耳を引っ張ってお祝い?ハンガリーの誕生日
ハンガリーに来て一年が過ぎたころ、ルームメイトの誕生日パーティーに呼ばれた。ケーキとろうそくで祝うのはどこも同じだと思っていたら、歌が終わった瞬間、みんなが本人に駆け寄って耳を引っ張り始めたので驚いた。誰も止めないし、本人も慣れた様子で笑っている。聞けばこれ、ハンガリーでは誕生日の定番なのだそうだ。今回はこの「耳引っ張り」の風習について紹介したい。
耳を引っ張るとご長寿に?
この風習は「フルヒュザーシュ(fülhúzás)」と呼ばれ、誕生日を迎えた人の耳を、年齢の数だけそっと引っ張るというもの。その際に唱えられるのが、"Isten éltessen sokáig, füled érjen bokáig!"(神があなたを長生きさせ、耳がくるぶしに届きますように)という、ちょっとユーモラスな一節だ。直訳すると「耳がくるぶしに届くまで」という意味で、初めて聞いたときは思わず笑ってしまった。耳は年齢を重ねても伸び続ける部位のひとつとされていて、「耳が伸びるくらい長生きしてほしい」という願いが込められているらしい。ろうそくを吹き消すよりも先に、この耳引っ張りが始まる家庭もあるというから驚きだ。
由来ははっきりしないけれど
この風習にはっきりとした起源は伝わっていないようで、ハンガリー人の友人に聞いても「気づいたら家族がやっていた」という答えが返ってくることが多い。科学的な由来というより、体の面白い特徴に着想を得た民間の言い伝えという位置づけのようだ。似たような耳引っ張りの誕生日風習はブラジルやアルゼンチンなど、南米の一部でも見られるらしく、国境を越えて似た発想が生まれるのはおもしろい。
実際に体験してみて
ルームメイトは苦笑いしながらも、家族や友人に囲まれて耳を引っ張られるのを楽しそうに受け入れていた。年齢の数だけとなると、大人になるほど引っ張る回数も増えていくわけで、まわりは数えながら大盛り上がりだった。痛いというより、みんなに祝ってもらっている実感が湧く、そんな瞬間だった。日本の「誕生日にお尻を叩く」遊びともどこか通じるものがあるかもしれない。
ケーキやプレゼントだけでなく、こうした小さな身体的なふれあいが誕生日を特別なものにしているのかもしれない。今度自分の誕生日が来たら、友人たちに「今年は◯回、耳を引っ張ってね」と自分からお願いしてみようと思う。

