新しいパンの日、8月20日の祝い方
ブダペストの街を歩いていると、8月に入ってからスーパーやパン屋の店先に赤・白・緑のリボンが目につくようになりました。近所のハンガリー人の友人に聞いてみたら、「もうすぐ8月20日だからね」と教えてくれました。日本でいう建国記念日にあたるこの日は、実は「新しいパンの日」というもうひとつの顔も持っているのだそうです。留学中に初めて知ったこの祝日の奥行きを、今回はまとめてみたいと思います。
新しいパンの日――収穫への感謝
8月はかつて「実りの月」「新しいパンの月」と呼ばれていたそうです。その年の小麦の収穫が終わり、初めて焼き上がったパンを祝福する習慣は中世から続いています。もともとこの祝福は7月15日に行われていましたが、1920年代以降は8月20日に移り、パンには国旗と同じ赤・白・緑のリボンが結ばれるようになりました。当日は各地の教会や広場で、焼きたてのパンが祝福されて切り分けられる光景を見ることができます。
聖イシュトヴァーンの「聖なる右手」
建国の王、聖イシュトヴァーンにまつわる少し不思議な伝統もあります。ブダペストの聖イシュトヴァーン大聖堂には、王のものと伝えられるミイラ化した右手「聖なる右手(セント・ヨグ)」が安置されていて、8月20日の夕方には大聖堂の周りを練り歩く行列が行われます。歴史の教科書で読むだけだった建国の王が、今も生きた儀式として街の中に息づいていることに、初めて行列を見たときは不思議な気持ちになりました。
ドナウ川を染める花火
そしてこの日のハイライトといえば、夜に打ち上がる花火です。ドナウ川沿い数キロメートルにわたって仕掛けられる花火は「ヨーロッパ最大級」とも呼ばれ、両岸には早くから場所取りをする人の姿が見られます。戦間期の1927年ごろから続くというこの伝統、川面に映る光と国会議事堂のシルエットが重なる眺めは、写真で見るのと実際に見るのとでは迫力がまったく違う、と先輩留学生から聞きました。
建国記念日というと厳かな式典をイメージしがちですが、実際は焼きたてパンの香りと川面を彩る花火、そして家族や友人と過ごす時間からできている、とても暮らしに近いお祝いなのだと知りました。今年の8月20日はぜひドナウ川沿いに繰り出して、この一年で一番賑やかなブダペストの夜を体験してみたいと思っています。

