ハンガリー日記

言語/2026-06-03

ハンガリー人の名前は「姓」が先——日本と同じ文化の不思議

ハンガリーに関する豆知識として、旅好きの間でよく語られることがあります。「ハンガリー人の名前は、日本人と同じ順番なんだよ」——最初に聞いたとき、ちょっと驚きませんか?ヨーロッパのど真ん中にいながら、名前の並び方だけは東アジアと同じ姓→名の順なのです。

ヨーロッパでほぼ唯一の「姓先」文化

英語圏をはじめ、ほとんどのヨーロッパ言語では名前は名→姓の順で書きます。John Smith であれば「ジョン(名前)+スミス(苗字)」です。ところがハンガリー語では Kovács János のように姓が先に来ます。読み方は「コヴァーチュ・ヤーノシュ」で、コヴァーチュが苗字、ヤーノシュが名前です。

これはヨーロッパ圏では非常に珍しく、実質的にハンガリーだけの慣習と言えます(隣国でも採用していません)。同じ「姓先」を使う文化圏は、日本・中国・韓国・ベトナムなど東アジア・東南アジアに集中しているため、ハンガリー人が東洋の文化にシンパシーを感じることも少なくないそうです。

国際的な場では「名前を逆にする」

面白いのは、ハンガリー人が英語などで自己紹介するとき、わざわざ名前の順番を反転させるという点です。ハンガリー語では Kovács János と書く人が、英語の書類には János Kovács と記入します。パスポートや国際的な書類では欧米式に合わせるのが一般的で、「自分の名前を状況によって並べ替える」というひと手間がついてまわります。

日本のパスポートも同様に、表紙のローマ字表記は名→姓の欧米式になっていますよね。ハンガリー人と日本人、言語的なルーツは全く異なりますが、名前の「使い分け」という点では妙な共感が生まれます。

名前に込められた意味

ハンガリーの名前には、日本の名前と同じように意味を持つものが多くあります。よくある苗字 Kovács(コヴァーチュ)は「鍛冶屋」、Nagy(ナジ)は「大きい」、Fekete(フェケテ)は「黒い」という意味です。日本でいう「田中」「鈴木」「黒田」のような、職業や特徴に由来する苗字が多いのも共通点のひとつかもしれません。

ハンガリーを訪れたら、街中の看板や店名にある人の名前に注目してみてください。Kovács Péter Üzlete(コヴァーチュ・ペーテルの店)のように姓が先に来る表記を見つけたとき、「ああ、ここはヨーロッパの中の異文化圏なんだな」とじんわり感じられるはずです。言語の細部に、その民族の歴史と誇りが詰まっています。