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測る道具の点検03 総合診療という領域/JAPAN

地域を分母にする、と言うとき、何が分母になっているのか

この列の目的は、何を測るかの合意を作り、それを土台に調査を広げることにある。その前に、日本が既にやってきたことを見た。大迫町の1997年の健診コホートは、町の人口7,318人、健診の適格者2,719人、受診者1,831人、同意者1,622人という段階を経ている。適格者の定義は農業者・自営業者・年金受給者・被扶養者だった。地域の健康状態は、一つの完全な母集団からではなく、住民台帳・保険者・健診参加者・医療機関受診者という異なる抽出枠を通して観測されている。そして受診件数と受診者数が、同じ量としてプールされている。

公開2026-08-21
更新2026-09-01
出典17 SOURCES

ダイジェスト解説 VIDEO

前のシリーズを、こう閉じた。制度の中に現れなかった人を見るには、人口の側に立つしかない。それができる単位は、たぶん地域しかない。

そう書いたあとで、読者からこう返ってきた——沖縄の離島研究が意味のあるデータを出せたのは地域に密着していたからで、同じデザインが全国に波及すれば分析が前進するのではないか、と。

その通りだと思う。だから、日本が既に何度それをやったのかを調べた。

結果を先に書く。日本には世界水準の前例がある。そして「地域を分母にした」と言われているものの多くは、実は名簿を分母にしていた。

1997年の大迫町、7,318人

大迫研究は1986年に始まり、40年続いている。家庭血圧の基準値を、世界で初めて予後から導いた研究である1。

This is the first report proposing reference values for home BP measurement based on prognostic criteria.

ここで、公開時の本文が犯した取り違えを先に書く※撤回。以下に引く1,622人は、137/84を導いた研究の集団ではない。137/84を報告した1997年論文の対象は、40歳以上の地域住民1,913人である1。1,622人のほうは、後年の慢性腎臓病研究が記述した別の1997年健診コホートである2。私はこの二つを、同じ研究の分母として並べていた。

したがって「世界の診断閾値を生んだ研究の分母は全人口の22.2%だった」という記述は成立しない。137/84研究について、対象人口から解析対象者までの段階を原論文から再構成できていないので、その割合は出さない。

そのうえで、大迫町の健診コホートの分母の構造は、それ自体として見る価値がある。町の全人口から追える記述が一つある。

Farmers, self-employed individuals, pensioners, and dependants aged ≥35 years are eligible for annual health check-ups in Japan. The total population of Ohasama in 1997 was 7,318, and 2,719 individuals aged ≥35 years were eligible for annual health check-ups. Of these, 1,831 individuals participated in check-ups that year, and 1,622 individuals provided written informed consent to take part in the Ohasama study.

数えるとこうなる。

段階人数
町の全人口(1997年)7,318
市町村健診の適格者(35歳以上・農業者/自営業者/年金受給者/被扶養者)2,719
健診を受診した人1,831
このコホートに同意した人1,622

公開時の本文は、これを全人口で割って22.2%とし、参加率のように扱っていた。分母の段階が違う※訂正。7,318人には研究対象外の子どもも35歳未満の住民も含まれる。1,622÷7,318は「全町人口に占める標本の割合」であって、適格住民の参加率でも、被用者が除外された割合でもない。

分母は段階で分けなければならない——地域の全人口/対象年齢人口/抽出枠に載った人口/調査適格者/参加者/最終解析対象者。上の表はそのうち四つの段階を示している。適格者を分母にすれば受診は67.3%、同意は59.7%である。

落ちた人には、名前がついている

注目したいのは、適格者の定義のほうである。

Farmers, self-employed individuals, pensioners, and dependants aged ≥35 years

農業者、自営業者、年金受給者、被扶養者。——この健診の適格者定義には、被用者保険の本人が入っていない。

これは大迫研究の設計ミスではない。日本の市町村健診が、そういう制度だったというだけである。研究は町の健診に乗ることで住民に届いた。そして健診の対象定義が、そのまま研究の分母になった。

ベースライン調査の記述を見ると、もう一つの落ち方が見える3。

We contacted all 4969 residents aged ≥35 years … Residents were ineligible if they were not at home during working hours of study investigators or nurses (n = 1057) or if they were hospitalized (n = 166) or incapacitated (n = 94). Of the remaining 3652 residents, 3090 (84.6%) participated

84.6%は適格者に対する割合である。接触した4,969人を分母にすると62.2%になる。そして除外の最大の理由は「調査者や保健師の勤務時間に家にいなかった」——1,057人。

日中に家にいない人が、最も多く落ちている。

ただし公開時の本文は、ここから日中不在者を実質的に被用者として扱っていた。原資料が示しているのは「研究者や保健師の勤務時間に在宅していなかった」という事実までである※訂正。就労による不在は有力な説明だが、断定はできない。日中就労者を選択的に取りこぼした可能性がある、が書ける範囲である。(またこの訪問調査は1988〜95年のもので、上の1997年健診コホートとは別の選択過程である。同じ一本の線としてつないではいけない。)

同じ切断面が、制度の側にもある

これは大迫だけの話ではない。特定健診の対象の定義を読むと、同じ形が出てくる4。

当該年度の四月一日における加入者であって、当該年度において四十歳以上七十五歳以下の年齢に達するもの

対象は住民ではない。ある一日における、保険者の加入者である。

記録の保存義務も、同じ論理で切れる。

五年を経過するまでの期間又は加入者が他の保険者の加入者となった日の属する年度の翌年度の末日までの期間のうちいずれか短い期間、当該記録を保存しなければならない

保険者が変われば、保存義務そのものが終わる。

そして実施率。市町村国保の40歳代は18.2%、50歳代は22.8%(令和2年度、全体33.7%)。

ただし公開時の本文は、ここから「最も働いている世代が最も測定されていない」と一般化した。誤りである※訂正。特定健診は被用者保険を含む各医療保険者が実施する制度であり、被用者本人は制度から除外されていない。健保組合・共済組合の実施率はおおむね75%、被保険者本人では80%を超えると報告されている。

正確な問題はこうである。保険者ごとにデータが分断されており、市町村国保ではとくに若い年齢層の受診率が低い。「被用者が消える」のではなく、「保険者をまたいで一人を追えない」ことが問題である。

データベースの側も、同じところで切れている

国保データベース(KDB)は2013年に稼働し、2014年時点で1,742市町村中1,305(75%)が使っている5(この普及率は当時の値である)。地区単位の分析もできる。

だが取扱範囲の外に、被用者保険の医療情報がある。そして「健診、医療、介護情報とも対象は過去5年間分のデータのみ」。

ここでも一つ補っておく※追記。全国レベルには、保険者をまたいでレセプトと特定健診情報を収録するNDBがある。したがって正確にはこうなる——市町村KDBは国保・後期高齢者を中心に扱い、NDBは全国・保険者横断だが、地域研究としての利用や個人の追跡には別の制約がある。「被用者保険の情報がどこにも無い」のではなく、地域を単位に、保険者をまたいで一人を追える仕組みが無い。

静岡県が35市町を統合したデータベースは、その帰結を数字で出している6。

910,365 cases (40.8%) continuously subscribed to health insurance over the 6.5-year period

6.5年を通じて同じ保険に加入し続けていたのは、40.8%。

栃木県の後期高齢者を対象にした研究は、もっと直接的だった7。

栃木県の75歳以上人口である男108,609人、女160,951人(2021年1月1日住民基本台帳人口)に占める対象者の割合は、それぞれ22.9%、17.9%である

住民基本台帳を分母に置き直すと、健診受診者は男性の22.9%、女性の17.9%。そして著者自身が限界をこう書いている——「健診受診者のみを対象としていることから…地域住民全体の値よりも高い結果となった可能性がある。この点はデータセット自体の制約であり回避できない」。

本稿で比べた中では、久山町が最も徹底していた

公開時の本文は、この節を「例外が一つある」「久山町だけが、違う設計をしていた」と書いた。範囲を限定する※訂正。住民台帳を起点とする地域コホートはほかにもある(JPHCなど)。久山町の特徴は、住民名簿を使ったこと自体より、健診の非参加者を自宅・病院・施設まで追跡した点にある。本稿で比較した事例のなかでは、久山町研究が非参加者への追跡を最も徹底していた。

1961年の原著に、分母の作り方が書いてある8。

All the residents aged over 40 were collected by the original resident registration lists kept in the town office. … a small number of non-respondents to examinations were interviewed in their own homes and examined until November 1961.

町役場の住民登録原簿の全数を分母にし、来なかった人は家に行った。

そして60年後、現在の担い手が、その理由をはっきり書いている9。

認知症者、またはその疑い者ほど会場調査を受診しない傾向があり、その多くが在宅、または入院・施設入所している。そこで、久山町では、会場調査だけでなく病院、施設、自宅を町の保健師と研究室の医師が一緒に訪問調査することにより、各調査において92%以上という高い受診率を維持している。

落ちる人が誰かを特定し、そこへ行っている。

同じ論文の冒頭が、この列の主題そのものだった。

有病率調査において注意しなければならないことは、対象集団の選定方法(地域一般住民か病院受診者か)、抽出方法(悉皆調査か無作為抽出調査か)、研究対象者の参加率(または受診率)により調査結果およびその解釈が大きく異なることである。

久山町の受診率は、健診でも80.2%(1988年、3,227人中2,587人)、77.0%(2002年、3,896人中3,000人)である10。

そして、それは最初からあったものではない。剖検率は1961年11月から1963年4月までの18か月間で30.4%(56死亡中17例)だった8。1969年に94%以上になる。八年かけて作られている。

「地域を分母にする」の中身が、研究ごとに全く違う

並べてみると、同じ言葉で呼ばれているものの設計が、まるで違っていた。

研究分母
久山町町役場の住民登録原簿の40歳以上全数。未受診者は自宅・病院・施設を訪問
端野・壮瞥「長期入院、臥床の者を除外し、比較的移動の少ないと考えられる農業従事者地域から無作為的に抽出」
JPHC住民台帳の全数140,420人。質問票回収81%、採血35%、健診データ34%11
大迫市町村健診の適格者(農業者・自営業者・年金受給者・被扶養者の35歳以上)

端野・壮瞥は、追跡のしやすさで分母を選んでいる12。長期入院・臥床者を除外し、移動の少ない農業従事者地域から抽出した、と本文に書いてある。

これは隠されているわけではない。書いてある。問題は、この四つが同じ「地域住民を対象とした研究」として引かれることのほうである。

ただし「地域か名簿か」という二者択一の立て方も、正確ではない※訂正。住民全体を対象とする研究でも、実際には住民基本台帳などの名簿を抽出枠として使う。久山町もJPHCも「名簿ではない」のではなく、地域人口をよく覆う名簿を使っている。

問うべきはこうである。どの名簿が対象地域人口をどこまで覆い、誰を取りこぼし、その後どこまで追跡できるか。

分母を決めることは、誰を数えないかを決めることだった。

このレビューの検索範囲には、本土の同じ設計が無かった

では、人口を分母にして受診を悉皆で数える設計——沖縄の離島でやられたもの13——は、本土に移せたのか。

公開時の本文は「一度も行われていない」「移せていない」と書いた。証明できない※訂正。以下のレビューは18研究を対象としたもので、日本語文献や地域資料を完全に捕捉したとは限らない。書ける範囲は、このレビューの検索範囲では同じ基準を満たす本土の地域研究が確認されなかった、である。

受療行動の系統的レビューが、それを裏づけている14。1,763文献から18文献が適格とされ、そのうち日本発は4本。与那国島、伊平屋島、そして全国調査2本。——本土の特定地域の住民を分母にした研究は、含まれていない。

理由は、たぶん自明である。離島では、分母が地理で決まりやすい。住民票にいる人がそのまま診療所の対象人口に近くなる。

(ただし「人が他所へ漏れない」も言いすぎである※訂正。同じ研究が島外医療機関への紹介を2,045件記録している。正確には一次医療の受診が島内の診療所に集中していた、である。)本土の診療所では、自分の分母が誰なのかを決めにくい。

離島研究を主導した研究者自身が、その後どうしたかも見える15。政令市へ移り、設計はレセプトデータベース研究に変わっている。分母は75歳以上の登録住民、数えているのは受診件数ではなく利用した人数、データ源は当該地域の診療所ではなく保険レセプト全体である。

同じ研究者が、同じ問いを、違う道具で追っている。

そして、単位が揃っていないまま統合されている

ここが、この記事でいちばん書きたかったところである。

沖縄の離島研究が出した数値は「360.0 visits per 1000 inhabitants per month」——受診件数である。

先の系統的レビューの表1の列見出しは、こうなっている14。

Estimated number of people per 1000 inhabitants

人数である。

日誌調査による人数と、診療記録による件数が、同じ単位を持つ量としてプールされ※訂正、「日本では1か月あたり人口1000人に対して347人が診療所を受診し」という統合値が出ている。反復受診を含む360 visits/1,000人月は、360人/1,000人月ではない。

査読を通った系統的レビューで、単位が揃わないまま数値が足されている。

これは著者を責める話ではないと思う。元の数値がそう書かれていなかったわけでもない。Kaneko らは “visits” と明記している。それでも、束ねる段階で消えた。

前のシリーズで、バーンアウトの有病割合が0%から80.5%まで散らばり、メタ解析が断念された話を書いた。あれは定義が142通りあったからだった。こちらは、もっと手前である。単位が二種類あった。

大迫が残したものと、残さなかったもの

最後に、この列の目的に直接関わることを書いておく。

大迫研究が40年続いた理由を、今井潤自身が書いている16。

The movement of people in Ohasama Town was small. The Ohasama Prefectural Hospital was the sole medical institute in this area. Young and active public health nurses and the highly conscious local administration of Ohasama encouraged us.

公式サイトの記述が、運用の実際を示している17。

健康づくりフロンティア事業は現在花巻市が行っている健康増進事業であり、大迫研究はその事業の参加者のうち、研究参加の同意を得られた方を対象に実施しています お住いの地区の該当年になりましたら、花巻市よりご案内チラシを全戸配布いたします

研究が住民に届いたのは、市が全戸に案内を配ったからである。

1999年には、遺伝子解析をめぐる報道で研究が止まりかけている。同意書に「遺伝子」の語が無かった。それを救ったのは住民だった16。

Many residents of Ohasama told reporters, “We acknowledge the researchers of the Ohasama Study since they are supporting our health.”

そして、ここが辛いところだと思う。

大迫が生んだ137/84は、世界初の予後基準として国際的なデータベースに組み込まれ、家庭血圧を診察室血圧より優先するという日本のガイドラインの方針を支えた。閾値は波及した。

波及しなかったのは、その閾値を生んだ運用構造のほうである。——市が全戸に案内を配り、保健師が回り、成果を住民に返し続ける、という仕組み。それは大迫に残ったまま、どこにも複製されていない。

この列にとって

三つ書いておきたい。

第一に、「地域を分母にする」は、既に何度も試みられている。日本は世界初の家庭血圧基準を一つの町から出した。問題は前例が無いことではない。前例が引き継がれないことである。

第二に、分母を作る作業は、制度の名簿を借りることとほとんど同義になっている※訂正。市町村健診、特定健診、国保、後期高齢者医療。

ただし「そのどれもが、被用者保険の本人と40歳未満を落とす」は事実と合わない。特定健診は被用者本人も対象であり、対象年齢は40〜74歳だがレセプトは40歳未満も含む。市町村KDBと全国NDBでは対象範囲が違い、後期高齢者医療制度が若年者を含まないのは取りこぼしではなく制度上の対象定義である。

正確にはこうである。地域の健康状態は、一つの完全な母集団から測られているのではない。住民台帳、保険者、健診参加者、医療機関受診者という、異なる抽出枠を通して観測されている。そして本稿で比べた中では、久山町が非参加者のところまで行っていた。

第三に、波及させる前に、単位を揃えなければならない。受診件数と受診者数が同じ量としてプールされるなら、データを増やしても足し算にならない。

必要なのは「地域」というラベルではない。対象人口、抽出枠、非参加、保険の移動、そして観測の単位が人なのか受診なのかを、明示することである。「まず各地で測る」ではなく、「まず何をどう測るかを決めて、それから各地で測る」。


では、それは決められるのか。誰かが決めた前例はあるのか。

この列で、それを調べる。

訂正 CORRECTIONS

公開後に直したこと。本文は直したうえで、何をどう変えたかをここに残している。本文中の※ が、直した箇所を指す。

  1. 撤回大迫研究の異なるコホートを混ぜ、137/84の研究集団として1,622人を使っていた2026-09-01 · ohasama-1622137/84を報告した1997年論文の対象は40歳以上の地域住民1,913人である。1,622人のほうは、後年の慢性腎臓病研究が記述した別の1997年健診コホートである。二つを同じ研究の分母として並べていた。「世界の診断閾値を生んだ研究の分母は全人口の22.2%だった」という記述は成立しないため撤回した。137/84研究について対象人口から解析対象者までの段階を原論文から再構成できていないので、その割合は出さないこととし、記事の説明文からも削除した。
  2. 訂正全年齢人口を分母にした22.2%を参加率のように扱っていた2026-09-01 · bunbo-dankai7,318人には研究対象外の子どもも35歳未満の住民も含まれる。1,622÷7,318は「全町人口に占める標本の割合」であって、適格住民の参加率でも被用者が除外された割合でもない。記事自身が批判している母数の混同を、比較表で起こしていた。分母を「地域の全人口/対象年齢人口/抽出枠に載った人口/調査適格者/参加者/最終解析対象者」の段階に分けて示し直し、適格者を分母にした場合の受診67.3%・同意59.7%も併記した。
  3. 訂正「日中不在=被用者」という推測を事実のように書いていた2026-09-01 · hiruma原資料が示しているのは「研究者や保健師の勤務時間に在宅していなかった」という事実までである。就労による不在は有力な説明だが断定はできない。「日中就労者を選択的に取りこぼした可能性がある」に改めた。またこの訪問調査は1988〜95年のもので、同じ節で扱った1997年の健診コホートとは別の選択過程であるため、一本の線としてつながないよう注記した。
  4. 訂正「特定健診は被用者本人を落とす」「最も働いている世代が最も測られていない」を撤回した2026-09-01 · tokutei特定健診は被用者保険を含む各医療保険者が実施する制度であり、被用者本人は制度から除外されていない。健保組合・共済組合の実施率はおおむね75%、被保険者本人では80%を超えると報告されている。問題は「被用者が消える」ことではなく、「保険者ごとにデータが分断されており、市町村国保ではとくに若い年齢層の受診率が低い」ことである。
  5. 追記市町村KDBだけでなく全国NDBの存在を補った2026-09-01 · ndb全国レベルには保険者をまたいでレセプトと特定健診情報を収録するNDBがある。市町村KDBは国保・後期高齢者を中心に扱い、NDBは全国・保険者横断だが地域研究としての利用や個人の追跡には別の制約がある、という区別を明記した。「被用者保険の情報がどこにも無い」のではなく「地域を単位に、保険者をまたいで一人を追える仕組みが無い」である。あわせてKDBの普及率が2014年時点の値であることも明示した。
  6. 訂正「地域か名簿か」という二者択一の立て方を改めた2026-09-01 · meibo住民全体を対象とする研究でも、実際には住民基本台帳などの名簿を抽出枠として使う。久山町もJPHCも「名簿ではない」のではなく、地域人口をよく覆う名簿を使っている。「どの名簿が対象地域人口をどこまで覆い、誰を取りこぼし、その後どこまで追跡できるか」という問いに置き換えた。
  7. 訂正「久山町だけが違う設計をしていた」という普遍的な断定を限定した2026-09-01 · hisayama住民台帳を起点とする地域コホートはほかにもある(JPHCなど)。久山町の特徴は住民名簿を使ったこと自体より、健診の非参加者を自宅・病院・施設まで追跡した点にある。「本稿で比較した事例のなかでは、久山町研究が非参加者への追跡を最も徹底していた」に限定し、節見出しも改めた。
  8. 訂正「沖縄の設計は本土で一度も行われていない」を検索範囲の話に限定した2026-09-01 · hondo引用したレビューは18研究を対象としたもので、日本語文献や地域資料を完全に捕捉したとは限らない。「このレビューの検索範囲では、同じ基準を満たす本土の地域研究は確認されなかった」に限定し、節見出しも改めた。あわせて「離島では人が他所へ漏れない」も、同じ研究が島外医療機関への紹介を2,045件記録しているため、「一次医療の受診が島内の診療所に集中していた」に改めた。
  9. 訂正単位の不一致についての記述を統計処理として正確にした2026-09-01 · tanni「同じフォレストプロットに並び」より「同じ単位を持つ量としてプールされ」が正確である。あわせて、反復受診を含む360 visits/1,000人月は360人/1,000人月ではない、という対比を明示した。
  10. 訂正「そのどれもが被用者保険の本人と40歳未満を落とす」を撤回した2026-09-01 · ketsuron特定健診は被用者本人も対象であり、対象年齢は40〜74歳だがレセプトは40歳未満も含む。市町村KDBと全国NDBでは対象範囲が違い、後期高齢者医療制度が若年者を含まないのは取りこぼしではなく制度上の対象定義である。結論を「地域の健康状態は、一つの完全な母集団から測られているのではない。住民台帳、保険者、健診参加者、医療機関受診者という異なる抽出枠を通して観測されている。必要なのは『地域』というラベルではなく、対象人口、抽出枠、非参加、保険の移動、そして観測の単位が人なのか受診なのかを明示することである」に組み替えた。

出典 SOURCES

  1. 1Proposal of reference values for home blood pressure measurement: prognostic criteria based on a prospective observation of the general population in Ohasama, JapanAmerican Journal of Hypertension 10(4 Pt 1):409-418 (Tsuji I, Imai Y, Nagai K, Ohkubo T, et al.; 東北大学医学部公衆衛生学教室) · 1997 · accessed 2026-08-20裏付けた主張: 大迫研究。40歳以上の地域住民1,913名の家庭血圧を測定し平均5.0年追跡、141死亡から基準値を導いた。「Based on this relation, we propose that the reference value for hypertension is 137/84 mm Hg」。導出の位置づけを原著自身がこう述べる——「All previous studies proposing reference values for home BP measurement, derived from cross-sectional observations, were based on the statistical distribution of home BP values. The reference value must, however, be the one that best predicts the risk for morbidity and mortality from hypertension-related complications. This is the first report proposing reference values for home BP measurement based on prognostic criteria」。すなわち「分布から引いた従来の基準値」と「予後から引いた基準値」の区別を明示している。なお137/84はこの集団で80パーセンタイル・87パーセンタイルに相当する。家庭血圧の予測力は随時血圧より強かった
  2. 2N-Terminal Pro-B-Type Natriuretic Peptide Is a Predictor of Chronic Kidney Disease in an Asian General Population ― The Ohasama Study ―Circulation Reports 2(1):24-32 (Nakayama S, Satoh M, Metoki H, Murakami T, et al.) · 2020 · accessed 2026-08-21裏付けた主張: 大迫研究の分母の構造を、町の全人口から追える唯一の記述。「Farmers, self-employed individuals, pensioners, and dependants aged ≥35 years are eligible for annual health check-ups in Japan. The total population of Ohasama in 1997 was 7,318, and 2,719 individuals aged ≥35 years were eligible for annual health check-ups. Of these, 1,831 individuals participated in check-ups that year, and 1,622 individuals provided written informed consent to take part in the Ohasama study」。すなわち全人口7,318人に対し、市町村健診の適格者は2,719人(37.2%)、受診者は1,831人、研究同意者は1,622人であり、全人口に占める割合は22.2%となる(この割合は本稿の計算)。適格者の定義が「農業者・自営業者・年金受給者・被扶養者の35歳以上」であることは、被用者保険の本人が構造的に対象外であることを意味する
  3. 3Age-Related Trends in Home Blood Pressure, Home Pulse Rate, and Day-to-Day Blood Pressure and Pulse Rate Variability Based on Longitudinal Cohort Data: The Ohasama StudyJournal of the American Heart Association 8(15) (Satoh M, Metoki H, Asayama K, Murakami T, et al.) · 2019 · accessed 2026-08-21裏付けた主張: ベースライン調査の参加率を、除外理由つきで示した記述。「We contacted all 4969 residents aged ≥35 years in Ohasama between 1988 and 1995. Residents were ineligible if they were not at home during working hours of study investigators or nurses (n = 1057) or if they were hospitalized (n = 166) or incapacitated (n = 94). Of the remaining 3652 residents, 3090 (84.6%) participated at baseline」。すなわち適格者3,652人を分母とすれば84.6%だが、接触した35歳以上住民4,969人を分母とすれば62.2%になる(この割合は本稿の計算)。除外の最大の理由は「調査者や看護師の勤務時間内に在宅していなかった」ことであり、1,057人に及ぶ。日中に家にいない人——すなわち被用者——が最も多く落ちている
  4. 4高齢者の医療の確保に関する法律 第二十条、および特定健康診査及び特定保健指導の実施に関する基準 第一条・第十条平成十九年厚生労働省令第百五十七号(e-Gov 法令検索) · 2007 · accessed 2026-08-21裏付けた主張: 高齢者の医療の確保に関する法律第二十条は「保険者は…四十歳以上の加入者に対し、特定健康診査を行うものとする」と定める。実施基準第一条は対象を「当該年度の四月一日における加入者であって、当該年度において四十歳以上七十五歳以下の年齢に達するもの」と定義する。すなわち対象は住民ではなく、ある一日における保険者の加入者である。第十条は記録の保存について「…五年を経過するまでの期間又は加入者が他の保険者の加入者となった日の属する年度の翌年度の末日までの期間のうちいずれか短い期間、当該記録を保存しなければならない」と定めており、保険者が変われば記録の保存義務そのものが切れる。なお厚生労働省「国民健康保険保健事業の実施計画(データヘルス計画)策定の手引き」(令和5年5月18日改正)は、市町村国保全体の40歳代・50歳代の特定健康診査の実施率(令和2年度)をそれぞれ18.2%、22.8%とし、全体の実施率を33.7%としている
  5. 5国保データベース(KDB)システムについて厚生労働省(平成26年12月 市町村セミナー資料) · 2014 · accessed 2026-08-21裏付けた主張: 「『国保データベース(KDB)システム』とは、国保保険者や後期高齢者医療広域連合における保健事業の計画の作成や実施を支援するため、国保連合会が『健診・保健指導』、『医療』、『介護』の各種データを利活用して、①『統計情報』・②『個人の健康に関するデータ』を作成するシステム。(平成25年10月 稼働開始)」。平成26年12月時点の運用状況は市町村数1,742中1,305市町村(75%)。取扱範囲は国民健康保険医療情報、後期高齢者医療情報、特定健診・特定保健指導情報、後期高齢者健康診査情報、介護保険情報であり、被用者保険(協会けんぽ、組合健保等)の医療情報、妊婦健診・乳幼児健診・学校健康診断情報は範囲外である(厚生労働省保険局高齢者医療課 平成30年11月8日 資料4)。同資料は「健診、医療、介護情報とも対象は過去5年間分のデータのみ」とも記す。なお国民健康保険法の本則には匿名情報の第三者提供の規定がなく、研究利用は自治体との個別のデータ利用契約による。本稿は「KDBは研究利用できない」と明言した一次資料には到達していない
  6. 6Data Resource Profile of Shizuoka Kokuho Database (SKDB) Using Integrated Health- and Care-insurance Claims and Health Checkups: The Shizuoka StudyJournal of Epidemiology 32(8):391-400 (Nakatani E, Tabara Y, Sato Y, Tsuchiya A, Miyachi Y) · 2022 · accessed 2026-08-21裏付けた主張: 静岡県35市町の国民健康保険と後期高齢者医療の情報を統合したデータベース。「The initial subscriber list … included 4,499,614 KDBIDs. After applying the procedure for identifying unique IDs, 2,230,848 individuals … were included in the SKDB; 910,365 cases (40.8%) continuously subscribed to health insurance over the 6.5-year period」。すなわち6.5年間を通じて同じ保険に継続加入していたのは40.8%にとどまる。利点として「The SKDB allowed us to keep track of all subscribers, including individuals who did not use insurance to pay for medical care」を挙げ、また「Several studies have used the Kokuho Database of a single municipality and annual-linked data; however, the SKDB is the first prefecture-wide, longitudinal dataset」と記す
  7. 7高齢者の健診結果と死亡・要介護発生との関連——国保データベース(KDB)システムを活用した分析日本公衆衛生雑誌 70(1):16-26(栗田淳弘、中村好一) · 2023 · accessed 2026-08-21裏付けた主張: 栃木県全市町の後期高齢者医療制度の被保険者のうち、2020年度に健診を受診した75歳以上を対象とした研究。「解析の対象者は 53,651 人(男 24,909 人、女 28,742 人)となった。なお、栃木県の75歳以上人口である男108,609人、女160,951人(2021年1月1日住民基本台帳人口)に占める対象者の割合は、それぞれ22.9%、17.9%である」。すなわち住民基本台帳人口を分母に置くと、健診受診者は男性の22.9%、女性の17.9%にすぎない。追跡の打ち切りについて「死亡日は被保険者資格の喪失日と喪失事由から判断し…死亡以外の理由で後期高齢者医療の被保険者資格を喪失した者は資格喪失日で打ち切りとした」と記し、限界について「健診受診者のみを対象としていることから…1年生存率および1年自立率は、地域住民全体の値よりも高い結果となった可能性がある。この点はデータセット自体の制約であり回避できない」と明記する。なお第一著者の所属は栃木県国民健康保険団体連合会保健事業課である
  8. 8Epidemiological Studies on Cerebrovascular Diseases in Hisayama, Kyushu Island, Japan. Part IJapanese Heart Journal 5(1):12-36 (Katsuki S, Hirota Y, Akazome T, Takeya S, Omae T, Takano S) · 1964 · accessed 2026-08-21裏付けた主張: 久山町研究の原著。分母の作り方について「All the residents aged over 40 were collected by the original resident registration lists kept in the town office. The study was carried out from April to October, 1961 by collecting them in 8 public halls at each village in Hisayama and a small number of non-respondents to examinations were interviewed in their own homes and examined until November 1961」と記す。すなわち分母は町役場の住民登録原簿の40歳以上全数であり、未受診者は自宅を訪問している。参加は「The whole population aged over forty, which was subjected to the studies, was 1,841 at the time when they started. In this report we described the prevalence of abnormal cardiovascular findings revealed by cross-sectional study in 1,658 (90.1% of all subjects)」。剖検率は開始当初から高かったわけではなく、1961年11月から1963年4月までの18か月間は56死亡中17例(30.4%)である。なお「久山町は全国平均に近い」という説明の一次的な裏づけは、本論文の「the proportion of this group to the whole population was 27.6 per cent, which was practically equal to that of average of 28 per cent in Japan」という一文であり、同じ段落は職業構成を「About 33 per cent of the examined found its occupation in agriculture, 8 per cent in coal-mining」と記している。研究費については米国公衆衛生局の補助(NB-03642-1)が謝辞に記されている
  9. 9久山町研究日本生物学的精神医学会誌 34(1):38-40(小原知之、二宮利治) · 2023 · accessed 2026-08-21裏付けた主張: 久山町研究の現在の担い手による解説。測定の設計について「有病率調査において注意しなければならないことは、対象集団の選定方法(地域一般住民か病院受診者か)、抽出方法(悉皆調査か無作為抽出調査か)、研究対象者の参加率(または受診率)により調査結果およびその解釈が大きく異なることである」と述べる。そして落ちる人をどう拾っているかを明記する——「認知症者、またはその疑い者ほど会場調査を受診しない傾向があり、その多くが在宅、または入院・施設入所している。そこで、久山町では、会場調査だけでなく病院、施設、自宅を町の保健師と研究室の医師が一緒に訪問調査することにより、各調査において92%以上という高い受診率を維持している」。発症把握についても「認知症は…発症者の約3割は介護保険を申請していない。そのため…定期的な町の開業医、近隣の病院、および町の健康福祉課の訪問や健診未受診者や町外に転出した者に対する手紙や電話による調査を行うことにより、認知症の発症イベント情報を網羅的かつ正確に収集している」と記す
  10. 10Trends in the prevalence of type 2 diabetes and prediabetes in community-dwelling Japanese subjects: The Hisayama StudyJournal of Diabetes Investigation 5(2):162-169 (Mukai N, et al.) · 2014 · accessed 2026-08-21裏付けた主張: 久山町の受診率を分母の実数つきで示した記述。「of a total of 3,227 residents in 1988 aged 40–79 years based on the town registry, 2,587 (participation rate, 80.2%) consented … In 2002, of a total of 3,896 residents aged 40–79 years, 3,000 (participation rate, 77.0%) consented」。原文は town registry であり、住民基本台帳という制度名で書かれているわけではない。年齢調整した2型糖尿病の有病率は1988年から2002年にかけて男性14.6%から20.8%、女性9.1%から11.2%へ有意に上昇した
  11. 11Baseline Survey of JPHC Study: Design and Participation RateJournal of Epidemiology 11(6 Suppl):S24-S29 (Tsugane S, Sobue T) PMID 11763136 ※本稿では DOI を確認できなかった · 2001 · accessed 2026-08-21裏付けた主張: 多目的コホート研究(JPHC)のベースライン。「We set up 140,420 cohort subjects (68,722 men and 71,698 women) (61,595 in 1990 as Cohort I and 78,825 in 1993 as Cohort II) based on resident registry」「Among all cohort subjects, 113,461 (81%) … returned the questionnaire and 49,011 (35%) … provide their blood. The health check-up data were collected from 47,910 (34%)」。すなわち住民台帳の全数を分母に置いたうえで、質問票の回収81%、採血35%、健診データ34%という三重の目減りを引き受けている。なお同じ研究の設計論文(J Epidemiol 2001;11(6 Suppl):S3-S7)は本文で140,409人と記しており、同一シリーズ内で数値が一致しない
  12. 12北海道農村部における耐糖能異常の生命予後に及ぼす影響——端野・壮瞥研究(18年間の前向循環器疫学調査)から糖尿病 41(4):257-265(高木覚、斉藤重幸、島本和明) · 1998 · accessed 2026-08-21裏付けた主張: 端野・壮瞥研究の対象者選定を明記した記述。「札幌医科大学第二内科では1977年に北海道常呂郡端野町で、1978年より同有珠郡壮瞥町にて前向き循環器疾患疫学調査を開始した。両地区の調査開始時の総人口に占める40〜64歳の者の割合は、端野町が30.9%(1721名:男831名、女890名)、壮瞥町が32.3%(1438名:男706名、女732名)で、この中から長期入院、臥床の者を除外し、比較的移動の少ないと考えられる農業従事者地域から無作為的に抽出した、端野町996名(男475名、女521名、平均年齢51.1±6.3歳)壮瞥町1000名(男469名、女531名、平均年齢51.1±6.3歳)をコホートとして選定し調査対象とした」。すなわち分母は住民全体ではなく、追跡のしやすさを基準に絞り込まれている——長期入院・臥床者を除外し、移動の少ない農業従事者地域から抽出している
  13. 13Gatekeeping function of primary care physicians under Japan's free-access system: a prospective open cohort study involving 14 isolated islandsFamily Practice 36(4):452-459 (Kaneko M, Motomura K, Mori H, Ohta R, Matsuzawa H, Shimabukuro A, Matsushima M) · 2019 · accessed 2026-08-21裏付けた主張: 沖縄の離島14島の診療所を1年間追った前向きオープンコホート。「This study was a prospective, open cohort study involving 14 isolated islands (12 238 inhabitants) in Okinawa, Japan. … There were 54 741 visits to the islands' clinics with 2045 referrals to off-island medical facilities … The age- and sex-standardized incidences of healthcare use per 1000 inhabitants per month were: 360.0 (95% confidence interval: 359.9 to 360.1) visits to primary care clinics, 11.6 (11.0 to 12.2) referrals to off-island hospital-based outpatient clinics, 3.3 (2.8 to 5.2) visits to emergency departments and 4.2 (3.1 to 5.2) hospitalizations」。すなわち360.0は受診件数であって受診者数ではない。同じ設計の先行研究(Kaneko M, Matsushima M, Irving G. BMC Health Serv Res. 2017;17(1):37, doi:10.1186/s12913-017-1979-8)は伊平屋島の住民1,314人を分母とし「We used the population at the start of the study as the denominator for each proportion」と明記して360.4件を得ている
  14. 14住民の健康問題に対する受療行動:系統的レビューとメタアナリシス自治医科大学紀要 46:23-29(中村晃久、小谷和彦)※DOIなし · 2023 · accessed 2026-08-21裏付けた主張: 1000年から2019年11月までを対象に MEDLINE・CENTRAL・EMBASE とハンドサーチで1,763文献を検索し、18文献を適格とした系統的レビュー。「この18文献のうち4文献は日本から、残りの14文献は米国…から報告されていた」とし、その4文献は与那国島(Namiki 2018)、沖縄の離島である伊平屋島(Kaneko 2017)、および全国調査2本(Fukui 2005, 2017)である。すなわち本土の特定地域の住民を分母にした研究は含まれていない。ただし本稿にとって重要なのは統合の方法である。表1の列見出しは「Estimated number of people per 1000 inhabitants」すなわち人口千人あたりの人数であるが、Kaneko らの原著が報告しているのは per 1000 inhabitants per month の受診件数である。日誌調査による人数(Fukui)と診療記録による件数(Kaneko, Namiki)が同一のフォレストプロットに統合され、「日本では1か月あたり人口1000人に対して347人(95%CI: 220-474)が診療所を受診し」という値が算出されている。なお本レビューは英語データベース中心であり、日本語のみで紀要等に発表された研究は取りこぼしうる設計である
  15. 15Fragmentation of ambulatory care among older adults: an exhaustive database study in an ageing city in JapanBMJ Open 12(8):e061921 (Kaneko M, Shinoda S, et al.) · 2022 · accessed 2026-08-21裏付けた主張: 離島研究と同じ研究者による、政令市のレセプトデータベース(Yokohama Original Medical Database)を用いた研究。「YoMDB consists of health insurance claims of residents of the City of Yokohama」。同じ研究グループの関連研究(Geriatr Gerontol Int. 2022;22(6):483-489, doi:10.1111/ggi.14387)は「This study targeted all residents aged 75 years and older registered in a city in Japan for one year」として454,366人を対象とする。ただし離島研究とは三点が異なる——分母が75歳以上の登録住民であって全年齢の地域人口ではないこと、数えているのが一定期間に一度以上利用した人数であって受診件数ではないこと、データ源が保険レセプト全体であって当該地域内の診療所に限定されていないこと。すなわち同じ研究者が離島から都市へ移ったとき、設計は人口を分母にした悉皆観察からレセプトデータベース研究へ変わっている
  16. 16A personal history of research on hypertension: From an encounter with hypertension to the development of hypertension practice based on out-of-clinic blood pressure measurementsHypertension Research 45(11):1726-1742 (Imai Y) · 2022 · accessed 2026-08-21裏付けた主張: 大迫研究の創始者による回顧論文。発端について「In 1986, Dr. Kenichi Nagai, Director of Ohasama Prefectural Hospital, Ohasama, Iwate prefecture, who was my classmate at Tohoku University School of Medicine, asked me how to increase health awareness and preventive awareness regarding hypertension among Ohasama inhabitants」とし、オムロンから300台の半自動血圧計の提供を受けたことを記す。継続の条件について「At that time, Ohasama Town had a population of 8000 people. The movement of people in Ohasama Town was small. The Ohasama Prefectural Hospital was the sole medical institute in this area. Young and active public health nurses and the highly conscious local administration of Ohasama encouraged us」と述べる。危機についても記述がある——「The largest one was a 1999 press report by a major newspaper that reported that the Ohasama Study analyzed genes without permission from study participants. … We obtained informed consent from the residents after explaining that their remaining blood samples were stored for future research. However, the explanation sheets did not include the term『gene』. At that time, there were no official ethical guidelines for genetic research in Japan … Many residents of Ohasama told reporters,『We acknowledge the researchers of the Ohasama Study since they are supporting our health. We received an explanation of their genetic analysis』. Thus, the Ohasama Study was saved and continues to date」
  17. 17大迫研究(The Ohasama Study)公式サイト帝京大学医学部衛生学公衆衛生学講座ほか · 2026 · accessed 2026-08-21裏付けた主張: 「大迫(おおはさま)研究(The Ohasama Study)は、今井 潤 氏(東北大学名誉教授)を初代主任研究者として、1986年に開始された岩手県大迫町の一般住民を対象とした高血圧・循環器疾患に関する長期前向きコホート研究です」。対象者は「花巻市大迫町在住の20歳以上の全住民の方々 ※検査によって対象年齢が異なります」とされ、収集方法は「大迫町の大迫、内川目、外川目、亀ヶ森の4地区を、毎年度1地区ずつ巡回して実施します」。行政事業との関係について「健康づくりフロンティア事業は現在花巻市が行っている健康増進事業であり、大迫研究はその事業の参加者のうち、研究参加の同意を得られた方を対象に実施しています」「花巻市健康づくりフロンティア事業(旧・家庭血圧測定事業)は、1年ごとに大迫町内で地区を変えて実施しています。お住いの地区の該当年になりましたら、花巻市よりご案内チラシ(事業説明会の日時や場所等の詳細)を全戸配布いたします(4月頃)」と記す。人口については「本研究が開始された1986 年、大迫町の人口は 9,300名でしたが…現在は 5,000名程度です」とするが、今井潤自身の2016年講演記録は1985年8,053人、2022年の英文総説は約8,000人としており、一次資料間で食い違う。本稿では開始時点の正確な人口を確定できていない

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