ハンガリー日記

文化・習慣/2026-06-27

「手にキスを」?ハンガリーの挨拶チョーコロム

ハンガリーで暮らし始めてすぐ、近所のおばあさんに声をかけられた友人の子どもが「チョーコロム(Csókolom)」と言って頭を下げる場面を見かけました。聞き慣れない響きだったので意味を調べてみたところ、直訳すると「(あなたの手に)キスします」という、かなり大げさに思える挨拶だとわかりました。今回はこの言葉の由来と、今のハンガリーでどう使われているのかについて書いてみます。

由来は「手にキスをする」騎士道的な習慣

チョーコロムは、もともと「Kezét csókolom(あなたの手にキスします)」という丁寧な挨拶を短く省略した形だそうです。古いヨーロッパには、男性が女性に対して挨拶のしるしに手の甲へ軽く口づけをする習慣があり、ハンガリーでもかつて紳士が女性にこの言葉をかけながら手を取っていた、と言われています。今では実際に手にキスをするわけではなく、あくまで言葉だけが儀礼として残っている形です。

今は子どもから大人への挨拶として定着

現在のハンガリーでチョーコロムを最もよく使うのは、子どもや若い世代です。近所の年配の女性や、両親と同世代かそれより年上の人に対して、「こんにちは」の代わりにこの一言をかけるのが習わしになっています。男性に対しても使われることがあり、相手の性別を問わず「目上の人への敬意を込めた挨拶」として根づいているのが特徴です。子どもの頃からこの言葉で挨拶するように教えられるため、ハンガリー人にとっては特別なことではなく、ごく自然な日常の一部だと感じます。

留学生にとっての向き合い方

留学生がこの言葉を覚えて使う必要は必ずしもありませんが、知っておくと挨拶の場面で「今、自分は子どもや若者に丁寧な言葉をかけられているのだな」と理解できて面白いです。スーパーのレジで小さな子どもがお年寄りのお客さんにチョーコロムと声をかけている光景に出会ったら、ぜひ耳を澄ませてみてください。ちなみにチョーコロムは「こんにちは」だけでなく「さようなら」の場面でも使えるので、出会いと別れの両方で耳にする可能性があります。

たった一言の挨拶に、かつての手にキスをする習慣の名残が今も息づいているのは、なんとも趣のある話だと思います。ハンガリーで誰かと挨拶を交わすとき、その言葉の裏にある小さな歴史を思い出してみると、日々の暮らしがちょっと豊かに感じられるかもしれません。