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医療×統計・測定

その数字は何を測っているのか。指標・閾値・分母の来歴を辿る。

19本の記事

FIELD & MEDICINE

この分野と医療

政策も議論も、数字の上に乗っている。しかしその数字が、誰によって、何を基準に、いつの値で作られたのかは、使われる場面ではほとんど問われない。ここでは、指標・閾値・分母の来歴を一つずつ辿り、確かめられている部分と、確かめられないまま使われている部分を分ける。指標の索引は資料にある。

この分野の記事

新しい記事から
統計・測定
測る道具の点検

確実に行けるという事実

2006年、在宅療養支援診療所が作られた。中医協で「本当に実効が上がるのか」と問われた厚生労働省は、従来の24時間行ける体制とは違う、今度は実際に行くことを前提としている、確実に行けるという事実を担保としたい、と答えた。国はその担保の仕方を後から見つけている——2012年の機能強化型には常勤医師3名以上と、緊急往診・在宅看取りの件数要件がある。だがそれが置かれたのは届出の29%で、残る71%を占める従来型には医師数の下限も件数の下限も無い。そして2026年6月1日、その71%からも毎年集めていた年1回の在宅看取り数の報告が、業務の簡素化を図る観点から削除された。もっとも件数は活動量であって、要請に何割応じられたかではない。履行を測る仕組みは、どちらの層にも置かれていない。

日本・ヨーロッパ・その他25件の参考文献論考を読む
統計・測定
測る道具の点検

その推計は、いつの受療率でできているのか

2027年度以降の医学部定員が議論されている。その需給面の基礎資料として今も参照されているのは、2020年8月公表の医師需給推計である。三つのケースの骨格を分けているのは医師が週に何時間働くべきかという問いで、需要側の入口は地域医療構想の必要病床数(パターンC)。同じ必要病床数が医師需給推計と看護職員需給推計の双方へ渡っている。2025年10月、厚生労働省は現状投影と実績を並べた図を出した——2025年の推計121.6に対し、実績系列の最新点である2024年は95.7。二本の系列は反対を向いている。外れたことより、外れたかどうかを誰が調べるのかが問題である。

日本・ヨーロッパ・その他32件の参考文献論考を読む
統計・測定
測る道具の点検

「できている」とは、誰が言ったのか

地域包括ケアシステムは2025年を目途に構築するとされてきた。その2025年を過ぎた2026年6月、参議院で「どの程度整備されたのか」と正面から問われた老健局長の答弁で示された唯一の量的根拠は、地域包括支援センターの箇所数だった。第10期基本指針では、地域包括ケアに関する当該一文から「二千二十五年(令和七年)を見据え、」だけが削られている。評価そのものは大量に行われている。だが、それを「構築できたのか」という一つの問いに集約する全国共通の判定基準は、確認できなかった。1,741の市町村は毎年800点満点で採点されており、その800点のうち420点、52.5%は「全保険者の上位何割か」という順位で決まる。連携は測られているが、満足・患者の経験・QOL・継続性は評価指標42頁に一度も現れない。

日本・ヨーロッパ53件の参考文献論考を読む
統計・測定
測る道具の点検

近さは、何から決められてきたのか

前回、9か国18件の地理的アクセス閾値を辿って、患者のアウトカムから引かれたものが一つも無かったと書いた。だがそれは、アクセスの指標ばかりを選んで見たからかもしれない。そこで対照例を同じ熱心さで探した。一件あった——rt-PAの4.5時間は、2004年の統合解析が181〜270分の区間を示し、2008年のECASS IIIがその窓の中の治療効果を前向きに確認したうえで制度に入っている。ところが同じ「分」で書かれていても、door-to-needleの60分は1997年に「恣意的」と自認されて作られ、緊急帝王切開の30分は病院がそれを実行できるかを調べたデータから来ていた。そして分かれ目は、時間か距離かではなかった。韓国が病院までの移動時間をアウトカムから推定すると、病態ごとに31分から80分まで分かれる。制度化には、連続的な知見を有限個の規則へ圧縮する必要がある。その段階で入ってくるものを、12か国35件で辿った。

日本・ヨーロッパ・その他73件の参考文献論考を読む
統計・測定
測る道具の点検

その点検表は、何を見落としていたか

十本かけて指標を点検してきた。最後にその点検表そのものを点検する。第一に、七つの型のうち六つには既存の枠組みに近接する概念があったが、一対一には対応しない——反応性と「介入で動くこと」は別だし、生態学的誤謬は単位が違うこと一般ではない。第二に、採点の仕方が壊れていた。閾値を持たない指標は型3に落ちようがないので、「七つ全部を通った」は適用外の型が多いほど達成しやすい。点検すべきは指標そのものではなく、指標×用途×対象集団の組み合わせだった。この列の成果は新しい測定理論ではなく、合格・不合格・適用外・情報不足を分離する実務的な点検手順にある。

日本・ヨーロッパ・その他26件の参考文献論考を読む
統計・測定
測る道具の点検

認知症の重さは、何で決まっているのか

認定調査員テキストを全文検索すると、長谷川式もMMSEもMoCAも0回だった。日本の要介護認定は認知機能検査だけで決まる制度ではなく、多数の生活機能項目を用いている。一方、一部の診療・介護報酬では、1993年に介護必要度の簡便な分類として作られた「認知症高齢者の日常生活自立度」ランクが、直接の給付ゲートとして使われる。判定基準を定めた通知は導出について「作成したので」としか書いていない。入手できた公開資料では、その用途における導出根拠と、実際の評価者・情報源・判定境界に即した再現性の検証を、十分に確認できなかった。

日本34件の参考文献論考を読む
統計・測定

医療DXは、測定インフラの欠如を埋めるのか

この列は何度も同じ空白に当たった。施設別の治療アウトカムが公開されていない。国はいま、その空白を埋めると言っている。だから仕様書を読んだ。技術解説書217頁に「二次利用」は0回、「施設別」は0回。退院時転帰を運ぶ退院時サマリーは、送付機能の「実装を任意とします」と書かれている。一方で二次利用ワーキンググループは、空白を私よりも正確に名指ししていた。医療DXは収集と連結の層を埋め始めている。埋まっていないのは、何を施設の成果として測り、どう公表するかという層である。

日本・ヨーロッパ15件の参考文献論考を読む
統計・測定
測る道具の点検

その点数は、誰が付けているのか

重症度・医療・看護必要度、リハビリテーション実績指数、在宅復帰率。三つとも入院料を左右する指標で、三つとも病院が自分で測る。ただし三つは問題の種類が違う——評価者間の一致、除外の裁量、アウトカムの操作的定義。必要度Ⅰは機械判定の必要度Ⅱより一貫して高いが、どの要因が差を生んだかは分離されていない。支払いに使われるこれらの指標は、支払いを受ける施設が生成した記録に依存している。一方、実際の採点を外部評価と突き合わせる制度的な仕組みは確認できず、現行票の再現性に関する公開データも検索範囲では見つからなかった。

日本・ヨーロッパ・その他26件の参考文献論考を読む
統計・測定
測る道具の点検

総合診療医は、世界でどう数えられているのか

前回、日本の法令に総合診療科という診療科名が無いことを見た。ではOECDには何を報告しているのか。答えは「報告していない」だった。定義文書の日本欄は「Data not available… In Japan, physicians are not separated into GPs and specialists」の二文で終わり、実際に報告されているのは小児科・産婦人科・精神科の三つだけである。2015年以降このデータフローに提出のあった54の国・地域のうち、Generalist medical practitioners が全期間空欄なのは日本だけだった。ただし他国の欄も「正しい人数」ではない。英国のGP数には四つの公式値があるが、違いは精度ではなく母集団である——登録資格・免許・実働・雇用。日本に欠けているのは名簿ではなく、対応表である。

日本・ヨーロッパ・その他18件の参考文献論考を読む
統計・測定
測る道具の点検

名前が無いものは、どう数えられているのか

指標監査の優先順位表で二位だった標榜科を点検した。医療法施行令第三条の二を全文検索すると、総合診療も家庭医療も老年科も一度も現れない。組み合わせ方式の四区分は部位・年齢性別・処置・疾患で、「総合」はそのどれでもないため、この生成規則からは名称を作れない。だが国は受け皿を用意していた——医師届出票の「42 全科」である。資格欄で総合診療専門医を選んだ1,046人がそこに何と書いたかを集計すると、内科612人に対し全科は29人だった。名前が無いのではない。専門医資格・院内部門・広告可能な診療科名・主たる診療科統計で、その名前の扱いが一致していない。

日本16件の参考文献論考を読む
統計・測定
測る道具の点検

「かかりすぎ」は、どの数字の上に乗っているのか

指標監査の優先順位表で首位だった受診回数を点検した。OECDに載っている日本の値は割り算で再現できる——入院外の診療実日数1,553,086,171を年度平均の医療保険加入者数125,640,056で割ると12.36になる。単位は回ではなく日で、同じ医療機関で同一日に三科かかっても1日。分母は人口ではなく被保険者で、生活保護の医療扶助は分子分母とも除外されている。OECDは遠隔診療の包含を「定義からの逸脱」と記録し、単位がdays、分母がsubscribersであることを別途注記している。12.4は実在する数字だが、過剰受診を直接測った数字ではない。

日本・ヨーロッパ・その他22件の参考文献論考を読む
統計・測定
測る道具の点検

何を測るかは、決められるのか

前回の宿題を調べた。合意は作れる。関節リウマチでは1992年に作られ、別の領域では欧州医薬品庁のガイドラインが core outcome sets の使用を推奨するところまで行った。だが手続きを満たしても、唯一正しい項目集合が得られるわけではない——報告基準が自ら「どのCOSを使うべきかを区別するものではない」と書いている。評価尺度を5段階から9段階に変えるだけで、最終会議に送られる候補が24から11に変わる。合意は作れる。しかしその結果は、適用範囲と参加者と質問形式と実装負担に依存し、合意しただけでは妥当性も普及も保証されない。

日本・ヨーロッパ・その他21件の参考文献論考を読む
統計・測定
測る道具の点検

地域を分母にする、と言うとき、何が分母になっているのか

この列の目的は、何を測るかの合意を作り、それを土台に調査を広げることにある。その前に、日本が既にやってきたことを見た。大迫町の1997年の健診コホートは、町の人口7,318人、健診の適格者2,719人、受診者1,831人、同意者1,622人という段階を経ている。適格者の定義は農業者・自営業者・年金受給者・被扶養者だった。地域の健康状態は、一つの完全な母集団からではなく、住民台帳・保険者・健診参加者・医療機関受診者という異なる抽出枠を通して観測されている。そして受診件数と受診者数が、同じ量としてプールされている。

日本17件の参考文献論考を読む
統計・測定
構造から診る

個人への単独帰属は、なぜ繰り返し成立しないのか

九本を書き終えて読み直したら、当初の背骨が二か所ずれていた。第一に、個人への帰属を崩していたのは四つの分野の主張ではなく、測定上の事実だった——職域健診がある層ではヘルスリテラシーと受診の関連が弱まり、全国の保健指導は割当ての効果で1年に0.29kg、意思決定能力はappreciation下位尺度の正常率が尺度によって48.7%から94.6%まで変わる。第二に、その反対は「構造に帰す」ではなく、観測したものから推論したいものへの橋が無いことだった。個人について測った値だけから、問題の原因を個人に帰すことはできない。

日本・ヨーロッパ・その他10件の参考文献論考を読む
統計・測定
測る道具の点検

閾値は、どこから来たのか

腹囲85cm、血圧130/80、HbA1c 6.5%、HDS-R 20点、MoCA 26点。この線の一方の側にいるか他方の側にいるかで、次の行動と分類が変わる。五つを原典まで辿ると、来歴が五つとも違った。腹囲の導出は三文で根拠図に「投稿準備中」と付され、血圧の80はガイドライン内部の整合性から、HbA1cの線は「国際基準に合わせる」ために採られ、その国際基準の最大の構成要素は日本のデータだった。対比としてアウトカムから引かれた線を二つ置く。訊くべきは「分布かアウトカムか」ではなく、その線が何を目的変数にし、どの損失を最小化し、どんな実装上の理由で調整されたのか、である。

日本・ヨーロッパ・その他17件の参考文献論考を読む
統計・測定
構造から診る

継続性は、誰について測られているのか

継続性は総合診療の中心概念で、死亡率との関連まで報告されている。だが大規模データで頻用されるCOCやFCIは受診履歴から作られ、受診が1回の人では数学的に定義できない。日本の研究を追うと、対象者は年4回以上の受診者、多疾患併存者、かかりつけを持つ人と、それぞれ別の条件で切り取られていた。全国調査の一本は、かかりつけが無いと答えた47%に設問自体を配っていない。一方、2025年に始まったかかりつけ医機能報告制度が測るのは患者が経験した継続性ではなく、医療機関側の提供能力である。誰について、何を継続性として測っているのかを確かめる。

日本・その他16件の参考文献論考を読む
統計・測定
前提を疑う

医師偏在指標は、何を測れていないのか

医師偏在指標は失敗した指標ではない。患者側の年齢構成も、受療率も、患者の流出入も、医師の性年齢別労働時間も補正した、人口当たり医師数よりずっと精緻な指標である。だが医療アクセスそのものを測る指標ではない。そして2026年、厚生労働省が出した答えは、一つの指標を万能にすることではなかった——医師偏在指標は医師供給の相対差を測るものとして残し、へき地尺度という別の指標を重ねて医師少数区域を決める。制度自身が「単独の指標では足りない」に到達した。「前提を疑う」シリーズ第11回。

日本50件の参考文献論考を読む
統計・測定
前提を疑う

情報は集められているのに、なぜ統計にならないのか

行政はすでに情報を集めている。医療法人の関係事業者取引も、全国的な電子収集の対象に入っている。それでも統計にならないのは、収集と分析可能性のあいだに、構造化・品質管理・連結・利用権限という別の制度設計が要るからである。全国収集・全国統計・全国横断検索・個票の一般公開を分けたうえで、政治資金・産業廃棄物・古物商の同型事例、MCDBの検討過程の一次資料、社会福祉法人との対照を検証する。欠けているのは最後の一手間ではなく、data governance である。「前提を疑う」シリーズ第10回。

日本22件の参考文献論考を読む
統計・測定
前提を疑う

公平性と価値を同時に測る指数は、作れるのか

公平性と価値を一つの数字で測れないか——そう考えて式を組み、壊した記録である。必要度で割る形はHI指数になっておらず、負の価値重みは集中度指数の解釈を壊す。詰めるほど、既に存在するDCEAへ近づいた。そして本当の問題は重みの決め方ではなかった。どれだけ良い医療が行われているかという水準と、それが誰に届いているかという分布は、一つの数字に潰してはいけない。日本の水平的不公平については2025年に827,168人・13波の全国分析が出ており、需要調整後は小さいと報告されている。「前提を疑う」シリーズ第6回。

日本36件の参考文献論考を読む