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観光2026.08.03

車のない島、マルギット島で深呼吸

ブダペストに住み始めてから気づいたことのひとつは、この街には「息を止める場所」と「息を吐く場所」がはっきり分かれているということです。国会議事堂や漁夫の砦のような観光名所は写真映えするけれど、いつも人と喧騒でいっぱい。そんなとき友人に勧められて訪れたのが、ドナウ川に浮かぶ細長い島、マルギット島(Margitsziget)でした。車の音がしない、というだけで、こんなに街が違って見えるのかと驚いた場所です。

車の入らない島へのアクセス

マルギット島はブダとペストを結ぶマルギット橋とアールパード橋のあいだ、ドナウ川の真ん中に浮かぶ細長い島です。行き方はとてもシンプルで、市電4番か6番に乗って「Margit híd, budai hídfő」停留所で降り、橋の途中にある階段から島へ下りるだけ。島の中を走る公共交通は26番バスのみで、ペスト側のニュガティ広場(地下鉄M3、市電4・6番との乗換駅)からも出ています。

何より特徴的なのは、島全体が車両進入禁止のゾーンだということ。自家用車は基本的に立ち入れず(アールパード橋側に有料駐車場はあります)、聞こえてくるのは自転車のベルとジョギングする人の足音くらいです。ブダペストのど真ん中にいることを、つい忘れてしまいそうになります。

音楽の噴水とばら園

島の南側で人だかりができていたら、それはきっと「音楽の噴水」です。直径36メートルの円形プールの中央から水が最大25メートルの高さまで噴き上がり、音楽に合わせて形を変えていきます。2013年に改修されたこの噴水は1日に数回演奏があり、夜はライトアップも加わって幻想的な雰囲気になります。演奏時間は季節によって変わることもあるようなので、現地の掲示で確認するのがおすすめです。

噴水から少し歩くと、パラティヌス温泉プールの向かいにばら園が広がっています。春から初夏にかけては特に見ごたえがあり、ベンチに座って本を読んでいる地元の人の姿もよく見かけました。

修道院の廃墟と塔が語る歴史

マルギット島という名前は、13世紀にこの島の修道院で生涯を送ったマルギット王女に由来します。島の中央あたりには当時のドミニコ会修道院の廃墟が今も残っていて、崩れかけた石壁のあいだを歩いていると、緑の中に中世の時間だけが閉じ込められているような感覚になります。近くにはフランシスコ会の教会跡や、プレモントレ会修道院の遺構も点在していて、この島がかつて宗教的にも重要な場所だったことがうかがえます。

島の北側には、1911年に建てられたアールヌーヴォー様式の給水塔(víztorony)もそびえています。高さ57メートルのこの塔はユネスコの保護建造物にも指定されていて、展望デッキが公開されているタイミングに当たれば、島全体とドナウの流れを見渡すことができるそうです。

観光名所を巡る合間に、少しだけ足を伸ばしてみるだけでいい場所だと思います。橋を渡ったその先でエンジン音が消え、水の音と鳥の声だけが残る——ブダペストにこんな静けさがある場所だと、マルギット島に行くまで知りませんでした。次にブダペストへ来る人には、地図に載っている定番スポットの合間に、ぜひこの島での「何もしない時間」もスケジュールに入れてほしいなと思います。

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