測る道具の点検01 医療費と財源/JAPANEUROPEOTHER
「かかりすぎ」は、どの数字の上に乗っているのか
指標監査の優先順位表で首位だった受診回数を点検した。OECDに載っている日本の値は割り算で再現できる——入院外の診療実日数1,553,086,171を年度平均の医療保険加入者数125,640,056で割ると12.36になる。単位は回ではなく日で、同じ医療機関で同一日に三科かかっても1日。分母は人口ではなく被保険者で、生活保護の医療扶助は分子分母とも除外されている。OECDは遠隔診療の包含を「定義からの逸脱」と記録し、単位がdays、分母がsubscribersであることを別途注記している。12.4は実在する数字だが、過剰受診を直接測った数字ではない。
ダイジェスト解説 VIDEO
指標監査の優先順位表で、ずっと首位だったものがある。受診回数(優先度27.0)。
理由は簡単で、この数字の上に一つの語が乗っているからだ。「日本人は医者にかかりすぎだ」。
辿った。結果は、私が予想していたのと違う場所に着いた。
その数字は、割り算で再現できた
まず、OECD に載っている日本の値がどこから来ているのかを探した。患者調査でも、社会医療診療行為別統計でもなかった。厚生労働省保険局の『医療保険に関する基礎資料』である1。
令和元年度版の「医療保険制度別医療費総括表(医療保険計)」の入院外の欄を開くと、こうなっている2。
| 実数 | |
|---|---|
| 入院外 日数 | 1,553,086,171 |
| 入院外 件数 | 1,019,467,656 |
| 年度平均加入者数 | 125,640,056 |
割ってみる。
1,553,086,171 ÷ 125,640,056 = 12.3614
OECD の日本2019年値は12.4である。一致する。
そして、同じ表に印字されている「受診率」は8.11だった。(件数÷加入者数=8.1142。表の印字と一致する。)
OECD に出ているのは、受診率ではない。
単位は「回」ではなく「日」で、分母は人口ではなかった
OECD の定義文書を開くと、日本の欄にこう書いてある3。
The figures refer to days of out-patient surgery per subscriber who is covered by the whole public health insurance system. Deviation from the definition: Data include remote consultations (by telephone, video, etc.).
OECD 自身の定義は、こうである。
Average number of consultations/visits with a physician per person per year. Exclusion: telephone and email contacts Note: If the source is administrative data, the rate should be calculated based on the average annual population.
三か所ずれている。
| OECD の定義 | 日本が報告しているもの | |
|---|---|---|
| 単位 | 回(consultations/visits) | 日(days) |
| 分母 | 人口(average annual population) | 被保険者(per subscriber) |
| 遠隔診療 | 除外 | 含む |
単位が日だということの意味を、記載要領で確かめた4。
エ 同一日に初診、再診(電話等再診を含む。)が2回以上行われた場合の実日数は、1日として数えること。
同じ病院で内科と整形外科と皮膚科を回っても、1日である。明細書は1枚にまとめられる。
ただし、別々の医療機関にかかった場合は別である。明細書が医療機関ごとに分かれるので、同じ日でも1日ずつ計上される。同じ「同一日に三科」でも、一つの病院の中なら1、三つの診療所を回れば3になる。
(そして「検査結果だけを聞きに来た日」「薬だけを取りに来た日」は、0日である。)
分母が被保険者だということは、人口ではないということである。そして生活保護の医療扶助は、分子からも分母からも除かれている。
そして遠隔診療は分離できない。日本の遠隔(teleconsultations)系列は Data not available. で、対面と総数が全年で同じ値になっている。分子が診療実日数である以上、対面でもオンラインでも1日は1日であり、事後に引き算できない。
(国内の統計では分離できる。令和4年5月の情報通信機器による初診は10,682回、対面は18,097,507回で、初再診全体の0.036%である5。規模としては12.4という値をほとんど動かさない。だが、OECD に出す段階で混ざる。)
この食い違いは、13年前に指摘されている
しかも、指摘したのは外部ではなかった。この数値を作っている当の部署である6。
外来(医科入院外と歯科)の受診状況について、国際比較統計では我が国の人口一人当たり年間外来診察回数は13日程度と最も多く、世帯調査ではどの年齢階級の通院者率も上昇を続ける一方、レセプト統計では、外来受診延日数(外来延患者数)と外来1件当たり日数…は減少傾向にある。
保険局調査課、2013年。三つの統計が別々の方向を示していることを、13年前に書いている。
そして、この一文自体がその混乱を体現している。——「年間外来診察回数は13日程度」。
標準定義と、日本固有の逸脱
公開時の本文は、この節を「二つの資料が、正反対のことを書いている」と題した。構造の読み違いである※訂正。
厚生労働省が国際比較を示すスライドは、この指標の定義をこう注記している1。
電話やメールによるコンサルテーションは除く。
OECD が同じ指標の日本欄に書いているのは、こうである3。
Data include remote consultations (by telephone, video, etc.)
厚生労働省の注記は、この指標の一般的な「定義」欄にある。OECD の標準定義を転載したものであって、日本から提出した実データについて遠隔診療を除外したと保証する文章ではない。その後に、日本データの出所が別項目として書かれている。
正確な構造はこうである。厚生労働省の資料はOECD指標の標準定義を転載し、OECDのメタデータは日本値がその標準定義から外れて遠隔診療を含むと注記している。「送り出す側と受け取る側の矛盾」ではなく、標準定義と、そこからの日本固有の逸脱である。
OECD 自身が、全年にフラグを立てている
これは隠されているわけではない。
OECD の SDMX API から実データを取ると、日本の対面系列には 2018年から2023年までのすべての年に D = Definition differs という観測ステータスが付いている7。
ただし、このフラグが何を理由に立っているかは限定しておく※訂正。定義文書で明示的に Deviation from the definition: と書かれているのは遠隔診療の包含についてであり、「単位が days」「分母が subscribers」は Coverage 欄の記述である。三つの相違すべてを理由にフラグが立っている、とは断定できない。(公開時の本文と説明文は「三つの相違」と「全年」をまとめて扱っていた。)
機械可読のフラグである。そして『Health at a Glance 2025』の図5.16 は、その対面系列の図だ。
注記も、定義文書も、フラグも、全部ある。——棒一本には国別の定義差が符号化されず、本文まで読まなければ分からない※訂正。(同じ節の比較可能性の囲みには、日本の遠隔診療、ドイツの過小計上、行政データと調査データの混在が明記されている。「注記が落ちる」のではなく、図と本文の距離の問題である。)
比べている相手も、揃っていない
日本側だけの問題ではなかった。
OECD 自身が比較可能性の囲みに書いている8。
In Germany, data include only the number of cases of physician treatment according to reimbursement regulations under the country’s social health insurance scheme (a case only counts the first contact over a three-month period, even if the patient consults a doctor more often, leading to an underestimation).
ドイツでは、同一の保険診療ケースについて、3か月間の最初の接触だけが数えられる※訂正。(公開時は「ドイツは3か月に1回しか数えない」と書いたが、一人の患者が何人の医師に会っても全国で3か月に1回、という意味には読めないようにしておく。)定義文書のドイツ欄には、こうある3。
A substantial under-reporting has to be assumed.
「日本はドイツの1.3倍」という比較は、日本=日数カウントとドイツ=3か月1回カウントを並べたものである。
データ源の種類も混ざっている。
Data come mainly from administrative sources, although in some countries (including Ireland, the Netherlands, New Zealand and Switzerland) they come from health interview surveys. Data from administrative sources tend to be more accurate (and higher) than those from surveys
行政データと世帯調査が同じ表に並び、OECD 自身が「行政データのほうが高く出る傾向がある」と書いている。米国の値は世帯標本調査(MEPS)由来である。そして英国は、現行の総数系列に数値が存在しない。
No data supplied since 2009 due to issues with actually finding a source that can deliver
(細かいが、面白い矛盾もある。『Health at a Glance 2025』の本文は、英国を「受診回数の少ない国」の例として論じている。同じ節の図5.16に、英国のデータは無い。)
スイスの標本の定義も、定義文書に書いてある——「This survey only covers people aged 15 years and older in private households, excluding collective households (retirement homes, institutions for the disabled, etc)」。高齢者施設の入所者を除いた標本調査の値が、日本の全数レセプト値と同じ棒グラフに並んでいる。
「OECD平均」は、データ系列として保存されていない
もう一つ、確かめて驚いたことがある。
SDMX のデータベース本体に、OECD 平均に相当する集計コードが無い。(REF_AREA の全53コードを確認した。)ただし「平均の正体が不明」という意味ではない※訂正。各図の非加重平均であり、対象国数も図に明示されている。無いのは、固定的な時系列としての行である。
刊行物に現れる「OECD平均」は、各図がその都度計算した非加重平均である。Reader’s guide がそう書いている8。
it is the unweighted average of the OECD countries presented, unless otherwise specified. The number of countries included in this OECD average is indicated in the figure
「その図に載っている国だけ」の平均である。だから図のラベルが OECD31 のように国数入りになっている。
ここで公開時の本文は、対面30か国の平均6.58と総数26か国の平均8.04を並べ、「対面と総数で1.5違う」と書いた。この記事自身が批判している、構成国の違う分母の比較である※訂正。
両方の系列がある国だけで計算し直した。(医師 OC221、2023年、パートナー国を含む全報告地域)
| 国数 | 非加重平均 | |
|---|---|---|
| 対面系列のある地域 | 39 | 6.554 |
| 総数系列のある地域 | 32 | 7.653 |
| 両方ある地域 | 28 | 対面 6.786 / 総数 7.564 |
同じ28地域で比べると、差は0.78である。1.5ではない。(加盟国だけに絞れば国数と値は少し動く。)そして差の中身にも遠隔診療の定義差が含まれるので、これを単純に「遠隔分」とは呼べない。
なお日本は、対面も総数も同じ12.4である——遠隔診療を分離できないことと整合する。総数系列には米国も英国も入っていない。
「OECD平均の2倍」と言うとき、その平均が何の平均なのかは、図ごとに違う。
「14回」は、現行値ではない
流通している値が複数あるので、系列を全部取った7。
ただし公開時の本文は「定義の違いではなく、年次の違いだった」と断定した。そこまでは立証できていない※訂正。以下の系列から分かるのは値の推移であって、流通している「14回」がどの年次のどの文献に由来するかではない。14.8を通常の丸め方をすれば15である。(別の記事では「日本14回・米国2.8回」を1994年の研究に帰属させている。)書ける範囲は——14前後だったのは主として1990年代から2000年代初頭であり、現行値ではない。
| 年 | 値 |
|---|---|
| 1985 | 13.5 |
| 1990 | 13.8 |
| 1996 | 14.8(ピーク) |
| 2000 | 14.4 |
| 2010 | 13.1 |
| 2018 | 12.5 |
| 2019 | 12.4 |
| 2020 | 11.1 |
| 2022 | 12.1 |
| 2023 | 12.4 |
「14回」は1990年代の値である。ピークは1996年の14.8で、そこから約16%減っている。
そして「12.1」にも、もう一つ罠がある。『Health at a Glance 2025』の図5.16は「2023年」の欄に日本を12.1と印字しているが、日本には脚注が付いている——「Latest data from 2021-2022」。現行データベースの2023年値は12.4である。
(日本の値は年度であって暦年ではない。OECD の「2023」は令和5年度=2023年4月から2024年3月を指す。)
日本側の統計も、途中で道具が変わっている
ついでに気づいたことを二つ書いておく。どちらも、時系列を素直に読めない例である。
患者調査の「平均診療間隔」は、平成29年の11.6日から令和2年に22.2日へ、ほぼ倍増している。長期処方が進んだ証拠に見える。だが違う9。
令和2年から平均診療間隔の算出において、前回診療日から調査日までの日数の算定対象の上限を変更。平成29年までは30日(31日以上を除外)であったが、令和2年からは98日(99日以上を除外)で算出。
上限を30日から98日に変えたから上がった。平成29年以前の値は、そもそも31日以上の間隔を数えていない。
受療行動調査の診察時間では、「3分未満」という区分が平成26年の16.3%を最後に消え、平成29年から「5分未満」に置き換わっている10。「3分診療」という言い回しが指す区分を、この調査でもう測れない。(そして同調査は病院のみが対象で、診療所は含まれない。)
国際比較の側も似ている。67か国の診察時間を集めた系統的レビューで、日本を代表しているのは2件——n=20 と n=263 の研究で、後者は鳥取県の単一診療所の8診療日である11。
そもそも、質の指標として置かれていない
ここまでは数え方の話である。指標の位置づけを見ると、もっとはっきりしている。
OECD はこの指標を第5章「Access and coverage」に置いている。第6章「Quality and outcomes of care」ではない8。
そして本文にこう書いてある。
This indicator should not be taken as a measure of doctors’ productivity, since consultations vary in length and effectiveness
多い理由についての OECD の説明は、出来高払いである。患者の行動には帰属させていない。
In some countries, doctors are paid predominantly by fee-for-service (as in Germany, Japan, Korea and the Slovak Republic). Such countries tend to have higher consultation rates
そして OECD が問題として書いているのは、少ない側だった。
Still, in the United States, doctors are paid mainly by fee-for-service, but consultation rates are relatively low. This may reflect in part the high co-payments faced by a large proportion of the population, which can cause patients to not consult a doctor because of the cost of care.
同じことを、OECD は別の報告書でも書いている12。
No core set of indicators of inappropriate care exist across OECD countries. … Conversely, relatively low rates of activity may indicate problems with access to health services.
では「かかりすぎ」と、誰が言っているのか
ここが、この記事でいちばん予想外だった。
財務省の財政制度等審議会の建議(令和7年12月)を全文検索した13。
「かかりすぎ」「かかり過ぎ」「過剰受診」「コンビニ受診」——すべて0件。
書かれているのは、これである。
日本の外来受診頻度は国際的に見て高く、その多くは少額受診である。…比較的軽微な受診については、患者から一定額の負担を追加する仕組みを検討すべきである。
「頻回受診」という語は使われている。だが名指しされているのは、多くの場合、診療報酬の設計のほうだった。
特定疾患療養管理料については、頻回受診を誘発する要因となりかねないことから、特定疾患処方管理加算等との併算定を一律で不可とすべきである。
そして同じ審議会の春の建議は、受診の多さを供給側に帰属させている。
例えば医師誘導需要仮説(医師の増加が医療需要を喚起する)や、アバーツ・ジョンソン仮説…こうした仮説は、日本にも当てはまるものである。
閣議決定文書も見た。骨太の方針2022年から2026年までの5本に、受診回数の国際比較は一行も無い14。むしろ逆方向が明記されている。
必要な受診が確保されるよう適切に配慮することを前提として(2026年)
そして「OECD平均の何倍」という記述も、到達した政府文書のどこにも見当たらなかった。財務省は主要国を並べた棒グラフで示し、平均も倍率も書いていない。出典表記は「OECD Data Explorer」である。
ただし「価値判断がそこに書かれていない」とまでは言えない※訂正。同じ建議が「比較的軽微な受診については、患者から一定額の負担を追加する仕組みを検討すべきである」と、政策判断そのものを示している。「かかりすぎ」という単語が無いことは、その概念や価値判断が無いことを意味しない。
書ける範囲はこうである。確認した政府文書は「かかりすぎ」という語を使っていないが、高い受診頻度を資源配分上の問題として扱っている。そして「OECD平均の何倍」という記述には、到達した文書のどこにも当たらなかった。
多いことが悪いという実証は、見つからなかった
念のため、命題そのものも調べた。
受診回数とアウトカムの関連を国際比較で調べた研究には、到達できなかった(ただし検索データベース・検索語・期間・採否基準を記録していないので、これは「見つけられなかった」という以上の意味を持たない)。国内(イングランド)の、270万人・238診療所を単位にした研究はある15。これは英国の診療所単位の横断分析であり、日本とOECD諸国の国レベルの受診頻度差が健康アウトカムにどう関係するかを検証したものではない※訂正。
Rates of GP and nurse consultation … were not associated with mortality or hospital admission rates
日本で供給者誘発需要と整合的な関連を示した研究もある※訂正(この研究は受診回数を直接観測しておらず、平均処方日数を頻度の代理変数にしている)。そしてその著者ら自身が、結びにこう書いている16。
Further studies should investigate whether more frequent physician-patient encounters provide clinical advantages to patients.
受診頻度の高さに臨床的な利点があるかどうかは、供給者誘発需要を示した研究自身が、今後の課題としている。
規模の話もしておく。この研究が定義・測定した52種類の低価値医療(low-value care)は、約200万人分のレセプトから推計して総医療費の0.7%から1.0%である17。そのほとんどが低単価の医療で構成されている。
「日本の低価値医療は0.7〜1.0%」と読んではいけない※訂正。レセプトで測定可能な52項目についての推計であり、測定できない項目も下流の費用も含まれない。原研究自身がこの限界を明記している。
減らすと、何が減るのか
最後に、減らす政策のほうを見る。
日本のデータで最も明確なのは、子ども医療費助成を使った研究である18。無料から少額負担(1回2ドル程度)に変えると——
- 不適切な抗菌薬使用は 18.3%減る
- 予防的診療も、約10%減る(ただしアウトカムの発生率は0.69%と低く、著者ら自身が慎重な解釈を求めている)
This result supports the behavioral hazard argument that even a small copayment of USD 2/visit significantly decreases care that is considered as high value.
RAND 医療保険実験が40年前に出した結論と、同じ形である19。
Cost sharing reduced the use of both highly effective and less effective services in roughly equal proportions. The proportion of inappropriate hospitalizations was the same (23 percent) for cost-sharing and free-plan participants
「不要な受診だけが減る」という前提は、実験で否定されている。
米国の高齢者で外来自己負担を引き上げたプランを追った研究では、外来が減った一方で入院が増えた20。
19.8 fewer annual outpatient visits per 100 enrollees … 2.2 additional annual hospital admissions per 100 enrollees … The effects … were magnified among enrollees living in areas of lower income and education and among enrollees who had hypertension, diabetes, or a history of myocardial infarction.
日本の70歳の段差を使った研究は、健康への影響を検出していない21。ただし読み方に注意が要る。同種の先行研究は「影響は小さい」としつつ、その95%信頼区間は高齢者死亡率の2.6%減までを含んでいる。「影響が無い」と読むことはできない。
そして紹介状なし受診の定額負担については、紹介率が5.10パーセントポイント上がったことまでは測られている22。著者ら自身が、その先をこう書いている。
In-depth research is needed to evaluate whether healthcare outcomes, such as hospitalization or emergency visit rates, deteriorate after the introduction of additional fees.
健康アウトカムを測った研究には、到達できなかった。
総合診療にとって
四つ書いておきたい。
第一に、この数字は「回数」ではない。加入者一人あたりの診療実日数である。同じ医療機関で同じ日に三科にかかっても1日(三つの異なる医療機関なら3日)※訂正。「受診回数」という訳語そのものが、指標の中身とずれている。そして分母は人口ではなく被保険者で、生活保護の医療扶助は入っていない。
第二に、注記は全部ある。OECD は定義文書に書き、比較可能性の囲みに書き、機械可読のフラグまで立てている。落ちるのは、グラフにする段階である。——この列の第1回で、受診件数と受診者数が同じフォレストプロットに統合されているのを見た。同じことが、国際比較でも起きていた。
第三に、「かかりすぎ」という語を使った政府文書に、私は到達できなかった。財務省の建議は「高い」と書き、原因を医師誘導需要に帰属させ、閣議決定は「必要な受診が確保されるよう適切に配慮する」と書いている。ただし同じ建議が軽微な受診への追加負担を提案しており、価値判断が無いわけではない※訂正。無いのは「かかりすぎ」という語と、「OECD平均の何倍」という記述である。
第四に、一律の患者負担は、不要な受診だけを選別して減らす道具ではない※訂正。少額の負担で不適切な抗菌薬は18.3%減るが、予防的診療も10%減る。RAND は40年前に「効果的な医療と効果の薄い医療がほぼ同じ割合で減った」と出している。米国の高齢者では外来が減って入院が増えた。
(公開時は「選別して減らす方法は、まだ誰も持っていない」と書いたが、普遍的すぎる。抗菌薬の適正使用支援、処方監査、臨床意思決定支援など、対象を限定した削減策は存在する。支持できるのは、一律の価格による選別ができない、というところまでである。)
外来を最も多く担っているのは、診療所である。そして診療所の外来は、この12.4という数字の大部分を作っている。
その数字が何を数えているのかを知っているのは、たぶん数えられている側だと思う。同じ医療機関で同じ日に三科を回った患者が1日と数えられること、月に一度の処方が「診療実日数」として積み上がること、そのうちのどれが本当に必要だったのか。
それは、レセプトの外側にしかない情報である。
訂正 CORRECTIONS
公開後に直したこと。本文は直したうえで、何をどう変えたかをここに残している。本文中の※ が、直した箇所を指す。
- 訂正対面30か国の平均と総数26か国の平均を直接比較していた2026-09-01 · oecd-heikin構成国が違うため「対面と総数で1.5違う」とは言えない。この記事自身が批判している、分母の違う比較である。OECDのSDMXから2023年の医師(OC221)データを取り直し、両方の系列がある地域だけで再計算したところ、28地域で対面6.786・総数7.564、差は0.779だった。参考として、対面系列のある39地域の平均は6.554、総数系列のある32地域の平均は7.653である。また差の中身にも遠隔診療の定義差が含まれるため、これを単純に「遠隔分」とは呼べない。なお日本は対面も総数も同じ12.4であり、遠隔診療を分離できないことと整合する。
- 訂正「定義からの逸脱」フラグが三つの相違すべてを指すかのように書いていた2026-09-01 · deviation-flag定義文書で明示的に "Deviation from the definition:" と書かれているのは遠隔診療の包含についてであり、「単位がdays」「分母がsubscribers」はCoverage欄の記述である。三つの相違すべてを理由にフラグが立っているとは断定できない。記事の説明文も「OECDは遠隔診療の包含を『定義からの逸脱』と記録し、別途、単位がdays、分母がsubscribersであることを注記している」に分けた。あわせて「全年」も2018〜2023年の対面系列についてであることを明示した。
- 訂正「二つの資料が正反対のことを書いている」という構造の読み違いを訂正した2026-09-01 · seihantai厚生労働省の「電話やメールは除く」という注記は、その指標の一般的な「定義」欄にあるOECD標準定義の転載であって、日本から提出した実データについて遠隔診療を除外したと保証する文章ではない。正確な構造は「厚生労働省の資料はOECD指標の標準定義を転載し、OECDのメタデータは日本値がその標準定義から外れて遠隔診療を含むと注記している」である。送り出す側と受け取る側の矛盾ではなく、標準定義とそこからの日本固有の逸脱である。節見出しも改めた。
- 訂正「14回は1996年の値」「定義ではなく年次の違い」を撤回した2026-09-01 · 14kai系列から分かるのは値の推移であって、流通している「14回」がどの年次のどの文献に由来するかではない。14.8を通常の丸め方をすれば15である。書ける範囲は「14前後だったのは主として1990年代から2000年代初頭であり、現行値ではない」までである。記事の説明文と節見出しも改めた。
- 訂正「同じ日に三科でも1」から「同じ医療機関で」という条件が落ちていた2026-09-01 · onaji-hi本文の該当箇所では正しく限定していたが、記事の説明文と結論では医療機関の条件が落ちていた。正確には「同じ医療機関で同じ日に三科を受診すれば1日、三つの異なる医療機関なら3日」である。
- 訂正「価値判断は書かれていない」を撤回した2026-09-01 · kachi-handan同じ建議が「比較的軽微な受診については、患者から一定額の負担を追加する仕組みを検討すべきである」と政策判断そのものを示している。「かかりすぎ」という単語が無いことは、その概念や価値判断が無いことを意味しない。「確認した政府文書は『かかりすぎ』という語を使っていないが、高い受診頻度を資源配分上の問題として扱っている」に改めた。無いのはその語と、「OECD平均の何倍」という記述である。
- 訂正英国の診療所研究と供給者誘発需要研究の扱いを限定した2026-09-01 · uk-238引用した研究は英国238診療所の横断分析であり、日本とOECD諸国の国レベルの受診頻度差が健康アウトカムにどう関係するかを検証したものではない。また供給者誘発需要研究は受診回数を直接観測しておらず、平均処方日数を頻度の代理変数にしているため、「実証した」ではなく「整合的な関連を示した」とした。あわせて「国際比較研究に到達できなかった」についても、検索データベース・検索語・期間・採否基準を記録していないため「見つけられなかった」以上の意味を持たない旨を明記した。
- 訂正0.7〜1.0%を「日本の低価値医療」全体の割合として書いていた2026-09-01 · low-valueこれはレセプトで測定可能な52種類のlow-value careについての推計であり、測定できない項目も下流の費用も含まれない。原研究自身がこの限界を明記している。「この研究が定義・測定した52種類の低価値医療は総医療費の0.7%から1.0%」に改めた。
- 訂正「選別して減らす方法は、まだ誰も持っていない」を撤回した2026-09-01 · senbetsu普遍的すぎる。抗菌薬の適正使用支援、処方監査、臨床意思決定支援など、対象を限定した削減策は存在する。引用した三つの研究(子ども医療費助成、RAND、米国高齢者)から支持できるのは「一律の患者負担は、不要な受診だけを選別して減らす道具ではない」までである。あわせて子どもの予防的診療10%減について、アウトカムの発生率が0.69%と低く著者ら自身が慎重な解釈を求めていることも本文に補った。
- 訂正ドイツの3か月ルールの表現を正確にした2026-09-01 · germany「ドイツは3か月に1回しか数えない」では、一人の患者が何人の医師に会っても全国で3か月に1回という意味に読める。「同一の保険診療ケースについて、3か月間の最初の接触だけが数えられる」に改めた。日本との比較可能性が低いという中心的な指摘は変わらない。
- 訂正「OECD平均は存在しない」という印象を与える書き方を改めた2026-09-01 · heikin-sonzai各図の非加重平均であり、対象国数も図に明示されている。無いのは固定的な時系列としての行である。節見出しを「データ系列として保存されていない」に改めた。また「注記が落ちる」についても、同じ節の比較可能性の囲みに日本の遠隔診療・ドイツの過小計上・行政データと調査データの混在が明記されているため、「棒一本には国別の定義差が符号化されず、本文まで読まなければ分からない」に改めた。
出典 SOURCES
- 1医療提供体制の国際比較 ― OECD加盟国との比較(第7回 第8次医療計画等に関する検討会 参考資料3)厚生労働省(令和4年3月4日) · 2022 · accessed 2026-08-21裏付けた主張: 外来受診回数の国際比較を示す頁に、厚生労働省自身が日本のデータの出所を注記している——「電話やメールによるコンサルテーションは除く。日本のデータは、厚生労働省保険局の医療保険に関する基礎資料(平成30年度)より引用(各医療保険制度の事業年報等を基に医療給付実態調査等を用いて保険局により推計した数値)。※米国は2011年、イギリスは2009年とデータが古いため掲載なし。アイスランド、ポルトガルはデータなし」。すなわち日本側も、この値が患者調査ではなく保険局の推計であることを明記している
- 2医療保険に関する基礎資料(令和元年度)厚生労働省保険局調査課 · 2021 · accessed 2026-08-21裏付けた主張: OECD に提出されている日本の受診回数の出所。「8.医療保険制度別令和元年度医療費総括表(1)医療保険計」の入院外の欄は、日数1,553,086,171日、件数1,019,467,656件、年度平均加入者数125,640,056人である。日数を加入者数で割ると12.3614となり、OECD の日本2019年値12.4と一致する。同じ表に印字されている「受診率」は8.1142(=件数÷加入者数)であって12.4ではなく、「1件当日数」は1.52である。すなわち OECD に出ているのは受診率でも件数でもなく、加入者一人あたりの診療実日数である。歯科(年3.25)および入院(年3.36)は別行であり、医科外来の値には含まれない。なお生活保護の医療扶助および柔道整復師の療養費等は分子・分母とも含まれない。本稿は令和元年度版で列見出しを直接確認し、件数÷加入者数=印字された受診率、日数÷件数=印字された1件当日数、という二つの恒等式で列の同定を検証した
- 3OECD Health Statistics 2026, Definitions, Sources and Methods(Doctors consultations)OECD(2026年7月版)※oecd.org 本体は自動取得を遮断するため webfs-els.oecd.org から取得した · 2026 · accessed 2026-08-21裏付けた主張: 2025年版から指標は4本に分割されている(1_1 総数=遠隔を含む/1_2 対面/1_3 遠隔/1_4 歯科)。対面の定義は「Average number of consultations/visits with a physician per person per year」。除外項目に「telephone and email contacts」「visits for prescribed laboratory tests」「visits to dentists」「visits to nurses」「consultations during an inpatient stay or a day care treatment」を挙げ、注記に「If the source is administrative data, the rate should be calculated based on the average annual population」とする。同一日に複数の診療科を受診した場合の数え方は、定義文書のどこにも規定されていない。日本の欄はこう記す——「Source of data: Ministry of Health, Labour and Welfare, Health Insurance Bureau survey. Coverage: - The figures refer to days of out-patient surgery per subscriber who is covered by the whole public health insurance system. … Deviation from the definition: Data include remote consultations (by telephone, video, etc.)」。すなわち単位が days、分母が per subscriber であり、遠隔診療を含むことを OECD 自身が「定義からの逸脱」という見出しで記録している。日本の 1_3(遠隔)の欄は「Data not available.」である。ドイツの欄には「A substantial under-reporting has to be assumed.」とあり、英国の欄には「Source of data: Unavailable from each of the four UK nations at present.」「No data supplied since 2009 due to issues with actually finding a source that can deliver」とある。なお out-patient surgery を外来診察と読むのは本稿の解釈であり、OECD はそれ以上の説明を置いていない。ただし days と per subscriber は原文どおりである
- 4診療報酬請求書等の記載要領等について(昭和51年8月7日保険発第82号、令和8年3月27日保医発0327第2号による改正後)厚生労働省保険局 · 2026 · accessed 2026-08-21裏付けた主張: 別紙1「(18)『診療実日数』欄について」が、この単位の数え方を定める。「イ 入院外分については、診療を行った日数…を記載すること」「ウ 患者又はその看護に当たっている者から電話等によって治療上の意見を求められて指示した場合(以下「電話等再診」という。)の実日数は1日として数えること」「エ 同一日に初診、再診(電話等再診を含む。)が2回以上行われた場合の実日数は、1日として数えること」「キ 同一日に複数科を受診した場合の初診料・再診料・外来診療料を算定しない科に係る診療実日数については、初診料・再診料・外来診療料を算定しない日を含め実際に診療を行った日数を記載するものとすること」「ケ 初診又は再診に附随する一連の行為とみなされる次に掲げるような場合は、当該行為を行った日は実日数として数えないこと。(ア) 初診又は再診時に行った検査、画像診断の結果のみを後日聞きに来た場合 (イ) 往診等の後に薬剤のみを後日取りに来た場合」。また一般的事項に「同一の被保険者等が2以上の傷病について診療を受けた場合においても、1枚の明細書に併せて記載すること」とある。すなわち同一の医療機関で同一日に複数科を受診しても診療実日数は1日だが、異なる医療機関を同じ日に受診した場合は明細書が別々になり、それぞれ1日として計上される。検査結果だけを聞きに来た日や薬だけを取りに来た日は0日である。なお情報通信機器を用いた診療が診療実日数にどう算入されるかについて、記載要領に明示の規定は無い(明記されているのは電話等再診が1日であることのみ)
- 5外来(その2)(中央社会保険医療協議会 総会 総-4)厚生労働省(令和5年11月8日) · 2023 · accessed 2026-08-21裏付けた主張: 情報通信機器を用いた診療の算定回数を、対面と分けて掲載している(出典はNDBデータ、令和4年5月診療分)。初診は情報通信機器10,682回に対し対面18,097,507回、再診・外来診療料は情報通信機器24,880回に対し対面62,206,981回。また社会医療診療行為別統計を出典として「令和4年における情報通信機器を用いた初診料等の算定回数は初・再診料等全体の0.036%を占める」と記す。すなわち国内の統計ではオンライン診療を分離して数えられるが、OECD に提出されている値は診療実日数であるため、対面と遠隔を事後に分離することができない
- 6推計平均通院日数・通院期間の数理分析厚生労働省保険局調査課(平成25年6月) · 2013 · accessed 2026-08-21裏付けた主張: 保険局調査課自身が、外来受診をめぐる統計間の食い違いを冒頭で問題として提示している——「外来(医科入院外と歯科)の受診状況について、国際比較統計では我が国の人口一人当たり年間外来診察回数は13日程度と最も多く、世帯調査ではどの年齢階級の通院者率も上昇を続ける一方、レセプト統計では、外来受診延日数(外来延患者数)と外来1件当たり日数…は減少傾向にある」。すなわち国際比較・世帯調査・レセプト統計の三つが別々の方向を示していることを、この数値を作っている当の部署が2013年の時点で書いている。なおこの一文自体が「年間外来診察回数は13日程度」と、回と日を混ぜた書き方になっている
- 7OECD SDMX API(DSD_HEALTH_PROC@DF_CONSULT)OECD Health Statistics 2026(実データ、2026年8月21日取得) · 2026 · accessed 2026-08-21裏付けた主張: 日本の対面(CONSULTATION_TYPE=CIP)系列は、2018年12.5、2019年12.4、2020年11.1、2021年11.7、2022年12.1、2023年12.4であり、いずれの年にも OBS_STATUS として「D = Definition differs」のフラグが付されている。日本は CIP(対面)と _T(総数)が全年で同値であり、CTC(遠隔)の行が存在しない。比較のためノルウェーは CIP 4.0/CTC 0.8/_T 4.7 と三系列が揃っている。長期の推移は1985年13.5、1990年13.8、1996年14.8(ピーク)、2000年14.4、2005年13.7、2010年13.1、2013年12.8、2015年12.8であり、1996年から2023年にかけて約16%減少している。なお REF_AREA には OECD 平均に相当する集計コードが存在しない(全53コードを確認)。刊行物に現れる OECD 平均は各図が都度計算した非加重平均である。本稿が実データから加盟38か国について計算すると、2023年の対面系列はデータのある30か国の平均が6.58、総数系列は26か国の平均が8.04となり、後者には米国と英国が含まれない。日本の値は年度(4月から翌年3月)であり暦年ではない
- 8Health at a Glance 2025(第5章 Access and coverage、Consultations with doctors)OECD Publishing, Paris ※oecd.org は自動取得を遮断するため dam 配下のPDFと StatLink から取得した · 2025 · accessed 2026-08-21裏付けた主張: この指標は第5章「Access and coverage」に置かれており、第6章「Quality and outcomes of care」には含まれない。本文は「This indicator should not be taken as a measure of doctors' productivity, since consultations vary in length and effectiveness, and because it excludes services doctors deliver for hospital inpatients, as well as time spent on research and administration」と明記する。受診回数が多い理由については「Provider payment methods and levels of co-payments have an impact… In some countries, doctors are paid predominantly by fee-for-service (as in Germany, Japan, Korea and the Slovak Republic). Such countries tend to have higher consultation rates than those countries where doctors are mainly paid by salaries or capitation」とし、少ない側についてはこう書く——「Still, in the United States, doctors are paid mainly by fee-for-service, but consultation rates are relatively low. This may reflect in part the high co-payments faced by a large proportion of the population, which can cause patients to not consult a doctor because of the cost of care」。比較可能性の囲みは「Data come mainly from administrative sources, although in some countries (including Ireland, the Netherlands, New Zealand and Switzerland) they come from health interview surveys. Data from administrative sources tend to be more accurate (and higher) than those from surveys because of problems with recall and non-response rates」「In Germany, data include only the number of cases of physician treatment according to reimbursement regulations under the country's social health insurance scheme (a case only counts the first contact over a three-month period, even if the patient consults a doctor more often, leading to an underestimation)」「Remote consultations cannot be distinguished and are included in a few countries (such as Austria from 2020, and Ireland, Japan, Latvia, the Netherlands, the Slovak Republic and Spain from 2019)」と記す。OECD平均については Reader's guide が「it is the unweighted average of the OECD countries presented, unless otherwise specified. The number of countries included in this OECD average is indicated in the figure」と定める。図5.16の原データ(StatLink https://stat.link/rqt74h)では、韓国18.0、日本12.1、トルコ11.4、オランダ10.1、ハンガリー9.7、ドイツ9.7、OECD31平均6.51、米国3.5であり、英国は表に掲載されていない。日本には脚注1「Latest data from 2021-2022」が付されており、2023年の欄に示された12.1は2022年度の値である。なお本文は英国を受診回数の少ない国の例として論じているが、同じ節の図5.16に英国のデータは存在しない
- 9令和5年患者調査 第6表 再来患者の平均診療間隔の年次推移厚生労働省(e-Stat) · 2025 · accessed 2026-08-21裏付けた主張: 全施設・総数の平均診療間隔(日)は平成8年9.1、平成11年9.1、平成14年9.5、平成17年9.5、平成20年10.0、平成23年10.1、平成26年11.2、平成29年11.6、令和2年22.2、令和5年24.4である。平成29年から令和2年にかけて倍増しているが、これは実態の変化ではない。表の注記(7)が理由を明記している——「令和2年から平均診療間隔の算出において、前回診療日から調査日までの日数の算定対象の上限を変更。平成29年までは30日(31日以上を除外)であったが、令和2年からは98日(99日以上を除外)で算出」。すなわち平成29年以前の値は31日以上の間隔を数えていない。新旧を並べて長期処方が進んだと読むことはできない
- 10令和5(2023)年 受療行動調査(確定数)の概況厚生労働省 · 2025 · accessed 2026-08-21裏付けた主張: 外来患者の診察時間について「『5分〜10分未満』が 40.9%と最も多く、次いで、『5分未満』が 28.1%、『10分〜20分未満』が 15.0%となっている」。ただし調査対象は「全国の一般病院を利用する患者(外来・入院)を対象として、層化無作為抽出した一般病院を利用する患者を調査の客体とした」であり、診療所は含まれない。また統計表2の年次推移を見ると、「3分未満」という区分は平成26年の16.3%を最後に消え、平成29年調査からは「5分未満」(28.2%)に置き換わっている。すなわち「3分診療」という言い回しが指す区分を、この調査で測ることは平成29年以降できない
- 11International variations in primary care physician consultation time: a systematic review of 67 countriesBMJ Open 7(10):e017902 (Irving G, Neves AL, Dambha-Miller H, Oishi A, Tagashira H, Verho A, Holden J) · 2017 · accessed 2026-08-21裏付けた主張: 67か国のプライマリ・ケアの診察時間を集めた系統的レビュー。「Average consultation length differed across the world, ranging from 48 s in Bangladesh to 22.5 min in Sweden. We found that 18 countries representing about 50% of the global population spend 5 min or less with their primary care physicians」。日本については本文の表に2件が収載されており、2003年の録音による研究(n=20、8.41分)と2010年のストップウォッチによる研究(n=263、6.12分)である。後者は鳥取県の単一診療所を対象とした研究(Wooldridge AN, et al. Asia Pac Fam Med. 2010;9(1):11, doi:10.1186/1447-056X-9-11)で、「The mean consultation duration was 6.12 minutes」「Of all consultations, 11.8% lasted 3 minutes or less」と報告している。すなわち国際比較における日本の診察時間は、計283診察分の観察に基づいている
- 12Tackling Wasteful Spending on HealthOECD Publishing, Paris · 2017 · accessed 2026-08-21裏付けた主張: 「A major challenge in reducing low-value care is that no standard way to measure and report it is in place. No core set of indicators of inappropriate care exist across OECD countries」と述べ、続けて「Conversely, relatively low rates of activity may indicate problems with access to health services」と記す。すなわち活動量の少なさはアクセスの問題を示しうる、というのが OECD の立場である
- 13令和8年度予算の編成等に関する建議財務省 財政制度等審議会 財政制度分科会(令和7年12月2日) · 2025 · accessed 2026-08-21裏付けた主張: 本稿がPDFを取得して全文検索した結果、「かかりすぎ」「かかり過ぎ」「過剰受診」「コンビニ受診」はいずれも0件であった。受診時定額自己負担を論じる箇所の記述は「日本の外来受診頻度は国際的に見て高く、その多くは少額受診である。『自助・共助・公助』の共通認識のもと、小さなリスクには自助で対処し、大きなリスクには公助で対処するという役割分担の原則に沿い、希少な医療資源をできるだけ有効活用し、現役世代の保険料負担軽減を含め医療保険制度の持続性を確保していく観点から、比較的軽微な受診については、患者から一定額の負担を追加する仕組みを検討すべきである」である。「頻回受診」の語は使われているが、名指しされているのは主に診療報酬の設計であり——「特定疾患療養管理料については、頻回受診を誘発する要因となりかねないことから、特定疾患処方管理加算等との併算定を一律で不可とすべきである」——患者に対して直接使われている文脈は生活保護の医療扶助に限られる。また同審議会の春の建議(令和7年5月27日)は、受診の多さを供給側に帰属させている——「こうした医療提供体制上の特性は、医療費を増大させる可能性があり、例えば医師誘導需要仮説(医師の増加が医療需要を喚起する)や、アバーツ・ジョンソン仮説(医師間の競争が激しくなるほど、価格競争ではなく設備投資競争(MRI 等)が起きる)等が示されている。なお、こうした仮説は、日本にも当てはまるものである」。数値の出典表記は「(出所)OECD Data Explorer(2025年8月20日時点)」であり、「OECD平均」という語も「OECD平均の何倍」という記述も、本稿が到達した政府文書のいずれにも見当たらなかった
- 14経済財政運営と改革の基本方針(2022年〜2026年)内閣府 経済財政諮問会議(閣議決定)※各年版の恒久URLを確認できなかったため、取りまとめ資料の目次ページを示す · 2026 · accessed 2026-08-21裏付けた主張: 2022年から2026年までの5本を本稿がPDFで取得し全文検索したところ、「受診回数」「受診頻度」「頻回受診」「かかりすぎ」「受診抑制」「過剰受診」の該当は、2025年の「コロナ後の受診行動の変化も踏まえ」の1件のみで、これも国際比較の文脈ではない。すなわち閣議決定文書のレベルでは、受診回数の国際比較も受診抑制の主張も登場しない。むしろ逆方向が明記されている——2025年「医療機関における必要な受診を確保し、こどもや慢性疾患を抱えている方、低所得の方の患者負担などに配慮しつつ」、2026年「必要な受診が確保されるよう適切に配慮することを前提として」
- 15Patient consultation rate and clinical and NHS outcomes: a cross-sectional analysis of English primary care data from 2.7 million patients in 238 practicesBMC Health Services Research 19:219 (Lay-Flurrie S, Mathieu E, Bankhead C, Nicholson BD, Perera-Salazar R, Holt T, Hobbs FDR, Salisbury C) · 2019 · accessed 2026-08-21裏付けた主張: イングランドの一般診療所を単位として、受診率とアウトカムの関連を調べた研究。「Rates of GP and nurse consultation (per patient person-year) were not associated with mortality or hospital admission rates: mortality incidence rate ratio (IRR) per unit change in GP/ nurse consultation rate = 1.01, 95% CI [0.98 to 1.04]/ 0.97, 95% CI [0.93 to 1.02]; hospital admission IRR per unit change in GP/ nurse consultation rate = 1.02, 95% CI [0.99 to 1.04]/ 0.98, 95% CI [0.94 to 1.032]」。結論は「There are few associations between primary care consultation rates and outcomes. Previously identified demographic and staffing factors, rather than practice workload, appear to have the strongest relationships with mortality, admissions, performance and satisfaction」。なお抄録の方法欄は283診療所、表題は238診療所と原文が食い違っている。また本稿は、受診回数とアウトカムの関連を国際比較で調べた研究には到達できなかった
- 16Supplier-Induced Demand for Chronic Disease Care in Japan: Multilevel Analysis of the Association between Physician Density and Physician-Patient Encounter FrequencyValue in Health Regional Issues 6:103-110 (Sekimoto M, Ii M) · 2015 · accessed 2026-08-21裏付けた主張: 日本の慢性疾患診療における供給者誘発需要を検証した研究。「In the analysis of claims data, we used the mean drug administration period as a proxy for the frequency of physician-initiated encounters」「Our analysis showed that encounter frequency was significantly associated with clinic physician density, but there were no consistent associations with hospital physician density」「The results of our study indicate the presence of SID in Japan」。そして著者ら自身が結びにこう書く——「Further studies should investigate whether more frequent physician-patient encounters provide clinical advantages to patients」。すなわち受診頻度の高さに臨床的利点があるかどうかは、供給者誘発需要を示した研究自身が今後の課題としている
- 17Low-cost, high-volume healthcare services contribute the most to low-value care spending in JapanHealth Affairs Scholar 3(12):qxaf225 (Miyawaki A, Mafi JN, Fukui T, et al.) · 2025 · accessed 2026-08-21裏付けた主張: 日本の約200万人分のレセプトデータ(DeSC、人口の約2%)を用いて価値の低い医療を測定した研究。「accounting for 42.6-67.2 million USD, or 0.7%-1.0% of total healthcare spending… lower-cost services (<80 USD per service) contributed to virtually all episodes of low-value care and 67% of total unnecessary healthcare spending」。すなわち日本における価値の低い医療は総医療費の0.7%から1.0%と推計される。同じ研究グループによる急性期病院242施設を対象とした先行研究(Miyawaki A, et al. BMJ Open. 2022;12(9):e063171, doi:10.1136/bmjopen-2022-063171)は「Services identified by broader low-value care definition occurred in 7.5% of patients and accounted for 0.5% of overall annual healthcare spending」と報告する
- 18Is Zero a Special Price? Evidence from Child Health CareAmerican Economic Journal: Applied Economics 14(4):381-410 (Iizuka T, Shigeoka H) · 2022 · accessed 2026-08-21裏付けた主張: 日本の子ども医療費助成を用い、無料と少額負担の差を調べた研究。低価値医療について「Column (4) of Table 5 shows that a small copayment decreases inappropriate use of antibiotics (i.e., Tier 3) as much as 18.3%」とする一方、高価値医療についてはこう書く——「preventive care significantly decreases when children pay a small copayment of USD 2/visit relative to free care… Relative to the mean, the small copayment reduces preventive care by approximately 10%, which is comparable or even larger than our main result on the overall visit dummy of 7.6%… This result supports the behavioral hazard argument that even a small copayment of USD 2/visit significantly decreases care that is considered as high value」。著者らは予防医療の推定について「the results should be viewed with caution, as only a small fraction of the dependent variable equals 1 (0.69%)」と注記している
- 19The Health Insurance Experiment: A Classic RAND Study Speaks to the Current Health Care Reform DebateRAND Corporation, Research Brief RB-9174 · 2006 · accessed 2026-08-21裏付けた主張: RAND 医療保険実験の公式要約。「Cost sharing reduced the use of both highly effective and less effective services in roughly equal proportions」「The proportion of inappropriate hospitalizations was the same (23 percent) for cost-sharing and free-plan participants, as was the inappropriate use of antibiotics」「The poorest and sickest 6 percent of the sample at the start of the experiment had better outcomes under the free plan for 4 of the 30 conditions measured」。すなわち自己負担は効果的な医療と効果の薄い医療をほぼ同じ割合で減らし、不適切な入院の割合は両群で同じであった。入院の適切性を直接扱った原著(Siu AL, et al. N Engl J Med. 1986;315(20):1259-1266, doi:10.1056/NEJM198611133152005)も「Because cost sharing did not selectively reduce inappropriate hospitalization, it is important to develop other mechanisms to do so」と結論する
- 20Increased ambulatory care copayments and hospitalizations among the elderlyNew England Journal of Medicine 362(4):320-328 (Trivedi AN, Moloo H, Mor V) · 2010 · accessed 2026-08-21裏付けた主張: 米国の高齢者向け保険で外来自己負担を引き上げたプランと引き上げなかったプランを比較した研究。「plans that increased cost sharing had 19.8 fewer annual outpatient visits per 100 enrollees… 2.2 additional annual hospital admissions per 100 enrollees… The effects of increases in copayments for ambulatory care were magnified among enrollees living in areas of lower income and education and among enrollees who had hypertension, diabetes, or a history of myocardial infarction」。結論は「Raising cost sharing for ambulatory care among elderly patients may have adverse health consequences and may increase total spending on health care」。すなわち外来受診が減った一方で入院が増えており、その影響は低所得地域の住民と慢性疾患を持つ者で大きかった
- 21Dynamics of Consumer Responses to Medical Price ChangesAmerican Economic Review: Insights 7(4):534-549 (Komura N, Bessho S) · 2025 · accessed 2026-08-21裏付けた主張: 日本の70歳から74歳の自己負担割合の2014年改定を用いた研究。「Higher coinsurance rates have an immediate and persistent effect on health care expenditure, and a sizable share of this effect persists after age 75. We find no evidence that higher coinsurance rates affect health. These results suggest that health care utilization depends on dynamic factors other than health stock, such as habits」。なお70歳の段差を用いた先行研究(Shigeoka H. Am Econ Rev. 2014;104(7):2152-2184, doi:10.1257/aer.104.7.2152)は外来の価格弾力性を−0.18から−0.2と推定し「While I find little impact on mortality and other health outcomes」とするが、同研究の作業論文版は「the 95 percent confidence interval for the mortality effects includes declines of elderly mortality up to 2.6 percent」とも記しており、影響が無いと読むことはできない。また所得階層別に見た研究(Kato H, Goto R, Tsuji T, Kondo K. Eur J Health Econ. 2022;23(5):847-861, doi:10.1007/s10198-021-01399-6)は「the price elasticities for outpatient expenditure were almost zero, −0.08, and −0.11 for lower-, middle-, and higher-income individuals, respectively, suggesting that lower-income individuals do not have more elastic demand for outpatient care compared with other income groups」と報告する
- 22Changes in Referral Rates After the Mandate of Charging Additional Fees for Non-referral First Visits: A Controlled Interrupted Time-series AnalysisJournal of Epidemiology 36(5):155-161 (Iba A, Sugiyama T, Taniguchi Y, Suzuki A, Watanabe T, Iso H, Tamiya N) · 2026 · accessed 2026-08-21裏付けた主張: 紹介状なし受診への定額負担義務化の効果を、対照群つき中断時系列分析で調べた研究。「Of 405,087 first-visit patients… With the mandate, referral rates to RMSCHs with ≥500 beds and 400–499 beds rose by 5.10% points (95% confidence interval [CI], 1.84–8.35) in 2016 and 4.49% points (95% CI, 0.28–8.70) in 2018, respectively, and stabilized afterward. Referral rates to RMCSHs with 200–399 beds remained unchanged」。価格弾力性は500床以上で−0.08であった。著者らは健康アウトカムについてこう書く——「In-depth research is needed to evaluate whether healthcare outcomes, such as hospitalization or emergency visit rates, deteriorate after the introduction of additional fees」「Further research is needed to evaluate whether the introduction of additional fees affects patient healthcare outcomes」。限界として「as we used only data from the NHI in one prefecture, we cannot generalize the results nationwide」とも記す。本稿は、選定療養費の導入が健康アウトカムに与えた影響を測定した研究には到達できなかった
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