歴史/2026-06-01
正義の王マーチャーシュの物語
ハンガリーで暮らしていると、街の名前や物語の中に「マーチャーシュ(Mátyás)」という名前をよく見かけます。15世紀にハンガリーを治めた王さまで、今でも「いちばん人気のある王」と言ってもいいくらい親しまれています。きょうは、この正義の王マーチャーシュの物語をのぞいてみます。
ルネサンスを愛した王さま
マーチャーシュ・フニャディ、いわゆるマーチャーシュ1世は、1458年に若くして王位につきました。彼の時代、ハンガリーの宮廷はイタリアのルネサンス文化を熱心に取り入れたことで知られています。学者や芸術家を招き、ブダの宮殿は当時のヨーロッパでも指折りの文化の中心地になりました。
とくに有名なのが、王が集めた写本のコレクション「ビブリオテカ・コルヴィニアナ(Bibliotheca Corviniana)」です。豪華に装飾された手書きの本がずらりと並ぶ図書館は、当時のヨーロッパでも最大級のものだったと伝えられています。本好きの王さまだったのですね。
「黒軍」と強い国づくり
マーチャーシュは文化だけの王ではありませんでした。彼は「黒軍(Fekete sereg)」と呼ばれる常備軍を整えたことで知られます。給料で雇われた専門の兵士たちからなる軍で、中世のヨーロッパではまだ珍しい仕組みでした。これによってハンガリーは一時、中欧で大きな力を持つ国になりました。
今も語り継がれる「正義の王」
ハンガリーの民話の中で、マーチャーシュは「正義の王マーチャーシュ(Igazságos Mátyás)」として登場します。身分を隠して庶民にまぎれ込み、いばっている領主をこらしめたり、貧しい人の味方をしたり——そんな物語がたくさん残っています。実際の歴史そのままではないかもしれませんが、人々が「公正な王であってほしい」と願った気持ちが、こうした物語にこめられているように感じます。
王の名前は、ブダペストのマーチャーシュ教会など、今も街のあちこちに残っています。古い王さまの話が昔話として生き続けているのを知ると、ハンガリーの人たちが自分たちの歴史をどんなふうに大切にしているのか、すこし見えてくる気がします。

