測る道具の点検03 総合診療という領域/JAPAN
名前が無いものは、どう数えられているのか
指標監査の優先順位表で二位だった標榜科を点検した。医療法施行令第三条の二を全文検索すると、総合診療も家庭医療も老年科も一度も現れない。組み合わせ方式の四区分は部位・年齢性別・処置・疾患で、「総合」はそのどれでもないため、この生成規則からは名称を作れない。だが国は受け皿を用意していた——医師届出票の「42 全科」である。資格欄で総合診療専門医を選んだ1,046人がそこに何と書いたかを集計すると、内科612人に対し全科は29人だった。名前が無いのではない。専門医資格・院内部門・広告可能な診療科名・主たる診療科統計で、その名前の扱いが一致していない。
ダイジェスト解説 VIDEO
前回、受診回数という数字が「回」ではなく「日数」で、分母が人口ではなく被保険者だったことを見た。数える単位が思っていたものと違った、という話である。
今回は、その一つ手前を見る。数える単位そのものが、法令に存在しない場合。
指標監査の優先順位表で二位だったのは、標榜科(優先度24.0)だった。
標榜できるのは16科で、そこに総合診療科は無い
診療科名は自由に名乗れない。医療法第六条の六が、こう定めている1。
前条第三項第二号の規定による診療科名は、医業及び歯科医業につき政令で定める診療科名並びに…厚生労働大臣の許可を受けたものとする
その政令が、医療法施行令第三条の二である2。単独で標榜できるのは、内科・外科と、次の14。
精神科、アレルギー科、リウマチ科、小児科、皮膚科、泌尿器科、産婦人科、眼科、耳鼻いんこう科、リハビリテーション科、放射線科、病理診断科、臨床検査科又は救急科
この政令の全文を取得して数えた。
| 語 | 出現 |
|---|---|
| 総合診療 | 0 |
| 家庭医療 | 0 |
| 老年科 | 0 |
| 心療 | 1(組み合わせの事項として) |
| 睡眠障害 | 1(組み合わせの事項として) |
「心療内科」は、独立した診療科名ではない。「内科」と「心療」を組み合わせたものである。それは施行規則の側からも確かめられる——「外科」と「心療」の組み合わせが、不合理なものとして明示的に禁じられている3。科名であれば、こんな規定は要らない。
「総合」は、この組み合わせ方式からは生成できない
組み合わせられる「事項」は四区分ある2。
| 区分 | 中身 |
|---|---|
| (1) | 人体の部位・器官・臓器・組織またはその機能 |
| (2) | 年齢・性別(男性、女性、小児、老人…) |
| (3) | 処置・分野(整形、形成、美容、心療、透析、移植…) |
| (4) | 疾病・病態(感染症、腫瘍、糖尿病、アレルギー疾患、睡眠障害) |
そして異なる区分の事項どうししか組み合わせられない3。
「総合」は、このどれでもない。部位でも、年齢でも、処置でも、疾患でもない。
だから「総合内科」も標榜できない。
ただし公開時の本文は、これを「この方式に入り込む場所そのものが無い」「構造的に不可能」と書いた。法令全体については誤りである※訂正。四区分は、既存の診療科名と自動的に組み合わせられる名称の仕組みである。診療科名にはこのほかに、政令の単独科名に追加する経路と、医療法第六条の六に基づく個別の許可を受ける経路がある。実際、政府は「総合診療科を標榜可能な診療科名に追加する」ことを検討している。
正確に書けばこうなる。現行の包括的な組み合わせ方式からは、総合内科・総合外科という名称を自動的に生成できない。閉じているのは生成規則であって、制度全体ではない。
老年科は、単独の科名としては認められていない
同じ構造がもう一つある。医療広告ガイドラインが、認められない名称を例示している4。
「呼吸器科」、「循環器科」、「消化器科」、「女性科」、「老年科」、「化学療法科」、「疼痛緩和科」…は診療科名として認められない
単に列挙から漏れているのではない。名指しで挙げられている。(ただし「明示的に禁じられている」は範囲を限定しておく※訂正——これは通常の広告可能な診療科名として認められていないという意味であり、厚生労働省のQ&Aは、限定解除の要件を満たすウェブサイト等であれば表示しうるとも説明している。)
ところが「老年内科」「老年精神科」は許容例として示されている。「老年」は(2)の事項だからだ。
老年は、内科の形容詞としてなら存在できる。独立した科としては存在できない。
ただし「総合診療とまったく同じ形」ではない※訂正。この節自身が、二つの違いを書いている——老年は(2)の事項なので「老年内科」という組み合わせの経路がある。総合は単独科名にも組み合わせ事項にも入っていない。法的な位置づけが違う。
正確に書けばこうなる。どちらも単独の科名ではない。ただし老年には組み合わせによる表現の経路があり、総合には現行の生成規則の中に経路がない。
国は、受け皿を用意していた
ここまでは「無い」話である。だが、数える側は完全に諦めていたわけではなかった。
三師統計(医師・歯科医師・薬剤師統計)の主たる診療科は43分類で、総合診療科は無い5。理由も書いてある。
本統計における診療科名は、医療法において広告が認められている診療科名である。
分類が標榜科に従っているから、法令に無いものは統計にも無い。
だが、43番目の分類の一つ前に、こういう欄がある。医師届出票の記入要領を読むと6——
Ⅳ「42 全科」 診療科を限定することなく総合的に診療を行う者。総合診療に従事する者。
「総合診療に従事する者」と、はっきり書いてある。標榜科の枠内で用意できる、唯一の受け皿である。
その受け皿に入ったのは、2.8%だった
医師届出票には専門医資格の欄もあり、その19番が総合診療専門医である6。つまり「総合診療専門医であり、かつ主たる診療科を何と届け出たか」が集計できる。
第37表を取得して数えた7。医療施設に従事し、資格欄で総合診療専門医を選択した医師は1,046人である。
ここで一つ、本文に書いておくべきことがある※追記。この1,046人は届出票上の自己申告値であり、日本専門医機構が公表する認定者数937人(2025年11月現在)とは一致しない。届出全体では1,073人で、後の時点の認定者数のほうが少ないため、単純な時点差では説明できない。この乖離を説明した一次資料に、私は到達できなかった。以下の割合は、この自己申告値を分母にしている。
| 主たる診療科 | 人数 | |
|---|---|---|
| 内科 | 612 | 58.5% |
| その他 | 117 | 11.2% |
| 循環器内科 | 67 | 6.4% |
| 消化器内科 | 49 | 4.7% |
| 全科(制度が用意した受け皿) | 29 | 2.8% |
「総合診療に従事する者はここへ」と国が定めた欄を選んだのは、1,046人中29人。過半数は内科と届け出ている。
ただし公開時の本文は、ここから「受け皿は用意されたが、使う動機が用意されていなかった」と結論した。断定しすぎである※訂正。「専門医資格」と「主たる診療科」は別の変数である。総合診療専門医が、実際の勤務部署を内科として届け出ることは、制度上も実務上も不自然ではない。
この2.8%が示しているのは、総合診療専門医資格を申告した医師のうち、主たる診療科を「全科」と申告した割合までである。「国が用意した受け皿の利用率」や「使う動機がなかった証拠」と読むには、届出者への調査が要る。(また届出票には「43 その他」もあるので、「全科」が唯一の受け皿とも限らない。総合診療を明記した唯一の選択肢なら成立する。)
以下は仮説として書く。外来で「何科ですか」と訊かれて「全科です」と答えるのは実務として通りにくいかもしれない。看板に書けない名前を届出票にだけ書く理由は薄いかもしれない。それを確かめる材料を、私は持っていない。
(なお「全科」と届け出た医師は全体で241人、医療施設従事医師331,092人の0.07%である6。)
2026年、国が自分でそう書いた
そして今年、この記事でいちばん強い文書が出た。
2026年4月、特定機能病院が有すべき診療科の要件が改正された8。従来の16診療科に加えて、こう定められた。
リハビリテーションを行う診療科、病理診断を行う診療科、臨床検査を行う診療科、形成外科を行う診療科及び総合的な診療を行う診療科を有するものとする
四つは対応する診療科名がある。リハビリテーション科、病理診断科、臨床検査科、形成外科。総合診療だけが「総合的な診療を行う診療科」という迂回した書き方になっている。
理由が、同時に出た局長通知に書いてある9。
なお、リハビリテーション科、病理診断科、臨床検査科、形成外科については、医療法第6条の6第1項に規定する診療科名に含まれているがそれらの標榜の必要はないこと。また、総合的な診療を行う診療科については、医療法第6条の6第1項に規定する診療科名には含まれていないことに留意すること。
厚生労働省自身が、総合診療は標榜可能な診療科名ではないと通知に明記した。
政策文書は「総合診療科」と書いていた
そして、その手前の文書を見ると、語が置き換わっている。
制度改正のもとになった検討会のとりまとめ(2025年6月)は、こう書いている9。
病理診断科、臨床検査科及び総合診療科の設置
とりまとめでは「総合診療科」と書けた。省令になる段階でその語が使われず、通知で「診療科名には含まれていない」と注記された。
ただし公開時の本文は、これを「政策の意思が法令の語彙に阻まれた」と読んだ。資料からはそこまで言えない※訂正。特定機能病院に総合診療の機能を持たせることと、総合診療科を広告可能な名称に追加することは、別の政策案件である。省令が機能ベースの表現を選んだことは確認できるが、意思が阻まれたのかどうかは分からない。
書ける範囲はこうである。とりまとめの通称的な「総合診療科」が、法令では標榜科と誤認されない機能ベースの表現に置き換えられた。
同時に改正されたもう一つの条文も、同じことを示している。特定機能病院に置くべき専門医を14領域から19領域へ広げた規定である8。
…麻酔科又は総合診療の専門の医師でなければならない
他は全部「〜科」なのに、総合診療にだけ「科」が付かない。
同じ条文の下で、進み方がまったく違う
標榜科名を審議するのは、医道審議会医道分科会診療科名標榜部会である。その根拠は医道審議会令だが、同令はこの部会を名指ししていない10。
審議会及び分科会は、その定めるところにより、部会を置くことができる
開催の義務も、頻度の定めも無い。
開催記録はこうなっている11。
| 回 | 日付 | 議題 |
|---|---|---|
| 第4回 | 2007-12-07 | 総合科・総合医について |
| 第5回 | 2008-02-13 | 総合科・総合医について |
| 17年7か月の空白 | ||
| 第6回 | 2025-09-04 | 睡眠障害/(報告)総合診療科 |
| 第7回 | 2026-01-15 | 睡眠障害について |
| 第8回 | 2026-03-06 | 睡眠障害の標榜について |
第5回の閉会の場面を、議事録で読んだ12。
○保健医療技術調整官 次回以降の日程については現在調整中でございますので、日時が確定いたしましたら改めてまたご連絡を差し上げます。
「調整中」の次が、17年7か月後だった。
そして再開後の第6回で、総合診療科は議題ですらなく「その他」の報告事項だった。第7回・第8回の資料には、総合診療という語が現れない11。
一方、睡眠障害は13か月で政令になった。学会の要望から、部会3回を経て、令和八年政令第百八十六号として2026年6月1日に施行されている2。
同じ制度の対象である。ただし同じスタート地点ではない※訂正。睡眠障害には日本睡眠学会から関係学会の賛同を得た正式な要望があった。一方、総合診療科は2025年時点で厚生労働省が関連団体に検討を依頼している段階だった。2026年の医療部会でも「正式な手順にのっとって申請された場合」に審査すると述べられている。正式な要望まで進んだ時期と主体が違う。(節見出しも公開時は「速度が19年違う」としていたが、比べているのは17年7か月の空白と13か月であって、19年ではない。)
(数のほうも見ておく。総合診療専門医の認定者は937名である。専攻医の採用は2025年度300人・全19領域の3.07%だったのが、2026年度は282人・2.82%と実数も割合も下がっている13。
公開時の本文はここに「うち44.7%(559名)は移行措置による認定である」と書いていた。削除する※撤回。559÷937は約59.7%であり、44.7%と整合しない。引用元の概報に937人はあるが、559人・44.7%という対応する数値を確認できなかった。出典と分母を再確認できるまで、この数字は使わない。
もう一点※訂正。機構の概報が「学会がないため、会員数は0人」と記しているのは、この専門医制度が特定の基幹学会ではなく日本専門医機構自身によって運営されているという意味である。総合診療に関連学会が存在しないという意味ではない——日本プライマリ・ケア連合学会も日本病院総合診療医学会も存在する。また機構自身が専門医名簿を作成し、都道府県別の勤務先も公表している。正確には——総合診療専門医制度には、他領域のような単一の基幹学会とその会員数がない。「代替の把握経路も無い」は誤りだった。)
期限はあった。そして年限だけが消えた
「令和7年に結論」という期限は実在した。閣議決定が二本ある。
規制改革実施計画(2024年6月21日)14——
標榜可能な診療科名に総合診療科を追加することについて、検討し、結論を得る。【実施時期】令和6年度検討開始・令和7年結論
地方からの提案等に関する対応方針(2024年12月24日)15——
総合診療科を追加することについて検討し、令和7年中に結論を得る
そして翌年の同じ文書(2025年12月23日)16。
総合診療科を追加することについては、…検討し、結論を得る
「令和7年中に」が落ちている。
ただし「削除された」と書くのは正確ではない。規制改革実施計画は毎年その年の新規事項を掲げる構造なので、再掲されないことは削除を意味しない。当該事項はフォローアップ対象として「検討中」の評価が続いている16。
(なお骨太の方針2023年から2026年までの4本には、「総合診療」「診療科名」「標榜」がいずれも0件である。閣議決定の本体には、この論点が一度も出てこない。)
特定機能病院の承認要件では、数える単位が変わった
最後に、一つ見落としていたことを書いておく。
この記事を書き始めたとき、私は「標榜できないから統計に載らず、載らないから分布も定着率も分からない」と考えていた。半分は正しく、半分は違った。
主たる診療科としては載らない。だが専門医資格としては載り、二次医療圏や市区町村まで追える。——だから1,046人中29人という数字が出せた。
そして2026年に、数える単位が切り替わった場所がある※訂正。特定機能病院の新基準は、標榜科ではなく「専門医基本領域(医科)に含まれる診療科及び歯科のすべて」になった8。厚生労働省の資料は「実質的に診療を担う部門が存在すればよい」としている。
ただしこれは特定機能病院の承認要件についてであって、全国統計の数え方ではない。三師統計の主たる診療科の分類は変わっていない。公開時の見出しは「国は、数える単位のほうを変えた」だったが、特定機能病院の承認要件では、標榜科だけを見る方式から、専門医基本領域に対応する診療機能を見る方式へ広がった、が正確である。
かつては違った。同じ制度の歴史を説明する資料に、こうある9。
①総合的な診療能力を担保するため16診療科の標榜を必須化
標榜科の数が、総合的な診療能力の代理指標だった。そしてその代理指標は、総合診療そのものを表現できない。だから単位のほうが動いた。
この列にとって
三つ書いておきたい。
第一に、これは「名前が無い」ではなく「名前の扱いが分類ごとに一致していない」である※訂正。
(公開時は「測る名前が無い」と書いた。だが総合診療という名前は、専門医の基本領域としても、届出票の資格欄としても、特定機能病院の要件としても存在する。無いのは、標榜科の組み合わせ生成規則の中の位置である。)
専門医資格、院内の部門、広告可能な診療科名、主たる診療科の統計——この四つで、総合診療という名前の扱いが一致していない。そのずれによって、総合診療医が実際にどう働いているかが統計から見えにくくなっている。
第二に、同じ人々が、資格の分類では一群になり、診療科の分類では分散する※訂正。資格欄で総合診療専門医を選んだ1,046人のうち、主たる診療科を「全科」としたのは29人で、過半数は内科である。これは制度の失敗の証拠ではなく、分類どうしがずれているという測定上の所見である。なぜ分散するのかを説明するには、届出者に訊く必要がある。
第三に、国が語彙の不足を認めた文書が、初めて残った。「総合的な診療を行う診療科については、医療法第6条の6第1項に規定する診療科名には含まれていない」——これは批判ではなく、行政自身の注記である。とりまとめで「総合診療科」と書けたものが省令で書けなかった、という事実も一緒に残っている。
分類のずれを埋めるために、少なくとも特定機能病院の要件では、数える単位が動き始めている。それが標榜科に戻ってくるのか、専門医基本領域のまま定着するのかは、まだ分からない。
一つ、確信の持てないことを書いておく。
令和7年中に結論が出たのかどうか、私は確かめられなかった。標榜部会の全8回の資料と議事録、規制改革のフォローアップ資料に記載が無い——というのは「不在の確認」であって、「出なかったことの確認」ではない。学術団体への照会という形で、公開されない場で処理されている可能性は残る。
書けるのは、公開された文書に結論が現れていない、というところまでである。
訂正 CORRECTIONS
公開後に直したこと。本文は直したうえで、何をどう変えたかをここに残している。本文中の※ が、直した箇所を指す。
- 訂正「総合は構造的に入り込めない」を法令全体についての主張として書いていた2026-09-01 · kouzou四区分は既存の診療科名と自動的に組み合わせられる名称の仕組みであり、診療科名にはこのほかに政令の単独科名に追加する経路と、医療法第六条の六に基づく個別の許可を受ける経路がある。実際、政府は総合診療科を標榜可能な診療科名に追加することを検討している。「現行の包括的な組み合わせ方式からは、総合内科・総合外科という名称を自動的に生成できない」に改めた。閉じているのは生成規則であって制度全体ではない。あわせて記事の中心命題も「測る名前が無い」から「専門医資格・院内部門・広告可能な診療科名・主たる診療科統計で、その名前の扱いが一致していない」に組み替え、節見出しと説明文も修正した。
- 訂正老年科と総合診療を「まったく同じ形」としていた2026-09-01 · rounenこの節自身が二つの違いを書いていた。老年は組み合わせ事項(2)に含まれるため「老年内科」という表現の経路がある。総合は単独科名にも組み合わせ事項にも入っていない。法的な位置づけが異なる。「どちらも単独の科名ではない。ただし老年には組み合わせによる表現の経路があり、総合には現行の生成規則の中に経路がない」に改めた。また「明示的に禁じられている」も、通常の広告可能な診療科名として認められていないという意味に範囲を限定した(厚生労働省のQ&Aは限定解除の要件を満たすウェブサイト等であれば表示しうるとも説明している)。
- 訂正1,046人中29人から「受け皿が使われなかった」と断定していた2026-09-01 · ukezara「専門医資格」と「主たる診療科」は別の変数である。総合診療専門医が実際の勤務部署を内科として届け出ることは制度上も実務上も不自然ではない。この2.8%が示すのは「総合診療専門医資格を申告した医師のうち、主たる診療科を全科と申告した割合」までであり、「国が用意した受け皿の利用率」や「使う動機がなかった証拠」と読むには届出者への調査が要る。また届出票には「43 その他」もあるため「全科」が唯一の受け皿とも限らない(総合診療を明記した唯一の選択肢なら成立する)。看板や患者説明についての記述も仮説として明示した。結論も「同じ人々が資格の分類では一群になり、診療科の分類では分散する。これは制度の失敗の証拠ではなく、分類どうしがずれているという測定上の所見である」に改めた。
- 追記1,046人と937人の不一致を本文に明記した2026-09-01 · 1046-9371,046人は医師届出票上の自己申告値であり、日本専門医機構が公表する認定者数937人(2025年11月現在)とは一致しない。届出全体では1,073人で、後の時点の認定者数のほうが少ないため単純な時点差では説明できない。この乖離を説明した一次資料には到達できていない。中央の2.8%という数字に関わるため、frontmatterだけでなく本文にも明記し、「総合診療専門医1,046人」ではなく「資格欄で総合診療専門医を選択した1,046人」と書き改めた。
- 撤回「937名のうち44.7%(559名)は移行措置」を削除した2026-09-01 · 447559÷937は約59.7%であり、44.7%と整合しない。引用元の概報に937人はあるが、559人・44.7%という対応する数値を確認できなかった。出典と分母を再確認できるまでこの数字は使わないこととし、本文から削除した。
- 訂正「総合診療には学会が無い」「代替の把握経路も無い」を訂正した2026-09-01 · gakkai機構の概報が「学会がないため、会員数は0人」と記しているのは、この専門医制度が特定の基幹学会ではなく日本専門医機構自身によって運営されているという意味であり、総合診療に関連学会が存在しないという意味ではない。日本プライマリ・ケア連合学会も日本病院総合診療医学会も存在する。また機構自身が専門医名簿を作成し都道府県別の勤務先も公表しているため、「代替の把握経路も無い」は誤りだった。「総合診療専門医制度には、他領域のような単一の基幹学会とその会員数がない」に改めた。
- 訂正特定機能病院の文書から「政策の意思が法令の語彙に阻まれた」と推定していた2026-09-01 · tokutei-kinou特定機能病院に総合診療の機能を持たせることと、総合診療科を広告可能な名称に追加することは別の政策案件である。省令が機能ベースの表現を選んだことは確認できるが、意思が阻まれたのかどうかは資料からは分からない。「とりまとめの通称的な『総合診療科』が、法令では標榜科と誤認されない機能ベースの表現に置き換えられた」に改めた。
- 訂正「国は数える単位のほうを変えた」を特定機能病院の承認要件に限定した2026-09-01 · kazoeru-tani変わったのは全国統計の数え方ではなく特定機能病院の承認要件である。三師統計の主たる診療科の分類は変わっていない。「特定機能病院の承認要件では、標榜科だけを見る方式から、専門医基本領域に対応する診療機能を見る方式へ広がった」に改め、節見出しと末尾の一文も同様に修正した。
- 訂正睡眠障害との速度比較を「同じ条文、同じ手続き」として並べていた2026-09-01 · suimin睡眠障害には日本睡眠学会から関係学会の賛同を得た正式な要望があった。一方、総合診療科は2025年時点で厚生労働省が関連団体に検討を依頼している段階であり、2026年の医療部会でも「正式な手順にのっとって申請された場合」に審査すると述べられている。同じ制度の対象だが、正式な要望まで進んだ時期と主体が異なる。また節見出しの「速度が19年違う」も、比べているのは17年7か月の空白と13か月であって19年ではないため改めた。
出典 SOURCES
- 1医療法 第六条の五第三項、第六条の六昭和二十三年法律第二百五号(e-Gov 法令検索) · 2026 · accessed 2026-08-21裏付けた主張: 第六条の五第三項が広告できる事項を限定列挙し、その第二号が「診療科名」である。第六条の六は「前条第三項第二号の規定による診療科名は、医業及び歯科医業につき政令で定める診療科名並びに当該診療科名以外の診療科名であつて当該診療に従事する医師又は歯科医師が厚生労働大臣の許可を受けたものとする」と定め、第二項で「厚生労働大臣は、前項の政令の制定又は改廃の立案をしようとするときは、医学医術に関する学術団体及び医道審議会の意見を聴かなければならない」とする。すなわち診療科名は政令で列挙されたものに限られ、その改廃には学術団体と医道審議会への諮問が必要である
- 2医療法施行令 第三条の二(広告をすることができる診療科名)昭和二十三年政令第三百二十六号(e-Gov 法令検索、令和8年6月1日施行版) · 2026 · accessed 2026-08-21裏付けた主張: 医業について単独で標榜できる診療科名を列挙する。内科、外科、そして「精神科、アレルギー科、リウマチ科、小児科、皮膚科、泌尿器科、産婦人科、眼科、耳鼻いんこう科、リハビリテーション科、放射線科、病理診断科、臨床検査科又は救急科」の計16である(第二項により産婦人科は産科または婦人科に、放射線科は放射線診断科または放射線治療科に代えられる。麻酔科は医療法第六条の六第一項の厚生労働大臣の許可による)。内科・外科と組み合わせられる事項は四区分で、(1)人体の部位・器官・臓器・組織またはその機能、(2)「男性、女性、小児若しくは老人」など性別や年齢を示す名称、(3)「整形、形成、美容、心療、薬物療法、透析、移植、光学医療、生殖医療若しくは疼痛緩和」など分野や医学的処置、(4)「感染症、腫瘍、糖尿病、アレルギー疾患若しくは睡眠障害」など疾病または病態である。本稿が e-Gov 法令API で全文を取得して数えたところ、この政令に「総合診療」「家庭医療」「老年科」はいずれも0件であった。「心療」は(3)の事項として1件、「睡眠障害」は(4)の事項として1件現れる。すなわち心療内科は独立の診療科名ではなく「内科」と「心療」の組み合わせである。最終改正は令和八年政令第百八十六号(公布2026年5月29日、施行2026年6月1日)で、(4)に「睡眠障害」が追加された
- 3医療法施行規則 第一条の九の二の二、第一条の九の三、第一条の九の四昭和二十三年厚生省令第五十号(e-Gov 法令検索) · 2026 · accessed 2026-08-21裏付けた主張: 組み合わせの規則を定める。第一条の九の二の二は「当該事項又は当該事項のうち異なる複数の区分に属する事項とを組み合わせることができる。この場合において、同一の区分に属する事項同士を組み合わせることはできない」とする。第一条の九の三は各区分の中身を確定し、部位等は「頭部、頸部、気管、気管支、肺、食道、胃腸、十二指腸、小腸、大腸、肝臓、胆のう、膵臓、心臓、脳又は脂質代謝」、年齢・性別は「周産期、新生児、児童、思春期、老年又は高齢者」、処置は「漢方、化学療法、人工透析、臓器移植、骨髄移植、内視鏡、不妊治療、緩和ケア又はペインクリニック」、疾病は「性感染症又はがん」である。第一条の九の四は不合理な組み合わせを列挙し、「内科/整形又は形成」「外科/心療」を挙げる。すなわち「心療」が事項であることは、外科との組み合わせを禁じる規定が置かれていること自体からも確認できる(科名であればこの規定は不要である)
- 4医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針(医療広告ガイドライン)厚生労働省 · 2026 · accessed 2026-08-21裏付けた主張: 診療科名として認められない名称を例示する——「その他法令に根拠のない名称については、診療科名として広告することは認められない。具体的には、以下に例示する名称は診療科名として認められない。◎医科に関係する名称『呼吸器科』、『循環器科』、『消化器科』、『女性科』、『老年科』、『化学療法科』、『疼痛緩和科』、『ペインクリニック科』、『糖尿病科』、『性感染症科』など」。すなわち老年科は単に列挙から漏れているのではなく、明示的に認められない名称として挙げられている。一方で「老年」は組み合わせ事項であるため、「老年内科」「老年精神科」は許容例として示されている。すなわち老年は内科の修飾語としてなら存在でき、独立の診療科としては存在できない
- 5令和6年 医師・歯科医師・薬剤師統計の概況厚生労働省(令和6年12月31日現在、令和7年12月23日公表) · 2025 · accessed 2026-08-21裏付けた主張: 届出医師数は347,772人、うち医療施設従事者は331,092人。主たる診療科の分類は43で、総合診療科は含まれない。利用上の注意に「本統計における診療科名は、医療法において広告が認められている診療科名である」と明記されており、分類が標榜科に従っていることが分かる。なお平成30年調査から総合診療科が追加されたという説があるが、平成30年・令和2年は42分類、令和4年・令和6年は43分類であり、増えたのは集中治療科である
- 6医師届出票 記入要領(令和6年)厚生労働省 · 2024 · accessed 2026-08-21裏付けた主張: 主たる診療科の選択肢のうち「42 全科」について、記入要領は「診療科を限定することなく総合的に診療を行う者。総合診療に従事する者」と定義する。また「該当する診療科名がない場合、最も近い診療科名の番号を○で囲むこと」とする。すなわち総合診療科という選択肢は無いが、総合診療に従事する者の受け皿として「全科」が用意されている。令和6年の統計で「全科」と届け出た医師は241人であり、医療施設従事医師331,092人の0.07%にあたる。なお同届出票には専門医資格の欄があり、その19番が総合診療専門医である
- 7令和6年 医師・歯科医師・薬剤師統計 第37表(主たる診療科・専門医資格別)厚生労働省(e-Stat) · 2025 · accessed 2026-08-21裏付けた主張: 医療施設に従事する医師を、主たる診療科と保有する専門医資格のクロスで集計した表。総合診療専門医の資格を持つと届け出た医療施設従事医師1,046人について主たる診療科の内訳を見ると、内科612人(58.5%)、その他117人(11.2%)、循環器内科67人(6.4%)、消化器内科49人(4.7%)、全科29人(2.8%)である。すなわち制度が総合診療の受け皿として用意した「全科」を選んだのは1,046人中29人にとどまり、過半数は内科と届け出ている。なお三師統計で総合診療専門医と自己申告した医師は1,073人(届出全体)であり、日本専門医機構が公表する認定者数937人(2025年11月現在)を上回るが、この乖離を説明した一次資料には到達できなかった
- 8医療法施行規則 第六条の四(特定機能病院の診療科)、第二十二条の二昭和二十三年厚生省令第五十号(令和8年厚生労働省令第八十四号による改正後、2026年4月24日施行) · 2026 · accessed 2026-08-21裏付けた主張: 特定機能病院が有すべき診療科を定める。令和8年の改正で、従来の16診療科に加えて「リハビリテーションを行う診療科、病理診断を行う診療科、臨床検査を行う診療科、形成外科を行う診療科及び総合的な診療を行う診療科」を有するものとされた。他の四つは対応する診療科名(リハビリテーション科・病理診断科・臨床検査科・形成外科)が存在するのに対し、総合診療についてのみ「総合的な診療を行う診療科」という迂回した表現になっている。また同時に改正された第二十二条の二第三項は、特定機能病院に置くべき専門の医師を14領域から19領域へ拡大したが、その列挙は「…麻酔科又は総合診療の専門の医師でなければならない」となっており、他がすべて「〜科」であるなかで総合診療にのみ「科」が付かない
- 9特定機能病院に関する事項について(医政発0424第9号)厚生労働省医政局長(令和8年4月24日)※本稿は通知本体のPDFの恒久URLを確認できなかったため、特定機能病院の所管ページを示す · 2026 · accessed 2026-08-21裏付けた主張: 特定機能病院の診療科要件について、こう注記する——「なお、リハビリテーション科、病理診断科、臨床検査科、形成外科については、医療法第6条の6第1項に規定する診療科名に含まれているがそれらの標榜の必要はないこと。また、総合的な診療を行う診療科については、医療法第6条の6第1項に規定する診療科名には含まれていないことに留意すること」。すなわち厚生労働省自身が、総合診療が標榜可能な診療科名でないことを通知に明記している。なお制度改正の議論をまとめた「特定機能病院のあり方に関するとりまとめ」(第26回 特定機能病院及び地域医療支援病院のあり方に関する検討会、令和7年6月25日)は「病理診断科、臨床検査科及び総合診療科の設置」と、総合診療科という語で書いている。とりまとめから省令・通知に至る過程で語が置き換えられたことになる
- 10医道審議会令 第五条、第六条平成十二年政令第二百八十五号(e-Gov 法令検索) · 2026 · accessed 2026-08-21裏付けた主張: 第五条が医道分科会の所掌に「医療法(昭和二十三年法律第二百五号)の規定により審議会の権限に属させられた事項を処理すること」を含める。第六条は「審議会及び分科会は、その定めるところにより、部会を置くことができる」と定めるにとどまる。すなわち診療科名標榜部会はこの政令に名指しされておらず、開催の義務も頻度の定めも置かれていない
- 11医道審議会医道分科会診療科名標榜部会(開催一覧)厚生労働省 · 2026 · accessed 2026-08-21裏付けた主張: 第1回(平成19年5月21日)から第8回(令和8年3月6日、書面持ち回り)までの開催記録を掲載する。第5回は平成20年2月13日、第6回は令和7年9月4日であり、その間の空白は17年7か月である。第6回の議題は睡眠障害の標榜化であり、総合診療科は議題ではなく報告事項として扱われた。第7回(令和8年1月15日)・第8回の資料にも総合診療科は現れない。すなわち部会は休止していたが、2025年9月に再開して以後3回開催されており、現在も開催されていないと書くのは誤りである
- 12医道審議会医道分科会診療科名標榜部会 第5回 議事録(平成20年2月13日)厚生労働省 · 2008 · accessed 2026-08-21裏付けた主張: 総合科・総合医の新設を議題とした会合。閉会の場面で、部会長が有識者からの意見聴取を続ける意向を述べ、事務局が「次回以降の日程については現在調整中でございますので、日時が確定いたしましたら改めてまたご連絡を差し上げます」と答えて散会している。この第5回を最後に、部会は令和7年(2025年)9月4日の第6回まで開催されなかった。総合科について結論は出ていない。なお本稿はこの議事録の該当箇所を直接取得して確認した
- 13日本専門医制度概報 令和7年度版一般社団法人 日本専門医機構 · 2025 · accessed 2026-08-21裏付けた主張: 総合診療専門医の認定者数を937名(2025年11月現在)とする。うち44.7%(559名)は移行措置による認定であり、新規養成分ではない。また総合診療については「学会がないため、会員数は0人」と記載されており、学会名簿という代替の把握経路が存在しないことが分かる。専攻医の採用数は、厚生労働省 医師専門研修部会の資料によれば2018年度184人(全19領域8,410人の2.19%)、2022年度250人(9,448人の2.65%)、2025年度300人(9,762人の3.07%)、2026年度282人(9,998人の2.82%)である。2026年度は実数・割合とも前年から減っている
- 14規制改革実施計画(令和6年6月21日閣議決定)内閣府 · 2024 · accessed 2026-08-21裏付けた主張: 「患者本位のプライマリ・ケアの体制整備」の項に「厚生労働省は、特定の臓器や疾患を超えた多様な問題を抱える患者等が、総合診療を担う医師の受診を希望する場合の医療へのアクセスを円滑化する観点から、医学医術に関する学術団体の意見を踏まえつつ、標榜可能な診療科名に総合診療科を追加することについて、検討し、結論を得る」とし、実施時期を「令和6年度検討開始・令和7年結論」と定める
- 15令和6年の地方からの提案等に関する対応方針(令和6年12月24日閣議決定)内閣府 · 2024 · accessed 2026-08-21裏付けた主張: 「標榜可能な診療科名(施行令3条の2)については、…総合診療科を追加することについて検討し、令和7年中に結論を得る。その結果に基づいて必要な措置を講ずる」と定める
- 16令和7年の地方からの提案等に関する対応方針(令和7年12月23日閣議決定)内閣府 · 2025 · accessed 2026-08-21裏付けた主張: 同じ事項について「標榜可能な診療科名(施行令3条の2)に総合診療科を追加することについては、…検討し、結論を得る。その結果に基づいて必要な措置を講ずる」と定める。前年の「令和7年中に結論を得る」から年限の文言が落ちている。ただし規制改革実施計画は毎年その年の新規事項を掲げる構造であり、後続の計画に再掲されないことは項目の削除を意味しない。当該事項は規制改革推進会議のフォローアップ対象として「検討中」の評価が続いている
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