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観光2026.07.02

赤ワインと城の街、エゲルへ

ハンガリーの北東部、なだらかな丘に囲まれた街エゲル(Eger)。ブダペストのケレティ駅から直通列車に揺られること約2時間、降り立てばそこには中世の城址、バロック建築の旧市街、そしてどこを向いてもワインの香りが漂う不思議な空間が広がっています。観光地として有名なブダペストとは違う、ちょっとのんびりした空気が気に入って、気づけば一日では足りなくなってしまいました。

伝説の篭城戦が生んだ誇り

エゲル観光の起点になるのが、小高い丘の上にそびえるエゲル城(Egri Vár)です。13世紀に建てられたこの城が歴史に名を刻んだのは、1552年のこと。すでにブダペストを占領していたオスマン帝国軍が大軍を率いてエゲルに攻め込んできたとき、城主ドボー・イシュトヴァーン(Dobó István)はわずか数千の兵と市民たちとともに、圧倒的な兵力差にもかかわらず城を守り抜きました。

この勇敢な防衛戦には、有名な逸話が残っています。籠城の長期戦で疲弊した兵士たちを鼓舞するため、城主は赤ワインを振る舞いました。飲み干した兵士たちの口元や髭が真っ赤に染まるのを見たオスマン兵が「あの者たちは雄牛の血を飲んでいる!」と恐れをなして退いたというのです。のちにこの赤ワインは「エグリ・ビカヴェール(Egri Bikavér=雄牛の血)」と呼ばれる銘醸ワインの名前になりました。城の中には博物館もあり、当時の武具や城壁を間近に見ながら歴史に思いをはせることができます。旧市街を一望できる展望スポットとしても最高です。

美女の谷のワインセラーへ

エゲルのもう一つの顔が、旧市街から歩いて20〜30分ほどの場所にある美女の谷(Szépasszonyvölgy)です。丘の斜面を掘って作られた半地下のワインセラーが数十軒も軒を連ねるこのエリアは、昼間から地元の人や観光客でにぎわっています。

どのセラーもグラス1杯から気軽に試飲でき、店主と話しながらいろんな種類を飲み比べるのがここの醍醐味。名物の「雄牛の血」をはじめ、フルーティーな白ワインや甘口のデザートワインまで、バリエーションも豊富です。ハンガリー語がわからなくても、指さしと笑顔でなんとかなるのがありがたいところ。木樽が並ぶ薄暗いセラーの中でグラスを傾けていると、時間の感覚がゆるやかになっていきます。お気に入りの1本を見つけたらボトルで買って帰るのもおすすめです。

旧市街さんぽとミナレット

城と美女の谷の間に広がる旧市街もぜひ歩いてみてください。街の中心ドボー広場には重厚なバロック様式のエゲル大聖堂がどっしりと立ち、その白い外壁が青空によく映えます。広場に立つドボー・イシュトヴァーンの銅像は、地元の人々の誇りの象徴です。

そしてひときわ目を引くのが、旧市街に残るミナレット(イスラム教の塔)。エゲルは17世紀にオスマン帝国に占領された時期があり、このミナレットはその痕跡として今も残っています。螺旋状の狭い階段を登ると小さなバルコニーに出られ、旧市街の赤屋根が広がる風景を楽しめます。ハンガリーのど真ん中にイスラム建築が残っているというギャップが、この街の歴史の深さを物語っています。

まとめ

ブダペストの喧騒に少し疲れたとき、エゲルはぴったりの気分転換になります。歴史の重みを感じる城址、気さくなセラーでのワイン体験、のんびり歩ける旧市街——どれもブダペストとはまた違う魅力です。日帰りでも十分楽しめますが、泊まって夜の静かな旧市街を味わうのも格別。ハンガリー旅行のプランにエゲルを加えてみてはいかがでしょうか。

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