まれないものの列挙には「買薬の費用」と「介護保険法における訪問看護費」も入っている。——国際基準との差の中身と、正確に対応する。
そして、これもよく誤解される。国民医療費は、レセプトを単純に合算した統計ではない※訂正。「支払確定額」に「一部負担額の推計値」と「全額自費で支払った費用の推計値」を足したものである。(支払確定額そのものは診療報酬請求に強く依存しているので、「レセプトの集計ではない」と切り離してしまうのは言いすぎだった。)レセプトを集計しているのは概算医療費のほうで、そちらは「国民医療費の約98%に相当」と説明されている。
一本の線の中で、統計が切り替わる
財政制度等審議会の建議の参考資料に、こういう注記がある5。
※ 2024年度までは概算医療費(労災、全額自費等の医療費を含まない)、2025年度は予算ベースの国民医療費、2026年度は…推計。 注:2023年度までは国民医療費、2024年度は概算医療費。
一本の折れ線グラフの中で、統計が二度切り替わっている。注記はある。ただし、グラフを見た人がそれを追えるかは別である。
なお同じ資料には、こういう等式も置かれている。
国民医療費=診療報酬総額 約50兆円
公開時の本文は、これを「国民医療費は患者負担と全額自費の推計を含むので厳密には成立しない」と批判した。撤回する※撤回。通常、患者の一部負担も診療報酬総額の一部である。「診療報酬総額」という語が何を含むのかを出典側で確定できていないので、この批判は成り立たない。
同じ数字も、版で動く
6と6’の差も見ておく。白書が載せた2022年の日本の値は11.4%だが、いまOECDから取れる確定値は11.691%である。同じ年の同じ指標でも、データの版が違えば0.3ポイント動く。白書の出典表記は「OECD Data Explorer」だけで、閲覧時点が書かれていない1。
差の大部分は、介護をどちらに数えるかである
国民医療費(2023年度、48.09兆円)とOECD基準(2023暦年、66.25兆円)の差18.16兆円の中身を、機能別に見た3。
ただし、これは差額の分解ではない※訂正。一方は年度、他方は暦年で期間が違い、定義も違う。そしてHC3などが国民医療費と完全に非重複であることも示せていない。公式の突合表は存在せず、以下は本稿が突き合わせた結果である。
したがって以下の表は「OECD総額に含まれる、国民医療費の主な対象外項目の規模」であり、右列は差額に対する規模の比であって、差額分解の寄与率ではない。
| 機能 | 金額 | 差額に対する規模の比 |
|---|---|---|
| HC3 長期介護(健康部分) | 12.57兆円 | 69.2% |
| HC6 予防 | 2.95兆円 | 16.2% |
| HC512 一般用医薬品 | 1.72兆円 | 9.5% |
| HC7 管理・保険運営 | 0.89兆円 | 4.9% |
期間の違いを含む概算では、差額のおよそ7割に相当する規模を長期介護が占める。
そしてここが重要である。国際基準は介護を健康部分(HC3)と社会部分(HCR1、1.87兆円)に割り、前者だけを医療費に入れる。
日本の制度区分——医療保険と介護保険——とは、切り口が直交している。
分子が減った年に、比は上がった
ここからが比そのものの話になる。
令和2年度、厚生労働省の公式数値である6。
令和2年度の国民医療費は42兆9,665億円、前年度の44兆3,895億円に比べ1兆4,230億円、3.2%の減少となっている。…国民医療費の国内総生産(GDP)に対する比率は8.02%(前年度7.97%)となっている。
医療費は1兆4,230億円減った。それでも比は上がった。
同じ年度、GDPは557.3兆円から535.5兆円へ3.9%縮んでいる。分子だけを見れば比は0.255ポイント下がるはずだった。分母の縮小が0.314ポイント押し上げた。
収録された59の国・地域では、すべてで上がった
国際基準でも同じことが起きている。2019年から2020年の日本を分解した7。
| ポイント | 割合 | |
|---|---|---|
| 分子効果 | +0.107 | 23.6% |
| 分母効果 | +0.343 | 75.6% |
| 交互作用 | +0.003 | 0.8% |
4通りの分解法で検算しても、分母寄与率は75.6〜76.4%に収まる。
SHAデータベースに収録された59の国・地域のうち、2019年から2020年にかけて対GDP比が上昇したのは59——すべてである8。うち40か国では名目GDPが減っていた。(これは同データベースに必要なデータが収録されている国・地域についての集計であり、世界全体についての集計ではない。)
ただし、中身は一様ではない。
| 国 | 医療費伸び | GDP伸び | 分母寄与率 |
|---|---|---|---|
| 日本 | +1.00% | −3.11% | 75.6% |
| フランス | +3.40% | −4.68% | 57.9% |
| 英国 | +14.70% | −5.70% | 27.9% |
| ドイツ | +6.45% | −2.45% | 27.5% |
| 米国 | +11.02% | −0.76% | 6.5% |
日本と米国では、同じ「上昇」の中身が正反対である。「2020年の急上昇は分母のせいだ」と一般化すると、米国については事実に反する。
そして米国の分子がなぜ大きいのかについては、繰り返し検証された答えがある9。
米国における利用率は、他国とおおむね同様であった。労働と財の価格(医薬品を含む)、および管理費が、支出の差の主な要因であるように見える。
ただし留保も要る。米国内の時系列の要因分解では、価格と診療の強度が結合した項として報告されており、純粋な価格効果として分離されてはいない9。
そして2023年の急落についても同じことが言える。比が10.754%まで下がったのは、GDPが5.3%伸びたためである(分母効果が63%)7。
定義変更の段差は、コロナの3倍ある
OECDのデータには観測ごとに状態フラグが付いている。2011年に B = Time series break(系列断絶)がある3。
| 年 | 値 |
|---|---|
| 2010 | 8.981% |
| 2011 | 10.411% |
| 差 | +1.429ポイント |
この1.43ポイント全部が定義変更によるものではない。本稿が分解した結果はこうである。
| ポイント | |
|---|---|
| 分子効果 | +1.245 |
| 分母効果(2011年はGDPが1.78%縮んでいる) | +0.163 |
| 交互作用 | +0.023 |
そして分子の増加6.35兆円のうち4.79兆円(75.4%)が長期介護の算入である。
したがって、定義変更に帰属できるのはおよそ +0.94ポイントである。残りは通常の伸びと、震災の年にGDPが縮んだことによる。
それでも、コロナ期の跳ね上がり(+0.454ポイント)の2倍を超える。医療が増えたのではない。数える範囲が変わった。
そして、その範囲は投票で決まっていた。日本のSHA推計の歴史を記録した研究報告書に、こうある10。
2010年11月の専門家会合で日本は「ADL 関連サービスは HC.3 に含めるべきでない」と主張したが投票(賛成23、反対8)で敗れ…計上対象となる介護保険サービスは14サービスから38サービスへと拡大し…LTC 費用は2008年度ベースで約1.8兆円から約6.4兆円へ、約4.6兆円増加した。
1.429ポイントの段差のうち、推計上およそ0.94ポイントは、国際会議で決まった長期介護の算入範囲による※訂正。(公開時は「1.4ポイント上がったのは国際会議での採決の結果である」と全量を帰属していた。直前で0.94ポイントと自分で限定しているのに、次の段落でそれを外していた。)
そして境界の規定そのものが、そう作られている。健康部分と社会部分が分けられない場合、SHAのマニュアルはこう定める11。
分離して計上できず、かつパッケージの優勢な構成要素でない場合は、HC.3 に含めるべきである。そうでなければ、パッケージ全体を HCR.1 に含めるべきである。
分けられないときは、どちらが優勢かで、丸ごとどちらかに落ちる。
OECD自身が、この境界の比較可能性を評価している11。32か国のうち、社会部分を報告しているのは18か国だけであり、報告できている18か国の間でも、その割合はドイツの4%からポルトガルの75%まで開いている。
日本は、2016年の時点では報告していなかった。そして本稿が取得した2023年のデータでは、1.87兆円として報告されている。
分母を替えると、動く
同じ分子でも、分母の版で動く。厚生労働省が公表する8.08%の分母は2015年基準の旧GDP系列である。現行の2020年基準に置き換えると、分子は1円も変わらないまま7.76%(−0.32ポイント)になる2。
分母の種類でも動く。GDPではなく国民総所得(GNI)を分母にすると、2023年の値は10.754%ではなく10.169%(−0.585ポイント)である7(GNIは、日本の統計で「国民所得」と呼ばれる概念とも別物である※追記——後者は固定資本減耗と生産・輸入品に課される税を控除した純概念である)。コロナ期の変動より大きい。
OECD自身が、この問題を認めている12。
アイルランドやルクセンブルクのように、GDPのかなりの割合が本国送金される利益であり国内消費に利用できない国では、GNIのほうがGDPより意味のある指標かもしれない。しかし一貫性のため、すべての国でGDPを分母として維持する。
日本にも効く。2019年から2022年の見かけ上の上昇(+0.988ポイント)のうち約26%は、海外からの所得受取が増えたことの反映である。
そして政策文書の中でも、分母は入れ替わる。骨太方針2026の同じ節に、二つの指標が並んでいる13。
| 指標 | 分母 |
|---|---|
| 社会保障負担率(新しい目標) | 国民所得 |
| 医療給付費の対GDP比(脚注119) | GDP |
GDPと国民所得の比は約1.35倍である。
年齢を調整すると、位置が変わる
日本は高齢化率がOECDで最も高い。同じ比でも意味が違う。
OECDのワーキングペーパーが、年齢構成を調整した比較を行っている14。
日本では、調整後の一人当たり支出はOECD平均の97%であり、調整前のデータでは116%である。
そして2023年、OECD38か国での順位である。
| 指標 | 日本 |
|---|---|
| 対GDP比 | 10位 |
| 一人当たり(購買力平価) | 19位 |
| 65歳以上人口比率 | 1位 |
日本より一人当たり医療費が多い18か国のうち、日本より高齢化率が高い国は無い。最も高齢なのはフィンランドの23.6%で、日本の29.6%には届かない。
ただし、この調整にも限界が明記されている。
イタリア、日本は長期介護を〔年齢別に〕配分していない
長期介護は日本のCurrent expenditure on healthの19.0%を占め、高齢者に偏る。この調整は、むしろ年齢効果を過小評価している可能性がある。
閾値は、すべて床だった
では「これを超えると危険」という水準はどこにあるのか。
数値は実在する。確認できた国際機関・政府の規範的な数値目標は、いずれも下限だった※訂正。
そしてこの表自身に、この記事の方法を適用しておく。分子も分母も揃っていない※追記。
| 出所 | 分子 | 分母 | 対象 | 拘束力 | 数値 | 向き |
|---|---|---|---|---|---|---|
| WHO(World Health Report 2010)15 | 政府保健支出 | GDP | 低・中所得国中心 | 勧告 | 4〜5% | 下限 |
| Chatham House(2014)16 | 政府保健支出 | GDP | 低・中所得国 | 提言 | 5% | 下限 |
| PAHO15 | 公的保健支出 | GDP | 米州 | 決議 | 6% | 下限 |
| ポーランド(法律)17 | 公的保健支出 | GDP | 自国 | 法定 | 7% | 到達すべき下限 |
| アブジャ宣言(OAUであってWHOではない)15 | 保健予算 | 政府予算 | アフリカ | 政治宣言 | 15% | 下限 |
最後の一行だけ、分母が違う。政府予算に対する割合であって、GDPに対する割合ではない。
そして5%を設定した当事者が、明示的に書いている16。
それはいかなる意味でも上限を表すものではない。目標を上回る国もなお、自国民の健康を守る責任を能力の限り果たすために十分なことをしているかを確保しなければならない。これは、高所得国はGDPのより高い割合を医療に投じることが期待されるべきだ、ということを示している。
その5%自体にも、根拠がなかった。
5%という数字は、1981年という早い時期にWHOの文書に現れている。しかし、それは監視すべき指標として提案されたのであって、推奨される医療支出の水準としてではなく、その正確な数字の根拠は示されなかった。
調べられた範囲では、上限が見つからなかった
WHOの文書リポジトリを対象に、上限を示す表現を探した18。陽性対照を先に立てた——「universal health coverage」9,998件、「5% of GDP」331件。フレーズ検索は機能している。
ただし、これは完全一致のフレーズ検索である。別の言い回し、別の言語、別の文書にある上限は拾えない。そしてIMFの文書には到達できず、経済学の専門データベースも検索範囲に入っていない。言えるのは「調べられた主要な国際保健文書に、普遍的な上限は見当たらなかった」までである。
そのうえで——
| 検索語 | ヒット |
|---|---|
"health expenditure should not exceed" | 0 |
"ceiling on health expenditure" | 0 |
"maximum share of GDP" | 0 |
"optimal share of GDP" | 0 |
"health expenditure is too high" | 0 |
OECDの定義が、この不在を説明している19。
財政持続可能性は、医療の目的それ自体についてのものではない。むしろそれは、医療への公的支出が公共財政上の制約を尊重することを確保するものである。
そしてOECDが実際に使っている作業指標は、公的医療費の対政府歳入比(2040年に20.6%と投影)と、医療費の伸び率と歳入の伸び率の比較(2.6%対1.3%)である。GDP比の閾値ではない。
なおIMFの医療費上限に関する文書は、体系的に検索できなかった(imf.org が自動取得を遮断している)※訂正。以下のワーキングペーパーには到達できたが、医療費についての「3分の2」の引用は原文で確認できておらず、二次資料経由である。そのうえで、このペーパーは債務についてすらこう結論している20。
中期的な成長見通しが劇的に損なわれる特定の債務閾値の証拠は、見出されない。
そして、ここは誤解されやすいので明示しておく。普遍的な上限が無いことは、対GDP比が無意味だということではない。適切な水準は、税収の構造、健康のアウトカム、アクセス、公平性、そして他の分野の支出との機会費用によって変わる。変わるものを一つの数字で表せない、というだけである。
閾値は、手法の産物である
その債務の話には続きがある。
Reinhart & Rogoff の「90%」は、こう述べていた——「公的債務がGDPのおよそ90%を超える国の成長率の中央値は、そうでない場合より約1%低い」。
再現の結果である21。
1946年から2009年にかけて、公的債務/GDP比が90%を超える国は年平均2.2%の実質成長であって、公表された−0.1%ではない。
さらに、同じデータに正式な閾値検定をかけると、閾値は出る。ただし場所が違う。
Reinhart-Rogoff のデータセットを用いて、我々は90%付近ではなく30%付近に債務閾値を見出す。
医療費でも同じことが起きている。逆U字関係から「最適支出水準」を推定した研究は、同一データ・同一著者で3.31%から7.42%まで2.2倍にばらつく22。
高齢化だけでは、将来の増加を説明できない
高齢化の寄与についても、投影がある。EUの公的保健支出について、2022年から2070年、48年間の投影である17。(EU全体の公的支出についての投影であり、日本についてでも、OECD基準の総保健医療支出についてでもない。長期介護の扱いも異なりうる。)
| シナリオ | 2022 | 2070 | 変化 |
|---|---|---|---|
| 純粋な人口要因のみ | 6.9% | 7.1% | +0.2ポイント |
| ベースライン(人口+所得) | 6.9% | 7.3% | +0.4ポイント |
| リスクシナリオ(非人口要因の趨勢が継続) | 6.9% | 8.1% | +1.2ポイント |
ただし、これをそのまま日本に当てはめてはいけない。
OECDが公的医療費の伸びを要因分解した文書は、たしかに「人口要因の説明力は小さい」と述べている——1995年から2009年、年4.3%の伸びのうち純粋な人口要因は0.5ポイントである23。だが同じ表の国別内訳で、日本は伸び2.7%のうち年齢効果が1.2で、掲載国中最大である。
「高齢化は主因ではない」はOECD平均についての記述であって、日本には同じ形では当てはまらない。
そして分母の取り方でも見え方が変わる。IMFのワーキングペーパーは対GDP比の上昇を分解して「1990年から2011年の支出増加の3分の2が高齢化による」とするが、これは一人当たり支出の伸びを分解したOECDの数値とは分母が違うため、直接は比べられない23。
日本政府自身の分解では、高齢化の寄与は2010年の1.6%から2024年の0.6%へ下がっている(伸びの主因は「その他(医療の高度化・受療行動の変化等)」)。
そして、混ざっているものを分けないまま高齢化の寄与を論じても、答えは出ない。この列とは別の列で、急性期医療は死亡までの期間に駆動され、介護は年齢そのものに駆動される、という二層構造を辿った。そのとき書いたのは、両者を一つの回帰式に押し込めるから答えがぼやける、ということだった。
本稿が見ているのは、その手前である。国際基準の「医療費」には、長期介護の健康部分(HC.3)が最初から入っている。そして日本のOECD値が2011年に段差を持ったのは、まさにその算入によるものだった。
つまり、二層を分けて論じようとする以前に、国際比較に使われている数字が、既に二層を一つに合算している。そしてその合算の仕方——健康部分と社会部分の境界——は、日本の医療保険・介護保険の区分と直交している。
米国議会予算局も同じ方向である24。
それ自体では、高齢化は2030年までの連邦のメディケア・メディケイド支出の予測される伸びの約4分の1を占める。2050年までにその割合は20%未満に下がり、2082年までには約10%にすぎなくなる。
そして同じ文書が、excess cost growth という語について留保を置いている。
(この語句は、一人当たり医療支出の伸びが必然的に過剰であることを含意する意図はない。それは単に、その伸びを経済の伸びとの関係で測るものである。)
「医療は贅沢財」という想定も成立しない。出版バイアスを補正した所得弾力性は0.4〜0.8である24。
各国が使っている目安は、対GDP比ではない
日本の実際の財政目安も、対GDP比ではない。骨太方針2026の脚注120は「高齢化による増加分に相当する伸びに経済・物価動向等を踏まえた対応に相当する増加分を加算する」と定める13。医療費適正化計画のほうは、法文上「医療に要する費用の見込み」であり、著しく上回った場合の効果は「要因を分析するとともに…必要な対策を講ずる」だけで、罰則も執行機構も無い25。
他国も同様である。
| 国 | 目標変数 |
|---|---|
| フランス ONDAM | 絶対額(国会が毎年ユーロ建てで議決) |
| ドイツ | 伸び率(保険料算定基礎収入の1人当たり変化率) |
| オランダ | セクター別の数量成長率26 |
| マサチューセッツ州 | 潜在州総生産の成長率に連動した伸び率27 |
医療費を抑制する上限として対GDP比を運用している例は、見つからなかった※訂正。(目標として使っている例はある。上で挙げたポーランドは、公的保健支出の対GDP比7%を法定の到達すべき下限としている。公開時の本文は「対GDP比を目標にしている例は見つからなかった」と書いており、自分が数十行前に挙げた例と矛盾していた。)
解決の方向
診断だけで終えたくないので、考えたことを書く。ここから先は確かめられた事実ではなく、私の案である。
まず一つ引っ込める。「数字を一つに統一する」は解決ではない。測っている対象が違うのだから、複数あってよい。要るのは、読む側が違いを追えるようにすることである。
① 指標名を正確に書く。「医療費の対GDP比」ではなく「国民医療費の対GDP比」「OECD基準の経常保健医療支出の対GDP比」と書く。白書の資料編は前者をそう書いており、本編はそう書いていない1。
② 対象範囲を併記する。厚生労働省は既に注記を持っている——「OECDの『総医療費』には、国民医療費に加え、介護費用の一部(介護保険適用分)、民間の医療保険からの給付、妊娠分娩費用、予防に係る費用等が含まれていることに留意が必要」。この一文が、白書には無い。
③ 年度と暦年を区別する。国民医療費は年度、OECDの値は暦年である。並べるときに揃えるか、揃えられないなら明示する。本稿が「同じ年度で四つ」と「暦年では別に一つ」を分けて書いたのは、そのためである。
④ 橋渡し表を公表する。本稿が行った突き合わせは、公表データだけでできる。そして前例がある。2010年の厚生労働省の検討会に、総保健医療支出と国民医療費と社会保障給付費の包含関係を実数つきで示した図があった(2007年で 418,497億円/341,360億円/289,462億円)10。十数年、更新されていない。
⑤ データの取得・改定時点を記録する。白書は「OECD Data Explorer」とだけ書いて閲覧日を書かない。財務省の資料は「2025年3月31日閲覧」と書く。後者に揃えるだけでよい。
⑥ 分子と分母の変化を併記する。「対GDP比が上がった」と報じるとき、どちらが動いたかを添える。それだけで、2020年度の日本について「医療費は減っていた」ことが伝わる。
⑦ そして日本のSHA値は、まだ政府統計ではない。厚生労働行政推進調査事業の報告書が、こう書いている10。
近年、国際比較可能な保健医療支出統計整備の必要性が高まる中、「経済財政運営と改革の基本方針2024」においても、SHA手法に基づく保健医療支出統計の政府統計化に向けた検討が明記された。
白書の資料編に載っている11.4%は、日本の統計法上の政府統計として作成・公表された値ではなく、研究班の推計を基にOECDが公表する国際統計である※訂正。(公開時は「政府統計ではない数字」とだけ書いたが、政府が根拠なく載せた非公式の数値のように読める。)そして同じ2023年について、研究班の試算は約68兆円、OECDの公表値は66.25兆円で一致していない。
目標を置くなら、という話
支出抑制の上限として対GDP比を運用している国は、調べた範囲で見つからなかった※訂正(下限としての目標は、ポーランドの例がある)。代わりに使われているものと、その帰結を短く書いておく。ここは本来それ自体で一本になる主題なので、要点だけにとどめる。
フランスは「守られた」の中身に注意が要る。2013年から2019年まで、議決された目標は毎年守られた。ただしその内訳を、会計検査院自身が書いている28。
2013年から2016年にかけて、外来の下位目標では超過が確認され、公立病院への予算の凍結と取消によって相殺された。
上院の報告書に実額がある29。2015年以降、外来は毎年超過している(+4.85億、+7.60億、+6.20億、+2.70億ユーロ)。同じ期間、病院部門は一貫して下振れ(−1.85億、−3.85億、−5.60億、−3.25億ユーロ)。2010年から2018年の累計で約30億ユーロ。
主な説明は、財源の性質そのものの違いにある——病院については限定的な枠であるのに対し、外来については開かれた枠である。
そして病院にとって「負け-負けの装置」であり、投資が調整弁になって2009年以降後退し続けている、と。
目標が守られたことと、目標が機能したことは、同じではない。閉じた枠を持つ側が、開いた枠を持つ側の超過を吸収していた。
そして超過は翌年の起点になる28。
ONDAMの超過は翌年度の支出の基礎に組み込まれるため、支出の動きを固定化することになる。2022年から2025年にかけて…その累計は91億ユーロ、同期間のONDAM増加の20%にのぼった。
ドイツでは、上限が適用除外に侵食された。所管省自身が2026年の法案草案でこう書いている30。看護人件費は2020年から包括払い制度から切り出され、実費補填の原則に移された。その結果——
切り出し以降、年におよそ11%、平均で年21億ユーロ増加し、2025年には約250億ユーロに達した。
上限を置いても、そこから外す仕組みを同時に作れば、外された部分が伸びる。
台湾では、対GDP比が目標ではなく結果として定義されている。行政院が伸び率の範囲を承認し、その範囲内で協議によりニュー台湾ドル建ての総額が決まる31。そして財務評価報告の注記は、こう書く。
全民健保医療費用の対GDP比率=医療給付費用総額 ÷ GDP
総額が先に決まり、対GDP比はその割り算の結果である。日本が「対GDP比を参照しつつ」と書くのとは、順序が逆になっている。
ただし副作用も実証されている。総額導入後、在院日数が7%、入院あたりの処置・投薬件数が15%、患者の自己負担が6%増えたという報告があり、11年間で外科医が25%減ったという研究もある。歯科の総額制は地理的偏在を改善しなかったとも報告されている31。
そして、目標が守られたかどうかを測ること自体が難しい。マサチューセッツ州は、2012年の法律で目標を経済に連動させた27。結果は毎年公表されている。州の分析機関の最新報告(2026年3月)はこうである32。
パンデミック期を除けば、ベンチマークは2017年以降達成されていない。 一人当たり総医療費の伸びは4年連続で目標を超えた。
それでも、効果があったかどうかは割れている。2026年に相反する評価が出て、同州に特化した評価は四つの手法で結果が食い違い、「弱く一貫しない」と結論している33。オランダの上限は18年間で一度しか守られなかったという査読論文があり34、守られるようになった時期には自己負担の引き上げや給付範囲の縮小が並走している。オランダの政府系分析機関は、一律カットについて「質の劣る医療をもたらし、医療の雇用を減らす」と書いている35。
この主題は、それ自体で一本を要する。ここでは、対GDP比を目標にしている国が見つからなかったということまでにとどめる。
この列にとって
この列が準備しようとしているのは、何を測るかの合意である。
今回の対象は、指標というより比だった。
まとめておく。「医療費の対GDP比」は一つの指標ではない。異なる分子を持つ複数の比率である。令和5年度だけで四つあり、年をまたげばさらに増え、同じ数字もデータの版で動く。そして分母をGDPから国民所得に替えるだけで、同じ分子が7.93%から11.06%になる。
そして、この比が示すのは医療費の増減ではない。経済の規模に対する相対的な大きさである。2020年度、日本の医療費は減った。GDPはもっと減った。比は上がった。——これは指標の失敗ではなく、比がそう作られているということである。
したがって要るのは三つだと思う。定義と期間とデータの版を明示すること。分子と分母の変化を分解すること。そして、財政の持続可能性を対GDP比の単一の閾値ではなく、歳入、健康のアウトカム、公平性、他の分野との機会費用と合わせて判断すること。
最後の点については、WHOが刊行した文書に定義がある36。
財政的持続可能性が問題になるのは、政府が…十分な歳入を調達する能力または意思を欠くために、医療制度上の義務を果たせなくなるときである。
「何%を超えたら危険か」という問いには、答えが用意されていない。それは指標が壊れているからではなく、その問いに一つの数字で答えられないからである。用意されているのは別の問いである——その支出は何を犠牲にしているのか。そして、その負担を分かち合う用意があるのか。
第1回で見たのは、分母を決めることが誰を数えないかを決めることだった。今回見たのは、分母が医療費とは別の要因でも動くことである※訂正。(「まったく無関係」は強すぎる。景気と医療需要は相互に影響しうる。)
この記事で最も確信度が低い箇所を明記しておく。
① 国民医療費とOECD基準の突き合わせは、私の計算である。OECDも厚生労働省も、公式の突合表を公表していない。国民医療費は年度、OECDの値は暦年で期間が異なるため、差額は近似である。なお厚生労働省の別の資料は「OECDの『総医療費』には、国民医療費に加え、介護費用の一部(介護保険適用分)、民間の医療保険からの給付、妊娠分娩費用、予防に係る費用等が含まれていることに留意が必要」と、同じ内訳を挙げている。
② OECDの日本向け公式メタデータには到達できなかった。SDMXのメタデータエンドポイントは400/404を返し、oecd.org は403であった。
③ IMFの文書には一切到達できていない。したがって「IMFに閾値が無い」ことを、本稿は実証していない。示せたのは、IMFのワーキングペーパーが債務についてすら閾値を否定していることまでである。
④ 経済学の専門誌は検索範囲に入っていない。EconLit・Scopus・Web of Science に到達手段が無く、Europe PMC は経済学誌をほとんど収載していない。「最適水準」を推定した論文を見落としている可能性が残る。
⑤ 白書資料編 p.31 の各年の値と年の対応は、レイアウトの崩れにより完全には確定していない。年次の値は国民医療費の概況 第1表を用いた。
⑥ 骨太方針が用いる「医療給付費」がどの統計に基づくかは、本文に注記が無い。社会保障費用統計ベースであろうという読みは、文脈からの推定である。
⑦ 各国の制度は、いま動いている最中のものを含む。ドイツの再強化法案は成立した法律ではなく省内の草案である。オランダの医療専用の支出上限(Budgettair Kader Zorg)は2024年度中に廃止され、単一の支出枠に統合された(本稿が引いたのはセクター別の数量成長率の協定であって、この上限ではない)。台湾の「5.5%」は近年の運用であって法定の上限ではない。
⑧ 「解決の方向」の節は、私の案である。引いた条文と資料は一次資料で確認したが、それを日本の医療費指標に適用できるかを検討した研究は探していない。
訂正 CORRECTIONS
公開後に直したこと。本文は直したうえで、何をどう変えたかをここに残している。本文中の※ が、直した箇所を指す。
- 訂正「対GDP比を目標にしている例は見つからなかった」が自分の記述と矛盾していた2026-09-01 · poland数十行前にポーランドが公的保健支出の対GDP比7%を法定の到達すべき下限としていることを挙げている。本稿が示せたのは「医療費を抑制する上限として対GDP比を運用している例は見つからなかった」までである。二箇所の該当記述を修正した。あわせて「実在する数値はすべて下限である」も、後で学術研究による最適値を紹介しているため、「確認できた国際機関・政府の規範的な数値目標は、いずれも下限だった」に範囲を限定した。
- 訂正2011年の1.429ポイント全部を国際会議の採決へ帰属していた2026-09-01 · 1-4直前の段落で「定義変更に帰属できるのはおよそ+0.94ポイント」と自分で限定しているのに、次の段落でそれを外していた。「1.429ポイントの段差のうち、推計上およそ0.94ポイントは、国際会議で決まった長期介護の算入範囲による」に改めた。
- 訂正IMFへの到達状況が本文内で矛盾していた2026-09-01 · imf「IMFの文書には到達できなかった」と書きながら、IMFワーキングペーパーを引用し、日本の医療費についてのIMFの結論も紹介していた。「IMFの医療費上限に関する文書は体系的に検索できなかった」に改め、医療費についての「3分の2」の引用が原文で確認できておらず二次資料経由であることも明記した。
- 訂正国民医療費とOECD基準の差額18.16兆円を「分解」として提示していた2026-09-01 · sagaku一方は年度、他方は暦年で期間が違い、定義も違う。またHC3などが国民医療費と完全に非重複であることも示せていない。正式な差額分解ではなく、算術的に差額と近い規模であることを示したものである。表題を「OECD総額に含まれる、国民医療費の主な対象外項目の規模」に変え、右列も「差額に対する規模の比」であって差額分解の寄与率ではない旨を明記した。
- 訂正「国民医療費はレセプトの集計ではない」を限定した2026-09-01 · receipt支払確定額そのものは診療報酬請求に強く依存しているため、「レセプトの集計ではない」と切り離すのは言いすぎだった。「レセプトを単純に合算した統計ではない」に改めた。
- 撤回「国民医療費=診療報酬総額」への批判を撤回した2026-09-01 · shinryohoshu通常、患者の一部負担も診療報酬総額の一部である。「国民医療費は患者負担と全額自費の推計を含むので厳密には成立しない」という批判は、「診療報酬総額」という語が何を含むのかを出典側で確定できていないため成り立たない。
- 追記下限の一覧表に、この記事自身の方法を適用した2026-09-01 · hyou分子も分母も揃っていない比率を一つの表に並べており、まさに本稿が批判している形になっていた。分子・分母・対象・拘束力の列を追加し、アブジャ宣言だけ分母が政府予算であることを明記した。
- 訂正「政府統計ではない数字」という表現を正確にした2026-09-01 · seifu-toukei政府が根拠なく載せた非公式の数値のように読める。「日本の統計法上の政府統計として作成・公表された値ではなく、研究班の推計を基にOECDが公表する国際統計である」に改めた。
- 追記GNIと「国民所得」が別概念であることを明記した2026-09-01 · gni日本の統計で「国民所得」と呼ばれる概念は、固定資本減耗と生産・輸入品に課される税を控除した純概念であり、国民総所得(GNI)とは別である。連続して扱う箇所で区別を補った。
- 訂正「分母が医療とまったく無関係に動く」を弱めた2026-09-01 · bunbo景気と医療需要は相互に影響しうるため「まったく無関係」は強すぎる。「分母が医療費とは別の要因でも動く」に改めた。あわせて指標ノートの「同じ年に七通り」も、本文が示しているのは同じ年度に四つであるため修正した。
出典 SOURCES
- 1令和7年版 厚生労働白書 資料編厚生労働省 · 2025 · accessed 2026-08-25裏付けた主張: 同一PDFの隣接する2ページに、二つの異なる「医療費の対GDP比」が掲載されている。p.31 のグラフの系列ラベルは「国民医療費の対GDP比」で、末尾の値は8.1%、8.2%(国民医療費は44.4→45.0→46.7→48.0兆円)。p.33 は「詳細データ① OECD 加盟国の医療費の状況(2022 年)」として「総医療費の対GDP比(%)/一人当たり医療費(ドル)」の表を掲げ、「アメリカ合衆国 16.5 1 … 日 本 11.4 5 5,424 19 … OECD平均 9.2 5,313」とする。出典は「OECD Data Explorer」とのみ記され、閲覧時点は書かれていない。両ページの数値を橋渡しする注記は存在しない。なお本編(第1部第1章 図3、https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/kousei/25/dl/1-01.pdf )には「医療《対GDP比》」6.9%(42.8兆円、2024年度予算ベース、出所は社会保障費用統計と厚生労働省推計)が掲げられており、一冊の中に三つの値が並ぶ。また白書が掲げる2022年の日本の値11.4%に対し、本稿がOECD SDMX から取得した現在の確定値は11.691%であり、同じ年の同じ指標でもデータの版によって0.3ポイント動く
- 2令和5(2023)年度 国民医療費の概況厚生労働省(令和7年10月10日公表) · 2025 · accessed 2026-08-25裏付けた主張: 令和5年度の国民医療費は480,915億円、対前年度3.0%増、人口一人当たり386,700円。国内総生産は5,951,843億円で、対国内総生産比率は8.08%(前年度8.23%)。第1表の注記は「国内総生産(GDP)は、内閣府『国民経済計算』による」とする。本稿が再計算したところ 480,915÷5,951,843 = 8.0801% で公表値と一致した。なおこの分母は2015年基準の旧GDP系列であり、現行の2020年基準では同年度のGDPは619,390.4十億円(+4.07%の改定)となる。分子を変えずに分母を現行基準に置き換えると、対GDP比は7.76%(−0.32ポイント)になる。また令和4年度から令和5年度にかけて、国民医療費は3.0%増えたにもかかわらず対GDP比は8.23%から8.08%へ低下した(GDPが+4.9%伸びたため)
- 3OECD Health expenditure and financing(SDMX API、DSD_SHA@DF_SHA)OECD(2026年8月25日取得) · 2026 · accessed 2026-08-25裏付けた主張: 日本の Current expenditure on health(対GDP比)の実データ。2018年10.504%、2019年10.703%、2020年11.157%、2021年11.708%、2022年11.691%、2023年10.754%(いずれも確定)、2024年10.3%(P=暫定)、2025年10.095%(E=推計)。すなわち11%台であったのは2020年から2022年までで、最新の確定値は10.754%である。本稿が実額(national currency)と内閣府『国民経済計算』の名目GDPから比率を再計算したところ、2010年から2024年の全15年について小数点以下3桁までOECD公表値と一致した(年度ベースのGDPでは一致しないため、分母は暦年の名目GDPである)。2023年の実額は66,250,863百万円で、同年度の国民医療費48,091,500百万円との差は18,159,363百万円。機能別内訳では HC3 Long-term care (health) が12,568,484百万円で差の69.2%、HC6 予防が2,946,102百万円で16.2%、HC512 一般用医薬品が1,717,762百万円で9.5%、HC7 管理・保険運営が890,434百万円で4.9%を占め、これら4項目で差の99.8%になる。なお HCR1 Long-term care (social) 1,866,682百万円は Current expenditure on health に含まれない(HC1_HC5 + HC6HC7 = 総額 が成立することで確認した)。また2011年の観測値には OBS_STATUS = B(Time series break、「先行する観測と比べて異なる方法論が適用された」)のフラグが付いており、2010年の8.981%から2011年の10.411%へ1.429ポイントの段差がある。実額は45.82兆円から52.17兆円へ増加し、うち4.79兆円が HC3 の算入による
- 4国民医療費の範囲と推計方法の概要/国民医療費の範囲厚生労働省 · 2025 · accessed 2026-08-25裏付けた主張: 「『国民医療費』は、当該年度内の医療機関等における保険診療の対象となり得る傷病の治療に要した費用を推計したものである。…なお、保険診療の対象とならない評価療養(先進医療(高度医療を含む)等)、選定療養(特別の病室への入院、歯科の金属材料等)等に要した費用は含まない。また、傷病の治療費に限っているため、(1)正常な妊娠・分娩に要する費用、(2)健康の維持・増進を目的とした健康診断、予防接種等に要する費用、(3)固定した身体障害のために必要とする義眼や義肢等の費用も含まない」。含まれないものの列挙には「介護保険法における訪問看護費」「買薬の費用」も含まれる。推計方法は「原則として当該年度内の診療についての支払確定額」に「一部負担額の推計値」と「全額自費で支払った費用…の推計値」を加えたものであり、レセプトの直接集計ではない。レセプトに基づくのは概算医療費のほうで、「最近の医療費の動向」は「本資料における医療費は、速報値であり、労災・全額自費等の費用を含まないことから概算医療費と呼称しています。概算医療費は…国民医療費の約 98%に相当しています」とする
- 5令和8年度予算の編成等に関する建議 参考資料(資料Ⅱ-1-14、Ⅱ-1-15)財政制度等審議会 財政制度分科会 · 2025 · accessed 2026-08-25裏付けた主張: 同一の図表の中で、年によって医療費の統計が切り替わることを注記している——「※ 2024年度までは概算医療費(労災、全額自費等の医療費を含まない)、2025年度は予算ベースの国民医療費、2026年度は予算要求上の国費の伸び(いわゆる『自然増』)が国民医療費全体に及ぶものと仮定して推計」「注:2023年度までは国民医療費、2024年度は概算医療費」。また別の資料には「国民医療費=診療報酬総額 約50兆円(2025年度予算ベース)」という等式が置かれているが、国民医療費は患者負担と全額自費の推計値を含むため厳密には成立しない。なお本稿が2024年から2026年の建議本文を検索したところ、「医療費の対GDP比」という表現は一度も現れなかった。財務省が対GDP比で論じるのは「社会保障支出」であり、その出所注記は「社会保障支出:OECD『National Accounts』、内閣府『国民経済計算』」すなわち国民経済計算ベースである
- 6令和2(2020)年度 国民医療費の概況厚生労働省 · 2022 · accessed 2026-08-25裏付けた主張: 「令和2年度の国民医療費は42兆9,665億円、前年度の44兆3,895億円に比べ1兆4,230億円、3.2%の減少となっている。…国民医療費の国内総生産(GDP)に対する比率は8.02%(前年度7.97%)となっている」。表1によれば同期間のGDPは557兆3,065億円から535兆5,099億円へ3.9%減少した。すなわち分子が3.2%減少したにもかかわらず、対GDP比は0.058ポイント上昇した。本稿の計算では、令和2年度の国民医療費を令和元年度のGDPで割ると7.710%となり、分子だけを見れば比は0.255ポイント低下するはずであった。分母の縮小の寄与は+0.314ポイントである
- 7国民経済計算 年次推計内閣府経済社会総合研究所 · 2026 · accessed 2026-08-25裏付けた主張: 名目GDPの年次系列。2019暦年571,838,000百万円、2020暦年554,074,400百万円(−3.106%)。本稿はこの系列を用いて対GDP比の変化を分子効果・分母効果・交互作用に分解した。分解式は Δr = ΔH/Y₀ + H₀·(1/Y₁ − 1/Y₀) + ΔH·(1/Y₁ − 1/Y₀) である。2019→2020について、Δr = +0.4539ポイント、分子効果 +0.1073(23.6%)、分母効果 +0.3431(75.6%)、交互作用 +0.0034(0.8%)。Laspeyres型・Paasche型・対称Shapley型・3項型の4通りで検算したところ、分母寄与率は75.6〜76.4%の範囲に収まった。2022→2023については Δr = −0.936ポイントで、うち分母効果が−0.592(63%)である。また国民総所得(GNI)を分母にすると、2023年の比は10.754%ではなく10.169%(−0.585ポイント)となる。GNI/GDP比は2019年の1.0382から2023年の1.0575へ拡大しており、2019→2022の見かけ上の上昇(+0.988ポイント)のうち約26%は海外からの所得受取の増加を反映している
- 8OECD Health Statistics 各国データ(SDMX、2019→2020の対GDP比変化)OECD(2026年8月25日取得、本稿による集計) · 2026 · accessed 2026-08-25裏付けた主張: SHAデータベースに収録された59の国・地域のうち、2019年から2020年にかけて医療費の対GDP比が上昇したのは59、すなわちすべてであった。うち40か国では名目GDPが減少している。本稿が分母寄与率を計算したところ、日本が75.6%で最大、以下イタリア72.9%、ギリシャ67.6%と続く。主要国では、日本(医療費+1.00%、GDP−3.11%、Δr+0.454pt、分母寄与75.6%)、フランス(+3.40%、−4.68%、+0.932pt、57.9%)、英国(+14.70%、−5.70%、+2.142pt、27.9%)、ドイツ(+6.45%、−2.45%、+1.041pt、27.5%)、米国(+11.02%、−0.76%、+1.989pt、6.5%)。すなわち同じ「上昇」でも国によって中身が異なり、米国はほぼ純粋に分子の増加である。分母を復元する際は XDC ÷ (%GDP) で計算し、OECD国民経済計算の公表GDPと突合して全5か国で誤差0.005%以内であることを確認した
- 9Health Care Spending in the United States and Other High-Income CountriesPapanicolas I, Woskie LR, Jha AK. JAMA. 2018;319(10):1024-1039 · 2018 · accessed 2026-08-25裏付けた主張: 米国の医療費が高い理由の分析。抄録は「utilization rates in the United States were largely similar to those in other nations. Prices of labor and goods, including pharmaceuticals, and administrative costs appeared to be the major drivers of differences in spending」とする。先行研究の Anderson GF, Reinhardt UE, Hussey PS, Petrosyan V. It's The Prices, Stupid. Health Affairs 2003;22(3):89-105, DOI 10.1377/hlthaff.22.3.89 は「on most measures of health services use, the United States is below the OECD median. These facts suggest that the difference in spending is caused mostly by higher prices for health care goods and services in the United States」とし、追試の Anderson GF, Hussey P, Petrosyan V. Health Affairs 2019;38(1):87-95, DOI 10.1377/hlthaff.2018.05144 も「The conclusion that prices are the primary reason why the US spends more on health care than any other country remains valid」とする。ただし価格と診療密度の分離については留保が必要で、Dieleman JL, et al. JAMA 2017;318(17):1668-1678, DOI 10.1001/jama.2017.15927 の要因分解は「Changes in service price and intensity were associated with a 50.0%… spending increase」と、価格と強度を結合した項として報告している。なお Papanicolas I, Cylus J, Lorenzoni L. Health Services Research 2024;59(6):e14295, DOI 10.1111/1475-6773.14295 は2000年から2020年の医療価格の上昇を一般物価と比べ、フランスのみが一般物価と同率で推移したと報告する
- 10OECD の SHA 手法に基づく保健医療支出推計の政府統計化に向けた推計方法の改善のための研究(令和7年度 厚生労働行政推進調査事業費補助金 政策科学総合研究事業、課題番号25AA2001)竹沢純子ほか(総括研究報告書、2026年8月20日公開)/関連する分担研究報告書を含む · 2026 · accessed 2026-08-25裏付けた主張: 日本のSHA推計の内実を記録した資料群。総括報告書は「2023 年度の経常保健医療支出は約68兆円と試算された」とし、機能別に HC.1 診療サービス35.6兆円、HC.3 長期ケア13.6兆円、HC.5 医療財12.6兆円などを挙げる(本稿がSDMXから取得したOECD公表値66.25兆円とは一致しない。速報値・確報値・改訂時点の差と推測されるが、その説明を明記した文書には到達していない)。また「日本では国民医療費を中心に医療費統計が整備されてきたが、SHAでは医療に加え、介護、予防、公衆衛生、保健行政費用、家計負担等を含む広義の保健医療支出を対象とする。近年、国際比較可能な保健医療支出統計整備の必要性が高まる中、『経済財政運営と改革の基本方針2024』においても、SHA手法に基づく保健医療支出統計の政府統計化に向けた検討が明記された」と述べる。すなわち日本のSHA値は現時点で政府統計ではない。分担研究の一つ(満武巨裕「日本の保健医療支出(SHA)推計の歴史」)は、2011年の段差の由来を記録している——2010年11月の専門家会合で日本は「ADL 関連サービスは HC.3 に含めるべきでない」と主張したが投票(賛成23、反対8)で敗れ、その結果「計上対象となる介護保険サービスは 14 サービス(SHA1.0 時代)から 38 サービス(SHA2011 準拠)へと拡大」し、「LTC 費用は 2008年度ベースで約 1.8 兆円 → 約 6.4 兆円へ約 4.6 兆円増加」した。もう一つの分担研究(井伊雅子「資本形成の推計方法に関する検討」)は「OECD は 2016 年からそれまでの総保健医療支出(Total Health Expenditure)から資本形成を除いた経常支出合計としての保健医療支出(Health Expenditure)を報告するようになった。現在では、資本形成は memorandum として別途記載することが求められているが、日本は、近年資本形成を推計していない」とする
- 11Assessing the comparability of Long-Term Care spending estimates under the Joint Health Accounts QuestionnaireMueller M, Bourke E, Morgan D. OECD Health Division, Directorate for Employment, Labour and Social Affairs, Paris · 2020 · accessed 2026-08-25裏付けた主張: 長期介護支出の国際比較可能性についてのOECDの評価。「in-depth analyses of data submissions in 2015 and 2017 suggested that full comparability of LTC spending data across OECD countries is still hindered to some extent… These studies point to persistent difficulties in clearly identifying and separating LTC activities into the health and social components」とし、理由として「there are country-specific notions of what long-term care entails」「national statistics and data systems on long-term care spending do not necessarily align with the boundaries established for international reporting」「there still exists room for different interpretation」を挙げる。報告状況について「On the first level of disaggregation, all 32 countries report LTC (health) but only 18 of them report estimates of LTC (social) spending」とし、報告できている18か国の間でも社会部分の割合は「between 4% (Germany) and 75% (Portugal) of total LTC – the variation in this share also points to potential comparability issues」と幅がある。Table 2.1(2016年データ)では日本のLTC (social)欄は空欄で、当時日本はこれを報告していなかった。ただし本稿がSDMXから取得した2023年のデータでは日本は HCR.1 を1.87兆円として報告しており、その後報告されるようになったことが分かる。なおSHA 2011 マニュアル(OECD/Eurostat/WHO 2017, DOI 10.1787/9789264270985-en)は、健康部分と社会部分が分けられない場合の扱いを「If such services cannot be separately accounted for, and are not the dominant component of the package, they should be included under HC.3; otherwise the complete package should be under HCR.1」と定める。すなわち分離できないときは、どちらが優勢かによって一括りで振り分けられる。同マニュアルはまた「certain goods and services recorded by a particular country under health care might not be included for the purpose of international data collection, and that some goods and services not recorded might be included… Both over- and under-estimation of the aggregates may occur」とも述べる
- 12Health at a Glance 2025(Definition and comparability)OECD Publishing, Paris · 2025 · accessed 2026-08-25裏付けた主張: 分母の選択について次のように述べる——「In countries such as Ireland and Luxembourg, where a significant proportion of GDP refers to repatriated profits and is thus not available for national consumption, GNI may be a more meaningful measure than GDP. However, for consistency, GDP is maintained as the denominator for all countries」(p.155)。また「The resources that a country allocates to healthcare compared to the size of the overall economy vary over time due to differences in both the growth of health spending and overall economic growth」(p.154)。長期介護については、医療費に占める割合が平均で約7分の1、ノルウェー・スウェーデン・オランダでは約30%、南欧・中東欧・中南米では5%以下と幅があると記述する(日本は19.0%)
- 13経済財政運営と改革の基本方針2026(令和8年7月21日 閣議決定)内閣府 · 2026 · accessed 2026-08-25裏付けた主張: 医療費の対GDP比についての記述は、本文ではなく脚注119に一度だけ現れる——「特に、高齢化や高度化等への対応が必要な医療給付費については、経済が成長し賃上げが継続する『強い経済』の構築に向けた取組を進める中で、診療報酬に経済・物価動向等を基本的に反映しつつも、医療給付費の対GDP比や雇用者報酬の伸びとの関係などを参照しつつ、医療費適正化計画の次期改定に向けて抜本的な見直しを行うことを含め、改革を継続する」。すなわち「参照しつつ」であり、目標や枠組みではない。金額ベースの目安は脚注120に維持されている——「具体的には、社会保障関係費については、給付と負担の改革努力を継続しつつ、高齢化による増加分に相当する伸びに経済・物価動向等を踏まえた対応に相当する増加分を加算する」。本文が掲げる新しい定量目標は「2027年度の社会保障負担率が2025年度と比較して上昇しないよう取り組む」であり、社会保障負担率の分母は国民所得である(財政制度等審議会 令和8年4月28日資料は「社会保障負担率(保険料負担の国民所得に対する割合)」と定義する)。すなわち同じ節の中で、社会保障負担率の分母は国民所得、医療給付費の対GDP比の分母はGDPである。本稿が全文を検索したところ「対GDP比」は13箇所現れ、うち10箇所は債務残高、2箇所は国防費、社会保障文脈は脚注119の1箇所のみである。また「国民医療費」という語は一度も現れない。骨太2024・2025の本文には「医療・介護給付費対GDP比の上昇基調に対する改革に取り組み」という記述があり、2026年に起きたのは対象が医療に絞られ、本文から脚注へ移り、「取り組み」から「参照しつつ」へ変わったことである
- 14Understanding international measures of health spending: Age-adjusting expenditure on healthMorgan D, Mueller M. OECD Health Working Papers No. 162, DELSA/HEA/WD/HWP(2023)14 · 2023 · accessed 2026-08-25裏付けた主張: 年齢構成を調整した医療費の国際比較。para 71(p.32)は「In Japan, per capita spending after adjustment is 97% of the OECD average compared to 116% when looking at non-adjusted spending data」とする。Table 4.1 の間接年齢標準化による観測/期待比は日本が1.20で掲載国中最大(代替プロファイルでの幅は1.07〜1.29)。理由として「the average share of the population aged over 85 in OECD countries is around 2.2% (and up to 4.5% in Japan)」(p.31)を挙げる。ただし同ペーパーは限界も明記しており、「this can manifest itself both in the exhaustiveness of the distribution of health spending by age (e.g., Italy, Japan do not allocate long-term care)」(p.27)とする。長期介護は日本のCurrent expenditure on healthの19.0%を占め高齢者に偏るため、この調整係数はむしろ年齢効果を過小評価している可能性がある。なお本稿がOECD加盟38か国について2023年の順位を計算したところ、日本は対GDP比で10位(10.75%)、一人当たり購買力平価調整で19位($5,964)、65歳以上人口比率で1位(29.6%)であった。日本より一人当たり医療費が多い18か国のうち、日本より高齢化率が高い国は無い(最も高齢なのはフィンランドの23.6%)
- 15The World Health Report 2010: Health Systems Financing — The path to universal coverageWorld Health Organization, Geneva. ISBN 9789241564021 · 2010 · accessed 2026-08-25裏付けた主張: 医療費の水準についてWHOが示した目安。Table 5.2「Monitoring universal coverage of protection from financial risk」の Indicator 4(General government health spending as a percentage of gross domestic product)は「It is difficult to get close to universal coverage at less than 4–5% of GDP, although for many low- and middle-income countries, reaching this goal is aspirational in the short term and something to plan for in the longer run」とする。ただし本文(第3章)は別の数値を挙げており、「Where the combined total of expenditure from general government revenues and compulsory health insurance contributions is lower than about 5–6% of gross domestic product (GDP), countries struggle to ensure health service coverage for the poor. The WHO Regional Office for the Americas advocates for a 6% level」とする。すなわち同一報告書内で4〜5%と5〜6%が併存する。同表の他の指標も、Indicator 2 は「Countries in the WHO South-East Asia and Western Pacific Regions have set themselves a target of 4%」、Indicator 3 は「Sub-Saharan African countries set themselves a target of 15% of government spending」、Indicator 5 は自己負担が「lower than 15–20%」という水準を挙げており、いずれも下限、または自己負担の上限である。なお「政府予算の15%を保健に」という目標はWHOではなくアフリカ統一機構のアブジャ宣言(OAU/SPS/ABUJA/3, 2001年4月)に由来し、「WE PLEDGE to set a target of allocating at least 15% of our annual budget to the improvement of the health sector」と、GDP比ではなく政府予算比の下限として書かれている
- 16Shared Responsibilities for Health: A Coherent Global Framework for Health FinancingChatham House, Royal Institute of International Affairs(Centre on Global Health Security Working Group on Health Financing 最終報告、議長 John-Arne Røttingen)ISBN 978 1 78413 021 3 · 2014 · accessed 2026-08-25裏付けた主張: 医療費の水準について国際的な数値目標を示した数少ない文書。「Recommendation 2: Every government should commit to spend at least 5 per cent of GDP on health and move progressively towards this target, and every government should ensure GHE per capita of at least $86 whenever possible」(p.12)。そして直前の段落で、この数値の性格を明示する——「There are several reasons why the target level is not set much higher than 5 per cent. One is that the target should not be unrealistic for LICs, and another is that it does not, in any case, represent a maximum. Countries above the target still have to ensure that they do enough to fulfil their responsibility for securing the health of their own people to the maximum of their ability. This indicates that HICs should be expected to invest a higher proportion of GDP in health. Today the average GHE/GDP ratio for these countries is 5.4 per cent」。5%という数字の来歴についても記述がある——「The 5 per cent target does have some history. A 5 per cent figure of health spending as share of GDP appeared in WHO documents as early as 1981 (Savedoff 2003). However, it was then proposed as an indicator to be monitored and not as a recommended level of health spending, and no basis for the exact figure was provided」(p.12)。査読版は McIntyre D, Meheus F, Røttingen J-A. Health Economics, Policy and Law 2017;12(2):125-137, DOI 10.1017/S1744133116000414
- 172024 Ageing Report: Economic & Budgetary Projections for the EU Member States (2022–2070)European Commission (DG ECFIN) & Economic Policy Committee. European Economy Institutional Paper 279 · 2024 · accessed 2026-08-25裏付けた主張: EUの公的保健支出の長期投影。2022年の6.9%を起点として、2070年の値はシナリオにより異なる——人口要因のみを織り込み非人口要因を遮断した場合(Table I.2.5)7.1%、人口と所得を織り込んだベースライン(Table I.2.3)7.3%、非人口要因の趨勢が継続するリスクシナリオ(Table I.2.4)8.1%。本文は「According to the baseline, health care expenditure is projected to increase by about 0.4 pps of GDP in the EU by 2070」「Under the 'risk scenario', public health care spending in the EU would reach 8.1% of GDP in 2070, i.e. an increase of 1.2 pps of GDP relative to 2022. … the projected increase in public health spending in the EU is three-fold higher than in the baseline」とする。すなわち48年間で、純粋な人口高齢化による寄与はGDP比+0.2ポイントである。また同報告のTable I.2.4の脚注には「Health care expenditure projections for PL consider future demographic and macroeconomic changes but do not take into account a future convergence of public spending on health care to a threshold of 7% of GDP as included in the Polish law」とあり、ポーランドが法律で医療費の対GDP比7%という水準を定めていることが分かる。これは到達すべき下限である
- 18WHO IRIS 全文検索による上限表現の探索(本稿による検索)World Health Organization Institutional Repository for Information Sharing(2026年8月25日実施) · 2026 · accessed 2026-08-25裏付けた主張: 医療費の上限を示す表現をWHOの文書全体から探した記録。陽性対照として「universal health coverage」9,998件、「out-of-pocket」4,800件、「catastrophic health expenditure」788件、「5% of GDP」331件、「15% of general government expenditure」8件がヒットし、フレーズ検索が機能していることを確認した。そのうえで、「health expenditure should not exceed」0件、「health spending should not exceed」0件、「maximum share of GDP」0件、「ceiling on health expenditure」0件、「health expenditure ceiling」0件、「upper limit on health spending」0件、「maximum level of health spending」0件、「optimal share of GDP」0件、「optimal level of health expenditure」0件、「unsustainable share of GDP」0件、「beyond which health spending」0件、「health expenditure is too high」0件であった。「cap on health spending」の2件はいずれも各国の予算上限の記述である。世界銀行 Open Knowledge Repository でも同種の検索で0件であったが、陽性対照のヒット数が低く、メタデータのみを検索している可能性があるため証拠力は限定的である。またIMFの文書には本稿は到達できていない(imf.org が403を返す)
- 19Fiscal Sustainability of Health Systems: How to Finance More Resilient Health Systems When Money Is Tight?OECD Publishing, Paris. ISBN 978-92-64-47608-0 · 2024 · accessed 2026-08-25裏付けた主張: OECDが財政持続可能性をどう定義しているか。Box 1.1——「Fiscal sustainability: the ability of a government to maintain public finances at a credible and serviceable position over the long term. … Fiscal sustainability is not about health objectives per se. Rather, it is about ensuring public spending on health respects public finance constraints (whilst seeking to realise health objectives)」。すなわち歳入・債務経路との関係で定義されており、GDP比の水準では定義されていない。本稿が全文を検索したところ、threshold・ceiling・cap のヒットはすべて各国の予算上限(金額ベース)の記述であり、OECDが推奨するGDP比の上限は一件も無い。OECDが用いる作業指標は「Growth in health spending from public sources is projected to be twice the average growth in government revenues (2.6% and 1.3% respectively)… Consequently, health spending from public sources is projected to reach 20.6% of government revenues across OECD countries by 2040」であり、公的医療費の対政府歳入比と、医療費の伸び率と歳入の伸び率の比較である。なお同書には「reaching 10.6% of GDP in 2040 (as compared to 11.8% of GDP in the absence of major policy changes)」という記述があるが、これは政策シナリオの帰結の投影値であって閾値ではない
- 20Debt and Growth: Is There a Magic Threshold?Pescatori A, Sandri D, Simon J. IMF Working Paper WP/14/34 · 2014 · accessed 2026-08-25裏付けた主張: 抄録全文——「Using a novel empirical approach and an extensive dataset developed by the Fiscal Affairs Department of the IMF, we find no evidence of any particular debt threshold above which medium-term growth prospects are dramatically compromised. Furthermore, we find the debt trajectory can be as important as the debt level…」。すなわちIMF自身が、債務についてすら特定の閾値の証拠は見出せないと結論している
- 21Does high public debt consistently stifle economic growth? A critique of Reinhart and RogoffHerndon T, Ash M, Pollin R. Cambridge Journal of Economics. 2014;38(2):257-279 · 2014 · accessed 2026-08-25裏付けた主張: 抄録全文——「We replicate Reinhart and Rogoff (2010A and 2010B) and find that selective exclusion of available data, coding errors and inappropriate weighting of summary statistics lead to serious miscalculations that inaccurately represent the relationship between public debt and GDP growth among 20 advanced economies. Over 1946–2009, countries with public debt/GDP ratios above 90% averaged 2.2% real annual GDP growth, not −0.1% as published. … Our overall evidence refutes RR's claim that public debt/GDP ratios above 90% consistently reduce a country's GDP growth」。元の主張は Reinhart CM, Rogoff KS. Growth in a Time of Debt. American Economic Review 2010;100(2):573-578, DOI 10.1257/aer.100.2.573 の「median growth rates for countries with public debt over roughly 90 percent of GDP are about one percent lower than otherwise」である。なお同じデータに正式な閾値検定を適用した Lee S, Park H, Seo MH, Shin Y. Testing for a Debt-Threshold Effect on Output Growth. Fiscal Studies 2017;38(4):701-717, DOI 10.1111/1475-5890.12134 は「Using the Reinhart-Rogoff dataset, we find a debt threshold not around 90 per cent but around 30 per cent… While we find no evidence of a threshold around 90 per cent」とする。また Eberhardt M, Presbitero AF. Journal of International Economics 2015;97(1):45-58, DOI 10.1016/j.jinteco.2015.04.005 は「no evidence for a similar, let alone common, debt threshold within countries」とする
- 22Health Care Spending and Economic Growth: Armey-Rahn Curve in a Panel of European EconomiesTrofimov ID. Journal of the Knowledge Economy(Springer)※本稿はMPRA Paper No. 106705 のオープンアクセス版全文を確認した · 2024 · accessed 2026-08-25裏付けた主張: 医療費と経済成長の逆U字関係から「最適支出水準」を推定した研究。抄録は「The paper unequivocally indicates the existence of the Armey-Rahn curve and the negative effects of health care spending on the output (per capita) beyond the optimal spending level. Irrespective of the functional form of the model or the definition of dependent or independent variables, the optimal level was estimated to be smaller than the actual average health care spending level for the period (5.99% of GDP), indicating the over-provision of public health care」とする。ただし全文の各表から抽出した「optimal size」の推定値は 3.305 / 3.738 / 3.747 / 3.930 / 4.217 / 4.428 / 4.466 / 4.511 / 4.588 / 4.855 / 5.122 と並び、分位点別では4.840〜7.420に及ぶ。すなわち同一データ・同一著者で推定値が2.2倍にばらつく。また長期の資本ストック係数が−0.323/−0.422と負であり、生産関数の定式化として不自然である。関連して Wang F. INQUIRY 2015;52:0046958015602666, DOI 10.1177/0046958015602666 は「the optimal level of 7.55%」を提示するが、本稿が同論文の推定式(Per capita GDP growth rate in log = 0.4772 + 0.2197h − 0.0291h²)から計算すると、二次関数の頂点は 0.2197/(2×0.0291) = 3.775 であり、7.55 は 0.2197/0.0291 すなわち二次項の効果が切片に戻る点である(この指摘は本稿の計算であり、論文にも他の文献にも書かれていない)。なお同論文自身の結論は「OECD諸国は最適水準を下回っているので支出を増やすべきだ」という逆向きのものである
- 23Public Spending on Health and Long-term Care: A new set of projectionsde la Maisonneuve C, Oliveira Martins J. OECD Economic Policy Papers No. 6 · 2013 · accessed 2026-08-25裏付けた主張: 公的医療費の伸びを要因分解した文書。「demographic drivers explain relatively little of past developments in health spending. Between 1995 and 2009, public health spending grew on average and in real terms … by 4.3% per year in OECD countries, of which only 0.5 percentage points can be attributed to 'pure demographic' developments」とする。ただしTable 1 の国別内訳を見ると、日本は実質伸び2.7%/年に対し age effect が1.2で、これは掲載国中最大である(OECD平均は伸び4.3、age effect 0.5)。すなわち「高齢化は主因ではない」というOECDの総括はOECD平均について述べたものであり、日本には同じ形では当てはまらない。なお日本政府自身の要因分解(財政制度等審議会 財政制度分科会 令和7年11月5日 資料「社会保障①」)では、高齢化の影響は2010年の1.6%から2024年の0.6%へ低下しており、伸びの主因は「その他(医療の高度化・受療行動の変化等)」とされている。また分母の取り方によって高齢化の寄与の見え方が変わる——IMFのワーキングペーパー(Nozaki M, Kashiwase K, Saito I. Health Spending in Japan. IMF WP/14/142, 2014)は対GDP比の上昇を分解して「We find two-thirds of the spending increase over 1990–2011 resulted from ageing」とするが、これは一人当たり支出の伸びを分解したOECDの数値とは分母が異なるため直接比較できない
- 24The Long-Term Outlook for Health Care SpendingCongressional Budget Office, Washington DC ※cbo.gov が403のため Internet Archive 経由で取得した · 2007 · accessed 2026-08-25裏付けた主張: 高齢化の寄与について、Box 2 は「By itself, aging accounts for about one-quarter of the projected growth in federal Medicare and Medicaid spending through 2030. By 2050, that share has fallen to under 20 percent, and by 2082, to only about 10 percent」とする。また excess cost growth という語について、その定義と留保を明記している——「Excess cost growth refers to the number of percentage points by which the growth of spending on health care (per capita) exceeded the growth of nominal gross domestic product (per capita). … (The phrase is not intended to imply that growth in per capita spending on health care is necessarily excessive. It simply measures that growth relative to the growth of the economy.)」。関連して所得弾力性については Costa-Font J, Gemmill M, Rubert G. Journal of the Royal Statistical Society Series A 2011;174(1):95-107, DOI 10.1111/j.1467-985x.2010.00653.x が「The findings suggest that publication bias exists… The corrected estimates of income elasticity range from 0.4 to 0.8, which cast serious doubt on the validity of the luxury good hypothesis」とする
- 25高齢者の医療の確保に関する法律 第8条・第11条昭和五十七年法律第八十号(e-Gov 法令検索、法令APIで全文取得) · 2026 · accessed 2026-08-25裏付けた主張: 医療費適正化計画の法的な性格。第8条第1項は「厚生労働大臣は…医療費適正化を総合的かつ計画的に推進するため、医療費適正化に関する施策についての基本的な方針…を定めるとともに、六年ごとに、六年を一期として、医療費適正化を推進するための計画…を定めるものとする」とする。いわゆる「目標」にあたるのは第8条第4項第6号で、「…厚生労働省令で定めるところにより算定した計画の期間における医療に要する費用の見込み(第十一条第七項において『国の医療に要する費用の目標』という。)に関する事項」と定める。すなわち法文上は「見込み」である。超過した場合の効果は第11条第7項が定める——「厚生労働大臣は、計画期間において…国における医療に要する費用が国の医療に要する費用の目標を著しく上回ると認める場合には、その要因を分析するとともに、当該要因の解消に向けて、保険者、後期高齢者医療広域連合、医療機関その他の関係者と協力して必要な対策を講ずるものとする」。罰則も執行機構も定められていない
- 26Integraal Zorgakkoord — Samen werken aan gezonde zorg(統合ケア協定、2022年9月)オランダ保健福祉スポーツ省ほか(下院文書 31 765, nr. 655 の添付資料) · 2022 · accessed 2026-08-25裏付けた主張: オランダのセクター別の数量成長率の上限。「De afgesproken gemiddelde beschikbare volumegroei, exclusief de indexatie voor loon- en prijsbijstelling, is per sector als volgt」として、2023年から2026年について、MSZ(専門医療)1.0%→0.8%→0.4%→0.0%、GGZ(精神科医療)1.0%→0.8%→0.6%→0.4%、Wijkverpleging(地域看護)2.0%→2.4%→3.0%→3.5%、Huisartsenzorg(家庭医療)2.0%→2.4%→3.0%→3.5%、MDZ(多職種連携ケア)2.0%→3.0%→4.0%→5.0% と定める。すなわち二次医療の数量成長をゼロまで絞り、家庭医療と多職種連携ケアに成長の余地を移す設計である。先行する2019年から2022年の分野別協定も同じ方向で、「Dat leidt tot een lagere volumegroei voor de medisch-specialistische zorg en hogere volumegroei voor (georganiseerde) huisartsenzorg, wijkverpleging en ELV」と明記している。超過に対する手段(macrobeheersinstrument)は医療市場秩序法第50条第2項および第35条第7項に根拠を持ち、超過額を市場シェアで按分して基金に納付させる仕組みだが、統合ケア協定は「Het HLA-kader MSZ is in 2018 overschreden met € 182 miljoen. Ook in 2021 is op basis van de huidige inzichten een overschrijding zichtbaar… Partijen spreken af dat ten aanzien van deze overschrijdingen het mbi in 2018 en 2021 niet zal worden ingezet」とし、実際には発動されていない
- 27Massachusetts General Laws Chapter 6D §9・§10(2012年法律第224号により新設)マサチューセッツ州議会 ※malegislature.gov に到達できず Internet Archive の保存版から取得した · 2012 · accessed 2026-08-25裏付けた主張: 米国で最初の州レベルの医療費伸び率目標。§9(b) は「(1) For calendar years 2013 through 2017, the health care cost growth benchmark shall be equal to the growth rate of potential gross state product established under section 7H½ of chapter 29; provided, however, that the growth rate of potential gross state product for calendar year 2013 shall be 3.6 per cent. (2) For calendar years 2018 through 2022, the health care cost growth benchmark shall be equal to the growth rate of potential gross state product… minus 0.5 per cent. (3) For calendar years 2023 and beyond, the health care cost growth benchmark shall be equal to the growth rate of potential gross state product…」とする。すなわち対GDP比ではなく、潜在州総生産の成長率に連動した伸び率目標である。罰則については §10(q) が「If the commission determines that a health care entity has: (i) willfully neglected to file a performance improvement plan… (ii) failed to file an acceptable performance improvement plan in good faith… (iii) failed to implement the performance improvement plan in good faith; or (iv) knowingly failed to provide information… the commission may assess a civil penalty… of not more than $500,000」と定める。すなわち50万ドルの民事制裁金は業績改善計画への手続き的な非協力に対するものであり、目標の超過そのものに対する罰則は定められていない
- 28L'ONDAM, un outil de régulation des dépenses de santé nécessaire et à renforcer(La sécurité sociale 2026、第3章)Cour des comptes(フランス会計検査院)2026年5月 · 2026 · accessed 2026-08-25裏付けた主張: フランスの医療保険支出目標(ONDAM)の評価。冒頭——「Au cours des années 2010, l'ONDAM a permis de maîtriser l'évolution des dépenses d'assurance maladie, mais ce mécanisme a été mis en défaut depuis la crise sanitaire : la dynamique des dépenses est devenue « hors de contrôle »」。定量的な前後比較——「De fin 2009 à fin 2019, le taux de progression annuel moyen en exécution de l'ONDAM était de 2,3 % par an, équivalent à celui du produit intérieur brut (PIB) en valeur aux prix courants」。遵守状況——「Entre 2013 et 2019, les dépenses en exécution étaient, chaque année, en ligne avec les objectifs d'ONDAM votés. … De 2017 à 2019, les objectifs ont été atteints pour chacun des sous-objectifs, sans plus nécessiter d'annulations de crédits par ailleurs. De 2020 à 2024 au contraire, les objectifs initialement assignés en loi de financement initiale n'ont jamais pu être tenus, le Sénat évoquant un « biais optimiste » systématique」。そして超過が翌年の基礎に組み込まれる効果——「les dépassements de l'ONDAM sont pris en compte dans le socle de dépenses de l'exercice suivant (ou « soclés »), ce qui conduit à consolider la dynamique des dépenses. Ainsi, de 2022 à 2025, le cumul des dépassements de l'ONDAM non décidés en loi de financement initiale, mais constatés en cours d'année pour être intégrés à la dépense de l'année suivante s'est élevé à 9,1 Md€, soit 20 % de la hausse de l'ONDAM sur la période」。ONDAMは毎年国会が議決するユーロ建ての目標額であり(社会保障法典 L.O. 111-3-5条)、対GDP比の上限ではない。また2025年4月の同院の別の報告は「L'Ondam est un objectif à ne pas dépasser, sans constituer un plafond au sens strict」とし、超過の警戒閾値が政令でONDAM額の0.5%と定められていること、およびONDAM(コロナ関連支出を除く)の対GDP比が保健危機前の8.2%から2025年の8.9%へ上昇したことを記す
- 29Pilotage de la dépense de santé : redonner du sens à l'Ondam(上院情報報告 n° 40, 2019-2020)Sénat, Mission d'évaluation et de contrôle de la sécurité sociale(報告者 Catherine Deroche, René-Paul Savary、2019年10月9日提出) · 2019 · accessed 2026-08-25裏付けた主張: ONDAMがどうやって守られたかを下位目標別に示す。「Les écarts constatés en exécution par rapport à l'objectif initial」(百万ユーロ)の表によれば、外来(soins de ville)は2010年から2014年まで下振れ(−430、−600、−950、−1,300、−300)だったが、2015年以降は毎年超過している(+485、+760、+620、+270)。同期間、病院部門(établissements de santé)は一貫して下振れである(−150、−230、−100、−400、−700、−185、−385、−560、−325)。報告書は「Ce sont en cumul sur la période 2010-2018 près de 3 milliards d'euros d'écart entre l'objectif initial de dépenses voté pour les établissements de santé et les dépenses exécutées」とし、理由を「La principale explication tient à la différence même de nature des modes de financement : enveloppe limitative pour les établissements de santé comme pour les établissements et services médico-sociaux, contre enveloppe ouverte pour les soins de ville」と説明する。そしてこの仕組みが病院にとって「un dispositif « perdant-perdant »」であったとし、「la régulation de l'Ondam a un impact direct sur les dépenses d'investissement des établissements de santé, qui jouent souvent le rôle de variable d'ajustement. On constate ainsi un recul continu depuis 2009」と述べる。予算凍結(mises en réserve)と取消の実額も掲載されており、2010年は凍結625・取消625、2013年は545・330、2015年は547・385(百万ユーロ)である。なお警報委員会(comité d'alerte)の発動は、社会保障法典 D.114-4-0-17条により閾値がONDAM額の0.5%と定められており(当初0.75%から引き下げ)、2007年に一度、そして2025年6月18日に18年ぶり二度目が発動された(Cour des comptes RALFSS 2026)
- 30Entwurf eines Gesetzes zur Stabilisierung der Beitragssätze in der gesetzlichen Krankenversicherung(GKV-Beitragssatzstabilisierungsgesetz)省令案Bundesministerium für Gesundheit(連邦保健省)2026年4月16日 ※Referentenentwurf(省内草案)であり成立した法律ではない · 2026 · accessed 2026-08-25裏付けた主張: ドイツの保険料率安定原則(社会法典第5編第71条)が機能しなくなったことを、所管省自身が記述する。「Im Jahr 2024 wiesen die Krankenkassen und der Gesundheitsfonds ein Defizit von insgesamt knapp 10 Milliarden Euro aus」「Während der durchschnittlich erhobene Zusatzbeitragssatz im Jahr 2022 noch bei rund 1,4 Prozent lag, hat er sich bis 1. Januar 2025 auf etwa 2,9 Prozent mehr als verdoppelt」「Die Ausgaben steigen derzeit um knapp 8 Prozent pro Jahr und damit etwa doppelt so stark wie im Durchschnitt der 2010er Jahre」。そして上限が実効的でなくなった理由を二つ挙げる。第一に病院の基準価格について「Nach geltendem Recht gilt der jeweils höhere Wert」——保険料算定基礎の変化率と、実際の費用動向を反映する指標のうち、高いほうが適用される。第二に看護人件費の適用除外について「mit dem Pflegepersonalstärkungsgesetz [wurden] die Pflegepersonalkosten ab dem Jahr 2020 aus dem Fallpauschalensystem ausgegliedert und nach dem Selbstkostendeckungsprinzip … etabliert. Die … Aufwendungen für Pflegepersonalkosten sind seit ihrer Ausgliederung 2020 um jährlich etwa 11 Prozent bzw. 2,1 Milliarden Euro im Durchschnitt gewachsen und beliefen sich in 2025 auf rund 25 Milliarden Euro」。第71条第1項第2文は予防・早期発見・疾病管理プログラムを原則の適用外としており、条文自体にも除外規定がある。なお同条第3項には2027年から2029年について変化率を1パーセントポイント減ずる規定が置かれている。査読文献による評価としては Braendle T, Colombier C. Health Policy 2020;124(6):605-614 が、2000年の拘束的原則の導入以降ドイツとスイスの伸び率の差が開いたこと(2.8%対3.7%)と、2010年から2015年にかけて保険料率が15.5%で安定していたことを記録している
- 31全民健康保險法 第60条・第61条・第62条、および全民健康保険会の総額協商資料中華民国 全國法規資料庫/衛生福利部全民健康保險會 · 2026 · accessed 2026-08-25裏付けた主張: 台湾の総額支付制度。第60条は「本保險每年度醫療給付費用總額,由主管機關於年度開始六個月前擬訂其範圍,經諮詢健保會後,報行政院核定」、第61条は「健保會應於各年度開始三個月前,在前條行政院核定之醫療給付費用總額範圍內,協議訂定本保險之醫療給付費用總額及其分配方式,報主管機關核定;不能於期限內協議訂定時,由主管機關決定」と定める。すなわち行政院が伸び率の範囲を承認し、その範囲内で協議によりニュー台湾ドル建ての総額が決まる。第62条第3項は「保險人應依前條分配後之醫療給付費用總額及經其審查後之醫療服務總點數,核算每點費用」とし、総額を審査後の総点数で割って1点単価を算出することを法律本文に定めている。重要なのは、この制度において対GDP比が目標ではなく派生指標として定義されていることである——『111年度全民健康保險財務評估報告』附録一の注は「全民健保醫療費用占GDP比率=醫療給付費用總額/GDP」とする。すなわち総額が先に決まり、対GDP比はその結果である。副作用についての査読研究として、Cheng SH, Chen CC, Chang WL. Health Policy 2009;92(2-3):158-164, DOI 10.1016/j.healthpol.2009.03.008 は病院の反応として「a 7% increase in length of stay and a 15% increase in the number of prescribed procedures and medications per admission. The claim expenses increased by 14%, and out-of-pocket fees per admission increased by 6%」を報告する。Lin LK. Social Science & Medicine 2022;309:115254, DOI 10.1016/j.socscimed.2022.115254 は「the number of surgeons in Taiwan has exhibited a decrease of 25% after 11 years… the total number of practicing physicians decreased only 13%」とする。Hsueh YS, Lee SY, Huang YT. Health Services Research 2004;39(6 Pt 2):2135-2153, DOI 10.1111/j.1475-6773.2004.00336.x は「dental global budgeting did not improve the distribution of dental care and dentist supply」とし、総額制が地理的偏在を改善しなかったと報告する。なお対照的に、フランスが1984年に導入した入院の総額予算については Redmon DP, Yakoboski PJ. Inquiry 1995;32(2):174-183 が「was successful in slowing expenditure growth. It did so, however, by reducing the volume of services; the relative price of these services remained constant」と、逆向きの反応を報告している
- 32Annual Report on the Performance of the Massachusetts Health Care System(2026年3月)Center for Health Information and Analysis, Commonwealth of Massachusetts · 2026 · accessed 2026-08-25裏付けた主張: マサチューセッツ州の目標達成状況についての最新の公式判定——「Amid these changes, the state exceeded the health care cost growth benchmark for the fourth year in a row」「THCE per capita was $11,663, an increase of 5.7%—above the health care cost growth benchmark but a deceleration from the prior year's growth of 8.6%」「THCE per capita growth has exceeded the benchmark for the past 4 years」。要点をまとめたスライドは「4 Years Running / EXCEEDED HEALTH CARE COST GROWTH BENCHMARK / THCE per capita growth above target fourth year in a row in 2024 / Outside of pandemic period, benchmark not met since 2017」とする。また Health Policy Commission の2024年 Annual Health Care Cost Trends Report は「Including the 2022 increase, THCE growth per capita exceeded the benchmark in three of the past four years and combined for an average annual rate of growth of 4.0 percent from 2018 to 2022, above the 3.1 percent benchmark set for this period. Overall, for the ten years since the passage of Chapter 224 for which THCE growth has been evaluated (2012-2022), average annual spending growth has been 3.7 percent」とする。同委員会は2024年3月の理事会資料で目標の性格を「The health care cost growth benchmark is not a hard cap on spending growth or provider-specific prices but is a measurable goal for moderating excessive health care spending growth」と説明し、同時に立法府への勧告として「allowing the HPC to apply escalating financial penalties for above-benchmark spending or non-compliance」を挙げている
- 33The Effect of the Massachusetts Health Care Cost Growth Benchmark on Hospital Revenues and Other Spending Outcomes: Associations with Hospital Revenue, Hospital Prices, and Insurance PremiumsChase E, Eibner C, Kerber R, Liu JL. RAND Corporation, RR-A4662-1 · 2026 · accessed 2026-08-25裏付けた主張: マサチューセッツ州の目標に特化した因果評価。要旨は「Although the cost growth benchmark was exceeded in most years since 2013, the policy may have slowed spending growth compared with what would have occurred otherwise. The study uses four statistical approaches… Results were mixed and method-dependent: Some approaches suggested that the cost growth benchmark reduced inpatient and outpatient hospital revenue and prices, while the authors found no significant effects in other approaches. There was no evidence that the benchmark affected health insurance premiums. The analysis was limited by confounding factors, especially the near-simultaneous implementation of the Affordable Care Act… The authors caution that findings are exploratory and not causal. Overall, the evidence that the Massachusetts health care cost growth benchmark reduced hospital revenue and prices was weak and inconsistent」とする。Key Findings には「Enforcement has been rare」「Evidence for the benchmark's effectiveness was weak and inconsistent」とある。なお州の伸び率目標一般については、2026年に相反する二つの査読研究が同じ雑誌に出ている——Imran A, et al. JAMA Network Open 2026;9(6):e2620963, DOI 10.1001/jamanetworkopen.2026.20963 は「Implementation of cost-growth benchmark programs was associated with a 2.0% reduction in TME growth (95% CI, -3.3% to -0.7%; P = .004). Reductions were observed in all treatment states except Delaware」とし、Eibner C, et al. JAMA Network Open 2026;9(2):e2558283, DOI 10.1001/jamanetworkopen.2025.58283 は「On average, no statistically significant changes… scant evidence suggested that spending growth benchmarks were associated with reductions in the outcomes of interest」とする(後者はマサチューセッツを分析対象から除外している)。前者の記述によれば「all states paired their benchmark programs with enforcement mechanisms and/or payment reforms except for Delaware, which relied solely on public reporting」であり、効果が見られなかったのはそのデラウェアのみである
- 34Budgetary targets as cost-containment measure in the Swiss healthcare system? Lessons from abroadBraendle T, Colombier C. Health Policy. 2020;124(6):605-614. PMID 32473748 / PMC7255250 · 2020 · accessed 2026-08-25裏付けた主張: 各国の医療費目標を比較した査読論文。オランダについて——「The annual real budgetary targets for the healthcare system were 1.3% (1994–1998), 2.3% (1999–2002), 2.5% (2003–2007) and thereafter 2.7%. Whereas the budget situation in the Netherlands improved overall in the years before the financial crisis, the healthcare sector succeeded in complying with the budget targets only once – in 2006 – in the period from 1994 to 2011」。守られなかった理由——「One reason is that the definitive figures and thus the extent of the failure to adhere to the budgetary target were often available only with a delay of up to 2 years. Implementing compensation reductions proved to be politically unfeasible with such substantial time lags. Besides the fact that the cost containment policy met with growing public rejection, the courts often confirmed – as a result of lawsuits – that a right to equal healthcare provision existed. This was not compatible with longer waiting times resulting from strict budgetary targets」。2012年以降は守られたが、同時期に並走した他の措置も列挙している——「i) a more restrictive range of compulsory services… ii) a further increase in cost participation (from EUR 170 in 2011 to the current amount of just under EUR 400), iii) a further expansion of the area on which health insurance funds and service providers can negotiate freely… and iv) a simplified DRG remuneration system (from 30,000 to approx. 4000 components in 2013)」。また共有プール問題も指摘する——「The sanction mechanism provided for is controversial due to the common-pool incentives problem to individually expand volumes with the goal of safeguarding income」
- 35Zorgakkoorden — Uitgavenbeheersing in de zorg deel 4Algemene Rekenkamer(オランダ会計検査院)2016年12月 · 2016 · accessed 2026-08-25裏付けた主張: オランダの医療協定の評価。主要結論——「Zeer waarschijnlijk hebben de zorgakkoorden bijgedragen aan de (beoogde) lagere uitgavengroei in de curatieve zorg in de jaren 2012-2015… Dit is met name te danken geweest aan de financiële afspraken in de akkoorden」。一方で「Wij achten het daarentegen onwaarschijnlijk dat de inhoudelijke afspraken in de zorgakkoorden een wezenlijke bijdrage hebben geleverd aan de lagere uitgavengroei in de jaren 2012–2015」とする。そして交絡要因を自ら明記する——「Andere factoren hebben mogelijk ook bijgedragen aan de lagere uitgavengroei in de curatieve zorg in de periode 2012-2015. Zo zijn er aanwijzingen dat de zorgvraag in de MSZ is afgenomen onder invloed van de verhoging van het verplichte eigen risico en het stagneren van de koopkracht als gevolg van de economische crisis」。なお経済分析機関CPBは、こうした協定に伴う節約について「Dit betreft een korting op budgetten zonder corresponderende beperking van de aanspraken of efficiëntie-verbeterende maatregelen. Een generieke korting leidt om die reden in beginsel tot (kwalitatief) mindere zorg en vermindert de werkgelegenheid in de zorg」(Zorgkeuzes in Kaart 2020, 施策31)とする
- 36Financing health care in the European Union: Challenges and policy responsesThomson S, Foubister T, Mossialos E. WHO Regional Office for Europe on behalf of the European Observatory on Health Systems and Policies. Observatory Studies Series. ISBN 978 92 890 4165 2 · 2009 · accessed 2026-08-25裏付けた主張: 持続可能性を水準ではなく機会費用の問題として定義する——「Concern regarding the economic sustainability of any health system relates to the level and rate of growth of health spending. We should be concerned about this because spending on health care has an opportunity cost. … So long as the value produced by health care exceeds its opportunity cost, growth in health spending is economically sustainable (value in excess of cost can be seen as a measure of economic sustainability). Once the opportunity cost of health spending is too high, health spending becomes economically unsustainable」。また「under circumstances of economic growth, health spending can grow at a rate higher than economic growth as a whole (that is, so as to consume an ever-greater proportion of GDP), without necessarily causing other areas of economic activity to shrink」とする。財政的持続可能性については「Fiscal sustainability becomes a problem when the government is unable to meet its health system obligations due to its inability or unwillingness to generate sufficient revenue to meet them」と、意思の問題を含めて定義する
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